プロヴィデンスガンダム
ZGMF-X13A プロヴィデンスガンダム(Providence Gundam)
- 登場作品:ガンダムシリーズ
- 分類:試作型モビルスーツ
- 型式番号:ZGMF-X13A(旧設定ではX11A)
- 全高:18.16m
- 重量:90.68t
- 動力:核動力(ニュートロンジャマーキャンセラー搭載)
- 装甲:フェイズシフト装甲
- 開発:ザフト
- 所属:ザフト
- 主なパイロット:ラウ・ル・クルーゼ
- メカニックデザイン:大河原邦男
ザフトが開発したモビルスーツ。ガンダムタイプの内の一機で、フリーダムガンダム、ジャスティスガンダムと同時期に開発されていた、いわば兄弟機ともいえる立場にある。
開発の経緯
この機体の本来の形式番号は「ZGMF-X11A」とジャスティス(X09A)、フリーダム(X10A)に続いていた。しかし、外伝系列の作品でX11Aが取られてしまった為、X13Aへと変更された経緯を持つ(後にX12Aも外伝に登場した)。
元々は4本のビームサーベルを搭載した機体となるはずだったが、核エンジンから供給される、無尽蔵ともいえるエネルギーや、パイロットが空間認識能力の高いクルーゼに決まった事もあり、ドラグーン搭載機に変更された。
性能
核エンジンやニュートロンジャマーキャンセラー、PS装甲、マルチロックオンシステムなどが採用されており、出力、運動性、攻撃力、防御力などの全てにおいて、在来機を遥かに凌駕する性能を持つ。
宇宙空間での運用を主に想定していたのか、機動力自体はフリーダム、ジャスティスを下回るが、それを持って余りある火力が特徴。その火力を堅持するのが、最大の特徴であるバックパックと腰のジョイントに装備された無線式自動攻撃兵器、通称「ドラグーン・システム(Disconnected Rapid Armament Group Overlook Operation Network・system=DRAGOON SYSTEM:分離式統合制御高速機動兵装群ネットワーク・システム)」の存在と言えるだろう。
ドラグーン・システムの搭載は機体の基本設計が終了した後に決定された為、機体の腹部には量子通信ケーブルの一部が露出している。普通ならこの部分が致命的な弱点となったのだろうが、ケーブルはPS装甲でカバーされているため弱点でなくなっている。なお、このシステムはパイロットの超人的な空間認識能力を必要とするため、本機はその適正が確認されているクルーゼの専用機となっている。そのためか、頭部にはクルーゼの仮面に似た形状のフェイスカバーが取り付けられている。
背部に装着されたバックパックの高い推進力による恩恵とプロヴィデンス本体の優秀さにより重力化でも単独で飛行可能。この辺りから本来のプロヴィデンスの機動力の高さが伺える。
劇中での活躍
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦にて、ラウ・ル・クルーゼが搭乗して出撃し、連合、オーブのMSをことごとく葬り去った。さらにディアッカ・エルスマンの駆るバスターガンダムを一瞬にして中破させ、ムウ・ラ・フラガのストライクガンダムも圧倒的な強さで退けた。
その後、ジェネシス付近の宙域でキラの駆るフリーダムガンダムと交戦し、ミーティアを破壊。さらにその後、熾烈な接近戦にもつれこみ、お互い腕や足などを破壊されるが、最後はフリーダムのビームサーベルでコックピットを貫かれ、クルーゼは戦死。機体もジェネシスの爆発の炎に灼かれ、散った。
その他
