ヴェイガン
ヴェイガンとは、『機動戦士ガンダムAGE』の敵勢力。
概要
物語開始14年前から突如地球圏へと飛来し、スペースコロニー襲撃事件「天使の落日」を皮切りに世界各地で破壊活動を繰り返していた。第1部となるフリット編では正体不明の存在であった事から「UE(Unknown Enemy)」の呼称が使われていた。
歴史
ヴェイガンの正体は、かつて地球連邦政府によって行われた火星移住計画「マーズバースディ」によって、火星圏へと入植した人類の末裔である。
ヴェイガンの先祖達の入植時は火星の過酷な環境を克服できなかった上、火星特有の磁気嵐が原因である風土病「マーズ・レイ」に住民の20%が侵されてしまった[1]。その為、以降の火星移住計画が白紙化し、火星への移住計画が「失敗」と見なされた。挙句の果てに、調査不足の過失と追及を恐れた当時の連邦政府が火星開拓民の全滅を待つという非情な決断を行い、移住計画そのものも隠蔽される等、火星圏への入植者の末裔であるヴェイガンは地球連邦政府から見放されたも同然の扱いを受けていた。その為、ヴェイガンが地球圏に侵略する理由は「母なる地球への回帰の他、自分達を見捨てた地球連邦政府及び地球圏の人類『地球種』に対する復讐」という面も大きい。
しかし、劇中ではマーズバースディから既に百年以上も過ぎた中で、ヴェイガンによる地球に対する度重なる軍事的侵攻が繰り返されている為、現在となってはヴェイガンを単純な「被害者」とは見なせない部分もある。ましてやコールドスリープを利用してずっと生きながらえてきたヴェイガンと異なり、普通に世代の代わっていった地球側の大多数からしてみれば、軍・民間を問わずの容赦無い殺戮を行い、度重なる形で和平の提案をしても「悉く跳ね除ける」か、あるいは「受け入れたように見せて裏切る」ばかりであった上に、何の罪もない地球人の民間人を「モビルスーツの性能を引き出す為のパーツ」として利用し使い捨ての道具にする等、自分達の都合の為だけに外道な所業も平然と行っている現在のヴェイガンは、「一方的な都合だけで破壊と殺戮を行う悪質なテロリスト」でしかなく、フリット・アスノの様にヴェイガンに身内の多くを殺されて激しい憎悪に取りつかれた地球人も、少なからず生み出してしまっている[2]。
国家
ヴェイガンの住民達は火星圏へ建造されたコロニー「セカンドムーン」内部にて生活しているが、地球圏のような環境とは似つかない曇った空が広がる等、過酷な生活を強いられている事が伺える。セカンドムーン以外にも通常タイプのコロニーや衛星フォボスで生活している住民も存在する。これら環境の違いと入植から一世紀以上に渡る長い年月から、地球連邦政府とは異なる全体主義的な国家体制となっている。
軍事
ヴェイガンの軍には地球連邦軍のような明確な階級制度は存在しないが、立場により軍服が異なっていたり目上の者を「様」付けで呼ぶ等、上下関係はしっかりしている。また、右手で握りこぶしを作り、胸部に当てる独特の敬礼作法を持っている。指揮官クラスの将校達はある程度の軍服のカスタマイズが許されているようで、独自デザインの兜をかぶったり(メデル・ザント等)装飾が施された軍服を着用していたりする。
地球連邦という規模で比較にならない組織を相手にすることから諜報・スパイを特に重要視しており、天使の落日事件より前から諜報員を多数地球圏に送り込んでいた。また、連邦政府の高官から連邦軍の士官に至るまで多数の関係者を金銭や脅しでヴェイガンの内通者として仕立て上げている。連邦政府首相フロイ・オルフェノアの逮捕を機に連邦軍は内通者の摘発を主とした「粛正委員会」を立ち上げるも内通者の根絶には至らず、キオ編でもルナベース基地の陥落や戦時本部ロストロウランへのヴェイガン侵攻といった事態を引き起こしてしまっている。
ヴェイガンのモビルスーツ等も怪獣めいた風貌の外観[3]となっており、技術[4]も地球側とは全く異なる上、全体的に地球連邦製MSよりも遥かに高性能となっている。これは政治指導者であるフェザール・イゼルカントが過去に存在した技術が収められたデータベース「EXA-DB」のサブユニットから一部データをハッキングした事による影響もある。また、技術を一から開発し直した地球連邦製MSと異なって出来上がりのデータをサルベージして復元したヴェイガン製のMSの型式ナンバーには、数字が存在していない[5]。
EXA-DBにより地球連邦を圧倒する軍事技術を手にしているが、それ故に技術は完全にサルベージしたデータに頼り切っている状態である。そのため、年々地球連邦軍との技術格差は塞がりつつあるという問題が生じている。サブユニットの情報ではギラーガでMS性能は頭打ちになっており、国力差と継戦能力の乏しさも手伝ってEXA-DBのメインユニットを探し続けている。
