「スーパーロボット大戦J」の版間の差分

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2017年7月24日 (月) 05:37時点における版

概要

ゲームボーイアドバンスでリリースされた最後のスパロボ作品。

主人公機に3人の女性サブパイロットが存在し、パートナーごとに異なるイベントやパートナーの出撃回数に応じてエンディングが変化するなど、恋愛シミュレーション的な要素も加味されている。

プロデューサーの寺田貴信氏が「いつかギャルゲーを作りたいと思っている」と語っているのは有名な噂だが、それが本作に反映されているかは不明。

新システム

今回は、他作品からのシステムの取り込みや演出面の強化に重点が置かれており、純粋な意味での新システムは少ない。

パートナーシステム
主人公機に3名の専属サブパイロットが存在し、その中から1人選び(乗り換え)させることができる。それぞれ精神コマンドが異なる他、機体に異なる能力ボーナスを与える。また各サブパイロットの出撃回数は後継機の最強武器の解禁フラグや、エンディングにまで影響を及ぼす。特定のパートナー無しというエンディングも存在するため、全EDを見るには最低8周が必要となる。
再出撃
ナデシコアークエンジェルにのみ、新しく「交代」の改造項目が登場。改造段階は3で固定。1マップにつき改造した回数だけ、未出撃のユニットを搭載したユニットと交代できるようになった。一度交代で離脱したユニットは、マップクリアまで再使用できない。
クリアエディット
2周目以降は主人公が覚える精神コマンドを、作中の全てのコマンドから自由に選択できるようになった。また敵機の改造段階も選択可能で、1周ごとに3段階ずつ上限が増加、最終的には20段階で選択できる。

主な既存システムと変更点

お気に入り
MX』にあったシステムを携帯機シリーズへ輸入。今回から1周回につきお気に入り作品を3つまで選べるようになり、パイロット数やユニット数の少ない作品ほど経験値資金の基礎獲得補正が大きくなるようになった。また2周目以降は前周回までのお気に入りを引き継いだ上で更に3つ追加でき、全作品をお気に入りにすると全作品の機体改造段階が20、経験値と資金の獲得補正が1.5倍固定になる。なおフル改造ボーナスはこれらで増加した分ではなく、非お気に入りのフル改造段階まで改造すれば選択出来るようになる。改造画面ではわかりやすいように、本来の分が青、伸びた分が黒の枠となっている。
精神コマンドの変更点
新コマンドとして闘志が初登場。偵察は消費SPが5に増えた代わりに、指定した敵の回避率を1ターンの間-10%にできるようになった(これに伴い索敵済の敵にも使用可能となった)。以降の携帯機シリーズでもこの効果が標準仕様となっている。
コンボ
D』や『OG2』(連続攻撃)の仕様をほぼ引き継いでいるが、コンボを行うための武器として、他の武器とは同名のコンボ専用武器が用意されるようになった。コンボの下方修整として「攻撃力ダウン、射程1固定」が新たに設定された。
分身系能力の仕様変更
従来作では一定の確率で攻撃を回避していたが、本作では自分と敵の技量差によって発動率が変化するようになった。以降携帯機シリーズでは標準仕様となっている。
防御系技能(シールド防御切り払い撃ち落とし)の仕様変更
(『D』までのニュータイプなどのような)他の特殊技能の存在による補正の変化を廃止し、パイロットごとに固有の補正値が設定されるようになった。これも以降の携帯機シリーズで標準仕様となった。
またこれらの技能を技能欄に表示せず、アイコンでのみ示されるが、これは同作限りの仕様に留まっている。
搭載の仕様変更
戦艦に搭載したユニットにも、指定タイプの精神コマンドを使用可能になった。また、換装可能な機体は搭載時に無制限の搭載換装が行えるようになっている。
ツメスパロボ
今回はルートに関係なく全ステージを選択可能になる。基本的なルールは『D』と同じだが、闘志の追加によりクリティカルも出せるようになった。
BGMセレクト
第3次α』のように、全パイロットが作品の垣根を越えて戦闘BGMを選択可能。一度聴いた曲を選択可能なほか、一部の曲は2周目以後に選択可能。ただし、特定武器使用時の限定BGMは選択できない。
パイロット養成
基本的には『D』と同じだが、敵と味方の両方で登場するパイロットは各勢力で別データが割り当てられるようになったため、味方時の養成が敵時に反映されなくなった。安心してボーナスポイント(BP)の振り分けができる。
地形適応
機体地形適応Sがフル改造ボーナス・強化パーツ限定になった。また、スポット参戦のトゥアハー・デ・ダナンと換装前提のエステバリスを除くほぼ全てのユニットが陸・宇宙Aとなっている。
名前等の入力
携帯機シリーズでは初めて漢字が使用可能になり、特殊文字等の種類も増えた。

