デスティニープラン

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デスティニープラン(Destiny Plan)とは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』にて登場した計画。

概要[編集 | ソースを編集]

DESTINY』の時期においてプラント最高評議会議長を務めたギルバート・デュランダルが、コロニー「メンデル」の遺伝子研究所に在籍していた時期に具体案を構想した計画。人間の遺伝子を解析する形でその人が持つ適性を調査し、その解析結果を基にその人を適した職業に斡旋するシステムとされており、最終的にはそれにより国家間の争いを解消とする目的を持つ。

しかし、この計画を考案したのはプラント側である上に、ナチュラルよりもコーディネイターの方が能力的には優れている者が多い為、計画が実行に移されると、事実上世界はプラントやコーディネイターが主導となるのはほぼ必然で、つまりこのデスティニープランは、「ナチュラルよりもコーディネイターの方に都合の良い計画」であったともとれる。更にシステムの導入は完全強制であり、言うなればプランが定めた他の人生の行動は阻害される事になる。だが、この発表は世界中に混乱を与え、オーブ連合首長国とスカンジナビア王国、一部の地球連合軍は反対を表明。これらの勢力に対しデュランダルが実力行使に出た結果、メサイア攻防戦が勃発。その最中にデュランダルが死亡し、メサイアに準備されていた解析用の量子コンピュータ群も全て大破した事で施行は阻止された。

なお、本計画に関しては、デュランダルがメンデルに在籍していた時期にて、当時の同僚にも内容を話していたようである。ただし、その人物は私用のノートに「デスティニープランは今の世界に有益に思える」と前振りをした上で「人は世界の為に生きるのではない。人が生きる場所、それが世界」と殴り書きをしており、暗にデスティニープランを批判している。

プランに対する反応[編集 | ソースを編集]

その名の通り『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』という作品の中核ともいえる存在だが、劇中において多く語られなかった故にその解釈はファンや制作側、各『SEED』関連のメディアにて様々である。ただ、前述の通りこのプランは「コーディネイターの方に都合の良い計画」であったが故に、プラント側で計画に反対するものが少なかったのも、当然と言えば当然なのである[1][2]

劇中では、明確に拒否したのがオーブ連合首長国と親オーブ国家のスカンジナビア王国及びクライン派、地球連合宇宙軍の残存勢力だけだったが、これは殆どの国がデスティニープランの複雑な全容を把握しきれず、実際は賛成・否かではなく、「どうすれば良いか分からなかった」というのが妥当と言える[3]。また、一見即座に反対を表明したオーブの行動が早過ぎる様に見えるが、戦争が停戦もしていない状態での唐突な発表に加え、オーブの場合は代表であるカガリの発表を電波ジャックで妨害してミーアを使ってオーブを陥れようとしたのだから、拒否するのも当然とも言える。

評価 [編集 | ソースを編集]

デスティニープランの存在は、これだけでも一つの作品の主題になり得るテーマであるが、描写不足が度々指摘される『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』において、物語終盤で登場させるにはあまりにボリュームがありすぎた主題だったとも指摘されている一方、視聴者の中には「机上の空論にも近いと言えるデスティニープランで本当に世界から戦争がなくなるのか?」という疑問が付きまとい、「世界から一旦戦争をなくす」という大義名分を否定しきれるほど明確なものかは大きく判断が分かれている。

また、このプランで直接的に解消されるのは「先天的な資質による格差」「能力と立場が釣り合わない人間の存在」といった限られた問題のみで、それ以外の原因による戦争(主義や思想、宗教、身分の違いによる対立等)をどうやってなくすのかは明かされていない。それ以前に、ナチュラルよりもコーディネイター有利な制度である為、下手をすればブルーコスモスの様に反対派の先鋭化とテロリズムに繋がる危険性も考えられる。逆も然りで、コーディネイターを凌ぐ才能(特に特定の分野ではコーディネイターを凌駕する俗に言う天才[4])を持つナチュラルが確認された際に、検査結果通りにナチュラルの下にコーディネイターを着けられるか、着けたとしてコーディネイター達が不満を持たずに従うかと言う問題点もある。

