木星帝国
木星帝国(ジュピター・エンパイア/Jupiter Empire[1])とは、『機動戦士クロスボーン・ガンダム』に登場する勢力。
概要
本来は「木星公社」と呼ばれる組織で、木星運営を地球連邦政府に任されていた。ところが、後に指導者となるクラックス・ドゥガチは長年の木星生活の中で連邦政府に激しい憎悪を抱くようになっており、やがて彼が立ち上げたのが「木星帝国」と呼ばれる秘密組織である。
地球からかなり離れた木星圏だけあって困窮しており、空気や水といった生活に必需な資源ですら自ら生み出さねばならず(バーンズ・ガーンズバックの息子は水素採取基地の事故で命を落とした)、物資は配給制となっている。また、人々の手の甲にナンバーが刻まれており、身分の違いにも厳格である。軍階級の各名称は地球連邦軍と同様の模様だが、首魁のドゥガチ、及び、その後継のカリスト兄弟は「総統」を称している。
困窮していながらも兵力を集め、核兵器や毒ガスなどの非人道兵器を密輸、地球各地に破壊工作員を潜り込ませるなど準備を整えていった。そして親善と称してドゥガチがジュピトリス9で地球を訪れた際に、突如宣戦布告する。地球連邦軍は木星帝国の破壊工作等によりほぼ無力化され、ハリソン・マディンら一部の隊が何とか対応する苦しい状況に陥ったが、クロスボーン・バンガードの活躍や、事態を静観すると予想していたコロニー連合軍の参入もあり、木星帝国軍は駆逐された。
だが、外伝『スカルハート』では残党が未だに活動している姿が描かれた。さらに続編『鋼鉄の7人』では、木星本隊の部隊が新総統である光のカリスト・影のカリストの両兄弟に率いられ、ドゥガチが自身の寿命の関係で見送ったコロニーレーザー「シンヴァツ」を用いて木星圏から地球を狙撃する「神(ゼウス)の雷計画」を目論んだ。
神の雷事件でカリスト兄弟の体制が崩壊した後は穏健派が実権を握り、テテニス・ドゥガチの元で民主化されて「木星共和国」「ユピテル財団」に再編された。
基本的に資源や人材に乏しいため、MS開発技術(特に汎用機用ノウハウ)は当時の地球圏のそれに劣っており、鹵獲したクロスボーン・ガンダムX2の欠損したコアファイター部を再現することが出来ずX2改は事実上改悪とも呼べる改造となってしまっている。しかしその後の『鋼鉄の7人』の時代以降は技術的に追いついた様で、アマクサや様々なMSの技術を統合、アレンジする事でコルニグス(SRW未登場)等ガンダムを上回る性能のMS開発に成功している[2]。
なお木星帝国製の機体は時代が進んでも外見や機能が一点特化のゲテモノ系が多い。これは地球圏から遠く離れた地上が無いという特殊な環境に起因しており、人型でないどころか場合によっては地上用に開発されたにも関わらず、運用する際に重力のかかる方向について考慮していないという重大な欠点がある機体も見受けられた。
そんな機体を制御する木星帝国製のOSは地球圏で使われているOSとは互換性が無く、地球製MSに入れた場合機体に直接関わる程の被害の大きい不具合を発生させる事が『鋼鉄の7人』で明かされており、その続編の『ゴースト』でもその問題を解決するため地球圏と木星帝国の二つのOSを使っているMSが登場している。
登場作品
αシリーズ
- スーパーロボット大戦α
- 『クロスボーン』は参戦していないが、シーブック・アノーがジュピトリアンの事を「木星帝国」と評する場面がある。いま見れば伏線としか思えない場面だが、『クロスボーン』参戦の前振りというわけではない[3]。
- 第2次スーパーロボット大戦α
- 初登場作品。行動自体は原作通りで、シャア・アズナブル率いるネオ・ジオンと連合を組む。ハマーン拒絶ルートでは最後までシャアに協力。受け入れた場合は単独で地球破壊を敢行する。
- ドレル・ロナとジレ・クリューガーが帝国に参加、ラフレシアがカロッゾ・ロナの亡霊として出現する、『F91』の設定でのみ存在したサウザンスジュピターの登場、などなど『F91』の要素がふんだんに盛り込まれている。
- ところで、続編『第3次α』では、木星近辺で機界31原種との大規模な戦闘が勃発したり(しかも本作のアイビス編で訪れたイオがZX-16へと変貌する)、木星がブラックホール爆弾にされたりするのだが、ドゥガチ亡き後の木星帝国がどうなったのかは一切語られない。少なくとも、「神の雷計画」どころではなくなったのは間違いないだろう。
VXT三部作
- スーパーロボット大戦V
- 『第2次α』から約14年ぶりの登場。『スカルハート』以降の時系列であるため壊滅しているが、残党が大ガミラス帝星に降っている。
- スーパーロボット大戦T
- 『クロスボーン』直後ないし『スカルハート』以降の時系列。ドゥガチの死後もベルナデットからの停戦の呼びかけを聞き入れず、火星の後継者そしてネオ・ジオンと手を組んでいる。なお、過去に木連とは一度は袂を分けており、残党同士が手を組んだことに驚かれる描写がある。
所属人物
- クラックス・ドゥガチ
