サナリィ
サナリィ(S.N.R.I.)とは、宇宙世紀ガンダムシリーズに登場する組織。
概要
地球連邦軍の海軍戦略研究所。「S.N.R.I.」は「Strategic Naval Research Institute」の略。
「フォーミュラ計画」による「Fシリーズ」と呼ばれるモビルスーツを開発した実績がある。当初はモビルスーツ開発技術など持ち合わせてなかったのだが、関連技術そのものは手に入れており、宇宙世紀0090年頃において開発活動を開始した。そして軍のコストダウンを目標に、「モビルスーツの小型化」を提案。軍はその提案を聞き入れこそすれ、実際の開発はアナハイム・エレクトロニクス社に依頼した。しかしアナハイムの提示したモビルスーツ「ヘビーガン」の性能は思わしいもの[1]でなく、業を煮やしたサナリィは独自開発を決断するに至った。
「フォーミュラ計画」で開発したモビルスーツの中でも「F9シリーズ」を採用。完成したのが「F90」である。軍との競合テストにおいて、アナハイムのテスト機を打ち破って軍の次期主力モビルスーツ原型として採用され、軍における次期主力モビルスーツのトップの座にF91を君臨させた[2]。なお、ザンスカール帝国によってサイド2支社が接収されてMSの開発を行っていたり、月や地球の支社が逆にリガ・ミリティアに協力していたようである。
自前で大量生産が可能な施設を持っていないため、採用されたGキャノンなどはアナハイム経由で生産・配備されているなど、どちらかというと技術屋的側面が強い。 採用技術はアナハイム・エレクトロニクス、クロスボーン・バンガード、ザンスカール帝国(ベスパ)、リガ・ミリティアら各組織に採用されており、宇宙世紀のモビルスーツ開発に絶大な影響力を及ぼしたのは間違いない。
フォーミュラ計画
一連のモビルスーツ開発計画であり、主な特徴として
- 「徹底したコストダウン」
- 「無駄な装備の排除」
- 「一つに特化したモビルスーツ」
- 「ハードポイントの設置」
- 「熱処理の問題」
が挙げられる。 尤も代わりに低い整備性や機構の動作確実性の低さ、高い開発・運用コストの機体も多く試験機・実験機の類はまだしも量産機原型の機体は連邦軍のニーズの「廉価で性能は標準的かつ高い整備性や機構の動作確実性による高い信頼性、大量配備に向いた機体」という内容からは外れた部分が多く最終的にAEに量産機シェアは奪われる事になった。
なお開発したMSには「F〇×」という形式番号が与えられるが、「〇」がシリーズ名で、「×」がシリーズ内の開発順なので、F90よりもF71(F90Sの正式採用機)の方が新型と言う例も存在する。
- F5系:AFV的MS
- F7系:支援(砲撃)用MS
- F8系:汎用量産型MS
- F9系:主力MS(高性能実験機)
開発したモビルスーツ
- D50C ロト
- 宇宙世紀0090年中期に開発した陸戦用戦車。「F5」系統の機体。『機動戦士ガンダムUC』に登場。
- F89
- 漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』(SRW未参戦)に登場。小型MSを開発する以前、既存規格の18m級MSの最高性能機を目指して開発された。SRW未登場。
- F90の開発が決定された後に、その試作機として作られた機体と言う意味の形式番号のため、名前に反してF8系ではなくF9系である。
- F90
- 宇宙世紀0100年に開発した「F9」系統の機体で、サナリィ製モビルスーツの手本となった。ハードポイントにより多種多様の「ミッションパック」により兵装変更可能。
- 1号機は宇宙世紀ガンダムシリーズにおいて最も長きに渡って運用され続けたガンダムタイプである。
- F91
- 宇宙世紀0110年に開発した「F9」系統の機体。「現時点でのモビルスーツの限界性能の達成」を目標に開発。その性能とポテンシャルは他のモビルスーツを凌駕する。ハリソン・マディン大尉専用に調整された「F91」がある。
- F90III クラスターガンダム
- F91と同時期に開発したF90の発展型。「コアブロックシステム」を採用しつつ、最新技術をも盛り込んだ軍の次期主力モビルスーツ。SRW未登場。
- F70 キャノンガンダム
