「フル・フロンタル」の版間の差分

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2017年4月1日 (土) 22:53時点における版

フル・フロンタル
外国語表記 Full Frontal
登場作品

ガンダムシリーズ

声優 池田秀一
異名 シャアの再来
種族 地球人(スペースノイド強化人間
性別
所属 ネオ・ジオン袖付き
役職 首魁
軍階級 大佐
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概要

ネオ・ジオンの残党を糾合した組織、通称「袖付き」の首魁を務める謎の仮面の男。「丸裸」を意味するその名とは裏腹に、真意を容易につかませない謎めいた言動と行動でバナージ達を翻弄する。

一年戦争時におけるシャア・アズナブルを彷彿とさせる外見や声を持ち、「シャアの再来」と呼ばれている。仮面の下の素顔もシャアに酷似しており、額には一年戦争末期においてアムロ・レイとの死闘で負った傷と同じものがある。

かつての指導者であったシャアが戦闘中に行方不明となり、ジオン独立の理想が消えつつあったネオ・ジオンの残党兵達にとっては、シャアの生き写しのような彼は希望の象徴ともいえる存在になっており、絶大なカリスマ性を発揮している。

また、モビルスーツのパイロットとしての能力や技術も非常に優秀であり、アナハイム・エレクトロニクスとの裏取引で奪取した、サイコフレーム搭載機である真紅のMSシナンジュを駆る。

地球連邦の存続事態を脅かし得る程の強大な「力」を持った「ラプラスの箱」やその鍵を握るユニコーンガンダムを巡り、バナージ・リンクスロンド・ベルと激突を繰り返す事になるが、箱の利用方針に関しては、ザビ家の遺児でシャアの忘れ形見とも言えるオードリー・バーンミネバ・ラオ・ザビ)と対立している。

謎めいた言動の多い掴み所の無い人物で、時には味方にとっても理解しきれない部分を見せる事がある一方、シャア本人にしか知りえない独白や経験を知っている節を見せる事もある。しかしフロンタルはシャアを「敗北した人間」と冷たく見下すなど自身との同一性を否定しており、自身を「宇宙民の意志を受け入れる『器』」と称している。また、仮面で素顔を隠しているのも、フロンタル本人曰く「ファッションのようなもの」に過ぎないらしく、バナージの依頼であっさりと外したこともある。

人格的にどこか青臭さや未熟さを残したシャアと異なり遙かに強かな性格で、大人であるということを平然と武器にしてくる。いわば、シャアから人間的な部分を全て取り去った「赤い彗星という機械」、とも見られる。

フロンタルの目的は、地球の経済活動が宇宙居住民の生産活動に依存している点を逆手に取り、宇宙で唯一自治権を有するジオン共和国主導の下で月と7つのサイドを中心として、地球を排除した経済圏を作り上げる「サイド共栄圏」の確立と、これによる地球連邦の孤立と衰退である。ラプラスの箱を求めるのも、サイド共栄圏構想を実現させるべく、「箱」を連邦政府との交渉材料にしてジオン共和国の自治権返還を延期させ、共栄圏実現までの時間稼ぎをするためであった。

しかし、その理想を語る姿はバナージ曰く「他人事のような」どこか冷めた印象を与えており、また本物のシャアを実の父親の様に慕っているオードリー(ミネバ)からは、ネオ・ジオンの民達が望むならシャアを演じようとする姿勢に対し「空っぽな人間」とまで嫌悪され、サイド共栄圏構想についても、結局は強引にアースノイドとスペースノイドの立場を逆転させるだけで、人類の革新を願ったジオン・ズム・ダイクンの理想(ジオニズム)や、アクシズ落としという凶行に走ってでも人類を宇宙へ上げて地球から自立させようとしたシャアの思想(エレズム)とは程遠い物であると酷評されている。これは、フロンタル自身が「人類はどうやっても、もはや変わることはない」と諦観しているためであり、「人類はどんな手を使ってでもニュータイプにならねばならない」としたシャアの思想とは真反対である。そのため、「人は変われる、分かり合える」と叫び続けるバナージの理想を、「人類に叶いもしない希望を与える存在」として危険視している。

その役回りや立ち位置は、他作品に散見される「シャアのコピー」ではなく、むしろその逆、シャアを演じることで彼の考えや理想と、逆説的にそのライバルたるアムロや自身の宿敵たるバナージをも全否定する、いわば「シャアの負の鏡像」でも言うべき存在。シャアは人類に絶望しつつもどこかで人の革新を諦めきれなかったのに対し、フロンタルは最初からそれらの可能性を完全に否定し「虚しいだけ」と断じる、虚無的といえるほどのリアリストであるという点で対照的である。また、シャアのアクシズ落としの動機の一つは「アムロと決着をつけたい」という私情であったが、フロンタルはこのような個人的動機を一切持っているようには見えず、「器は考えることはしません。注がれた人の総意に従って行動するだけ」と言い切る点でもまた対照的である

フロンタルの存在を一言で表現するなら「スペースノイドが理想として持つ『赤い彗星』像の体現」であり、本人もその理想に自らを合わせる形で振舞っている。

OVAの外伝作品『戦後の戦場』では、シナンジュの原型であるシナンジュ・スタイン強奪時における経緯が語られている。誰もフロンタルが戦う姿を見た事がなかった為に、当初はアンジェロや親衛隊からも本当に「赤い彗星の再来」と呼べる力を持っているのか疑念を抱かれていた。

そんな中、想定外の襲撃がありながらも[1]、赤く塗装されたギラ・ドーガでジェガン隊を翻弄しつつ、予め立てられていた予定通りにクラップ級宇宙巡洋艦「ウンカイ」へと取り付き、シナンジュ・スタインを強奪。更にはウンカイとそれに同行していたクラップ級であるラーデルスの2隻を共に撃沈し、これによってフロンタルは「赤い彗星」としての信頼を得るに至り、特にアンジェロからは「棄民の王」として崇拝されるまでに至っている。

その素性

原作小説版では、ジオン残党軍をひそかに支援していたジオン共和国のモナハン・バハロ国防大臣らが用意した(一年戦争時の)シャア・アズナブルを模して作り上げられた強化人間である。