ドラグーン搭載機に変更された理由は上記以外にも、2機の兄弟機フリーダム・ジャスティスが強奪された事も理由の1つであると推測される。当初の予定では、プラズマ砲及びレールガンを装備した火力特化のフリーダムが遠距離戦、ジャスティスがファトゥムに搭載された実弾火器等を持ちいて中距離戦を担当。そして、4本の大型ビームサーベルと高い機動力をメインに近距離戦=前衛を担当する事こそが初期のプロヴィデンスの役割。この3機の兄弟達はザフト軍の優れたパイロット達の手によって3機1組のバランスの取れた戦闘を行う筈だったのだが、クライン派による強奪(ジャスティスは離反)で3機での運用が永久に不可能となった。この段階でプロヴィデンスは既に開発終盤の段階に入っていたが、この件が引き金となり開発現場は急遽プロヴィデンスをドラグーン搭載機へと仕様変更する事となる。不足した兄弟達2機の働きをプロヴィデンスに託したのである。結果、突然のドラグーン搭載による開発の大幅な遅れや機体の調整不足・未完成な部分が多いながらもドラグーン搭載機となったプロヴィデンスはビームサーベル・ビームライフル・ドラグーンによりあらゆる距離での戦闘を単機でこなす事が可能となり、SEEDにおける最終決戦で正に「天帝」と呼ぶに相応しい戦果を挙げた。
登場作品と操縦者
たった2話しか登場しなかったが、パイロットのクルーゼと相まってSEED系MSでも一、二を争う人気を誇る。しかし、同時に登場話数の少なさが原因でスパロボでは敵として現れる時は終盤で、さすがに強くはあるが既にこちらのレギュラーメンバーが育ちきっているためにそれほどの強敵でもないという少し残念な事が多い。
飛行可能な設定だが、スパロボでは今のところ重力下での空中戦は実現していない。
αシリーズ
- 第3次スーパーロボット大戦α
- 初登場。かなり終盤になってからの登場。今作では宇宙世紀系ガンダムとガンダムWが参戦している上に、主役級パイロットには特殊台詞あり(ヒイロにいたってはクルーゼと名前まで言ってくれる)でクルーゼに返し台詞もあるため、ドリームマッチを楽しむことが出来る。似たような装備をしたνガンダムとも戦える。ドラグーン・システムが実弾扱いなため、フェイズシフト装甲を持つSEED系ガンダムを向かわせると有利。
携帯機シリーズ
- スーパーロボット大戦J
- 版権機体のラストを飾り、ザフト製MSとは思えない高性能ぶり。今回のクルーゼは特殊技能にコーディネイターを持っているため、かなり強い。コン・バトラーVとの戦闘前会話では浪花十三にカニ呼ばわりされる。
- スーパーロボット大戦W
- 第2部の終盤で登場。原作のヤキン・ドゥーエ戦以外ではザ・データベースとの戦いでも登場する。HPが10万を超えているため、倒すのが大変。なお、このステージには隣にあしゅら男爵の地獄王ゴードンとシンクライン皇太子がいるため、余計厄介。
装備・機能
武装・必殺武器
- MMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御用機関砲
- 頭部及び肩部に装備されたバルカン砲。近距離に迫ったミサイルなどを迎撃するために使用された。ピクウスは「きつつき」の意。
- MA-M221 ユーディキウム・ビームライフル
- 肩掛け式の大型ビームライフル。フリーダム、ジャスティスのそれより高出力だが、その重量ゆえ取り回しに難がある。しかし、機能面でそれを補っている。ユーディキウムは「審判」の意。
- MA-V05A 複合兵装防盾システム
- 対ビームシールドに大型ビームサーベルと2門のビーム砲を内蔵した複合兵装。ザフト独特の「一つの武器に多数の機能を持たせる」という思想の元に開発されており、腕にかぶせるようにして使う。武器としての取り回しを優先させた為、シールドとしての性能は低いが、近接戦闘用の武装としての性能は申し分なく、極めて強力である。なお、本機に搭載されたビームサーベルはこのシールドに内蔵されたものだけであり、他のモビルスーツのように予備が無い。この事がフリーダムとの死闘の敗因に繋がってしまった。
- ドラグーン・システム
