ムルタ・アズラエル
ムルタ・アズラエル(Multa Azrail)
ブルーコスモスの盟主であり、アズラエル財閥の御曹司で軍需産業の経営者。その力で国防産業連合理事の肩書きによって地球連合軍を動かす。
主に登場したのは『機動戦士ガンダムSEED』TV本編だが、『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』でもスウェンの回想シーンで登場している。
地球連合軍がザフトへ攻勢を強める際に表舞台に登場。この手の悪役によくある「戦場から遠く離れた後方でふんぞり返って指示だけ出す」タイプとは異なり、地球連合軍のオブザーバーとして、自ら戦艦に乗り込み本来危険がつきまとう前線に常に進んで立つなど、行動力に富んでいる。
普段は人を食ったような軽口を叩きつつ飄々とした態度を取りながら、丁寧語を使いながらも紳士的に振る舞っているが、その言動の多くは相手を見下したものだったり、相手に不快感を与えるようなネチネチとした遠回しの嫌味ともとれるものがほとんどであり、俗に言う慇懃無礼な性格をした冷静な皮肉屋とも言える。半面、自己中心的で幼児的な性格も見え隠れしており、特にコーディネイターが絡むとその傾向が顕著であり、精神的に追い詰められ心に余裕がなくなると狂気的で醜悪な本性を露にする。幼少時にコーディネイターの子供との喧嘩や競争で一方的に負けた時の精神的なダメージを今でも引きずっており、それが彼の歪んだ性格を形成する要因ともなっている。
戦艦ドミニオンにオブザーバーとして乗り込み前線に立つが、ジェネシスの投入と三隻同盟の介入でプラント侵攻は失敗に終わる。追い詰められた彼は激昂して艦長ナタルの静止を振り切りアークエンジェルを沈めようとするがムウのストライクの犠牲により失敗。マリューの指揮で発射されたアークエンジェルのローエングリンによってナタルと共に最期を迎えた。
経営者としてはそれなりに優秀な人材ではあるものの、本来は民間人に過ぎない彼が、軍艦に乗って指令を下す法的根拠は、本編を見る限り存在しない。現実で言えば、三菱重工業やゼネラル・エレクトリックの最高経営者が軍を指揮するようなものである。しかし、連合軍側も平然とこの状況を受け入れており、抵抗したのは(作中では)ナタル・バジルールただ一人に過ぎなかった。ブルーコスモスの思想は、軍部にシビリアン・コントロールを無視させるほど浸透していたようである。
余談だが、これでも妻子持ちである。ただし設定のみで、劇中で直接登場はしない。
同様に劇中で描写されていない設定として、開戦前はコーディネイターを憎んではいたものの、彼らの虐殺を企てるほど憎んでいた訳ではなく、戦争の狂気というものに当てられてしまったが為にコーディネイターに対する狂気染みた憎悪に取り憑かれてしまったらしい。ただし彼はあくまでも大企業の経営者でありプロの軍人や政治家ではなく、それゆえか、後のジブリールと比較すると、この争いを一種のビジネスライクなもののように、何処か醒めた捉え方をしていたようではある。その彼が連合軍の指揮官になってしまったことが、戦線を拡大させてしまったことは間違いない(実際、彼のそういった意識の現れとして劇中において「(戦争とは)こちらの被害を少なく、なおかつ敵の被害を大きくするものである」という趣旨の発言をしている)。しかしそれでいて、相手に反撃されるリスクを考えずに大量破壊兵器である核を躊躇なく使用し、実際に報復を受けた途端に自らの決断の結果であるにも関わらず、他人に責任を押し付け、さらに最大の脅威であるジェネシスを放置してプラントの破壊を命じるなど彼の判断は最悪の結果を自ら招こうとしているかのようであり(仮にプラントを殲滅した場合、ジェネシスに残されたザフト司令部が報復として地球を撃つ可能性を全く考慮していない)結局は本人も知らずのうちに、前述のような過去のトラウマもあってかいわば「合理性を超越した純度の高い狂気」に、いつの間にか取り憑かれてしまっていたという事なのだろうか。
