デラーズ・フリート

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デラーズ・フリート(Delaz Fleet)とは、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する組織。「デラーズ紛争」を起こした組織である。

概要

エギーユ・デラーズを領袖とするジオン軍の残党。規模は、戦闘艦40余隻+シーマ・ガラハウ配下の8隻。モビルスーツも多く保有。

宇宙世紀0079年の一年戦争の終盤となるア・バオア・クー攻防戦において、公国軍大佐兼グワデン艦長として参加していたエギーユ・デラーズは、ギレン・ザビ戦死の報告によりジオン公国の敗北を悟り、アナベル・ガトーと共に残存艦隊の一部を引き連れて戦場から離脱した。その後、「茨の園」と呼ばれるサイド5にある暗礁宙域に潜み、雌伏の時を過ごす事になり、それと同時に地球の各地で抵抗活動を続けるジオンの残党軍に秘かな支援も行っている。

「星の屑作戦」 

3年後の宇宙世紀0083年、連邦軍がアナハイム・エレクトロニクスとの共同で秘密裏に行っていたガンダム開発計画の情報を入手したデラーズは、開発されていた試作型モビルスーツの中にある、戦術核の使用を前提としたガンダム試作2号機の存在に着目。決起の時と見た結果、自らの率いる部隊・デラーズ・フリートによる連邦に対する一大反抗作戦である「星の屑作戦」を練り上げる事になる。

星の屑作戦の内容が具体的に定まった後、デラーズの命によって地球に降下したガトーは、残存している地球のジオン勢力と連携する形で、連邦軍のオーストラリアトリントン基地に潜入。ガンダム試作2号機と装填されていた核弾頭の強奪に成功して追撃を逃げ切り、アフリカのダイヤモンド鉱山を改修した基地にまで到着した後、残存していたHLVを用いて宇宙へと上がる。

その後、デラーズによる核弾頭の使用可能なガンダム試作2号機を開発した連邦への糾弾とデラーズ・フリートの地球連邦に対する宣戦布告の演説が行われ、コンペイトウ湾内にて行われた連邦軍の観艦式の日、ガトーの試作2号機が襲撃。核弾頭を発射する武器であるアトミック・バズーカを用いて、最新鋭艦バーミンガムを旗艦とした艦隊を壊滅状態に追いやった。その後、試作2号機は、追撃して来たアルビオン隊ガンダム試作1号機Fbとの戦闘で大破したが、この襲撃も囮に等しいものであり、作戦の本当の目的は、コロニー公社によって管理されていた廃棄コロニーを用いた地球へのコロニー落としにあった。

見せかけとして、コロニーはまずの方角へと向かい、連邦艦隊がその追撃を行っていたのだが、月にコロニーが落ちるのを恐れたフォン・ブラウン側が強硬的にレーザーでコロニーの推進剤を点火させてしまい、進路を変えたコロニーは月へ落ちなかったものの、デラーズ・フリート側の目論見通り、コロニーは地球へと進路を変更。結果的にコロニー落としの阻止を邪魔された連邦艦隊側は、燃料切れによって、地球までへの追撃が出来なくなってしまった。

月方面での混乱後、デラーズ・フリートは総力を挙げてコロニー落としの作戦を成功させようとするのだが、最終段階に差し掛かった所で、過去の所業を理由にアクシズから合流の拒絶をされていたシーマ・ガラハウ率いるシーマ艦隊が造反。連邦の上層部と内通していたシーマによってデラーズは射殺され、指導者を失ったデラーズ・フリートは連邦軍とシーマ艦隊の同盟軍との混戦状態となってしまうが、防衛線を張っていた連邦艦隊側のコロニー破壊作戦は失敗し、コロニーは地球へと落下した。

星の屑作戦の完遂後、デラーズ・フリートの残存勢力は、撤退する為にアクシズ艦隊と合流しようとしたのだが、連邦側からの圧力を掛けられたその艦隊には見捨てられてしまう事になり、最終的に残存勢力は、地球へコロニーを落とされた事への怒りを爆発させた連邦側の猛追撃によって殆どが壊滅。デラーズと協力関係にあったアナベル・ガトーも、大破寸前にあったノイエ・ジールによる特攻で、連邦軍の戦艦と刺し違える形で戦死する末路となった。

真意と結果 

デラーズが地球へコロニー落としを行おうとした目的の真意は「北米の穀倉地帯を壊滅に追いやる事で、コロニーへの食糧依存度を高め、コロニー側の発言権を高める」という意図があった。

だが、実際はガトーを始めとした一年戦争への参加経験のあるジオンのベテラン兵士や優秀な兵器を失っただけに留まらず、地球はデラーズの思い通りになるどころか、連邦軍のタカ派の発言権やその発言の説得力、アースノイド達のスペースノイドへの怒りや憎しみや恨みをかつてないまでに高めてしまう結果になった。その上、「スペースノイドに対して苛烈な弾圧行うティターンズの結成へと繋がってしまい、かえって同胞たるスペースノイドの立場が一層苦しくなる事になってしまった」のはあまりにも本末転倒な結末であった。