難易度

全体的に味方ユニットやパイロット(特に単騎クリアも可能とされるゼオライマー)が強く、特定範囲に侵入されたら敗北が設定されるステージと、終盤の初見殺しステージを除けば難易度は抑えめ。熟練度も存在しないのと、ほとんどの敵が勝手に寄ってきてくれるためにゆっくりプレイできる。一部敵の撤退HPが分かる上、過去シリーズからは考えられないほど撤退基準が緩いので撃墜に困るケースも稀。だが増援での追加ザコ機数がゲーム全編を通して非常に多く、全ステージと言っていいほど増援自体が多く、中盤からは雑魚敵ですら援護防御完全装備で見た目以上のHPを誇るため、高い継戦能力と広範囲への攻撃手段が要求される。自軍・敵軍・第三軍の三つ巴の戦いになるマップが多いことも、敵数の多さに拍車をかけている。

本作では「回避力を上げすぎて敵機の攻撃が全て命中率0%になると、その敵からは狙われなくなる」という仕様がある(ただし特定のユニットを狙うと設定されているキャラのみ0%でも攻撃を仕掛けてくる)。これにより、リアル系は回避能力を上げ過ぎないようにしないと回避からの反撃ができなくなった。ただし素の命中率が1%以上あり、精神コマンド込みで命中率0%になる場合は通常通り狙われる。これも合わせ囮役は「バリア持ち、鉄壁が使える、バリアで減ったENを回復させる手段を持つ」の3つを持つ事が重要となり、それをすべて併せ持つナデシコとゼオライマーの使いやすさが際立つこととなった。一方リアル系はコンボ武器が2機体除き未消費のMS勢&SPT勢&AS勢、消費するがEN回復持ちでカバーできるブレンパワード、高威力の合体攻撃が毎ターンEN完全回復で使いたい放題のエステバリス、魂持ち+超威力の合体攻撃持ちで爆発力が際立つテッカマンブレード(withペガス)と、トドメに適した機体が非常に多い。この事から「援護防御の働かないエネミーフェイズにてスーパー系を囮にして体力を大幅に削り、プレイヤーフェイズではリアル系のコンボで援護防御を無視して数を減らす」という今までとは変わったゲームバランスになっている。

またナデシコのような強力な多人数乗りユニットと、指定したユニットのパイロット全員の精神ポイントを回復する精神コマンド献身」の組み合わせが猛威を振るい、他の強力な精神コマンドと併せて使うことで最強武器の連発を容易としている。

歴代でも、分身系能力を所持する機体が敵味方問わず極めて多い。しかし本作には感応が存在しないため、必中直撃の無いパイロットでは手軽な対処ができない。

演出面

GBA最終作ということもあって、全体的に演出面の劇的な強化が行われている。グラフィックはほぼ全てDから一新された。『OG2』から更にアニメパターンが増加し、ダメージモーションや回避モーションも新規に作成された。

主人公やサブパイロットのカットインはアニメーションするようになり、前期と後期で別々に用意されている。女性パイロットは、任天堂携帯機では初めて乳揺れの演出まで入るようになった。

容量や制作期間の問題か、SPT系やブレンパワード系&グランチャー系などはモーションパターンの流用が目立っている。本作の戦闘アニメは、後継機ニンテンドーDSの『W』でも幾らかがそのまま流用、或いはアレンジされている。

また、画面レイアウトが一新され、アイコンのサイズが大きくなるなど、メニュー画面のイメージも大きく変化した。

インターフェースも改められ、テキストが一度に三行まで表示されるようになったが、文章が途中で不自然に改行され、一行だけが次のページに跨っている、というケースが散見される。このことから元々は二行表示だったが、シナリオが上がってから三行表示へ変更された可能性が高い。

