フル・フロンタル
フル・フロンタル(Full Frontal)
ネオ・ジオンの残党を糾合した組織、通称「袖付き」の首魁を務める謎の仮面の男。「丸裸」を意味するその名とは裏腹に、真意を容易につかませない謎めいた言動と行動でバナージ達を翻弄する。
一年戦争時におけるシャア・アズナブルを彷彿とさせる外見や声を持ち、「シャアの再来」と呼ばれている。仮面の下の素顔もシャアに酷似しており、額には一年戦争末期においてアムロ・レイとの死闘で負った傷と同じものがある。
かつての指導者であったシャアが戦闘中に行方不明となり、ジオン独立の理想が消えつつあったネオ・ジオンの残党兵達にとっては、シャアの生き写しのような彼は希望の象徴ともいえる存在になっており、絶大なカリスマ性を発揮している。
また、モビルスーツのパイロットとしての能力や技術も非常に優秀であり、アナハイム・エレクトロニクスとの裏取引で奪取した、サイコフレーム搭載機である真紅のMSシナンジュを駆る。
地球連邦の存続事態を脅かし得る程の強大な「力」を持った「ラプラスの箱」やその鍵を握るユニコーンガンダムを巡り、バナージ・リンクスやロンド・ベルと激突を繰り返す事になるが、箱の利用方針に関しては、ザビ家の遺児でシャアの忘れ形見とも言えるオードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)と対立している。
謎めいた言動の多い掴み所の無い人物で、時には味方にとっても理解しきれない部分を見せる事がある一方、シャア・アズナブル本人にしか知りえない独白や経験を知っている節を見せる事もある。しかしフロンタルはシャアを「敗北した人間」と冷たく見下すなど自身との同一性を否定しており、自身を「宇宙民の意志を受け入れる『器』」と称している。また、仮面で素顔を隠しているのも、フロンタル本人曰く「ファッションのようなもの」に過ぎないらしく、バナージの依頼であっさりと外したこともある。
人格的にどこか青臭さや未熟さを残したシャアと異なり遙かに強かな性格で、大人であるということを平然と武器にしてくる。いわば、シャアから人間的な部分を全て取り去った「赤い彗星という機械」、とも見られる。
フロンタルの目的は、地球の経済活動が宇宙居住民の生産活動に依存している点を逆手に取り、宇宙で唯一自治権を有するジオン共和国主導の下で月と7つのサイドを中心として、地球を排除した経済圏を作り上げる「サイド共栄圏」の確立と、これによる地球連邦の孤立と衰退である。ラプラスの箱を求めるのも、サイド共栄圏構想を実現させるべく、「箱」を連邦政府との交渉材料にしてジオン共和国の自治権返還を延期させ、共栄圏実現までの時間稼ぎをするためであった。
しかし、その理想を語る姿はバナージ曰く「他人事のような」どこか冷めた印象を与えており、また本物のシャアを実の父親の様に慕っているオードリー(ミネバ)からは、ネオ・ジオンの民達が望むならシャアを演じようとする姿勢に対し「空っぽな人間」とまで嫌悪され、サイド共栄圏構想についても、結局は強引にアースノイドとスペースノイドの立場を逆転させるだけで、人類の革新を願ったジオン・ズム・ダイクンの理想(ジオニズム)や、アクシズ落としという凶行に走ってでも人類を宇宙へ上げて地球から自立させようとしたシャアの思想(エレズム)とは程遠い物であると酷評されている。これは、フロンタル自身が「人類はどうやっても、もはや変わることはない」と諦観しているためであり、「人類はどんな手を使ってでもニュータイプにならねばならない」としたシャアの思想とは真反対である。そのため、「人は変われる、分かり合える」と叫び続けるバナージの理想を、「人類に叶いもしない希望を与える存在」として危険視している。
その役回りや立ち位置は、他作品に散見される「シャアのコピー」ではなく、むしろその逆、シャアを演じることで彼の考えや理想と、逆説的にそのライバルたるアムロや自身の宿敵たるバナージをも全否定する、いわば「シャアの負の鏡像」でも言うべき存在。シャアは人類に絶望しつつもどこかで人の革新を諦めきれなかったのに対し、フロンタルは最初からそれらの可能性を完全に否定し「虚しいだけ」と断じる、虚無的といえるほどのリアリストであるという点で対照的である。また、シャアのアクシズ落としの動機の一つは「アムロと決着をつけたい」という私情であったが、フロンタルはこのような個人的動機を一切持っているようには見えず、「器は考えることはしません。注がれた人の総意に従って行動するだけ」と言い切る点でもまた対照的である