なお、デラーズ・フリートが星の屑作戦で行った功績が、後にジオンそのものを全面的に否定していると言っても良い人物であるフル・フロンタルによって、サイド共栄圏の構想に利用される事になったのもまた、皮肉と言わざるを得ない。

総評

はっきり言って、ジオン勢力の中でもデラーズ・フリートは賛否両論の激しい勢力となっている。各考察掲示板でもデラーズ・フリートを話題に出すと、大抵喧嘩に発展するため、取り扱いには注意が必要となるほど。

『機動戦士ガンダム0083』のストーリーが展開されていた当時、ガンダムシリーズ全体における悪役側であったジオン側は、判官贔屓的な支持を受けており、デラーズやガトーを始めとするデラーズ・フリートもまた、組織的腐敗が強調されている連邦側とは対照的に、全体的な士気の高さや作戦成就に殉じようとする姿等から「憂国の士」という形で美化されていて好意的な評価が大半だった。特に、アナベル・ガトーの生き様に対しては、熱烈な支持が集中しており、SRWの旧シリーズでは、思想的にまず相容れないとしか言い様の無い連邦であるプレイヤー側の仲間になるといった、異例とも言える展開もあった。

しかし、現実世界における20世紀末・21世紀初頭で起きた数々の凶悪なテロ事件等の影響で、民間人や社会秩序へのテロに対する脅威とその信奉者達の恐ろしさが明確になり、現在ではデラーズ・フリート全体に関して批判・否定的な評価も目立つ様になっている。

故に、『0083』という作品そのものに対して厳しい評価をされる事も有るが、そもそも先述の「デラーズ・フリートの所為でティターンズが結成される」という結末[1]等からして、制作側がデラーズ・フリートの行為を正当化していない事は明白である。また、『0083』の小説版および漫画版では、主人公であるコウ・ウラキ等がデラーズ・フリートの所業を明確に非難する場面が追加されていたり、一部作品ではジオン側からも「同胞を見捨てて勝手に戦線離脱した卑怯者たち」と嫌悪感を持たれている描写がある。

漫画『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』では、グリーン・ワイアット大将(SRW未登場)から「一年戦争の敗北を受け入れられずに宇宙を徘徊していた連中」と喝破され、実際デラーズやガトーの言動から見ても完全に的を得ている発言といえる。

登場作品

SRWでは大抵は現役時代のジオン軍ネオ・ジオンに人員が編入されているケースが殆どで、デラーズ・フリート単体として活動する事は稀。

携帯機シリーズ

スーパーロボット大戦A
原作に忠実な扱いで、シャア・アズナブル黒い三連星などのファースト勢も従えるが、敵組織としては早く壊滅する。ただしガトーや黒い三連星など一部のパイロットはネオ・ジオンアクシズ)の一員として終盤にも登場する。
同作では彼らが結成の一因となったはずのティターンズは、「星の屑作戦が開始される以前に壊滅してしまっている」という、原作からすれば矛盾した設定となってしまっている
なお、コロニー落としの際に自軍部隊から「連邦の締めつけが酷くなるだけだ」と反論されるが、彼等はその意見に対して、「そうなれば、コロニーの反発を買うだけだ」とタカ派らしい返答をしている。

人物

エギーユ・デラーズ
指導者。
アナベル・ガトー
デラーズの説得で参加。
シーマ・ガラハウ
武装蜂起後に参入。

所属兵器

ガンダム試作2号機
核弾頭搭載の重MS。元々は連邦軍のMSであったが、ガトーが核弾頭ごと強奪し、デラーズ所属MSとなった。
ノイエ・ジール
アクシズが開発したモビルアーマーアクシズから譲渡され、試作2号機を失ったガトーが搭乗。
ザクIIF2型
一般兵用、指揮官用、ビッター隊用、ビッター用が登場。
リック・ドムII
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』にも登場したリック・ドムの改良発展型。カリウスジオン兵が搭乗。
ゲルググM
Mはマリーネ(海兵隊)のM。シーマ専用機は小豆色。
ドラッツェ
ザクIIの上半身にガトル戦闘爆撃機のスラスターを足部分に組み合わせて製造された機体。性能は低いが加速性能だけはリック・ドムに匹敵する。
ザメル
長距離支援用の機体。
ガーベラ・テトラ
元々はGP04ガーベラとして開発されていたものを、アナハイム社と裏取引をして、シーマに譲渡された機体。
ヴァル・ヴァロ
一年戦争時代に開発されていたMAケリィ・レズナーから接収しようとしたが…。
グワジン級大型戦艦6番艦『グワデン
旗艦。
ムサイ級後期型軽巡洋艦

関連用語

アクシズ
同じくジオン残党を祖とする組織。星の屑作戦終了後の残存兵の救出を依頼している。
星の屑作戦
ジオン軍残党のデラーズ・フリートにより決行された大規模作戦。

余談 

  • 「フリート」とは英語で「艦隊」を意味する単語で、名前を直訳すると「デラーズ艦隊」となる。

脚注

  1. このティターンズの結成シーンは(デラーズ・フリート側の視点で見たら)、「ガンダムシリーズの生みの親」である富野由悠季監督の初期作品で見かける「勧善懲悪の構造の逆転と相対化」の場面と評する事もできる。

資料リンク