登場作品
携帯機シリーズ
- スーパーロボット大戦BX
- 初登場作品。木連とは序盤から同盟組織として連携する故に、ナデシコクルーにとっても因縁がある。
- また、木連と共にバジュラを操って戦力としている。
所属人物
フリット編
- デシル・ガレット
- UEに与する少年。特異な能力を持ち、年少ながらUE内でも一目置かれている。アセム編にも登場する。
- ギーラ・ゾイ
- UEの宇宙要塞アンバットの司令官。ヴェイガンの最高指導者であるイゼルカントに対して深く心酔する。
- 『機動戦士ガンダムAGE』で語られる戦乱の発端となったスペースコロニー襲撃事件「天使の落日」を起こした主犯格である。
- また、闇の武器商人「ヤーク・ドレ」を名乗って兵器の設計図を売り捌く事によって、地球圏における紛争を裏で煽動していた。
- アラベル・ゾイ
- ギーラの息子。アセム編にも登場する。
アセム編
- ゼハート・ガレット
- アセム編以降のキーパーソンで、デシルの弟。地球制圧軍の総司令官。
- メデル・ザント
- フリット編ラストで登場したヴェイガン幹部。ゼハートの司令官着任後は副司令としてゼハートを補佐する。
- ダズ・ローデン
- ゼハートの補佐官。
- マジシャンズ8
- 8人のXラウンダーで構成されたエース部隊。
- イゴール・エバンス
- コロニー「ソロンシティ」にあるテクノソロン社の工場長。
- フェザール・イゼルカント
- ヴェイガンの最高指導者。フリット編終盤で名前のみ触れられ、アセム編から本格的な登場を果たす。
キオ編以降
- ドレーネ・イゼルカント
- イゼルカントの妻。
- ロミ・イゼルカント
- イゼルカント夫妻の息子。故人。
- ザナルド・ベイハート
- イゼルカントの側近。
- ファントム3
- 3人で構成された精鋭部隊。ちなみに、「ファントム3」は連邦側の呼称。
- ゴドム・タイナム
- ファントム3の隊長。
- グラント・オットー、デモン・ラージ
- ファントム3の隊員達。
- フラム・ナラ
- ザナルド配下の女性士官。後に監視も兼ねてゼハートの補佐となる。
- レイル・ライト、ダレスト・グーン
- 共にゼハートの補佐官。
- ディーン・アノン、ルウ・アノン
- 火星圏のコロニーに住む兄妹。
- ジラード・スプリガン、アローン・シモンズ
- 共にヴェイガンへ寝返った連邦軍人。
- ファルク・オクラムド
- 宇宙要塞ラ・グラミス司令官。
- ゼラ・ギンス
- ヴェイガン最強のパイロット。イゼルカントのクローン。
スパロボシリーズでの協力者
- 木連
- 『BX』では結託。余談だが、共に似たような経緯と組織構造を持つ。ただし『ゲキ・ガンガー3』のノリは理解できなかった模様。
- 法術士ニュー
- 『BX』ではムーア界に向かう際、時空転移によりセカンドムーンに飛ばされて保護される。その後、イゼルカントの指名によりゼハート専属の参謀となる。
- ロニ・ガーベイ
- 『BX』ではロストロウラン戦で一時的に共闘。フラグを満たした場合はセカンドムーンで暮らすようになる。
保有戦力
全体的に丸みを帯びた有機的な外見とスリット状のカメラアイが特徴であり、多くのMSが西洋のドラゴンを思わせる翼と尾と可変機構を持っている。艦艇や移動要塞等は、「見えざる傘」というステルスシステムを搭載している。EXA-DBのサブユニット内部に収められていたロストテクノロジーを使用したMSの性能は一級品で、フリット編以前では地球側のMSではまるで太刀打ちできていなかった。
MS
- ガフラン
- フリット編における主力量産MS。長距離航行形態へと変形が可能。
- ゼダス
- フリット編におけるデシルの搭乗機。アセム編ではゼダスR、ゼダスMといった改良機が登場する。
- バクト
- フリット編における近接戦闘型MS。
- ファルシア
- フリット編におけるXラウンダー専用機。
- デファース
- フリット編における地上侵攻用の大型機。
- ドラド
- アセム編における主力量産MS。可変形態がオミットされている。ドラドLという指揮官機も存在する。
- ゼイドラ
- アセム編におけるゼハートの搭乗機。
- クロノス
- アセム編におけるデシルの搭乗機。
- ゼイダルス
- アセム編におけるメデルの搭乗機。
- ダナジン
- キオ編における主力量産MS。もはや怪獣と呼ぶに相応しい外見を持つ。
- ゴメル
- ファントム3が使用する砂漠用MS。
- ウロッゾ
- 水陸両用機。ウロッゾRというゼハート専用機もある。
- ギラーガ
- キオ編・三世代編におけるゼハートの搭乗機。
- ギラーガ改
- ギラーガの改修機。レイルの搭乗機。