フロンタルの存在を一言で表現するなら「スペースノイドが理想として持つ『赤い彗星』像の体現」であり、本人もその理想に自らを合わせる形で振舞っている。
その素性
原作小説版では、ジオン残党軍をひそかに支援していたジオン共和国のモナハン・バハロ国防大臣らが用意した(一年戦争時の)シャアを模して作り上げられた強化人間である。
“赤い彗星”という絶対的指導者を失った後のネオ・ジオン残党が数だけの烏合の衆となり始めたことを危惧した「袖付き」のスポンサーたちは、シャアに代わるカリスマとして「シャアのそっくりさん」を作って送り込んだというわけである。そのため、シャアの血縁やクローンなどの類ではまったく無い。つまり連邦側からの完全独立を画策していたバハロ国防大臣らの操り人形であり(自身を『器』と称しているのも、そういった立場を意識してかもしれない)、外見や雰囲気をシャアに似せているのもプロパガンダの手段に過ぎない。
しかしフロンタルはシャア・アズナブル本人にしか知りえない独白や経験を知っていると思しき一面も見せており、当人は「アクシズ・ショックを経てもなお変わらなかった人類に絶望した、サイコフレームに宿るシャアの意思がその模写である自らに宿ったゆえである」と語っている。どういった経緯でシャアの思念が宿ったのか、またその真偽も判然としないが、宿っているとしてもそれはシャアの思念の一部分でしかなく、しかしフロンタルはその背景からシャアとは全くの別人でもない。バナージがフロンタルの中に見た「虚無」の正体がまさにこれで、肉体を動かしているのはフロンタルでありながら、その根幹にあるのはシャアという別の人間の記憶や経験、という不協和音である。
OVA版においては、特にEP7で小説版と違う人物像になっている。行動自体は小説版と大きく違わないが、意思は明確にシャアそのものであるような描写がされており、また器と自称しながらも彼自身の意思で行動しているようにも見える。最終決戦でもバナージを説得することにこだわった結果、対話によって敗北するという結末を迎える。モナハン・バハロは登場せず、誰がフロンタルを作ったのか最後まで明らかにならないため、小説版の設定が残っているのかも不明である。
登場作品と役柄
Zシリーズ
- 第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇
- 初登場作品。今回はフロンタルが「敗北した人間」と評するシャアその人と共演することになる。
- 「シャア不在時の影武者として活動し、声や姿もシャアそっくりに作られた人間」という原作ネタバレに近い設定で登場している。シャアと似たような声、ということで戦闘画面も聴き比べてみると徹底的に演技分けがされている。
- シャアに似ている一方で、「シャアより大人である」という印象が、本人と共演することでより如実に表れているが、自らの手で業を全うしようとするシャアとは対照的に、フロンタルは目的の為に手段を選ばない傾向が強く、アムロからも「シャアから迷いを取り払った存在」と見なされている。邪魔なアムロの暗殺を謀り、自己保身を優先してZ-BLUEとの戦いを避けようとする等、姑息な行いを繰り返し、本物のシャアを「偽者」呼ばわりまでする等の図々しさから、シャアのみならず、彼をよく知るアムロやカミーユからも、シャア・アズナブルでも無ければ赤い彗星ですらないと、全面否定される事になった。
- 今作においては真の素性は特異点であったシャアと対の存在という設定になっている。その結果、本物のシャアが起った事で身を引いてからしばらくした後、終盤で自分こそが真の赤い彗星と豪語し、自身の派閥を率いて反乱に等しい行動に出ており、シャアに取って代わってパラダイムシティとして模倣されている「アクシズの落下した『正しい』世界」へ導くべく、シャアがアクシズ落としに見せかけて行おうとした時空修復の妨害を目論む。
- 特異点+ニュータイプという文字通りに特異な存在であるゆえか、シャア共々黒の英知に接触した節があり、歴代スパロボの並行世界におけるシャアの動向を掴んでいる。しかし、基本的には原作どおり「スペースノイドの希望たる赤い彗星」を演じているに過ぎないため、彼自身の意図がどういったものかは不明。