“赤い彗星”という絶対的指導者を失った後のネオ・ジオン残党が数だけの烏合の衆となり始めたことを危惧した「袖付き」のスポンサーたちは、シャアに代わるカリスマとして「シャアのそっくりさん」を作って送り込んだというわけである。しかしフロンタルがどのような手法でシャアに似せて作られたか、つまりクローンなのか他人を整形手術や精神操作で似せて作ったかについては明言されていない。いずれにしても彼は連邦側からの完全独立を画策していたバハロ国防大臣らの操り人形であり(自身を『器』と称しているのも、そういった立場を意識してかもしれない)、外見や雰囲気をシャアに似せているのもプロパガンダの手段に過ぎない。

しかしフロンタルはシャア本人にしか知りえない独白や経験を知っていると思しき一面も見せており、当人は「アクシズ・ショックを経てもなお変わらなかった人類に絶望した、サイコフレームに宿るシャアの意思がその模写である自らに宿ったゆえである」と語っている。どういった経緯でシャアの思念が宿ったのか、またそもそも彼の主張の真偽も判然としないが、宿っているとしてもそれはシャアの思念の一部分でしかなく、しかしフロンタルはその背景からシャアとは全くの別人でもない。バナージ・リンクスがフロンタルの中に見た「虚無」の正体がまさにこれで、肉体を動かしているのはフロンタルでありながら、その根幹にあるのはシャアという別の人間の記憶や経験、という不協和音である。

OVA版においては、特にEP7で小説版と違う人物像になっている。行動自体は小説版と大きく違わないが、意思は明確にシャアそのものであるような描写がされており、また器と自称しながらも彼自身の意思で行動しているようにも見える。最終決戦でもバナージを説得することにこだわった結果、対話によって敗北するという結末を迎える。また、劇場限定版BD付録の脚本では、器であるフロンタルに本物のシャアの残留思念の一部が宿ったと明言されている。

なお、モナハン・バハロは登場せず、誰がフロンタルを作ったのか最後まで明らかにならないため、小説版の設定が残っているのかも不明であったが、後に外伝作品である『戦後の戦争』において、シナンジュ・スタインを奪取したフロンタルとアルベルト・ビストとの通信によるやり取りで、アルベルトからモナハンの名前が出ている為、原作と同様、フロンタルの裏にモナハンの存在があったのは確かなようである。

結末

ラプラスの箱を求めて立ち回ったことと、その行動の内容は小説・OVAともほぼ同じで、最終的にバナージに敗れ死亡するのも同じだが、その状況は大きく異なっている。

小説版ではメガラニカ内部で自らの抱える虚無に衝き動かされるままバナージ、ミネバと相対。バナージと撃ち合い左目を撃ち抜かれるという明らかな致命傷を負いながらも彼を猛追、血みどろの白兵戦を繰り広げた(一時はバナージを殺す寸前まで追い詰めている)。 さらにはその致命傷を負ったまま中破したシナンジュに搭乗してユニコーンガンダムと互角に戦うが、残留思念も込めたサイコミュ・ジャックの前にシナンジュが停止し、撃墜された。最後の最後まで考えは変わらず、人類の可能性を否定し続けたままであった。

OVA版最終巻と同時期に発表された「不死鳥狩り」では上記の戦闘を行いながら、別の地点でネオ・ジオング(コアユニットとしてヤクト・ドーガを使用)のパイロットの強化人間にその虚無が乗り移ってフェネクスと激戦を繰り広げている。

OVA版ではシャアの思念ではなく、「自らを器と定義して、そのように振る舞う男」としての個我が成立している。ラプラスの箱の強奪に失敗した後にメガラニカを脱出、ネオ・ジオングに搭乗してバナージと戦うも、あくまでも自らの論理を以ってバナージを引き込もうと、砲火を交わしつつ論戦を繰り広げた。

最終的にはネオ・ジオングのサイコシャードとユニコーンのサイコ・フレームの共鳴を介し、バナージと共にかつてのアムロとララァのように“刻”を形象として垣間見る。その果てに虚無の世界を見る。それを提示しバナージを自分と同じ諦念へと誘うが、それを見てもなお諦めないバナージの「それでも…それでも!」という叫びに呼応してユニコーンガンダムが発した“暖かな光”を「ソフトチェストタッチ」によって注ぎ込まれると、フロンタルの中の「残留思念」が浄化され、それに連動してネオ・ジオングも浄化されるように崩壊し灰塵となった。フロンタルの中の“シャアの絶望”はシャア本人に回収され、残った己の意志で以って、先の可能性をバナージに託した。

登場作品と役柄

Zシリーズ

第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇
初登場作品。今回はフロンタルが「敗北した人間」と評するシャアその人と共演することになる。
「シャア不在時の影武者として活動し、声や姿もシャアそっくりに作られた人間」という原作ネタバレに近い設定で登場している。シャアと似たような声、ということで戦闘画面も聴き比べてみると徹底的に演技分けがされている。
シャアに似ている一方で、「シャアより大人である」という印象が、本人と共演することでより如実に表れているが、自らの手で業を全うしようとするシャアとは対照的に、フロンタルは目的の為に手段を選ばない傾向が強く、アムロからも「シャアから迷いを取り払った存在」と見なされている。邪魔なアムロの暗殺を謀り、自己保身を優先してZ-BLUEとの戦いを避けようとする等、姑息な行いを繰り返し、本物のシャアを「偽者」呼ばわりまでする等の図々しさから、シャアのみならず、彼をよく知るアムロやカミーユからも、シャア・アズナブルでも無ければ赤い彗星ですらないと、全面否定される事になった。
今作においては特異点であったシャアと対の存在という設定になっている。その結果、本物のシャアが起った事で身を引いてからしばらくした後、終盤で自分こそが真の赤い彗星と豪語し、自身の派閥を率いて反乱に等しい行動に出ており、シャアに取って代わってパラダイムシティとして模倣されている「アクシズの落下した『正しい』世界」へ導くべく、シャアがアクシズ落としに見せかけて行おうとした時空修復の妨害を目論む。また、後述にもあるように原作のシャアの負の面を担っているのみならず、独断でアマルガムジェミニスと裏で結託し暗躍、アムロの暗殺も企てるなど、原作以上に「悪役」らしいキャラクターとして描写されている。
特異点ニュータイプという文字通りに特異な存在であるゆえか、シャア共々黒の英知に接触した節があり、歴代スパロボの並行世界におけるシャアの動向を掴んでいる。しかし、基本的には原作どおり「スペースノイドの希望たる赤い彗星」を演じているに過ぎないため、彼自身の意図がどういったものかは不明。
第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇
ハマーンからネオ・ジオン総帥の座を譲り受けており、事実上ネオ・ジオンのトップとなっている。Zシリーズにおけるフロンタルの素性はUCWのジオニズム信奉の一派が、「赤い彗星」の絶対的カリスマを求めて作り上げたクローンの一体に[2]、前作で発生した新世時空震動並行世界のシャアの意識が流れ込んでいた、というもの。
今回はシナンジュはルート分岐でしかお目にかかれない。終盤はネオ・ジオングに搭乗する。
インダストリアル7での最終決戦においてガンダムパイロット達の「熱」に触れ、ララァに導かれてその魂は浄化され、ガンダムのパイロット達に未来を託して消えていった。