なお、アズラエルの名前の由来は、イスラムにおいて死を司る天使アズラーイールの英語読みから。劇中において、アズラエルの管轄下にあったドミニオン隊に所属していた者(アズラエル自身を含めて)全員が死亡した結末を考えると、皮肉めいた名前かもしれない。
登場作品と役柄
スパロボにおいてもブルーコスモスの盟主として他作品の悪役キャラと結託する等の暗躍を見せ、さらに戦闘で台詞があったりと存在感が強いが、敵対するパトリック・ザラと同様に異星人等の人外の脅威を軽視した言動が目立ち、他作品のキャラ達がその事に苦言を呈してもはなから馬鹿にした態度でそれを否定する等、どうにも空気を読んでいない滑稽なイメージも強い。
αシリーズ
- 第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ
- 初登場作品。原作どおりの活躍に加えて前作で失脚した三輪を復帰させたり、ゼーレやフェルコーナと結託するなど、数々の暗躍をする。また、獅子王凱が駆るジェネシックガオガイガーに対して敵愾心をむき出しにし、ナタルに諌められる。わかっている人はニヤリとする場面も(所謂声優ネタ)。DVEも複数用意されているなど、戦闘時はサブパイロットに近い状態だが、様々な面でなかなか優遇されている。
- 余談だが、何気に本作における『ガンダムSEED』の登場人物の中で一番最初に登場するキャラだったりする。その良くも悪くも特徴的なキャラ故か中断メッセージでも二パターンで登場しており、うち一方では「勇気に頼るな」とプレイヤーにアドバイスを送るもナタルにツッコミを入れられる場面も。
携帯機シリーズ
- スーパーロボット大戦J
- 第3次αよりも原作に近い活躍で、コルベットと組んで様々な悪巧みを行う。今回は第3次αとは逆にユリカに対抗心を燃やすナタルにツッコミを入れる立場。デビルガンダムにも目を付けているというクロスオーバーがあるが、深くは触れられずに終わった。
- この作品が関係してるか分からないが、Jの発売後に発売されたゲーム『GジェネレーションDS』では、彼がデビルガンダムの力を手に入れる展開が存在する。
- スーパーロボット大戦W
- 第1部から登場。物語前半からデキムやレナード、コルベットらと結託して様々な暗躍を見せる。今回、フレイが生き残るために勝利の鍵は渡らず、原作通りにならないと思いきや、よりにもよって核より危険なフェルミオンミサイルで決戦に出てくる。叢雲劾からプレア、カナード、生体CPUのような存在を生み出す者として狙われており、ナタルを撃とうとしたところを劾に阻止され、彼に徹底的に追い詰められた挙句、半ば自爆同然の最期を迎えるという原作以上に悲惨な結末に。今回はガオガイガーと戦えない。
単独作品
- スーパーロボット大戦Card Chronicle
- 基本的に原作通りの活躍と末路を辿っているが、オーブ戦においては連合軍に帯同しておらず、オーブ戦の直後にニュートロンジャマーキャンセラーのデータをアレハンドロより受け取っている等、多少の違いも見られる。
人間関係
- アズラエルの母
- 文字通り、アズラエルの母親で、アズラエルの人格が歪んだ最大の要因を作った張本人と言える人物。
- 幼少期のコーディネイターの喧嘩に勝てなかったアズラエルが「どうして自分をコーディネイターにしてくれなかったのか」と聞いてきた際、平手打ちしてコーディネイターを「化け物」と比喩している。今でもアズラエルの記憶にはこの事が残っているようで、『スペシャルエディションIII』にてその時の回想が語られている。
- ナタル・バジルール
- 部下。コーディネイターに対して敵意を剥き出しにするアズラエルとは相容れず、最期は反旗を翻した彼女の捨て身の行動により討たれる事に。
- ちなみにナタルは捨て身の行動に移る前に部下達に退艦を命じており、全員が彼女の命令に従っている。結局、アズラエルを助けようとしたドミニオンのクルーは一人もいなかった。
- オルガ・サブナック、クロト・ブエル、シャニ・アンドラス