- F90のミッションパック「サポートタイプ」を基に開発した量産原型機。ここで先述の悪癖である低整備性などの諸問題が発覚、連邦軍はAEにOEM版の再設計機「Gキャノン」の開発を行う様計らう。またサナリィはこの機体の諸データを隠蔽しAEがGキャノンへの再設計時に施した内容に対し一方的に悪し様にこき下ろすネガティブキャンペーンを行う[3]。SRW未登場。
- F71 Gキャノン
- 前述のキャノンガンダムを整備性向上や当時の世情に合わせ過剰火力や性能を抑えた仕様に変更した量産型モビルスーツ。
- 量産型ガンダムF91
- 試作のF91の量産型。基本性能は同等だが、「フェイスオープン」や「質量をもった残像」機能はオミットされている[4]。
- F97
- ビームシールドの発達による射撃戦の陳腐化に対する格闘戦特化[5]、及び木星圏の高重力下に対応する為に開発された「F9」系統の機体。4基の大型スラスターと重装甲で覆われた高機動性のモビルスーツ。4機製造された。なお、この機体だけは軍でなく、「クロスボーン・バンガード」によって引き渡され、「クロスボーン・ガンダムX1」「クロスボーン・ガンダムX2」「クロスボーン・ガンダムX3」として運用された。また、事故で行方不明になったもう一機がザンスカール戦争で運用されていたとも言われている。
- F97-E
- F97の地球圏仕様機。こちらも「クロスボーン・バンガード」によって引き渡され、「フリント」として試験運用させた。本機を次期主力MSとして連邦軍に売るはずだったが、クロスボーン・バンガードの戦いが木星から地球に移りサナリィと海賊の繋がりが明るみになりかけたため、存在自体が抹消され販売計画も立ち消えとなった。SRW未登場。
- F99 レコードブレイカー
- F97販売計画が立ち消えとなったために、起死回生を狙って開発。戦艦クラスでしか搭載できなかった「ミノフスキードライブ」を、モビルスーツサイズで搭載した機体。しかし単騎で地球から木星に到達可能な性能に脅威を感じた木星帝国により機体とデータが破壊され「幻のモビルスーツ」となってしまった。[6]SRW未登場。
関連モビルスーツ
- バーラ・トトゥガ、アラナ・アビジョ
- 木星帝国の「死の旋風隊」を構成した機能特化型MS、トトゥガとアラナ(アビジョ)をサナリィが回収・レストアした機体。ジュピトリス9から回収した資材と併せて「鋼鉄の7人作戦」仕様に換装され、元々のパイロットであるバーンズ・ガーンズバックとローズマリー・ラズベリーが搭乗した。
- ゾロアット
- サナリィのサイド2支社がザンスカール帝国により接収され、「ベスパ」として再編。開発した量産型モビルスーツ。非常に完成度が高い。
- Vガンダム
- サナリィの旧スタッフが開発した量産型モビルスーツ。「F9」系統の流れを受け継いでおり、独自に「ミノフスキーフライト」と呼ばれる浮遊装置を搭載。
- V2ガンダム
- F99では幻となった「ミノフスキードライブ」を搭載したVガンダムの後継機。F90と同じように機体各所にハードポイントが設けられており、バスターパーツとアサルトパーツを装備させることが可能。アサルトパーツにはヴェスバーも含まれている。
- シルエットガンダム / ネオガンダム(1号機・2号機)
- F9シリーズのデータを機密裏に入手したアナハイムが開発したMS。ネオガンダムはコア・ブロック・システムを採用しており、1号機に関してはネオ・サイコミュ・システムというラフレシアにも使用されたサイコミュシステムが搭載されている。一部では最大稼働時ではF91すらも凌駕するといわれている。SRW未登場。
- ガンダムNT-1
- 「機動戦士ガンダムTwilightAXIS」(SRW未参戦)ではオーガスタ研究所で改修されたNT-1をグリプス戦役後に回収していたことが明らかとなっており、パイロットの脱走によって機体そのものはブッホ・ジャンク社の手に渡っているが、機体の管轄はサナリィに置かれたままとなっている。
原作での扱い
- 機動戦士ガンダムF90
- ガンダムF90が登場。
- 機動戦士ガンダムF91
- 主役機のガンダムF91に加え、量産型MSのGキャノンも登場。
- 機動戦士クロスボーン・ガンダム
- 新生クロスボーン・バンガードの支援組織となっている。
- 主役機のクロスボーン・ガンダム」シリーズや量産型ガンダムF91が登場。
