宇宙世紀
宇宙世紀(Universal Century)
『機動戦士ガンダム』の世界で使用される年号。略号はU.C.。
西暦の時代に成立した地球連邦政府は、地球の環境維持と人類存続のための一大プロジェクトとして宇宙移民政策を実行に移す。人類の宇宙進出と共に始まった宇宙世紀。人類は地球と月との重力の均等なポイント、ラグランジュポイントにスペースコロニーを作り、そこへ移民していった。しかし、時は過ぎ、スペースコロニーに居住する宇宙移民(スペースノイド)と地球に居住する者(アースノイド)を中心とした地球連邦政府との軋轢は高まり、ついには様々な形で噴出するのであった。
……というのが大まかな世界観となっており、主に地球連邦政府とそれに対して反感を抱いて挙兵した宇宙移民の勢力が争う……という構図を繰り返す歴史として成り立っているのだが、シリーズ自体が長年続く中で現実とのすり合わせを繰り返し、数々の解釈と設定が追加されていった結果、現在では把握するのも大変なほど膨大な設定が存在するまでに至っており、それが作品制作におけるある種の制約にすらなっている面もあると言える。また、これらの設定は自然とガンダムシリーズを形作る定型となり、後の非宇宙世紀作品においても必然的に取り入れられている場合が多い。
ただし、ロボットアニメの常か、軍事や戦争以外、特に一般人の環境や日常に近い部分の設定はあまり重視されずに厳密な設定化は免れている。
作中で宇宙世紀という年号が使われ、年表の中の一つとして認知されているガンダムシリーズを宇宙世紀シリーズ又は宇宙世紀ものなどと呼称する。具体的には『ファースト』、『第08MS小隊』、『0080』、『0083』、『Ζ』、『センチネル』、『ΖΖ』、『逆襲のシャア』、『UC』、『ガンダムF90』、『ガンダムF91』、『クロスボーン』、『Vガンダム』等(未参戦作品では『Gセイバー』等)。これらの作品を総称し、『Gガンダム』や『ガンダムW』等毛色の違う作品と区別する意味で「宇宙世紀もの」と呼ぶことも多い。特徴は世界設定および科学設定にある。
スパロボにおいては、スーパーロボット物が日本の基地と敵本拠地周辺及び出撃先で完結している事が多いためか、地球圏規模での世界背景や政治システムについては宇宙世紀のシリーズに準拠する事が多い(ただし、年号は「新西暦」など)。もちろん、そんな世界背景の中でもスーパーロボットの研究機関は独立して存在し、日本は驚異的な密度で研究機関が乱立している割には地球連邦政府から目を付けられていないのだが。ちゃんと狙ってくるだけ敵の方が見る目があるようだ。連邦政府の無能を表しているのだろうか。
改暦の謎
西暦から続く世界観なのだが、西暦何年から宇宙世紀になったのかが明かされていないため、具体的にいつからなのかは不明である。
小説およびOVA『機動戦士ガンダムUC』において西暦から宇宙世紀にかわる瞬間が濃密に描写されたが、肝心の劇中が西暦何年であるかはやはり明らかにされなかった。通説では、コロニー第一号に移民を開始した西暦2045年より未来の時間の出来事だというが(漫画版『F91』や『G-SAVIOUR』〈いずれもSRW未参戦〉では同年を宇宙世紀元年として換算している)、これにも諸説[1]ある他、最近では長年続く現実との世界観設定の辻褄合わせを苦慮してか、あえて明確な設定を設けず曖昧な扱いにしているとも言える。
また、「全てのガンダム作品がたどり着く未来である『∀ガンダム』以後に制作された『機動戦士ガンダム00』では西暦が用いられているのだが、もしも『00』がそのまま黒歴史に含まれ、作品世界の西暦が現在の西暦と全く同じであるならば、少なくとも24世紀(ちなみに、『00』の完結編である『劇場版 機動戦士ガンダム00』のエピローグは西暦2364年)までは西暦は続く事になる。
終了の謎
宇宙世紀が何年まで続いたのかについても詳しく語られてはいない。『ガンダム Gのレコンギスタ』(SRW未参戦)の年号はR.C.(リギルド・センチュリー)であり、宇宙世紀の次の時代と明言されている。しかし、『Gレコ』の時点でR.C.は1000年を過ぎており、宇宙世紀からの移り変わりの詳細も不明のままである。ちなみに、作者の富野監督自身は漫画雑誌『ガンダムエース』でのインタビューで「(U.C.からR.C.への移り変わりの詳細については)僕は知りません。そういう事はR.C.の歴史学者にでも聞いて下さい」と発言したほか、またトークショー『夜のGレコ研究会』では「『∀』は『Gレコ』の500年前の話」と語っており、少なくとも「U.C.から正暦を経てR.C.に至る(“次の時代”と言っても直接次に至るというわけではない)」というのが富野監督の想定のようである。
サンライズの公式作品か非公式作品かに関わらず、劇中でアナウンスされた宇宙世紀の最も遠い未来は、長谷川裕一氏の漫画作品『機動戦士Vガンダム外伝』(SRW未参戦)のラストで記述された「恒星間航行宇宙船ダンディ・ライオンが、プロキシマ・ケンタウリへの植民を達成した」というもので、それが宇宙世紀0653年の事とされている。また、外宇宙から地球圏に漂着したターンXを元に∀ガンダムが作られたのが、宇宙世紀に換算して7800年頃とされているが、あくまで「宇宙世紀に換算すれば」であって、宇宙世紀そのものとは限らない。また、『∀』の時代から宇宙世紀までの時間差はTV版では10000年、劇場版では5000年とされているが、これはあくまでリリ・ボルジャーノが言った事であり、正確な時間差とは限らない。