- 部下。彼等がブーステッドマン故か、始終モノ扱いで接していた。そのため、両者の信頼関係は希薄である。
- ウィリアム・サザーランド
- 地球連合軍内部のブルーコスモス派筆頭。実質的にはアズラエルの腹心で、片腕ともいえる人物。第2次ヤキン・ドゥーエ宙域戦において、艦のブリッジに直撃を受けて戦死した。
- スパロボでは概ね他作品のキャラクターが代役を務める為、現時点では未登場。
- ラウ・ル・クルーゼ
- 敵であるザフトの人間だが、密かに取引しており、フレイを通してニュートロンジャマーキャンセラーの情報を入手し、狂喜する。取引相手の掌で踊っていることに気づかずに…。
- フレイ・アルスター
- クルーゼからの宅配屋。彼女の「戦争を終わらせる鍵を持っている」という発言に興味を持ち、戦闘中にも関わらず保護を指示する。
ちなみに、彼女の父ジョージは大西洋連邦の外務高官で、ブルーコスモス幹部でもある。 - ウズミ・ナラ・アスハ
- 互いに敵対関係になる。
- ロード・ジブリール
- 続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』におけるブルーコスモス盟主(およびロゴスの代表)。
- SEED時代の彼の行動やブルーコスモス内での立ち位置が描かれていない為、二人に面識があったかは作中で明らかにされていないが、この後任者の「決戦時には地下深くに引きこもる」「危なくなると味方を見捨てて逃げ出す」という行為が、図らずともアズラエルの「軍艦に乗って前線に出る」「ジェネシスを喰らってもへこたれずに反撃する」という行為を良い意味で際立たせ、アズラエル本人は何もせずとも汚名返上を果たした。
- ブルーコスモス盟主としての器をアズラエルと比較されることもあり、自らの手腕で地球連合軍側のほぼ全権限を掌握してザフトと戦ったアズラエルと、デュランダルの掌の上で散々踊らされた末に破滅したジブリールとでは、リーダーとしての質もアズラエルの方が上であったと言える(尤も、最期まで誰かの掌の上で踊らされていたという点は共通しているが)。
- 但し、アズラエルがナチュラル・コーディネーター間の争いに関して何処かビジネスライクな醒めた観念を不純物として内包し続けていたのに対し、ジブリールはと言えば、逆に良くも悪くも真剣にコーディネーターに対し恐怖・そしてそこから来る勘定として純粋に嫌悪していたという点もあり、もし彼がジブリールのような、損得勘定等々の合理性を超越する程に、純粋な嫌悪の感情を有していたとしたら…まぁそれはそれで、どちらにしても合理性よりも狂気を行動原理としていたクルーゼの思惑からは逃れられなかったのだろうか。
- ブルーノ・アズラエル
- 『DESTINY』に登場するロゴスのメンバー。作中ではムルタとの明確な関係の説明はないが、その容姿や同姓である事などから、おそらくは血縁者だと推測されている(少なくとも外見上はムルタより年嵩)。ジブリールに見捨てられ、拘束された。
他作品との人間関係
ガンダムシリーズ
- ヤザン・ゲーブル
- 第3次αでは部下。彼はブルーコスモスの理念に賛同したりしてはいないが、アズラエル自身は彼を熟練パイロットとして評価していた。
- エイパー・シナプス
- 第3次αではオーブ戦で彼を部下として従え、彼にαナンバーズを討つよう指示するが、当然彼が従うわけがなく背かれることになり、怒ったアズラエルは彼を謹慎処分にしてしまう。極刑も危ぶまれたが、無事だった。
- ドモン・カッシュ
- Jではその器や狭量の狭さ、そして偏狭な思想やコーディネイターのみならずナチュラル以外の人間(異星人との混血児やナノマシン手術を受けた人達)を差別した為彼にも呆れ返られ、「ガキ」呼ばわりされて一蹴されてしまう。
- アレンビー・ビアズリー
- Jでは原作におけるウォンに代わり、彼女を操る。
- 東方不敗マスター・アジア