もちろんデスティニープランにはナチュラルとコーディネイターの力関係以外にも「デスティニープランが執行された場合」に以下の問題点がある。

  • 遺伝子のみを判断材料にしてよいのか?それ以前に、システムが不正に使用されたり歪められたりしないのか?[5]
  • プランに基づいた適性が判明しても、個人の性格や文化的な問題にどう対処し、それを受け入れて、プランに従い続ける事が出来るのか?[6]
  • 複数の職種に対し同程度の適性を持った人間がいた場合はどうするのか?
  • 遺伝子適性があったとしても、貧しい環境等から専門的知識はおろか基礎知識にさえ乏しい無学な者は、誰が業務のノウハウを教えるのか?
  • 人間社会の維持において重要な職業において、それに関する遺伝子適性を持つ者が極端に少ない場合、適正を持つ人の数とその職業に必要な数の差(就労の需給ギャップ)はどの様に解消するのか?
  • 誰もやりたがらないが絶対必要な仕事(いわゆる「3K」等)や犯罪者や殺人者といった非社会性関係、水商売や性産業といった風俗関係の遺伝子的適正を持っている人間の場合、どの様な処遇を受け、そもそも人権自体が真っ当に守られる保証があるのか?
  • 適性のある人間が職に就くだけの費用をどう用意すれば良いのか?業務に習熟するまでは誰がその仕事をするのか?
  • 若者ならまだしも、既に老齢に差し掛かっている人間の場合、全くの未経験、無関心な仕事を遺伝子的適正だけでいきなりやっていけるのか[7]
  • プランを拒否した者達は、その後どのような社会的処置を受けてしまうのか?
  • プランを受け入れてしまった事で、「弱者」の立場となってしまった者の「強者」の立場となった者達へのルサンチマン的感情(強者への不満・嫉妬・敵意等)を抑えられるのか[8]
  • プランを受け入れて職に就いたとしても、事故による負傷や難病に侵された等が原因で職を継続出来無くなったら、どうするのか?
  • プラン成立後に実行時点では全くの想定外である職種の概念が誕生した場合、その対応はどうするのか?

また、「デスティニープランを施行しようとする場合」自体の時にも、簡単に解決しようの無い多くの問題が出てくる。

  • プラントに対してならまだしも、それ以外の国にこの政策を押しつけるのは甚だしい内政干渉である。
  • 職業選択の自由など、基本的人権の重大な侵害である。
  • 個人の努力の否定。[9]
  • 戦後という状況でプランに必要な資材や資金などどれくらい必要になるのか? そして、用意できるのか?
  • プランを施行するにしても、すぐ施行できる訳ではなく、施行するにはどれくらいの時間が必要なのか?
  • ユニウスセブン、戦争、ロゴス狩りで荒廃した場所で適正に合った仕事があるかどうか?
  • デュランダルのロゴス発表によって起きたロゴス狩りによる荒廃、オーブとの関係、終戦の条件等々、プランよりも前にしなければいけない事が山程ある。

等が挙げられ、細かい部分を指摘すればキリがない。

制作側サイドでは、『SEED』シリーズの監督である福田己津央氏が「わざと間違っていると解るように描写した」「これを使えば確かに戦争はなくなる」「世界中の人に知られてしまったので、デュランダルが死亡しても引き継ぐものが現れるかもしれない点が厄介である」といった趣旨の発言をしている。実際に、外伝作となる『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 天空の皇女』と続編『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(どちらもSRW未参戦)では、実際に引き継ごうとした者達が現れている。

登場作品[編集 | ソースを編集]

前述の詳細不明な計画ではシナリオ上で明確に反対を打ち出す事にも難が有るのか、SRWでは大小様々なアレンジを加えられた上で語られている。

Zシリーズ[編集 | ソースを編集]

スーパーロボット大戦Z
機動新世紀ガンダムX』のフロスト兄弟はデスティニープランの副産物、弊害であり、犠牲者というクロスオーバー設定になっている。
ニュータイプに覚醒する可能性を持った人物を探し当てる」という目的でこのプランが流用され、遺伝子的に不適応というだけでフロスト兄弟は否定され、復讐を誓った。
第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇
プラント国防委員長に就任したレイの口からこのデスティニープランの真の目的が、絶望の未来に立ち向かう為にSEEDの素養を持つ人物を探しだし、同時にクロノ保守派から守る為だった」事が明らかになる。

携帯機シリーズ[編集 | ソースを編集]

スーパーロボット大戦K
原作同様ギルバート・デュランダルがプランの実行を推進しようとするが、主人公勢に阻止される。
デスティニープランへの参加を拒否したオーブ連合首長国に対し、武装解除を要求する形で即座に軍を差し向けたり、対話を望むカガリに殆ど取り合わなかったりと、原作以上に性急にことを進めようとしていた感が強い。デスティニープランの内容よりも、むしろデュランダルの強硬的な姿勢に反発が強まったという体裁である。
スーパーロボット大戦L
本作では「デスティニープランの中身」について独自の解釈が盛り込まれており、軍事面では「地球人のゼントラ化」や「『SEEDを持つ人間』の発見」の為にプランを用いて、そうした者達を集めた部隊を結成して地球を守る為の戦力増強に充てる…という「目的」が描写されている等、デスティニープランが対異星人戦略の延長線上として提唱される。(つまりLOTUSと同じような部隊を幾つも作り出す、という意味)。
その為、「遺伝子だけで人の適性が決まるのか」と言う矛盾点にある程度の答えが出ている(ゼントラ化可能かどうかは完全に遺伝子の問題である)。デスティニープランの最終的な目的はあくまでも自軍と同じ「地球の防衛」であり、原作同様些か極端なやり方ではあるものの、それほどネガティブなイメージは無い。
スーパーロボット大戦UX
竜宮島において、生まれながらにファフナーのパイロットとなる事が運命づけられている少年少女達を見て、「かつてデュランダルがデスティニープランを実行しようとしたが、その思想は人々に受け入れられなかった」「デスティニープランが受け入れられなかったのは、人の運命を生まれで決めようとしたからだ」とシンが語っている。この台詞からは「『UX』におけるシンは、デュランダルに反逆したのではないのか?」という推測も成り立つ。