関連用語
- 地球連邦政府
- 地球圏を中心とする巨大な連邦国家。スペースノイドに対して圧政を敷いており、それが宇宙世紀世界におけるスペースノイドの反乱の一因となっている。
- 地球連邦軍
- 地球連邦政府が保有する軍隊。腐敗が進んでいる組織で、スペースノイドの反乱に対しては後手に回ることが多い。
- スペースコロニー
- 宇宙植民地。気密にした巨大シリンダーの内部をテラフォーミングよろしく造成して大地とする人工天体。スパロボ的には宇宙からの侵略者や地球の圧制に苦しめられるスペースノイドの居住地。
- アースノイド
- 地球に住む人々で、地球連邦政府のスペースノイドに対する圧政の恩恵を受ける人々。地底勢力等の多いスパロボではスペースノイド並に不幸である事も多い。
- スペースノイド
- 宇宙植民者の内、主にスペースコロニーに住む人々。地球連邦政府の圧政の影響で、宇宙の武闘派や革命勢力に対して概ね協力的。
- ミノフスキー粒子
- 光子と対になる粒子。通常では存在せず人為的に散布しないとその効果は現れない。一度散布されると消滅までの約一ヶ月間、その効果を発揮しつづける。
- ミノフスキー粒子はプラスかマイナスの電荷をもっており、互いの斥力により立体格子状のフィールドを形成する。これによって「空間そのものが電荷をもっている」状態になる。そのため電波や電子機器、通信機器やミサイルなどの自動追尾装置や照準装置の性能が著しく落ち、ときに使用不能に陥る。
- さらに、ミノフスキー粒子によって、安全な小型核融合炉や重力に逆らうミノフスキークラフト、メガ粒子砲や各種ビーム兵装、Iフィールド等が生み出されている。
- モビルスーツ
- 通称「MS」。小型核融合炉を搭載することで、それまでに無い装甲と運動性とを兼ね備えた人型の機動兵器。ミノフスキー粒子の影響下では、この形が一番都合が良いらしい。
- モビルアーマー
- 汎用性と運用性を求めたモビルスーツと違い、機能を特化させるために大型化させ人の形をさせていないものを指す。
- ……のだが、いろんなメカが登場する間に「でかくてモビルスーツっぽくないのがモビルアーマー」ということになったようである。
- R.C.
- 『ガンダム Gのレコンギスタ』(SRW未参戦)の世界観で使用されている年号。「Regild Century(リギルド・センチュリー)」の略。宇宙世紀の次の時代を表す。
宇宙世紀を舞台とする作品
- 機動戦士ガンダム(宇宙世紀0079年)
- 機動戦士ガンダム 第08MS小隊(宇宙世紀0079年)
- 機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争(宇宙世紀0080年)
- 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY(宇宙世紀0083年)
- 機動戦士Ζガンダム(宇宙世紀0087年 - 0088年)
- ガンダム・センチネル(宇宙世紀0088年)
- 機動戦士ガンダムΖΖ(宇宙世紀0088年 - 0089年)
- 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(宇宙世紀0093年)
- 機動戦士ガンダムUC(宇宙世紀0096年)
- 機動戦士ガンダムF90(宇宙世紀0120年 - 0122年)
- 機動戦士ガンダムF91(宇宙世紀0123年)
- 機動戦士クロスボーン・ガンダム(宇宙世紀0133年 - 0153年)
- 機動戦士Vガンダム(宇宙世紀0153年)
略年表
- U.C.0001
- 紀年法が西暦から宇宙世紀へと改められる。ラプラス事件発生。
- ラプラス事件に関与していた若者サイアムがラプラスの箱を偶然入手し、後にそれを元手にしてビスト財団を起こす。
- U.C.0079
- U.C.0079年1月3日、一年戦争勃発。U.C.0080年1月1日、終戦。
- U.C.0081
- ジオン残党軍の一部が水天の涙作戦決行。
- U.C.0083
- デラーズ紛争勃発。
- U.C.0087
- グリプス戦役勃発。
- U.C.0088
- グリプス戦役終戦。ペズンの反乱発生。後期、第1次ネオ・ジオン抗争(ハマーン戦争)勃発。
- U.C.0093
- 第2次ネオ・ジオン抗争(シャアの反乱)勃発。アムロ・レイおよびシャア・アズナブル、MIA(戦闘中行方不明)。
- U.C.0096
- ラプラス戦争(第3次ネオ・ジオン抗争)勃発。ラプラスの箱が全世界に公表される。
- U.C.0099
- ネオ・ジオン残党による反乱発生。
- U.C.0100
- ジオン共和国が自治権を放棄。
- U.C.0104
- マフティー動乱。
- U.C.0120-0122
- 第1次・第2次オールズモビル戦役。
- U.C.0123-0128
- コスモ・バビロニア建国戦争。
- U.C.0133
- 木星戦役。