- Jでは彼と手を組み、デビルガンダムを手に入れようとしていた。丁度原作におけるウォンの役回りであるが、奇しくもウォンと同じように彼を「イカレている」と評している(アズラエル自身も充分にイカレているような気がしないでもないが)。
- リリーナ・ドーリアン
- 第3次αでは中盤にアラスカにて彼女と会談を行い、ブルーコスモスへの協力を迫るも、当然拒否されると共に、武力行使で脅迫を試みるも万丈によって彼女を救出される。
- デキム・バートン
- Wでは密かに彼と結託しており、共にコーディネイターの排除を目論んでいた。
- 叢雲劾
- 脱走した連合軍の戦闘用コーディネイター。自らやプレア、カナード、生体CPUのような悲劇を繰り返さないためにアズラエルの命を狙う。Wでは終盤に彼に追い詰められる事に。
- アレハンドロ・コーナー
- CCでは協力関係にあり、オーブでの戦いの報を聞いた直後、自身の元を訪れていた彼からニュートロンジャマーキャンセラーのデータを提供される。
リアル系
- ブルーノ・J・グローバル
- 第3次αではアズラエル達にαナンバーズの戦力を渡さない為に、あえて彼らの太陽系追放の判決を下した彼の手腕を苦々しく思いながらも評価していた。
- ミスマル・コウイチロウ
- JやWでは対立関係にあり、Jでは一時彼を失脚に追いやった。
- アカツキ・ナガレ
- Jではアズラエルを説得しようとするが、結局は見限る。Wでは序盤に早々と彼に縁を切られてしまう。
- アンナ・ステファニー
- Jではコーディネイターだけでなく、ナチュラル以外の人間(異星人との混血児やナノマシン手術を受けた人達)をも差別する考え方を彼女に非難されてしまう。
- レナード・テスタロッサ
- Wでは彼を雇い、共に様々な陰謀を張り巡らせるが、アズラエルは物事を飄々とゲームのように楽しみ独自の行動を取る彼に懐疑の念を示す場面もあった。
- なお、彼もアズラエル同様に一見クールな大物を装っているが、その内面はアズラエルに負けず劣らずの惨めな小物に過ぎない。
スーパー系
- 三輪防人
- 第3次αにおける原作でのサザーランドの立ち位置を務める。第2次α終盤に失脚した彼を復帰させ、片腕としている。表向きはアズラエルに従うが、内心ではアズラエルに嘲笑された為敵愾心を抱く場面もあり、徐々に苛烈さを増していくアズラエルの暴挙に本気で辟易する場面も。
- コルベット
- J、Wにおける片腕で原作におけるサザーランドの立ち位置を務める。基本的にはアズラエルに忠実に従っているが、時には彼の無茶に振り回される事も。Wではアズラエルの巻き添えを喰らう形で落命してしまう。
- キール・ローレンツ
- 第3次αでは彼らゼーレと結託する(尤も、アズラエルは彼らの目的など知らず、仮に知っていたとしてもそれに賛同などしないだろうが)。彼らからEVAの鹵獲も命じられていた。アズラエルもゲンドウと同様に彼らを「老人達」呼ばわりしており、彼らに対して快い感情は抱いていなかったと思われる。
- サントス
- 第3次αでは直接関わる場面はないが、彼とも裏で繋がっていた様子である。
- 破嵐万丈、アラン・イゴール
- 第3次αでは連邦を蝕むブルーコスモスを探る中で、アズラエルの暗躍を追っていた。また、万丈に対しては「コーディネイターとメガノイドは同類である」という持論を否定されると共に、リリーナを救出される。
- 剛健一
- Jでは同じくコーディネイターだけでなく、ナチュラル以外の人間(異星人との混血児やナノマシン手術を受けた人達)をも差別する考え方をアンナと同様、彼にも非難されてしまう。
- 獅子王凱
- 第3次αでは声優繋がりの為か妙に彼に(というかその乗機に)過剰に敵対心を燃やす。
- Wでは直接対決は実現しないが、彼と同じ名前を持つ男と対峙する展開がある。
名台詞
- 「あー、もうダメダメです、そんなの。この戦力で攻めて制圧できなかった国なんて、消えてもらった方が後の為でしょう」
- 第39話より。オーブ攻防戦で、オーブから会談の要請がきていると言われて。
- (チィッ、役立たずどもめ!)