携帯機シリーズ

スーパーロボット大戦BX
登場こそするものの、今作では他に宇宙世紀作品が参戦していないためにクロスオーバーが少なめで、UCの原作再現が中盤からな上にルート分岐によっては終盤まで殆ど登場せず、味方側に因縁のあるキャラクターが少ない事もあって『第3次Z』と比べると影が薄い。
能力こそ高いが『第3次Z』のように精神コマンドの使用等はしてこない事に加えルーチンの関係でHPの多い機体ばかり狙うので、シナンジュ搭乗時に共通ルートで戦う際はリディのバンシィ・ノルンだけを狙い続けるため、さほど強くは感じられないかもしれない。
最終決戦時にはネオジオングに搭乗するも、全回復を乱発するBXのボス勢の中で50%程しか回復しない彼は良心的に見える。登場マップは敗北条件に指定されている機体が多く、彼の機体も他のボス機体同様、圧倒的な射程と範囲のMAP兵器を搭載しているのでそこだけは注意したい。

単独作品

スーパーロボット大戦V
原作同様、ラプラスの箱を巡って戦う。しかし今回はなんと和解が成立して生存。シャア・アズナブルの器ではなく、フル・フロンタル個人としての自我を完全に確立する。条件を満たせば(残り1、2話とはいえ)ネオ・ジオングに乗って仲間入りを果たすという展開に。

パイロットステータス設定の傾向

能力値

影とはいえ「赤い彗星」と呼ばれるだけあり、すべての能力が高水準の強敵。特に射撃・回避・命中に優れる。

精神コマンド

第3次Z
直感集中加速直撃
V
直感集中加速気迫覚醒

特殊技能(特殊スキル)

第3次Z
強化人間L9、底力L5、指揮官L4、サイズ差補正無視L3(精神耐性)、マルチターゲット気力+ボーナスガード2回行動
ネオ・ジオングに乗り換えるとサイズ補正無視が精神耐性に変更。
BX
強化人間L9、プレッシャーL4、援護攻撃L3、気力限界突破カウンター見切りガード全体攻撃L3、指揮L4
V
強化人間L8、底力L5、指揮官L4、サイズ差補正無視L3、気力+(ATK)ガードL2、、2回行動(フルカウンター)
初戦では2回行動が「???????」名義になっているため機能していない。また、味方になるとフルカウンターに変わる。

エースボーナス

反撃時の与ダメージ1.2倍、命中率+20%
第3次Z』で採用。『時獄篇』・『天獄篇』とも、表記は違うがこのボーナス。
スキル「強化人間」が「ニュータイプ」になり、レベル+1
V』で採用。

人間関係

オードリー・バーンミネバ・ラオ・ザビ
ラプラスの箱」を利用する方針に関して彼女とは対立する。また、彼女からはシャア・アズナブルを演じようとする姿勢を嫌悪されており、「空っぽな人間」と酷評されている。
バナージ・リンクス
ユニコーンガンダムを巡って対立はするものの、フロンタル自身は彼個人にも色々と興味を持ち、自分とともに来るように誘ったこともある。
アンジェロ・ザウパー
親衛隊の隊長で腹心的存在。絶望的な状況から救った事で、個人的にも心酔されているが、フロンタルがバナージに興味を持った事に大きく嫉妬する事になる。またそのような境遇から、フロンタルを「シャアの再来」ではなく、「フル・フロンタル」として見ている貴重な人物。
ロニ・ガーベイヨンム・カークス
連邦への復讐に燃える彼らに対し、襲撃作戦の許可を与えた。
モナハン・バハロ
原作小説ではフロンタルをネオ・ジオンの残党に送り込んだ張本人であり、黒幕の1人。OVA版では未登場。
アルベルト・ビスト
OVAの外伝作品である「戦後の戦争」では、通信でのやり取りをしており、フロンタルがジオン共和国のモナハン・バハロによって用意された存在である事実を知っていた。