パイロットステータス設定の傾向
能力値
影とはいえ「赤い彗星」と呼ばれるだけあり、すべての能力が高水準の強敵。特に射撃・回避・命中に優れる。
精神コマンド
特殊技能
- 第3次Z時獄篇
- 強化人間L9、底力L5、指揮官L4、サイズ差補正無視L3、マルチターゲット、気力+ボーナス、ガード、2回行動
- 先頭に「強化人間」。確かに設定上「ニュータイプ」をつけるわけにはいかず、強敵ぶりを能力補正で再現するにはこうするしかないのだが、ある意味正体がバレバレである(似たような前例はあるにはあったが)。
- データ的に見ると長所を十全に生かすラインナップであり、こちらのタッグをビームライフルでバタバタ打ち落としに来る上、こちらが何かするたびにどんどん気力が上がっていく。
- ただし、精神耐性を保有していないという弱点があり、序盤の突出してくるマップなどでは簡単にALL攻撃を封じることができる。
- ガードと2回行動は当初「???」扱いで未修得だが、最終決戦で解禁される。
- スキルも強化人間を除いて全てシャアと同じだが、なんと強化人間がL9まで成長する。何気に本流シリーズで強化人間L9到達者は久々でもある。尤も、シャアもエースボーナス込みでニュータイプL9まで行くが。
人間関係
機動戦士ガンダムUC
- オードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)
- 「ラプラスの箱」を利用する方針に関して彼女とは対立する。また、彼女からはシャア・アズナブルを演じようとする姿勢を嫌悪されており、「空っぽな人間」と酷評されている。
- バナージ・リンクス
- ユニコーンガンダムを巡って対立はするものの、フロンタル自身は彼個人にも色々と興味を持ち、自分とともに来るように誘ったこともある。
- アンジェロ・ザウパー
- 親衛隊の隊長で腹心的存在。絶望的な状況から救った事で、個人的にも心酔されているが、フロンタルがバナージに興味を持った事に大きく嫉妬する事になる。またそのような境遇から、フロンタルを「シャアの再来」ではなく、「フル・フロンタル」として見ている貴重な人物。
- ロニ・ガーベイ、ヨンム・カークス
- 連邦への復讐に燃える彼らに対し、襲撃作戦の許可を与えた。
- モナハン・バハロ
- 原作小説ではフロンタルをネオ・ジオンの残党に送り込んだ張本人であり、黒幕の1人。OVA版では未登場。
他作品との人間関係
宇宙世紀作品
- シャア・アズナブル
- 自らが演じている存在。両者の外見や声等があまりにもよく似ている。また、フロンタル自身はシャアを「敗北した人間」と見下し、自らを「宇宙民の意思を受け入れる器」と豪語しているが、所詮は「他人の念仏で極楽参り」をしているに過ぎないので、説得力はあまり無い。
- 時獄編では彼と共演。フロンタルの立ち位置は「シャア不在の間の影武者」という設定になっており、シャアの帰還後は退いている。終盤では、スペースノイドの旗頭ではなく人類すべてを救おうとした彼を「赤い彗星の偽者」と断じ、自らを真の赤い彗星としてアクシズ落としを行う。
- シャア本人も、初対面より自身の嫌な部分を見せ付けるかのような存在である、文字通りの「道化」のフロンタルには良い印象を持ってはおらず、後に似た者同士呼ばわりされた際は、「不愉快」と拒絶している。
- 戦闘前会話ではフロンタルの出自に気付いているが、上述の通りOVA版にはモナハンは登場していない。果たして…
- アムロ・レイ、カミーユ・ビダン
- 前者は一年戦争当初から、後者はグリプス戦役当初から、本物のシャアと関わって来た男達。シャアの模倣であり、同時にその意志を否定するフロンタルに対しては激しい敵意を向けている。また、アムロに対しては自身の手を汚さず暗殺者に始末させようまでしており、その結果、彼からはシャア・アズナブルでも無ければ赤い彗星でも無いと断じられた。カミーユも、戦闘デモではシャアと相対した時以上の剣幕で全否定しており、相当腹に据えかねたことが伺える(が、逆に言えば二人ともそれほどまでに本物のシャアを理解し、信じているとも言える)。
- ララァ・スン
コズミック・イラ作品
- ミーア・キャンベル
- 時獄篇では既に故人であるため、直接の絡みはないが、自分と同じく影武者として生きてきた彼女を自分と比較していた。