Scramble Commanderシリーズ[編集 | ソースを編集]

スーパーロボット大戦Scramble Commander the 2nd
機動戦士Ζガンダム』のパプテマス・シロッコもデスティニープランの賛同者となっている。
また、本作におけるデスティニープランの正体は「シロッコクローンの軍団によるマクロスの運営と地球圏の防衛」である。

VXT三部作[編集 | ソースを編集]

スーパーロボット大戦V
ネバンリンナから超文明ガーディムの文明体制を語られた際、キラ達はガーディムの管理社会がデスティニープランそのものである事に気づく。

余談 [編集 | ソースを編集]

  • 『SEED DESTINY』放送当時は、理屈には適っているものの現実的な観点からすれば荒唐無稽な理論でしかなかったため批判の材料にもされたが、その後の遺伝子技術の進歩によって着床前診断や新型出生前診断等といった遺伝子検査が確立、生まれてくる子供の難病や遺伝性の病気を事前に知ることが可能となってきており、ある意味「デスティニープランが現実になった」と言える。
    • しかし、これによって生まれる前の病気の遺伝子を持つ胚が捨てられるといった命の選別が起きるようになった結果、「遺伝子が運命を支配する」という、この計画のような現実的問題も浮き彫りとなり、ヘイトによる争いやウイルスデマといった『SEED』シリーズの先見性を表している。

脚注[編集 | ソースを編集]

  1. 電撃データコレクションによると遺伝子調整によって誕生したコーディネイターにとってデスティニープランは有利に働くと書かれている。
  2. 逆を言えば、コーディネイターを凌ぐ天才のナチュラルが現れる可能性を全く考慮していない短絡的な理由で、仮に天才のナチュラルが現れたとして、賛成していた連中が素直に従うか(検査結果の改竄や捏造を行う可能性)と言う疑問もある。
  3. 小説版ではロゴス壊滅とデュランダルによるロゴス打倒の扇動も有り、各地球国家は指導者や有力政治家の暗殺・リコール・追放等が立て続けに発生しており、安定している政権が全く無いという事情もある。本編でもセイラン家消滅により一新されたオーブの閣僚が「ロゴスという魔女狩りでどこも政府がガタガタ」と発言している。
  4. 1stコーディネイターであるジョージ・グレン自身、オリンピックで獲得したのは銀メダル(つまりは2位)と決して完璧な能力を持った人間だった訳では無く、当時から特定の分野では彼を凌ぐ才を持った人物がいた事が示唆されている。
  5. 社会秩序に反するとして迫害された人物が後に再評価されて偉人と見なされる例は歴史上に多数あり、そもそも誰のどのような行いが社会にとって有益であるかは簡単に判断できるものではない。その複雑さを無視して誰かが社会正義を規定しようとすれば、結局は統治者・権力者にとって都合の良い判定だけが罷り通ることになる。劇中においても、自分にとって有用な人材を優遇して不要と見れば切り捨ててきたデュランダル自身が、権力者の恣意性を証明してしまっている。
  6. 小説版では「ずっと野球選手を目指して頑張っていた人が、ある日突然「貴方に野球選手の才能はない、歌手になりなさい」と言われて納得できるのか」という例え話が挙げられている。
  7. 専門知識や技術を求められない職ならまだしも、逆にそれらが必要となる職は非常に困難となるのは避けられず、体力の維持が必要不可欠となるスポーツ選手の場合は「論外」である。
  8. ナチュラルよりも優れた容姿と能力を持ったコーディネイターが生まれて来た時点でこの問題は既に深刻化しており、現在に至っても解決の目途が殆ど絶望的となっていて、戦争やテロにまで発展してしまっている為、それらの事実からも不可能と言わざるを得ない。
  9. すなわち、「適性がないにもかかわらず必死に努力して今の地位に就いた人が、失敗してもいないのに『適性がないから』という極めて理不尽な理由だけで今の地位から蹴落とされる」という事態が発生する。

資料リンク[編集 | ソースを編集]