他作品との人間関係

宇宙世紀作品

シャア・アズナブル
演じている存在。両者の外見や声等があまりにもよく似ている。また、フロンタル自身はシャアを「敗北した人間」と見下し、自らを「宇宙民の意思を受け入れる器」と豪語しているが、所詮は「他人の念仏で極楽参り」をしているに過ぎないので、説得力はあまり無い。
第3次Z時獄編』では彼と共演。フロンタルの立ち位置は「シャア不在の間の影武者」という設定になっており、シャアの帰還後は退いている。終盤では、スペースノイドの旗頭ではなく人類すべてを救おうとした彼を「赤い彗星の偽者」と断じ、自らを真の赤い彗星としてアクシズ落としを行う。
シャア本人も、初対面より自身の嫌な部分を見せ付けるかのような存在である、文字通りの「道化」のフロンタルには良い印象を持ってはおらず、後に似た者同士呼ばわりされた際は、「不愉快」と拒絶している。
『時獄篇』の戦闘前会話ではフロンタルの出自に気付いているが、上述の通りOVA版にはモナハンは登場しなかったため、天獄篇ではそれについて深く言及されなかった。
アムロ・レイカミーユ・ビダン
前者は一年戦争当初から、後者はグリプス戦役当初から、本物のシャアと関わって来た男達。『第3次Z時獄編』ではシャアの模倣であり、同時にその意志を否定するフロンタルに対しては激しい敵意を向けている。また、アムロに対しては自身の手を汚さず暗殺者に始末させようまでしており、その結果、彼からはシャア・アズナブルでも無ければ赤い彗星でも無いと断じられた。カミーユも、戦闘デモではシャアと相対した時以上の剣幕で全否定しており、相当腹に据えかねたことが伺える(が、逆に言えば二人ともそれほどまでに本物のシャアを理解し、信じているとも言える)。
ハマーン・カーン
『第3次Z時獄編』では彼女とも共にネオ・ジオンを率いる立場にあるが、彼女からも快く思われていない。『第3次Z天獄篇』では彼女からネオ・ジオン総帥の座を譲られるが、最終的にはZ-BLUEに加わった彼女とも敵対する。
ララァ・スン
OVA版、ならびに『第3次Z天獄篇』では彼女に導かれ、バナージに希望を託してこの世を去った。
ギュネイ・ガスクェス・パラヤレズン・シュナイダー
『第3次Z時獄篇』では目下の同僚だが、三人全員から不信感と嫌悪を抱かれており、特にクェスからはアムロの暗殺未遂の黒幕であると早い段階で勘付かれていた。
『第3次Z天獄篇』ではクェスが最初からシャアに付いて去り、ギュネイとレズンはフロンタルの部下となるも中盤でシャア派の将兵共々離反される。

コズミック・イラ作品

ラウ・ル・クルーゼ
第3次Z』ではクロノの暗部が生んだ生贄と認識しており、それ故に彼の憎しみについても理解の意図を示していた。
ミーア・キャンベル
第3次Z時獄篇』では既に故人であるため、直接の絡みはないが、自分と同じく影武者として生きてきた彼女を自分と比較していた。
レイ・ザ・バレル
第3次Z天獄篇』では同盟を結び彼の率いるザフトの強硬派と共に連邦軍やZ-BLUEと敵対するが、彼からは本心では信頼されておらず、最終的にはZ-BLUEに加わった彼とも敵対する。

西暦作品

ティエリア・アーデ
第3次Z天獄篇』では彼がイノベイドであることは見抜いていたが、ヴェーダの一時的な緊急停止権を持っていたことは気づいておらず、コード「CHRONO H」を発動されたことにより、状況は一変。最終的には撤退する羽目となった。
BX』でも、彼によってネェル・アーガマのシステムを奪還され、反撃を許す事になった。

SDガンダムシリーズ

黄金の騎士
BX』ではドラゴンベビーの企みを破って姿を現した際に、その姿に大きな反応を見せる(後述)。

リアル系

ガウルン
第3次Z時獄編』では中盤に密かに結託したアマルガムより派遣された彼をZ-BLUE足止めのために利用する。
レナード・テスタロッサ
第3次Z』では彼と結託しており、天獄篇では共にサイデリアルに擦り寄りつつ、自らの目的を果たすために暗躍する。
ゼロルルーシュ・ランペルージ
『第3次Z時獄篇』では「シャアを演じる」「アクシズの落下によって他者や自分が死んでも興味がない」と言い切る姿に、ゼロはシュナイゼルと同じ「虚無」を持っていると評した。
実際シュナイゼルとフロンタルの2人は「己」が存在せず、生命への執着が(自他含めて)無きに等しく、行動原理も自らの意志に依るものでは無く「他者が望むから」という共通点を持っており、ゼロが彼をシュナイゼルと同類と見たのも自然の流れと言える。

スーパー系

ノノバスターマシン7号
第3次Z天獄篇』におけるフロンタルとの最終決戦において、彼女の決め台詞に口を挟むという掟破りを平然と行う(後述)。
アンチスパイラル
第3次Z時獄篇』ではアクシズでの決戦の際、エタニティ・フラットの完成を目論むフロンタルとの利害が一致することで、フロンタルに助力してムガンの軍勢を増援に送る。
レイディ・リンクス
BX』における協力者。