- 機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人
- ミノフスキー・ドライブの実験機であるレコードブレイカーが登場。
登場作品
関連作品
- ヒーロー戦記 プロジェクトオリュンポス
- エゥーゴ連邦内に存在する研究所として登場する。F91を開発していたが、マ・クベ率いる敵部隊に襲撃される。
人物
- ジョブ・ジョン
- かつて「一年戦争」におけるホワイトベースの乗組員。戦後は技術者としての道を歩み、「フォーミュラ計画」を立ち上げる。
- アルマイア・グッテンバイガー
- 元々は大学教授であるが、「フォーミュラ計画」にアドバイザーとして参加。SRW未参戦。
- モニカ・アノー
- 「バイオ・コンピュータ」の開発者。シーブック・アノーの母親である。
- デフ・スタリオン
- サナリィ所属のテストパイロットで「F90 1号機」のパイロット。SRW未参戦。
- シド・アンバー
- サナリィ所属のテストパイロットで「F90 2号機」のパイロット。SRW未参戦。
- ベルフ・スクレット
- 「F90 1号機」、「F91」(未完成)のパイロット。SRW未参戦。
- シーブック・アノー(キンケドゥ・ナウ)
- 「F91」および「F97」のパイロット。実質的にサナリィのテストパイロットとして運用した。
- トビア・アロナクス
- 「F97」のパイロット。シーブックの後を継いで彼が「F97」を運用。
- ミノル・スズキ
- かつては地球連邦軍のトップエースで、『鋼鉄の7人』においては軍を辞めてテストパイロットを務める。SRW未参戦。
- オーティス・アーキンズ
- サナリィ第二開発部の主任。『機動戦士Vガンダム』の人物ではあるが、この頃は性格が大きく異なっている。「F99」が破壊されたことで燃え尽きて大人しくなったのか、それともこの後に牧師となって丸くなったのか。
- ミューラ・ミゲル
- サナリィ第二開発部の技術者。F99を担当したが、破壊された。その後はF99を復活させるべく「V2ガンダム」を開発。ウッソ・エヴィンの母親である。
- 『機動戦士Vガンダム』の人物ではあるが、その宇宙世紀0153年頃においては36歳。逆算するとサナリィ在籍中の宇宙世紀0136年では19歳(20代直前)となる。
関連用語
- 地球連邦軍
- 地球連邦政府の軍事部門で、サナリィにとっては上部組織にあたる。
- クロスボーン・バンガード(ブッホ・コンツェルン)
- クロスボーン・ガンダムX1、クロスボーン・ガンダムX2、クロスボーン・ガンダムX3を開発・譲渡している。また、前身となるブッホ・ジャンク社にガンダムNT-1を極秘裏に引き渡したと思わしき形跡もあった。
- アナハイム・エレクトロニクス
- ライバル企業。MS用先進技術競争ではサナリィがアナハイムよりも上だが、量産型モビルスーツ開発では、アナハイムの方が依然トップシェアである。
脚注
- ↑ 尤もサナリィの提示した内容は「戦時機体」レベルの内容だった可能性が高く大規模な敵対組織の居ない当時の世情に於いては過剰な軍拡タカ派的傾向を示す物ではある。
- ↑ 尤も120年代から150年代までの後発高性能機体はいずれも存在秘匿を要する機密機体ばかりだったのでそれ等が表に現れない分の「暫定的な地位」である。
- ↑ 主流設定書籍でキャノンガンダムの諸設定や差し戻し経緯を記さず隠蔽改竄したり、かつてAEから無償許与されたSTガンの原型であるジェガンJ型のAEからの供与部分のみ内容を消すなど徹底しており、当時のサナリィの暗部が見て取れる
- ↑ フェイスオープンは「フェイスオープン(強制冷却)が必要なほどの機動を行えるパイロットが居ない」、質量を持った残像は「偶々ラフレシア(鉄仮面)相手に効果があっただけの不具合」と言う理由がある。
- ↑ 『機動戦士Vガンダム』の時代になるとビームライフルの性能向上(ヴェスバー技術の応用?)で射撃戦が復権している。
- ↑ さらにこの時にデータも強奪されたのか『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』では、アマクサのデータと掛け合わせた特務モビルスーツ「ファントム」が木星帝国で開発されている。
|