「お仕置きももう充分でしょうし、今度こそしっかり働いてもらわないと、デモンストレーションにもなりゃしない」 - フリーダム&ジャスティス戦で投薬切れを起こし、戦果を挙げられずに撤退したオルガ、クロト、シャニらブーステッドマンに対する感想。
- このように彼等に対しては、自分と同じナチュラルであるにも関わらず、始終モノ扱いで接している(もっとも、これはアズラエルに限らずブルーコスモス側の人間に多く見られる問題点である)。
- 「どうして僕をコーディネイターにしてくれなかったの!」
- 幼少期に、コーディネイターとの喧嘩に勝てなかったアズラエルが母親に叫んだ台詞。コーディネイターに対する根強いトラウマは、この当時からあった模様。
- 「もともと僕らは弱い生き物なんです。だから『強い牙を持つ生き物』はちゃんと繋いでおくか、退治しないと危ないですからねぇ」
- 第41話より。反コーディネイターの思想を正当化しようとした場面。『強い牙を持つ生き物』は言うまでもなくコーディネイターの事を指しているが、所詮は子供じみた弱者の屁理屈でしかない。
- 「あっはっはっはっ。どうするものかと聞いていたが、呆れますね艦長さん」
「言って解ればこの世に争いなんて無くなります。解らないから敵になるんでしょう?」
「そして、敵は討たねば!」 - 第43話より。かつての戦友だったマリューに降伏勧告するも拒否されたナタルを嘲笑して。
- 「言って解らない敵は躊躇せずに討つ」というアズラエルの思考がうかがえる台詞である(もっとも、アズラエルのこの言い分は正論ではあるのだが)。
- 「アハハハハ、ィいやったあああ!!」
- 第46話より。ニュートロンジャマーキャンセラーを入手し、異様にハイテンションになって放った言葉(表記はSEEDアニメコミックよりそのまま抜粋。ゲーム内では異なる)。
- 実際に聞けば分かるが、声優の名演(というか怪演?)も相まって凄く嬉しそうである。これらの名台詞により、ネット上では『盟主王』、『僕らの盟主様』などと呼ばれ、非常に親しまれている。
- 「核は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃない。強力な兵器なんですよ」
「兵器は使わなきゃ…。高い金をかけて造ったのは使うためでしょう」
「さ…さっさと撃って、さっさと終わらせて下さい、こんな戦争は」 - 第47話より。アズラエルの戦争や兵器への考え方が如実に出ている台詞の一つ。第3次αではアズラエルのこの台詞は、あの三輪長官も唖然とさせた。
- ちなみに兵器には見せて脅すという使い方もあるので、この発言は間違いとは言えないにしても、正しいとも言いがたい。(本編中でもアンドリュー・バルトフェルドがジェネシス発射後に指摘しているように、核(および原作アニメやゲームにおけるジェネシス)のような兵器の本来の存在価値は、相手国にその保有を見せる事で自国への攻撃、侵攻を断念させたり、降伏させるという『戦争の抑止』である。もっとも、「作ったら使いたくなる」のが人間というものであり…)
- 余談だが、後年あるロボットアニメにて、アズラエル同様に檜山氏が演じた悪役キャラが、このアズラエルの台詞と似た事を言っている。
- 「勝ち目のない戦いに『死んでこい』って自分の部下を送る人達より、僕の方がよっぽど優しいと思うけど?」
- 核を使用した事に批判的な発言をしたナタルに対し、アズラエルが言った言葉。 アズラエルが正しい、優しいのかはともかく、ナチュラルとコーディネイターの戦争で、ナチュラル側が圧倒的不利で犠牲が多いのは事実で、もはや奇麗事を云々言っていられないのも、確かと言える。この為か、言われたナタルも何も反論出来なくなった。
- 「あそこに!! あんなもの残していくわけにはいかないんだよ! 何がナチュラルの野蛮な核だ…! あそこからでも地球を撃てる奴らのこのとんでもない兵器の方がはるかに野蛮じゃないか! そしてもう、いつその照準が地球に向けられるかわからないんだぞ! 撃たれてからじゃ遅い…!」
「無茶でも何でも絶対に破壊してもらう! あれとプラントを…地球が撃たれる前に!」 - 第48話より。ジェネシスの発射に怒って。悪役の台詞ではあるが、なかなか熱血な台詞。また、地球が危機的な状態にある事を一応は理解している模様。
- 尤も、自分が核攻撃を仕掛けた事でジェネシスを使用させる口実を与えてしまったとは認識していないようである(ジェネシスの存在は発射の直前まで隠蔽されていてアズラエルにも予想外のことではあったが)。