- U.C.0149-0153
- ザンスカール戦争。
- U.C.0218
- 地球連邦政府瓦解。スペースコロニーの名称が「セツルメント」に改められる。
- U.C.0223
- ガイアの光事件。
- U.C.0224
- セツルメント国家議会軍の強硬派がプロジェクト・レイヴンを決行。
- U.C.0653
- プロキシマ・ケンタウリへの植民が行われる。
宇宙世紀憲章全文
憲章の内容は以下。原文は英文であるため、意訳する。 なお第七章はオリジナルの石碑にのみ刻まれている。
- 宇宙世紀憲章
- 宣言
- 地球連邦は、ここに宇宙世紀憲章として以下の条文を宣言する。
- これは地球連邦首相リカルド・マーセナスにより、U.C.0001の最初の日、ラプラスの居住区画にて実効する。
- 第一章 宇宙世紀
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- 第一条
- 地球連邦及び加盟国は、宇宙における活動の拡大と地球環境維持のため、人類の団結の象徴として「宇宙世紀」の呼称を採択する。
- 第二条
- 第一項:宇宙世紀は、地球連邦において唯一の公式の時代名である。
- 第二項:地球連邦は、宇宙世紀の制御システムに基づき、年間予算計画を構築する。
- 第三項:地球連邦およびその全ての下部機関は、全ての公式文書を宇宙世紀のものとする。
- 第二章 宇宙活動の拡大
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- 第三条
- 地球連邦とその加盟国は、人類の生存のための宇宙活動を拡大するために、地球連邦の基本原理に基づいて建設的な役割を果たさなければならない。
- 第三章 宇宙生存圏の開発
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- 第四条
- 地球連邦およびその加盟国は、月および他の天体上を含む生存圏開発において、各々の文化と社会の多様性、地球環境に配慮した上で開発を行わなければならない。
- 第五条
- 宇宙生存圏の開発は、地球連邦の最優先の政策として社会安定の原則に従って保証されなければならない。
- 第四章 宇宙移民政策
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- 第六条
- 地球連邦とその加盟国は、資源の不足している全ての人々のために、宇宙移民政策を積極的に推進しなくてはならない。
- 第七条
- 地球連邦とその加盟国に属する全ての市民は連邦法に基づき、月および他の天体上を含む生存圏を含む、連邦政府が承認した宇宙移民の場に移動し、常駐する権利を持つ。
- 第八条
- 地球連邦は、地球環境の利益と人類の将来のために、月および他の天体上を含む全ての領域の生存圏を管理せねばならない。
- 第九条
- 各スペースコロニーは地球連邦の地方公共機関として機能するものとし、その管理機能は、原則として地球連邦の中央政府に帰属するものとする。
- 第十条
- 地球連邦は、避難民と連邦の支援を必要とする第三国の民間人の宇宙移民のために、特別に法律を制定しなければならない。
- 第五章 宇宙移民者の権利
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- 第十一条
- 地球連邦は連邦法に基づき、月およびその他の天体を含む宇宙生存圏のすべての市民のために、性別、言語、宗教による区別をすることなく、人権及び基本的自由の実現を追求しなければならない。
- 第十二条
- 地球連邦は、人類のために適した環境を作り出し維持するために、月およびその他の天体を含む宇宙生存圏における経済、社会、文化、教育、医療のための公共インフラを確立しなければならない。
- 第六章 一般規定
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- 第十三条
- この憲章は、この憲章によって認められる全ての権利を破壊するための活動に従事するものに権利を保障するものではない。
- 第十四条
- この憲章は、英文によって表記され、地球連邦の認める代表者のアーカイブに保存され続ける。
- 第七章 未来
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- 第十五条
- 地球連邦は大きな期待と希望を込めて、人類の未来のため、以下の項目を準備するものとする。
- 1.地球圏外の生物学的な緊急事態に備え、地球連邦は研究と準備を拡充するものとする。
- 2.将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政府運営に参画させることとする。
地球連邦
- 第七章も含めて基本的には理念や大まかな方針の提示であるが、第四章・第九条の「スペースコロニーの所属」だけが明確にされている。後々になってもこれに基づく政治体制がアースノイドとスペースノイドの軋轢の遠因ともなっている。
脚注
資料リンク
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