評価

先述の通り戦闘アニメーションのクオリティは非常に高く、ハード性能の限界に迫るものとして高評価を受けている。

他方、シナリオの評価は芳しくない。オリジナル勢力であるフューリーに関して説明不足、テキスト上で口調に統一感がない(カティアのカルヴィナに対しての呼び方等)、エンディングの後日譚にバンプレストオリジナル、『マジンカイザー』、『フルメタル・パニック!』、ミスマル・ユリカマリュー・ラミアス以外の面々が登場しない、誤字も多いなど練り込みの甘さが目立っている。特に誤字は歴代最多で、単なる誤変換の数よりもむしろ根本的な設定の間違いの方が多い。これらについては、当初のメインライターであった鏡俊也氏の途中降板と、それに伴う後任ライターへの設定やプロットの引き継ぎが上手く行われなかったことに起因するという見方が有力である。後任ライターはメカデザインと兼任(恐らくデザイナーが本業)であり、制作における混乱ぶりが窺える。

ゲームバランス面も、独自の敵思考ルーチン(0%スルー)によりリアル系のユニットをあまり活躍させられないとしてしばしば不満点に挙げられている。

話題

  • 取扱説明書のデータリストには精神コマンドの名称がついた強化パーツ類がリストアップされているが、これらは実際のゲームには登場しない、いわゆる「没システム」である。開発納期の関係で説明書を修正できなかったものとみられ、ここにも制作状況の慌ただしさが垣間見える。
  • 隠し要素として、『冥王計画ゼオライマー』から幻のグレートゼオライマーが登場した。
  • 発表の時点で既に開発度100%(=マスターアップ済)だった[1]。延期がつきもののスパロボシリーズの中にあって異例のスピードリリースであったが、それ故開発を急いだためか多くのバグも残している。
  • 主人公機の扱いにおいて、スーパー系リアル系の分類が公式で行われた最後の作品である。
  • スーパーロボット大戦W』や『スーパーロボット大戦K』で採用されている、Wスロットシステム対応作品のひとつ。資金の他、強化パーツとして『W』では「SRW-Jの魂」、『K』では「オルゴン・クラウド」が入手可能。
  • スーパーロボット大戦OG ムーン・デュエラーズ』に本作のキャラ達が参戦した際には音声の収録がある都合上、統夜・カルヴィナともに3人娘との掛け合いがあるため収録が非常に多くなってしまい[2]、寺田プロデューサーも「(あまりの収録量の多さに)誰だよこんな設定考えたの、と思った」と公式ラジオ第493回で言及している。

登場作品

新規参戦は★の4作品。

第2次』から『第3次α』まで、オリジナル関連の要素は、独立した参戦作品として扱われていたが、本作以降の公式サイトなど、参戦作品とは別「(バンプレスト)オリジナル」として紹介されているため、参戦作品として扱わない(例外として『MX PORTABLE』、『SC2』の2作のみ、オリジナルは参戦作品として扱われている)。

シリーズとしては初めてゲッターが不登場となり、所謂御三家(マジンガー、ゲッター、ガンダム)が揃わない形となった(ただし本作以前に発売された、3部構成の『スーパーロボット大戦COMPACT2』では、第2部にゲッターが登場していない)。ガンダムシリーズにおいても宇宙世紀系作品が不登場となり、本作以降携帯機シリーズのガンダム作品の軸はコズミック・イラ系作品へとシフトされている。前作(D)からの続投は一作品もない(ただしマジンガー系のキャラ・機体は別出展名義で参加している)。

新規枠ではロボットアニメではないテッカマンブレードが参戦した。また『フルメタル・パニック?ふもっふ』もロボットアクションを主題としない所謂日常系コメディ作品である。

世界観

世界観/J』を参照。

バンプレストオリジナル

登場メカ(オリジナル)

主人公機
下記3機のうち、いずれか1機を選択。
機体名 初登場 備考
ベルゼルート 本作  
ベルゼルート・ブリガンディ 本作 ベルゼルートの後継機
ゲーム中では「B・ブリガンディ」
クストウェル 本作  
クストウェル・ブラキウム 本作 クストウェルの後継機
グランティード 本作  
グランティード・ドラコデウス 本作 グランティードの後継機
ゲーム中では「G・ドラコデウス」
また、条件を満たすと、下記の機体が第4の主人公機として使用可能になる。
機体名 初登場 備考
ヴォルレント 本作  
ラフトクランズ(主人公用) 本作 ヴォルレントの後継機
サブパイロットにより最強武器が異なる
敵勢力機(フューリー)
機体名 初登場 備考
リュンピー 本作  
ドナ・リュンピー 本作  
ガンジャール 本作  
ヴォルレント 本作  
ラフトクランズ(アル=ヴァン用) 本作 最終話のみ味方機として運用可能
ラフトクランズ(ジュア=ム用) 本作  
ラフトクランズ(フー=ルー用) 本作  
ズィー=ガディン 本作  
ズィー=ガディン(最終) 本作  
オルゴンエクストラクター 本作 最終話で4基登場する装置。
全て破壊しないとズィー=ガディン最終形態を倒せない