リアル系
- ゼロ(ルルーシュ・ランペルージ)
- 時獄篇では「シャアを演じる」「アクシズの落下によって他者や自分が死んでも興味がない」と言い切る姿に、ゼロはシュナイゼルと同じ「虚無」を持っていると評した。
- 実際シュナイゼルとフロンタルの2人は「己」が存在せず、生命への執着が(自他含めて)無きに等しく、行動原理も自らの意志に依るものでは無く「他者が望むから」という共通点を持っており、ゼロが彼をシュナイゼルと同類と見たのも自然の流れと言える。
名台詞
「シャアの再来」と言われるだけあって、「赤い彗星」シャア・アズナブルと似ている(が、よく考えると彼本人とは違う意味合いの)台詞が多い。
- 「過ちを気に病むことはない。ただ認めて、次の糧にすればいい。それが、大人の特権だ」
- OVA版第2巻より。シャアの名台詞「認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを…」と対を成している。
- 青臭さを残しているシャアと異なり、「したたかな大人」であることを武器にするフル・フロンタルを象徴する台詞の一つ。一方でこの台詞は過ちをただ割り切ることで、そこから何かを感じ取るという感性を放棄することであり、人工とはいえニュータイプであるフロンタルがニュータイプの象徴たる感性を否定している構図になっている。
- 「見せてもらおうか…新しいガンダムの性能とやらを!」
- 同第2巻より。シナンジュを駆って、通常の3倍の速度でネェル・アーガマに急接近していく。
- シャアの名台詞「見せてもらおうか…連邦のモビルスーツの性能とやらを!」のオマージュ。
- 「当たらなければどうということはない」
- 同第2巻より。ユニコーンガンダムの(掠っただけでも撃破に至る程の威力を持つ)ビームマグナムを最小限の動きだけで回避して。シャアと同じ台詞を口にしている。
- 「これはファッションのようなもので、プロパガンダと言ってもいい。君のように素直に言ってくれる人がいないので、つい忘れてしまう。すまなかった」
- 同第2巻より。フル・フロンタルと面会したバナージが顔を見せてほしいと言い、怒るアンジェロを押しとどめてマスクを取るフロンタル。このような洗練された冷静な態度も彼の特徴である。
- 「今の私は自らを器と規定している。宇宙に捨てられた者の想い…ジオンの理想を継ぐ者たちの宿願を受け止めるための器だ。」
「彼らが望むなら私はシャア・アズナブルになる。このマスクはそのためのものだ」 - 同第2巻より。バナージに「あなたはシャア・アズナブルなんですか!?」と問われて。この『器』という考えがフロンタルの根底になっている。
- 「もし、シャア・アズナブルが生きているとすれば……それはもう、人ではなくなっているのではないかな?」
- ネェル・アーガマ制圧後のジンネマンとの会話にて。あまりにも無機的なその言葉は、ジンネマンをして「こいつは何物だ?」と思わしめた。
- 「ニュータイプになれば、あの温かな光を以て、時間さえ支配出来る? それは夢だ。地球を包んだあの虹を見ても人は変わらなかった。これからも変わることはない」
「真理からは遠く、光を超える術すら手に入れられず、届く範囲のスペースで増えては滅ぶ……それが人間だ」
「導く必要はなく、その価値もない……ならば、私は器になろう」 - 「カラになったこの身体に人の総意を引き受け、彼らが願うところを願うとしよう」
「ニュータイプ……可能性 はもう要らない。無為な存在ならそれに相応しく、小さく自足できる環境をくれてやろう」
「……おかしなものだ。これではまるで、復讐を誓っているようではないか。誰の為の復讐だ? シャア……それもいい。人がそう望むなら、私はシャアになろう」 - 「潮時か……」
- 「残留思念という言葉を知っているか?」
「サイコフレームは人の意思に反応する性質を持つが、同時に人の意思を吸い取りもする。星をも動かすほどの力を発動させたサイコフレームは、その代償に核となった|人間の意志を吸収しつくした」
「その者の意識が、戻る場所を失って宇宙を彷徨っていたのだとしたら……たまたま現れた似姿に宿っても不思議はあるまい。君が言うとおり、人は他者の中に自己を見出す生き物なのだから」 - 「オールドタイプの枠組み……義務や責任と言った観念に縛られている君だ。ニュータイプにはニュータイプの世界との関わり方がある、といっても承知しないだろう」