バンプレストオリジナル

アドヴェント
第3次Z天獄篇』では彼からラプラス事件の真相と箱の真実を伝えられた。が、その全てを見下した態度には「気に入らんな」と不快感を露わにしていた。

名台詞

「シャアの再来」と言われるだけあって、「赤い彗星シャア・アズナブルと似ている(が、よく考えると彼本人とは違う意味合いの)台詞が多い。

クレイグ「貴様…何者だ!?」
フロンタル「他の誰とも変わらない。与えられた役を演じる者…それだけだ」
クレイグ「与えられた役だと…!?」
フロンタル「そうだ。全ての人間には与えられた役回りがある。それを拒めば、今のあなたの様になる…」
クレイグ「連邦とネオ・ジオンの出来レースを黙認して軍の雇用と経済を維持する役回りか…。そんなもの…くそ食らえと言いたいな…!」
フロンタル「では…その対価を支払って頂く…」
シナンジュの強奪事件が語られるOVAの外伝作品『戦後の戦場』にて、新たな戦争を防ぐべくプロト・スタークジェガンにダコタと共に搭乗して介入したクレイグと、シナンジュ・スタインを奪い取ったフロンタルのやり取り。新たな戦争を防ぐべく奔走したクレイグやダコタに対し、フロンタルは自らがシャアの悪を演じる事に何の疑念も抱く事無く、彼らの搭乗するプロト・スタークジェガンを撃墜。戦争を止めようとした男達の願いは、その命と共に無残にも砕け散る事になった…。
「テスト機と言うだけあって、この機体は操作系が硬い。磨く前の原石の様な物だ。改良すれば、もうお前に苦労をかけることも無いだろう」
「お前はただ見ていれば良い。それが私の力になる」
シナンジュ・スタインを強奪し、帰投するフロンタルがアンジェロに言った言葉。一見すると、今まで苦労をかけたアンジェロに対し気遣っているかのように見えるが、見方によれば、アンジェロ望む様な自分を演じる事で、彼がより自分に依存するよう手懐けているようにも見える。
アルベルト「お前は…何だ?」
フロンタル「フル・フロンタル…名前の通り、隠し立てするものは何も無い…。人が望む通りの役を演じる者…それだけです」
シナンジュ強奪直後、グラナダから直接連絡を入れてきたアルベルトが、予定よりも暴れすぎていた事態に「『後始末』が大変だ」と言った言葉に対し、クラップ級二隻を撃沈(と、その乗員達全員も抹殺)して証拠を隠滅させたフロンタルが言った言葉。この言葉を聴いたアルベルトは、フロンタルの中に言いようのない禍々しさを感じ取っていた。
「過ちを気に病むことはない。ただ認めて、次の糧にすればいい。それが、大人の特権だ」
OVA版第2巻より。シャアの名台詞「認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを…」と対を成している。
青臭さを残しているシャアと異なり、「したたかな大人」であることを武器にするフル・フロンタルを象徴する台詞の一つ。一方でこの台詞は過ちをただ割り切ることで、そこから何かを感じ取るという感性を放棄することであり、人工とはいえニュータイプであるフロンタルがニュータイプの象徴たる感性を否定している構図になっている。
「見せてもらおうか…新しいガンダムの性能とやらを!」
同第2巻より。シナンジュを駆って、通常の3倍の速度ネェル・アーガマに急接近していく。
シャアの名台詞「見せてもらおうか…連邦のモビルスーツの性能とやらを!」のオマージュ。
「当たらなければどうということはない」
同第2巻より。ユニコーンガンダムの(掠っただけでも撃破に至る程の威力を持つ)ビームマグナムを最小限の動きだけで回避して。シャアと同じ台詞を口にしている。
「私は……君を殺す」
バナージに対して。これまたシャアの台詞のオマージュだが、シャアはアムロに対して「ニュータイプという存在を、まだ人が受け入れることが出来ないから」であり、フロンタルはバナージに対して「ニュータイプなどという幻想を人が受け入れてしまうから」である。根本的にはシャアと正反対であることがわかる。
「これはファッションのようなもので、プロパガンダと言ってもいい。君のように素直に言ってくれる人がいないので、つい忘れてしまう。すまなかった」
同第2巻より。フル・フロンタルと面会したバナージが顔を見せてほしいと言い、怒るアンジェロを押しとどめてマスクを取るフロンタル。このような洗練された冷静な態度も彼の特徴である。
「今の私は自らを器と規定している。宇宙に捨てられた者の想い…ジオンの理想を継ぐ者たちの宿願を受け止めるための器だ。」
「彼らが望むなら私はシャア・アズナブルになる。このマスクはそのためのものだ」
同第2巻より。バナージに「あなたはシャア・アズナブルなんですか!?」と問われて。この『器』という考えがフロンタルの根底になっている。
「もし、シャア・アズナブルが生きているとすれば……それはもう、人ではなくなっているのではないかな?」
ネェル・アーガマ制圧後のジンネマンとの会話にて。あまりにも無機的なその言葉は、ジンネマンをして「こいつは何だ?」と思わしめた。
尤も、ガンダムシリーズ全体を見渡すとある意味本当に人ではなくなっているシャアがいたりもするが
「ニュータイプになれば、あの温かな光を以て、時間さえ支配出来る? それは夢だ。地球を包んだあの虹を見ても人は変わらなかった。これからも変わることはない」
「真理からは遠く、光を超える術すら手に入れられず、届く範囲のスペースで増えては滅ぶ……それが人間だ」
「導く必要はなく、その価値もない……ならば、私は器になろう」
「カラになったこの身体に人の総意を引き受け、彼らが願うところを願うとしよう」
「ニュータイプ……可能性 はもう要らない。無為な存在ならそれに相応しく、小さく自足できる環境をくれてやろう」
「……おかしなものだ。これではまるで、復讐を誓っているようではないか。誰の為の復讐だ? シャア……それもいい。人がそう望むなら、私はシャアになろう」
「熱……暖かな光……こんなものがいくら集まっても、何も……そう、何も……!」
刻の涙の先にあった虚無のイメージの中、バナージの「可能性」を前になおもそれを否定する。が……。
「潮時……か……」
「君に……託す……成すべきと、思ったことを……」
最期。絶望を払われた男は、次代を担う者に可能性を託して宇宙の闇に去って行った。ほんの一時だけ地球に現れては消える、彗星のように。