- 「自軍の被害は最小限に! そして敵には最大の被害…戦争ってのはそうやるもんだろ!」
- 第49話より。言っている事自体は戦争の進め方としては当然の事であり、一般兵にしてみればアズラエル側で闘っていれば命を落とす確率も減るわけで、そういう点ではジェネシスの射線上にまだ自軍がいるのも構わず発射を急がせたパトリック・ザラとは対照的である。
- 尤も、繰り返すが、アズラエルが本当に優しいかどうかは、また別の話である。
- 「僕は勝つんだ…そうさ、いつだって…!」
- アークエンジェルに向かってドミニオンのローエングリンで反撃しようとして。最後の最後まで、自身の敗北を認めようとせず、必死に抗おうとするが…。
- 「うおあああああああああ!!」
- 断末魔。最期はアークエンジェルより放たれたローエングリンの光に飲まれ、アズラエルは宇宙の屑となった。
スパロボシリーズの名台詞
戦闘台詞
- 「あのライオンロボ……なんとなく、気に入りませんね」
「あのライオンロボをなんとかしろよ!」 - 第3次αでジェネシックガオガイガーに対して発生する特殊戦闘台詞。言うまでもなく声優ネタである。
- 「何か私情が入ってませんか?」
「そうですか? 貴女ならよくわかるのでは…」 - Jにおける対ナデシコ時の台詞。ナタルの声優ネタの混じった言動に時にはクールに、時には呆れながらつっこむ。第3次αにおける対ジェネシックガオガイガー戦におけるナタルとのやり取りとは逆のポジションなのもポイント。
αシリーズ
- 「でも、あの異星人と地底人達、僕達には攻撃を仕掛ける気がないようです」
「これはチャンスですよ。奴らの力を利用して、オーブを叩き、αナンバーズを服従させましょう」 - 第3次αでオーブを襲撃したシナリオにてムゲ・ゾルバドス帝国と地底帝国が乱入した際、αナンバーズに協力してそれらを撃退するようシナプスに進言されるも、当のアズラエルは彼の進言に耳を貸さずに漁夫の利を狙おうとした。当然、シナプスは激怒し…
- 「僕はね…! 彼らの戦力を手に入れろと君達に命じたはずだよ!」
「確かに邪魔者は消えたさ。でも、これじゃあ僕の目的は半分しか達せられないじゃあないか!」 - 第3次αの中盤、αナンバーズを太陽系追放に追い込んだものの、戦力を手に入れられなかった事で三輪の不手際を責め立てる。キレ方が玩具を買って貰えずに駄々をこねる子供のようにも見え、彼の普段の紳士的な面の裏に隠された幼児性が垣間見える場面である。
- 「あの議長…大した策略家だよ。こちらの意図を読んで、奴らを手の届かない所へ送り込むとは…!」
(加えて、あの人造人間が手に入らなかったことを知れば、老人達も黙っていないだろう…) - 前述の遣り取りの後、苦々しく思いながらもグローバルの手腕を評価した。なお、ここで彼が言っている「人造人間」とはエヴァンゲリオンの事であり、「老人達」とは言うまでもなく同作においてブルーコスモスを裏から操る黒幕・ゼーレの事である。
- 「その言葉、君の経歴を見る限り、信じていいものか疑わしいね…」
- 上記の台詞の直後、「αナンバーズの戦力がなくても連邦軍の総力を挙げて異星人もコーディネイターも打ち破ってみせましょう」と意気込む三輪長官を嘲笑して。この嘲笑には、流石に三輪長官も内心腹立たしく思っていた。
- 「…まだ自分の立場がわかってないのかい? 君はね…僕の言う通りに動いていさえすればいいんだよ…」
- 上記の台詞の後、連邦軍の今後の方針を一人で勝手に決めて、ナタルを連れて出撃しようとした際、三輪長官に行動方針に疑念を問われた際の返事。なんとも高飛車で傲慢な返事である。同じく傲慢である三輪長官も、このアズラエルの態度には面食らい、呆然とするしかなかった。
- 「敵に確実にダメージを与えたいときには、精神コマンドの熱血と必中を使いましょう」
「勇気などという不確かなものに頼っていてはいつか敗北しますよ」 - 同じく第3次αにて中断メッセージの台詞。これも声優ネタな上、直後にナタルに勇気が精神コマンドにあることに突っ込まれている。
- しかも勇気の効果には直前に本人がアドバイスしていた熱血と必中が含まれているわけで……。
携帯機シリーズ
- 「さすがオーブの獅子王なんて言われるウズミ・ナラ・アスハ。期待通りですね。いやお見事」
- Jにてオーブ侵攻の際に。確かにウズミは「オーブの獅子」と呼ばれてはいるが、わざわざ「獅子王」と言っちゃう辺り、思わずニヤリとくる台詞。勿論、Jには参戦していないあれを意識した台詞。