「変わろうとしない者には、変わらないなりの未来を与えておけばいい。箱はそのために使わせてもらう。それが、ニュータイプという存在を否定した人類への報いだ」 - 「直に分かる。究極の感応を得ることが、どういうことか。真のニュータイプとなる代償に、君はそのマシーンに喰われる。バナージ・リンクスという器は失われる。究極のニュータイプの完成だよ」
「言っただろう。君はもう、“みんな”の中には帰れないと」 - フロンタル流のニュータイプの定義。分かり合うことの目的は融和だが、その究極の形は「一つになった意志」であるという。人類補完計画やイデに通じるものがある。
スパロボシリーズの名台詞
- 「私とて赤い彗星と言われた男だ……やってみせよう!」
「君の生まれの不幸を呪いたまえ」 - 「連続攻撃」の台詞パターンの一つ。言うまでもないが元ネタは一年戦争でガルマを謀殺した際のシャアの名言。
- 「シャア・アズナブルを消去すれば、私は……」
- シャアとの特殊戦闘台詞。
- 「プロト・プル・トゥエルブ……クローニングによる人工ニュータイプ計画……」
「その12番目の試作品である彼女……マリーダ・クルス中尉に敬意を表しよう」 - 「パラオ急襲」/「猛るユニコーン」にて。本来の設定とは異なり、Zシリーズでは12番目の試作品となっている。天獄篇での参戦ラインナップを見るに、どうやらZZを「出さない」ための改変だったらしい(元の設定のままだと、オリジナルに当たるプルの顛末をどこかで描かねばならない)。
- 「待っていたよ、Z-BLUE。だが、これは変えてはならないことなのだ」
- フィフス落下の阻止に現れたZ-BLUEに対して。「変えてはならない」の意味は後に明らかとなる。
- 「それが正しいことだとしてもですか?」
- 「フィフス・ルナ攻防戦」より、フィフス放棄を決定したシャアに対して。多くの歴史、およびCCA正史ではシャアはフィフス・ルナ落下を実行し、完遂しているのがミソである。
- 「そういう言い方は嫌いですな…。大人っぽくて」
- 「二つの赤い彗星」より。エタニティ・フラットを前向きに肯定した事を評価したシャアに対してララァ・スンの言葉を使って反応し、不快感を抱かせる。同時に正体についてシャアとプレイヤーに疑念を抱かせる伏線でもある。
- 「誤解しないでもらおう。私こそがスペースノイドの希望を体現する者、つまりは真の赤い彗星だ」
「だから、私は正しく世界を導くために、真のシャア・アズナブルの行為であるアクシズ落下を行うのだよ」 - 「BEYOND THE TIME」より。フロンタルにとって「赤い彗星」とはスペースノイドの希望「でなければならない」存在であり、その希望に応えなかったシャアではなく、それに応える自分こそが「真の赤い彗星」であると言っているのである。
- 「そうではないよ、アムロ。私こそが真の赤い彗星なのだ」
- 同話にて自ら前線に出張ってきたのを「シャアの物真似」と評したアムロの言葉を受けて。
- 「今、宇宙に必要なのは新しい秩序を打ち立てられる強力な指導者だ。だが彼は、何かを捨てるという強い意志が足りなかった」
「棄民であるスペースノイドの持つアースノイドへの憎しみは、より直接的な行為でしか、晴らすことは出来ない。そう、このアクシズ落としのような手だ」
「それがスペースノイドが赤い彗星に望んだことだよ」 - 同ステージのイベントにて。ポイントは「私に望んだこと」とは言っていない点で、フロンタルはあくまで「スペースノイドが赤い彗星に望んだ事」を、それを成そうとしないシャアに代わって「赤い彗星」として実行しているのであり、そこから逆に「スペースノイドが赤い彗星にアースノイドへの粛清を望んでいる→アースノイドを粛清する者が赤い彗星である→アクシズ落下を行う自分こそが真の赤い彗星」という思想に至ったらしい。シャアは性急と呼ばれても人の革新という形で人類全体のことを考えていたのと比べると、大きな違いであり、フロンタルが機械的に見えるシーンである。
- 「そこまで悲観する必要はない。そこで人は理性で自らを律し、より良き社会を築けばいい」
「人間の生命は永遠になるのだ。そこには新たな価値や意味が生まれるだろう」
「面白い、面白くないの問題ではないのだよ。我々は理性を以って、運命を受け入れるだけだ」