原作小説版

「…………人の想いが、光になって地球を包むのを見た。光に巻かれて、地球圏の外に押し出された。この目で、宇宙の深遠を覗きもした。そのような奇跡を目の当たりにしても、人は変わらなかった。変わっても意味がないと識った。ここより先には何もない。どこまで行っても同じ暗黒が続くだけだ。たとえ銀河の外に漕ぎ出す術を得ようと、いつかすべては暗黒に帰る…」
メガラニカでの独白。この時のフロンタルはバナージの銃撃で左目を撃ち抜かれているという普通に考えても即死するはずのダメージを受けており、バナージを戦慄させた。
「奇妙な感覚だ。昔、いまと同じことを考えていたような気がする。ニュータイプといえども、肉体を使った戦いには訓練と要する。だから『ガンダム』のパイロットをおびき出して、生身で決着を――」
メガラニカにてバナージの白兵戦の直前の独白。『昔』と言っているのはア・バオア・クー内部でのシャアとアムロの白兵戦の事を指しているが決着は着かずに終わった。また、『肉体を使った戦いには訓練と要する』は作者がかつて書いた作品の原作での皮肉とも取れる言葉である。
「残留思念という言葉を知っているはずだ」
「サイコフレームは人の意思に反応する性質を持つが、同時に人の意思を吸い取りもする。星をも動かすほどの力を発動させたサイコフレームは、その代償に核となった人間の意志を吸収し尽くした」
「その者の意識が、戻る場所を失って宇宙をさまよっていたのだとしたら……。たまたま現れた似姿に宿っても、不思議はあるまい。君が言うとおり、人は他者の中に自己を見出す生き物だからな」
メガラニカにて、バナージを相手に白兵戦を行いながら。原作のフロンタルもOVA同様、強化人間の中にシャアの意識が入り込んだ存在らしい。
「オールドタイプの枠組み……義務や責任と言った観念に縛られている君だ。ニュータイプにはニュータイプの世界との関わり方がある、と言っても承知しないだろう」
「変わろうとしない者には、変わらないなりの未来を与えておけばいい。『箱』はそのために使わせてもらう。それが、ニュータイプを否定した人類への報いだ」
シナンジュに乗り込んで。これを聞いたバナージは、フロンタルの本質が「何もない自分を哀れむ誰かが世界を憎み、拾い物の言葉に自分の感情を載せている、偽者ですらないシャアの紛い物」だと直感した。
「じきに分かる。究極の感応を得ることが、どういうことか……。真のニュータイプとなる代償に、君はそのマシーンに喰われる。バナージ・リンクスという遺伝子の器は失われる。究極のニュータイプの完成だよ」
「言ったろう?。君はもう、“みんな”の中には帰れないと」
小説版最後の台詞で、フロンタル流のニュータイプの定義。分かり合うことの目的は融和だが、その究極の形は「一つになった意志」であるという。人類補完計画イデに通じるものがある。事実、この直後にフロンタルを葬ったバナージは……
ちなみにこれらの台詞はOVA版では若干ニュアンスが変わっており、現実を突きつけようとする小説版とは異なり、バナージに対してフロンタルなりの論理を説明するものになっている。