- コルベット「ただ見ているだけで良いのですかな?」
「たまには楽させてもらいましょうよ。あの爺さんには何の義理もないんだし」
コルベット「しかし、うまく挟撃できれば」
「あ~もう、めんどくさいことはごめんです。それに元々あれは、僕のオモチャですからね」
コルベット「オモチャ」
「青き清浄なる世界のために、地球と人類にやさしいバケモノって奴です。あの爺さんから、そろそろ譲ってもらいたいと思っていたところでしてね」 - J41話にて、特務分艦隊と東方不敗の決戦を傍観しながら。原作におけるウォン・ユンファを意識した台詞回しである。
- 「あの爺ィがあそこまでイカれてるなんて、考えませんよ普通!おかげで一年がかりの仕込みがパァだ!」
コルベット「どうします、今攻撃すれば、敵は疲弊しているはずですが」
「腹いせに、ですか。勝手に何でもしてください、僕は寝ます!」 - Jにて、デビルガンダムを破壊された際のコルベットとのやり取り。不貞腐れて不貞寝を決め込んでしまう。これにはコルベットも少々呆れ顔だった。
- 「何が引き際だ! 言っておくけどな、君みたいにナノマシン手術を受けた火星の連中も、僕から見ればコーディネイターと変わらないんだ!」
「黙れ! 地球で生まれて育った者が、青く美しい世界を守る、それがブルーコスモスの理想なんだ! 君や、宇宙人の血が混じった奴らじゃない!」 - Jの終盤でアカツキに説得された時の反論。アカツキのような火星の人間だけでなく、エイジのような異星人の混血児までもコーディネイターと同類であると言い放った。当然、それに当てはまる相手とその仲間の怒りを買ってしまう。挙句にドモンからはガキ呼ばわりされて一蹴され、アカツキからも完全に愛想を尽かされてしまう。
- 「…今、なんて言った…?」
「…その言葉を言ったことを後悔するぞ…!」 - 上述でドモンにガキ呼ばわりされた時の反応。喜怒哀楽を激しく表す事の多いアズラエルにしては珍しく、静かに怒りを露にしている。
- 「ああ! 勝利の鍵が!」
- Wでフレイをノイ・ヴェルターに救出されてしまった時の台詞。もちろんこれも言うまでも無く『ガオガイガー』に因んだ声優ネタである。
- 「じゅ、銃が…!? 何者だ、お前は!!」
- Wにて、ナタルを銃撃し、銃を構えたままノイ・ヴェルターの殲滅命令を下そうとした際、劾の銃撃によって銃を弾き飛ばされて。ご丁寧に劾はこのアズラエルの台詞に対し、「お前に名乗る名はない」と返してくれる。言うまでもなく、このやり取りには劾と同じ声の某兄さんのお約束の口上展開のパロディである。
- 「網膜の管理コード…お前は…まさか戦闘用の…」
- Wにて、劾に正体を問い質した際、彼がサングラスを外して己の正体を仄めかし、彼の正体を察して。直後、彼に怒りに満ちた眼差しと共に威嚇射撃を向けられ、恐怖の余りに完全に怯み上がってしまう。その無様さに、劾はアズラエルを「引き金を引く価値のない男」と断ずる。
- 「待てよ、お前ーっ! 戦えよ! それでも軍人か!!」
「待てよ! 待ってくれよ! 僕は…僕はあいつらを…コーディネイターを!!」
「くそっ…くそーっ!! 僕をおいていくなああああああっ!!」 - アズラエルを自分が撃つに値しない男と断じた劾は、ドミニオンの乗員に脱出を促す。アズラエルは自分を見捨てて脱出していく乗員達、そして劾に連れられて脱出するナタルに激怒するが、劾に痛烈な皮肉を浴びせられ、ナタルにも「あなたはここで死すべき人だ」と言われてしまい、とうとう一人ドミニオンの艦内に取り残されてしまう。一人で喚き続けるその姿は、実に無様で哀れなものである。この後、彼はコルベット共々自滅同然の最期を迎える事となった。
余談
- ムルタ・アズラエルは悪役ではあるものの良くも悪くも熱血漢であり、台詞の面白さや特徴的なキャラクター故にファンからの人気も高く意外と愛されている。このため、檜山氏が演じた『勇者王ガオガイガー』の主人公である獅子王凱の愛称『勇者王』を文字って『盟主王』の愛称で親しまれている。
- さらに、檜山氏にとってもアズラエルはお気に入りの役であり、『自分の演じた代表的な悪役キャラ』あるいは(檜山氏自身が『ヒーロー役の集大成』と評する獅子王凱と対比して)『悪役の集大成』と評している。
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