- 木星帝国の指導者。
- ザビーネ・シャル
- クロスボーン・バンガードのエースパイロットだったが、貴族主義を盲信するあまり、木星帝国に寝返った。
- カラス
- トビア・アロナクスの留学生時代の恩師だったが、その正体は木星帝国の特殊工作員。自身の教え子達が所属するニュータイプ部隊の教官も務めている。
- ギリ・ガデューカ・アスピス
- 死の旋風隊のリーダーを務める少年。カラスのニュータイプ部隊の中でも優秀な素質を持ち、木星帝国の次期総統の有力候補として様々な英才教育が施されている。
- バーンズ・ガーンズバック
- 死の旋風隊のメンバー。トビアに亡き息子の面影を見出だす。
- ローズマリー・ラズベリー
- 死の旋風隊のメンバー。元傭兵で、金銭的な保証がある方につく。
- ニュータイプ部隊
- カラス率いるニュータイプ部隊の兵士達。原作終盤では量産型クァバーゼに搭乗し、教官のカラスと共にトビアのクロスボーン・ガンダムX3に襲い掛かるが、ほとんどが瞬く間に撃墜される。辛うじて残った1機も、カラスの信念に反する行為をしたためにカラスの手により撃墜される。
- 『第2次α』では通常の木星帝国兵のグラフィックが流用されたNT兵が登場するが、特殊技能が強化人間になっている。もちろんニュータイプ部隊は全員れっきとしたニュータイプで、作中では木星帝国の人員に強化人間がいる描写はなかった。
保有戦力
モビルスーツ
- クロスボーン・ガンダムX2(改)
- 本来はクロスボーン・バンガードの機体だったが、ザビーネが寝返ったため木星帝国の機体となった。コアファイターがトビアに奪還された後には、X2本体を木星帝国が回収し、欠損したコアファイターの部分を改造して「X2改」となる。
- アマクサ
- クロスボーン・ガンダムX2を基に開発された人工頭脳用MS。アムロ・レイの戦闘データから作り出したバイオ脳を搭載した。
- バタラ
- 木星帝国の主力機。
- ペズ・バタラ
- エレバド
- クァバーゼ
- 原作終盤では量産化されたクァバーゼも登場するが、そちらはSRW未登場。
- アビジョ
- トトゥガ
- ディオナ
- バタラを改修した機体で、背部にシェルフ・ノズルを4基装備。基本性能はエレバドと同程度で、ビームライフル以外の武装は不明。式典用としての色合いが強く、本機の顔は女性のそれを模している。この顔はあくまでレリーフであり、メインカメラなどのセンサー類は帽子に当たる部分に搭載。エレゴレラの随伴機として木星軍のニュータイプ部隊が搭乗しており、マザー・バンガードへの攻撃に向かう途中でトビア・アロナクスのクロスボーン・ガンダムX3と遭遇し、交戦している。元々「宣伝」を目的とした部隊であったため、碌に戦わないまま下がった。続編の『鋼鉄の7人』では本機の改良型であるアンヘル・ディオナが登場している。
- コミック5巻の著者紹介によると、長谷川氏曰くアテナ像をモチーフにしたものらしいが、編集長からはダイエーホークス(おそらくマスコットキャラクターのホークスファミリーの面々)と思われたらしい。
- 『第2次α』にて、エレゴレラにヒートナギナタを手渡す際に一瞬だけ登場する。現在これが唯一のスパロボ登場となっている。
モビルアーマー
- カングリジョ
- シンプルな構造と生産性を重視した量産型モビルアーマー。
- エレゴレラ
- 完全自律型の試作可変モビルアーマー。作中ではドゥガチのバイオ脳の一体が運用した。
- ノーティラス
- 木星帝国初期のモビルアーマー。旧式だが、カラス個人の趣味で改良を重ねられており自身の愛機としている。特徴的な武装として自身も多用するワイヤーによる攻撃を得意とする。
- ディビニダド
- 木星帝国の切り札である超大型モビルアーマー。両腕の大型クロー、頭部に装備されたメガ粒子砲や多数の核弾頭ミサイルにより高い火力を誇る。この手のモビルアーマーの致命的な弱点である接近戦に関しては、背部コンテナに大量に搭載されたサイコミュ誘導兵器「フェザーファンネル」である程度克服している。
戦艦
- ジュピトリス9
- 木星帝国の旗艦。巨大な船体を誇る。
- サウザンスジュピター
- 『F91』の設定でのみ存在する。『第2次α』では出典が『クロスボーン・ガンダム』扱い。
以下は『第2次α』にて帝国の兵器として登場する旧クロスボーン・バンガードの戦力。当然『クロスボーン・ガンダム』には登場しない。
関連用語
余談
- 第1話で「少しずつ毒ガスを地球圏に運び込んでいた」という趣旨のカラスの台詞があるが、これ以降木星帝国は毒ガスを使用していない。物語連載時の1995年、現実に毒ガスを使ったテロ事件が起きたため変更の必要があったのではないか、という説もあるが定かではない。また、続編の『ゴースト』では「極めて危険性の高い細菌兵器」が物語の鍵の1つになっている。
脚注
資料リンク
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