- キュベレイのファンネルや、エルメスのビットを彷彿とさせる武器。連合側のMAメビウス・ゼロのガンバレルの思想を模倣、発展させた物で、ビーム砲を9門内蔵する大型の物を3基、2門内蔵する小型の物を8基、計11基43門装備している。この43門という砲門の多さはSEEDシリーズで間違いなくトップクラスであり、後に開発された同じドラグーン搭載機のレジェンド・Sフリーダムでは遥かに及ばない攻撃範囲を実現している。この装備のお陰で単機でありながらも、圧倒的な制圧力を発揮している。配置としては背部に大型3基と小型2基の合計5基、腰部に小型6基が装備され、背部の小型2基は分離せずに可動砲台として使用可能。この機能により、大気圏内でもある程度戦闘をこなせる。パイロットによって無線操作され、多角的な攻撃が可能になる。単に攻撃するだけではなく、前方広範囲に雨のようにばら撒く事で敵の攻撃を防ぐ使い方も出来る。だが、この当時のドラグーンは使用者が非常に限られる第1世代のドラグーンのため、使える者は少数に限られ(現段階ではクルーゼ、プレア、コートニーの僅か3名が確認できるのみ)、誰しも運用出来るという訳ではなかった。作品によっては実弾だったりビーム弾だったりとコロコロ変わる。装着されたバックパックは高い推進力を持っており、増加した重量の影響で低下した機動力をカバーしている。
特殊能力
- 剣装備、盾装備、銃装備
- 切り払い、シールド防御、撃ち落としを発動。
- PS装甲
- 通電させる事で相転移する特殊な装甲で、物理攻撃を無効化する。通常はグレー一色だが、通電させると色が変化する。大気圏突入なども可能になるが、エネルギーを大量に消費する上、高出力のビーム兵器などには弱いという欠点もある。
移動タイプ
サイズ
- M
対決・名場面
- 対地球連合軍
- 初出撃後、周囲に展開していた多数のストライクダガーをドラグーンシステムによる一斉攻撃で撃破する。殲滅後、クルーゼの高笑いでこのエピソードは終わるが、視聴者に強烈な印象を残したのは言うまでも無い。
- 対バスターガンダム
- アークエンジェルを守るため、バスターが攻撃を加えたが、プロヴィデンスの前にそれは掠りもせず、逆にドラグーンを交えた猛攻で数秒でぼろぼろにされてしまった。
- 対ストライクガンダム
- 機体性能差を乗り越えてプロヴィデンスに肉薄するも、各所にダメージを受け、追いつめられて戦線離脱。
- 対フリーダムガンダム (ミーティア)
- MSや戦艦の残骸の中を飛び回り、激しい攻撃を加え合うが、図体の大きいミーティアが徐々に追いつめられていき、ついにはエンジン部分にサーベルの一撃を喰らい、キラはミーティアを破棄せざるを得なかった。
- 対オーブ軍
- キラの目の前でフレイを殺害したクルーゼは、そのまま嘗ての歌姫ラクス・クラインの指揮するオーブ軍へと攻撃を再開する。護衛のM1アストレイを数10機を一瞬で撃破し、ラクスの搭乗するエターナルもドラグーンの激しい猛攻により、撃墜の危機に陥ったが、フレイの霊体との邂逅で戦意を取り戻したキラの妨害により、辛うじて撃墜を免れる。SEEDシリーズでエターナルが撃墜の危機に陥ったシーンはこれぐらいなものである。
- 対フリーダムガンダム
- 激しい攻撃の繰り返しとなり、お互い一進一退の攻防を繰り返す。ファーストアタックこそプロヴィデンスのドラグーンのビームであったものの、被弾をものともせずに反撃を敢行するフリーダムに対し、プロヴィデンスも両腕を失うなどのダメージを受ける。最終的には左手一本でサーベルを構えて突撃してくるフリーダムに対し、たった2基のドラグーンで迎撃を試みるも、頭部やコクピット付近への被弾さえ厭わずに特攻するフリーダムによってコクピットをサーベルで刺し貫かれ、クルーゼは戦死しプロヴィデンスは沈黙。直後に放たれたジェネシスの光によって機体は爆発四散、プロヴィデンスはこの世から消え去った。
- 対フリーダムガンダム(ボンボン版)