スパロボシリーズの名台詞

Zシリーズ

「私とて赤い彗星と言われた男だ……やってみせよう!」
「君の生まれの不幸を呪いたまえ」
「連続攻撃」の台詞パターンの一つ。言うまでもないが元ネタは一年戦争ガルマを謀殺した際のシャアの名言。
「シャア・アズナブルを消去すれば、私は……」/「赤い彗星は一人でいい!」
シャアとの特殊戦闘台詞。
「フル・フロンタル、お前らしくないな……!」
撃墜時。自身の敗北という事象を、まるで他人事のように評する。フロンタルとは要するに、一人の強化人間にシャアの思念が宿った存在であるが、わかりやすく言い換えれば「ゲームの主人公とそのプレイヤー」の関係に近い。その中でこのセリフは、フル・フロンタルという男をもっとも端的に表現したものと言える。
「プロト・プル・トゥエルブ……クローニングによる人工ニュータイプ計画……その12番目の試作品である彼女……マリーダ・クルス中尉に敬意を表しよう」
第3次Z時獄篇』調査ルート第24話「パラオ急襲」/静観ルート第25話「猛るユニコーン」にて。本来の設定とは異なり、Zシリーズでは12番目の試作品となっている。『第3次Z天獄篇』での参戦ラインナップを見るに、どうやら『ΖΖ』を「出さない」ための改変だったらしい(元の設定のままだと、オリジナルに当たるプルの顛末をどこかで描かねばならない)。
「待っていたよ、Z-BLUE。だが、これは変えてはならないことなのだ」
フィフス落下の阻止に現れたZ-BLUEに対して。「変えてはならない」の意味は後に明らかとなる。
「それが正しいことだとしてもですか?」
『第3次Z時獄篇』宇宙ルート第37話「フィフス・ルナ攻防戦」より、フィフス放棄を決定したシャアに対して。多くの歴史、およびCCA正史ではシャアはフィフス・ルナ落下を実行し、完遂しているのがミソである。
「そういう言い方は嫌いですな…。大人っぽくて」
『第3次Z時獄篇』第41話「二つの赤い彗星」より。エタニティ・フラットを前向きに肯定した事を評価したシャアに対してララァ・スンの言葉を使って反応し、不快感を抱かせる。同時に正体についてシャアとプレイヤーに疑念を抱かせる伏線でもある。
「誤解しないでもらおう。私こそがスペースノイドの希望を体現する者、つまりは真の赤い彗星だ」
「だから、私は正しく世界を導くために、真のシャア・アズナブルの行為であるアクシズ落下を行うのだよ」
『第3次Z時獄篇』第57話「BEYOND THE TIME」より。フロンタルにとって「赤い彗星」とはスペースノイドの希望「でなければならない」存在であり、その希望に応えなかったシャアではなく、それに応える自分こそが「真の赤い彗星」であると言っているのである。
メタなことを言うと、アクシズ落としの場面なのにシャアが原作どおりに動かないので、代わりにシャアとして原作どおりに動いているという話である。
「そうではないよ、アムロ。私こそが真の赤い彗星なのだ」
同話にて自ら前線に出張ってきたのを「シャアの物真似」と評したアムロの言葉を受けて。
「今、宇宙に必要なのは新しい秩序を打ち立てられる強力な指導者だ。だが彼は、何かを捨てるという強い意志が足りなかった」
「棄民であるスペースノイドの持つアースノイドへの憎しみは、より直接的な行為でしか、晴らすことは出来ない。そう、このアクシズ落としのような手だ」
「それがスペースノイドが赤い彗星に望んだことだよ」
同ステージのイベントにて。ポイントは「私に望んだこと」とは言っていない点で、フロンタルはあくまで「スペースノイドが赤い彗星に望んだ事」を、それを成そうとしないシャアに代わって「赤い彗星」として実行しているのであり、そこから逆に「スペースノイドが赤い彗星にアースノイドへの粛清を望んでいる→アースノイドを粛清する者が赤い彗星である→アクシズ落下を行う自分こそが真の赤い彗星」という思想に至ったらしい。シャアは性急と呼ばれても人の革新という形で人類全体のことを考えていたのと比べると、大きな違いであり、フロンタルが機械的に見えるシーンである。
「そこまで悲観する必要はない。そこで人は理性で自らを律し、より良き社会を築けばいい」
「人間の生命は永遠になるのだ。そこには新たな価値や意味が生まれるだろう」
「面白い、面白くないの問題ではないのだよ。我々は理性を以って、運命を受け入れるだけだ」
「人間としての尊厳、矜持、意地……そんなものでは人類は救えない」
エタニティ・フラットに対しての見解。こうして見るとわかるのだが、時獄篇におけるフロンタルの行動・言動には彼自身の意志というものが全く介在しておらず、アムロをして「シャアから迷いを取り去った、誰も愛していない空っぽの存在」と言わしめている。
「アムロ…」
「君は、私を迷いを捨てたシャアと言ってくれた。ならば、その言葉に応えよう」
直後、アンチスパイラルの意を受けたニアが差し向けた手勢が加わったのを見てフロンタルは自分は宇宙の意思に認められたと増長する。そして、アムロの言葉をそのまま形にするかのようにフロンタルはアクシズへと撤退するという狡猾な手段を取った。戦わずしてアクシズが落ちるのを傍観するという暴挙……それは、戦略的には理にかなった行動であり、同時にどこまでも「戦士」であるシャアが決してとるはずのないものであった。これを見たアムロはとうとう堪忍袋の尾が切れ、フロンタルをシャア・アズナブルでも赤い彗星でもないと断じた。
「さあ、改めて始めよう」
アクシズ、行け! 忌まわしい記憶と共に!
アースノイドの粛清と「時の牢獄」の構築を目論むフロンタルは「空虚な器にスペースノイドの怨念と憎しみが満ちた」声で言い放った。歯車が違えばシャアその人が口にしていたであろう「あの言葉」を。
2人のシャアの関係やアクシズ落としの事情も原作と異なる為か、名台詞はそのままフロンタルに取られた上でDVE並びに戦闘台詞にも採用された。
一方で池田氏の演技力の凄まじさを表すDVEでもあり、微妙なイントネーションや音域の違いで「シャアの名台詞を模倣するフロンタル」を見事に表現している。相当のこだわりがあってこそ出来る驚愕の演技である。ファンならば是非その違いを原作と聞き比べてみたい。
「…様々な世界に存在するキャスバル・レム・ダイクンは様々な運命をたどった…ある者はクワトロ・バジーナのまま戦いある者は最後にシャアとして世界の敵となりある者は人類を守るために異星人に恭順の意を示した…そのどれもに共通しているのは、あなたという存在は世界の在り方を決めるものだった」
「その中で私は真のシャア・アズナブルとしてアクシズを落下させることを選択した。つまり、今の私は赤い彗星そのものなのだ」
シャアがZ-BLUEに加勢した後の台詞の一部、数多の並行世界…というよりは歴代スパロボ版シャアの未来か。何気に、「シャアとして地球のために戦った」「キャスバルとして政治の世界に進出した」未来については全く語っていないのがミソ。
共通項としてはフロンタルの言うとおり、存在する世界の進む道に大きな影響を与えている、という点か(クワトロであり続けた場合は「逆襲のシャア」の物語が始まらない=別の歴史が始まる、という影響が現れていることになる)。
「並行世界間の同一人物は基本的に同じ世界には存在しないそうですよ」
シャアとの戦闘前会話の一部。これを言われたシャア本人からは「不快だな」と、断言されている。自分に都合の良い形でシャア・アズナブルという人間を曲解しているフロンタルの態度には、流石のシャアも腹に据えかねていただろう。
シャア「違うな、フロンタル。お前は未来など求めていない!」
フロンタル「だから?」
シャア「ようやく生の感情を見せたな」
フロンタル「そうまでして私を怒らせたいか、シャア・アズナブル!!」
同上。あくまでもフロンタルを「己の中にある『シャア・アズナブル』を模倣しているに過ぎない」と断ずるシャアに激昂。本作でようやくフロンタルの素が出た場面である。
「口が達者な分だけ可愛げというものがない……!」
ヒビキとの戦闘前会話において。時獄篇のフロンタルは原作に比べやや感情的な面が強い。
フロンタルの言うとおり、ヒビキが敵と見做した相手に対しては容赦無く不遜かつ辛辣な態度をとるキャラであるのも事実ではあるが。
シャア「不思議だ……こんな状況なのに恐怖は感じない。むしろ暖かくて、安心を感じるとは……」
フロンタル「だが、この暖かさを持った人間が感情を制御しきれず、自滅の道を歩んでいる……ならば、よりよき世界に導く指導者が必要になる!」
アムロ「わかってるよ! だから、世界に人の心の光を見せなきゃならないんだろ!」
「BEYOND THE TIME」クリア時のやり取り。ある意味、時獄篇におけるフロンタルの立ち位置を明確にした場面である。
ここからわかるとおり、本作のフロンタルは原作におけるシャアの負の部分を担当している形になっている。
「それは、まさに神の存在と言えるでしょう」
第3次Z天獄篇』予告及び第40話「赤い彗星の未来」にて、ラプラスの箱を評して曰く。フロンタルの思惑の真意を知るため、自ら捕らわれの身となったシャアに対して、彼はラプラスの箱の真の意味、そして自らの本当の目的について淡々と語り出す。
シャア「フル・フロンタル!」(打撃音)
フロンタル「ぐっ!シャアめ!」(打撃音)
シャア「殴り返してきたか!どうやら、まだ完全に器になったというわけではないようだな!」
フロンタル「私を挑発しているのか、シャア!」「ならば、相手をしてやる!サザビーに乗れ!」
同じく『第3次Z天獄篇』ネオ・ジオンルート第40話「赤い彗星の未来」にて、シャアと生身で殴りあって
逆上して殴り返したり「シャア!」と感情的に言い捨てるなど、前作に引き続きフロンタルの素が出た場面であり、自らを冷たく「器」と言い続けてきた彼の、血の通った偽らざる「地」が垣間見えるシーン。
「たわ言に付き合っている暇はないな」
「君達の得意とするポジティブな絵空事は聞き飽きたよ」
第3次Z天獄篇』第45話「虹の彼方に」における、ノノ(バスターマシン7号)との戦闘前会話決め台詞に口を挟んだ挙句「たわ言」と切り捨てる
「私は、君のような少年を……ガンダムに乗って奇跡を起こす少年を何人も見てきた」
「奇跡もまた、繰り返す……そして、何も変わらない」
「バナージ君! 君に刻の涙を見せよう!」
『第3次Z天獄篇』第45話「虹の彼方に」で撃墜され、追って来たバナージと対峙して。「刻の涙」は『機動戦士Ζガンダム』の次回予告で使用されたフレーズで、「ヒトがより良き未来へ進む過程で遭遇する苦難や悲劇」のことである。
「どうだろうな。だが、私は確かに絶望を味わった」
「人の心の光を見せてもなお、変わらない人類……だが、それは彼ら自身のせいではない……所詮、人は神にはなれないし、神を超えることも出来ない」
「虹の彼方に」クリア時、「刻の果ての虚無」の中でバナージに対して。フロンタルのこの言は、「人はどこまで行っても変わらない」という諦念の表れでありながら、同時に「人はどこまで行っても人でしかない」という真理を突いた台詞でもある。
「これが火の文明……人が自ら生み出したものは人に新たな力を与える……それは誰かと共に希望を信じる力……」
虚無の世界に集った「ガンダム」達を見て。真化への最後の階梯、火の文明……その真理は、自ら生み出したものによって力を手に入れ、その力によって何かを生み出しながら進化していくこと。一人で背負うのではなく、誰かと共によりよき明日を信じ、続く戦いの中に「それでも」希望を見つけようとする力。
「バナージ君……ガンダムに導かれた者達……そして、シャア・アズナブル……君達ならば、私が超えられなかった絶望の向こうに虹を見つけられるかも知れない」
「そして、それすら超えた向こうに未来を見つけてくれ」
「君に……託す……。為すべきと……思ったことを……」
最期。ララァの導きにより絶望を払われた「赤い彗星」は、ガンダムに導かれた少年達、そしてもう一人の自分自身に可能性を委ね、刻の彼方へ去っていった。