- レガンナー
- キオ編に登場する砲撃用量産MS。デファースの発展機。
- ザムドラーグ
- ザナルド・ベイハートの専用機。
- フォーンファルシア
- Xラウンダー専用機。ファルシアの改良機でフラムの搭乗機となる。
- ジルスベイン
- Xラウンダー部隊用の量産機。ゼイドラの改良機。
- グルドリン
- 異形の姿をした試作機。
- ガンダムレギルス
- ヴェイガンが開発した初のガンダムタイプMS。鹵獲した地球連邦軍所属のMSガンダムAGE-3の解析データも元にして開発された。
- ヴェイガンギア
- EXA-DBからハックした技術データを基にして建造された、ヴェイガン製MSのアーキタイプ。
- ヴェイガンギア・シド
- 戦場に現れたシドを取り込んだヴェイガンギア。
- ティエルヴァ
- 地球連邦軍を裏切ったジラード・スプリガンの乗機。GバウンサーをXラウンダー用にカスタマイズした機体。
艦艇・要塞
- ファ・ボーゼ、ファ・メナス
- 多数のMSを搭載する巨大母艦。全長は1kmを超える。ファ・メナスはアセム編におけるゼハートの座乗艦。
- 戦闘艦
- 巨大母艦の一部を構成する小型の戦闘艦。
- ファ・ゼオス、ファ・ザード、ファ・ガンタ
- キオ編以降に登場する新型戦闘艦。大気圏内でも運用可能。ファ・ザードはゼハートの座乗艦、ファ・ガンタはザナルドの座乗艦。
- アンバット
- フリット編に登場する宇宙要塞。かつて遺棄された要塞を再利用したもの。
- ダウネス
- アセム編に登場する移動要塞。巨大母艦を最大で4隻係留でき、強力なエネルギーシールド「ギガンテスの盾」を装備する。
- ラ・グラミス
- キオ編以降に登場する宇宙要塞。要塞を構成する球体からエネルギーを発生させ、集約させることで大出力の「ディグマゼノン砲」を発射できる。
PSP用ソフト版・公式外伝のMS
- ウィゲル
- PSP用ソフト版と公式外伝『機動戦士ガンダムAGE EXA-LOG』に登場。
- Xラウンダー対応機で、若き日のドール・フロストの専用機。両肩にキャノン砲を搭載している。
- グルジン
- 公式外伝『機動戦士ガンダムAGE UNKNOWN SOLDIERS』に登場。ダナジンの陸戦仕様機。
- グルード
- PSP用ソフト版と公式外伝『機動戦士ガンダムAGE UNKNOWN SOLDIERS』に登場。ラ・グラミス攻防戦にてロールアウトした機体。
- ゴールデングルドリンパーフェクト
- 公式外伝『機動戦士ガンダムAGE EXA-LOG』に登場。グルドリンの欠点を改修して量産された機体。
- ガンダムレギルスR
- 公式外伝『機動戦士ガンダムAGE EXA-LOG』に登場。レギルス型のMS開発計画を元に、ゼハート専用機として開発された機体。
- アビゲル
- PSP用ソフト版に登場。射撃戦に特化した機体。
- ディゲル / ディエルガ[6]
- PSP用ソフト版に登場。三本指と縦三本のスリットアイが特徴。
- エゴス
- PSP用ソフト版に登場。ガフランをより人型に近づけたかのようなフォルムをしている。
資料リンク
脚注
- ↑ 小説版ではテラフォーミングの一環として行われた土壌改良プロジェクトの結果、火星地表面に人体に有害な微粒子群が生成されたことに起因する。磁気嵐により微粒子は地表だけでなく、大気圏外や衛星軌道にも届いてしまう。高性能フィルターでも完全に遮断する事は叶わないため、地上から離れたコロニーに住んでいても発病者は後を絶たない。作中でも明言されている通り、火星開拓民の過失ではなく地球連邦政府の調査不足が原因で発生してしまった。
- ↑ 実際、小説版ではゴドム・タイナムの様に、自分達が決して単純な被害者では無く、また自分達の行っている事が悪質なテロリズムでしかないという事実を客観的に理解している者も少なからずいる。
- ↑ これには火星への入植時に使っていた作業用機械がドラゴン型という事もあり、ヴェイガンにはドラゴンを神聖視する文化が存在するところが大きい。
- ↑ ヴェイガンのMSの両手のひらには、ビームバルカンの発射口が搭載されており、その発射口からビームサーベルを形成する事が可能になっている。この機構によって、結果的にビームサーベルを抜くという予備動作が省略され、戦闘面においてに優位である。
- ↑ そもそも、ヴェイガン陣営における数字表記は、ローマ数字となっている。なおローマ数字には0(ゼロ)を示す文字が存在しないため、アルファベットのO(オー)で代用されている。
- ↑ 名前が「ディゲル」から後に「ディエルガ」へと変更された。
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