- TV版とは全く異なり、フリーダムから一度もダメージを受けないほどに圧倒。機体の大部分を破壊し、残された武装も頭部バルカンとバラエーナ1門のみとなったその時、離脱したムウがメビウス・ゼロに乗って再度クルーゼとの戦闘に舞い戻る。機体性能の差によってやはり圧倒するも、ガンバレルのワイヤーによってプロヴィデンスの行動を封じ込められてしまう。ムウはキラに自分ごとクルーゼを撃ち抜くよう告げるが、キラは躊躇する。機体の動きを封じられながらも、ドラグーンの端末を射出し、フリーダムにダメージを与え続けるクルーゼ。ムウの必死の説得によりキラはプラズマ砲でプロヴィデンスを撃ち抜くという苦渋の選択をする。そして、プロヴィデンスとメビウス・ゼロは宇宙に散った。
関連機体
強化型・バリエーション機
- プロヴィデンスガンダム(初期型)
- 4本の大型ビームサーベルを内蔵した大型のバックパックを装備した初期のプロヴィデンス。機体各所も現在のプロヴィデンスとは微妙に異なる。このバックパックを取り外し、代わりにドラグーンシステムを装備した状態が今のプロヴィデンスである。
- ゲーム「終わらない明日へ」のムービーではこの初期型プロヴィデンスを見る事が出来る。今現在、各種メディアで初期型のプロヴィデンスを見る事が出来るのはこの作品のみ。
- ニクスプロヴィデンスガンダム
- 『機動戦士ガンダムSEED VS ASTRAY』(SRW未参戦)に登場するプロヴィデンスの後継機。秘密組織「ライブラリアン」が開発した。ドラグーンを主力兵器として運用すべく様々な改良がされている。
関連機
- ドレッドノートガンダム
- モビルスーツとしては初めてドラグーンを搭載した機体。
- Xアストレイ
- ドレッドノートにプロヴィデンスのものと酷似したドラグーンユニットを搭載した強化機体。
- フリーダムガンダム
- 兄弟機。原作ラストでは激しい死闘を演じた。
- ジャスティスガンダム
- 兄弟機。
- リジェネレイトガンダム
- 兄弟機。Wにおけるヤキン・ドゥーエ決戦ではプロヴィデンスの前座を務めた。
- レジェンドガンダム
- 後継機。扱い難い第1世代のドラグーンを全て第2世代へ移行する事である程度の扱い易さを実現した。しかし、ドラグーンの端末の数が減ってしまっている。
余談
- プロヴィデンス(Providence)とはキリスト教の概念で、「神の意思・摂理」、またはそこから転じて「神そのもの・天帝」といった意味を持つ(『機神咆吼デモンベイン』第1話、及び同話が再現されたUX第3話「I AM PROVIDENCE」はそちらの用法) 。
- 裏話として、実はこの機体については当初案がなかった。しかし「ガンダムでないと今のキラ達に太刀打ちできない」ということから、急遽デザイナーの大河原邦男氏に発注し(彼は1週間で作成したという)、設定が作られた。
- スタッフはその突貫スケジュールを逆手に取って、本機の事前情報を完全シャットアウトする(雑誌等のメディアは勿論、ネット上でのネタバレまで)という手法を取った。その甲斐もあり、上記した初登場シーンは視聴者に強いインパクトを残す事に成功している。
- 機体を後ろから見るとデフォルメした太陽を背負っている様に見える。
- その事から本機はある団体のシンボルマーク「太陽を仰ぐ2人の子供」のパロディAA(アスキーアート)である「さいたま」にちなんでさいたまと呼ばれる事が多かった。
- 『機動戦士ガンダムSEED』の監督をした福田己津央氏がクリエイティブプロデューサーを務めている『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』(SRW未参戦)で、ラスボスにあたるヒステリカの頭部デザインが本機と似ている。更に、搭乗者がクルーゼと同じ声優が担当している。
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