携帯機シリーズ

「可能性を信じた開拓民を切り捨て、劣悪な環境に生きる人々を敵とするのとどちらが非道でしょうか?」
BX』第32話より。地球を見捨てる事を前提とした共栄圏を否定したブライティクスの面々に対する反論。
「戦場であのような姿をさらすとは、ただ者ではないと見える…!」
同じく『BX』第32話にて、突如戦場に姿を現した黄金の騎士を前に驚嘆しての台詞。携帯機シリーズの前々作においてもフロンタルと声がそっくりな議長が似たような発言をしている。

スパロボシリーズの迷台詞

「仮面の私と着ぐるみの君…。まさか、こんな形で巡り会うとはな」
「なるほど…。いわゆる中の人…つまり、意思がある自分は私と違うと言いたいか…」
「だが君は、誰かに望まれたから、そんなもので出撃している…。つまり、スペースノイドの願いを集めた私と同じだよ」
「いいだろう! 私を否定するのなら、君の意志というものを見せてもらおう!」
第3次Z時獄篇』第57話「BEYOND THE TIME」、ボン太くんとの戦闘前会話。言っていることを大体把握した上で大真面目に対話している。しかもある意味メタ発言に走っている。可愛さに全力で揺らいでいる片割れとは大違いである。

搭乗機体・関連機体

リバウ
バウを大幅に改修した機体。原型機の分離機能を活かし、サイコフレームでサイコミュ操作する。総帥専用機となる予定だったが、シナンジュの強奪に成功したため、他のパイロットが運用する。SRW未登場。
ギラ・ドーガ
シナンジュに乗る前の搭乗機。ちなみに、機体の色は赤である。
シナンジュ
専用機。アナハイム・エレクトロニクス社製で、サイコフレームの搭載機でもある。
ネオ・ジオング
OVA7巻に登場する専用機。最終決戦時に搭乗。シナンジュをコアユニットとした拠点攻略用の超大型MAであり、サイコフレーム技術を起点とした兵装が備えられている。

余談

  • フル・フロンタルという名前の日本語訳にちなんで、視聴者からは「全裸」というあだ名で呼称される事がある。
    • 『UC』のepisode 7公開に伴い、公式で「epiosde1-6ダイジェスト 100秒でわかる! 機動戦士ガンダムUC」(ナレーションマリーダ・クルス役の甲斐田裕子氏)という動画が公開されたのだが、そこでの紹介文に「実は全裸という意味!」と書かれてしまっている。
  • 「シャアの後継者として赤い彗星となることを望まれ造られた存在」という立ち位置は、富野由悠季氏の小説作品『ガイア・ギア』の主人公である「アフランシ・シャア」によく似ている。彼もジオン残党の末裔にあたる組織に象徴として迎えられるが、フロンタルとは反対に「(組織が望む)シャア」でも「赤い彗星」でもなく「アフランシ」として生きる道を選んでいる。
  • 雑誌『Febri』のインタビューで池田秀一が語ったことによると、フロンタル役に決まった時点で役作りのためにあえて原作を読まないようにしており、途中までは自身もフロンタルの正体をよく知らないまま演じていたという。ただEP5の頃には小説を最後まで読んでしまっており、描写について酒の席で原作者の福井晴敏に不満を言ってしまい、それがEP7の描写変更の遠因となったのではないかとしている。EP7は自らの希望でアフレコも一人だけで行っており、フロンタル役への思い入れは相当に強いことが伺える。

脚注

  1. この時、襲撃を行ったプロト・スタークジェガンに搭乗していた中央情報局のカルロス・クレイグ大尉は、ジオン残党軍の起こしたテロによって妻子を失っており、連邦の上層部とアナハイムがUC計画の為の『敵』を欲して袖付きに新型モビルスーツを強奪に見せかけて譲渡する事実を知った事で、ダコタ・ウィンストンに協力を頼み、越権行為を承知の上で、新たに起ころうとしていた戦争を未然に防ぐべく取引をぶち壊しにしようとしていた。
  2. レイの口からシャアのクローンであると説明されている。

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