登場人物(オリジナル)

主人公及び関連人物
統夜かカルヴィナのうち、いずれか1人を選択。パートナー3人はいずれの場合でも登場する。
人物名 初登場 備考
紫雲統夜 本作 男主人公
カルヴィナ・クーランジュ 本作 女主人公
カティア・グリニャール 本作 主人公パートナー1人目
フェステニア・ミューズ 本作 主人公パートナー2人目
メルア・メルナ・メイア 本作 主人公パートナー3人目
フランツ・ツェッペリン 本作 主人公機の設計者
シャナ=ミア・エテルナ・フューラ 本作 フューリーの皇女、非戦派
統夜・カルヴィナはパートナー3人のうち1人をサブパイロットとして同乗させて戦闘するわけだが、このサブパイロットとして同乗させた回数がゲーム内容に若干影響する。詳しくは隠し要素/J参照。
敵勢力(フューリー)
人物名 初登場 備考
アル=ヴァン・ランクス 本作 最終話で味方となる
ジュア=ム・ダルービ 本作  
フー=ルー・ムールー 本作  
グ=ランドン・ゴーツ 本作 フューリーの実質的指導者 
従士 本作
準騎士 本作

関連記事

ゲーム中データ

分類 記事
全話一覧 全話一覧/J
隠し要素 隠し要素/J
精神コマンド 精神コマンド/J
強化パーツ 強化パーツ/J
特殊能力 特殊能力/J
特殊技能 特殊技能/J
メカ&キャラクターリスト メカ&キャラクターリスト/J

関連用語

フューリー
おおよそ46億年前、まだ出来たばかりの地球に訪れた流浪の異星人達。地球を生命あふれる星にしたのは移住を目指した彼らの手に寄るところ。しかしその後に、長いコールドスリープを経て移住しようと目覚めたところ、既にして地球とその周辺宙域には地球人が溢れていた……
オルゴン・クラウド
フューリー系の機体に搭載されている動力を利用した転移装置兼バリアフィールド発生装置。機体能力としては見あたらないが、劇中の台詞からするとヴォルレント以外の前半主人公機にもちゃんと搭載されている。
サイトロン
フューリーが使用するテクノロジーの根幹を為すと思われる物質。動力として使われているオルゴンとはまた別物。
ラースエイレム
騎士機ラフトクランズに搭載が確認されている機構。元々はコールドスリープ用の機能らしい。対象の時間経過を止める装置で、航空機であるはずのスカイグラスパーまでもが空中で静止していたという台詞からすると、周辺の空間もろとも動きを止めている可能性がある。言うまでもないが、時間を止められた側はその間やられっぱなしとなる。歴代敵組織の保有技術の中でも極めて危険なものの1つ。こんなものを持っている彼らが46億年前の戦争に敗れたのは、シャナ=ミア曰く「フューリーがいくつもの星団に分かれて争った」内輪もめだったからである。
ラースエイレムキャンセラー
上記のラースエイレムの効果をキャンセルする機構。主人公機にのみ搭載されており、これ無しでフューリーの襲撃を受けてしまったグラドスは一方的にやられ、月面の戦力は壊滅。月面からの撤退を余儀なくされる。
ガウ・ラ=フューリア
大昔に地球圏に逃れたフューリーの一派が乗ってきた、巨大な宇宙船。皇帝機ズィー=ガディンを中枢とする。最低でも120万人以上が収容されていたことからして、ヱルトリウム並みかそれ以上の大きさと思われる。
ステイシス・ベッド
ガウ・ラ=フューリア内の冬眠エリア。時間停止技術によりコールドスリープしたフューリーの民が眠っており、目覚めの時を待っている。
フューリア聖騎士団
フューリーを守護する軍隊。劇中での描写では、階級は「従士→準騎士→騎士→総代騎士」の順に高くなるようである。

脚注

  1. http://blog.spalog.jp/?eid=28736
  2. 統夜役の島崎信長氏はスパロボの収録史上最も長く収録に時間がかかったと言われ、カルヴィナ役の浅野真澄氏は島崎氏よりは収録が短かったが、それでも5日間かかったとの事。

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