「そのためにはジェミニスとの共存も私は考えている」
「人間としての尊厳、矜持、意地……そんなものでは人類は救えない」
「私は赤い彗星として、世界のために行動している」 - エタニティ・フラットに対しての見解。こうして見るとわかるのだが、時獄篇におけるフロンタルの行動・言動には彼自身の意志というものが全く介在しておらず、アムロをして「シャアから迷いを取り去った、誰も愛していない空っぽの存在」と言わしめている。
- 「アムロ…」
「君は、私を迷いを捨てたシャアと言ってくれた。ならば、その言葉に応えよう」 - 直後、アンチスパイラルの意を受けたニアが差し向けた手勢が加わったのを見てフロンタルは自分は宇宙の意思に認められたと増長する。そして、アムロの言葉をそのまま形にするかのようにフロンタルはアクシズへと撤退するという狡猾な手段を取った。戦わずしてアクシズが落ちるのを傍観するという暴挙……それは、戦略的には理にかなった行動であり、同時にどこまでも「戦士」であるシャアが決してとるはずのないものであった。これを見たアムロはとうとう堪忍袋の尾が切れ、フロンタルをシャア・アズナブルでも赤い彗星でもないと断じた。
- 「さあ、改めて始めよう」
「アクシズ、行け! 忌まわしい記憶と共に!」 - アースノイドの粛清と「時の牢獄」の構築を目論むフロンタルは「空虚な器にスペースノイドの怨念と憎しみが満ちた」声で言い放った。歯車が違えばシャアその人が口にしていたであろう「あの言葉」を。
- 2人のシャアの関係やアクシズ落としの事情も原作と異なる為か、名台詞はそのままフロンタルに取られた上でDVE並びに戦闘台詞にも採用された。
- 一方で池田氏の演技力の凄まじさを表すDVEでもあり、微妙なイントネーションや音域の違いで「シャアの名台詞を模倣するフロンタル」を見事に表現している。相当のこだわりがあってこそ出来る驚愕の演技である。
- 「…様々な世界に存在するキャスバル・レム・ダイクンは様々な運命をたどった……」
「ある者はクワトロ・バジーナのまま戦い続け、ある者は最後にシャアとして世界の敵となり、ある者は人類を守るために異星人に恭順の意を示した…」
「そのどれもに共通しているのは、あなたという存在は世界の在り方を決めるものだった」
「その中で私は真のシャア・アズナブルとしてアクシズを落下させることを選択した。つまり、今の私は赤い彗星そのものなのだ」 - シャアがZ-BLUEに加勢した後の台詞の一部、数多の並行世界…というよりは歴代スパロボ版シャアの未来か。ここで提示された他にも、戦後はキャスバルに戻って政界に立った者や、戦いの後で何処へともなく姿を消した者、歴史を変えたせいでキャスバルとして表舞台に立った者、思わぬ展開でアクシズ落としが失敗し、その後の世界情勢で変わった者、ハマーン不在のアクシズを収めるべく戻った者、悲劇に屈しなかった若者たちに感化され、ネオ・ジオンのシャアとしてアクシズ落としに立ち向かった者等も存在している。
- 共通項としてはフロンタルの言うとおり、存在する世界の進む道に大きな影響を与えている、という点か(クワトロであり続けた場合は「逆襲のシャア」の物語が始まらない=別の歴史が始まる、という影響が現れていることになる)。
- 「並行世界間の同一人物は基本的に同じ世界には存在しないそうですよ」
- シャアとの戦闘前会話の一部。これを言われたシャア本人からは「不快だな」と、断言されている。自分に都合の良い形でシャア・アズナブルという人間を曲解しているフロンタルの態度には、流石のシャアも腹に据えかねていただろう。
- 「だから?」
「そうまでして私を怒らせたいか、シャア・アズナブル!!」 - 同上。あくまでもフロンタルを「己の中にある『シャア・アズナブル』を模倣しているに過ぎない」と断ずるシャアに激昂。本作でようやくフロンタルの素が出た場面である。
- 「口が達者な分だけ可愛げというものがない……!」
- ヒビキとの戦闘前会話において。時獄篇のフロンタルは原作に比べやや感情的な面が強い。
- シャア「不思議だ……こんな状況なのに恐怖は感じない。むしろ暖かくて、安心を感じるとは……」
フロンタル「だが、この暖かさを持った人間が感情を制御しきれず、自滅の道を歩んでいる……ならば、よりよき世界に導く指導者が必要になる!」
アムロ「わかってるよ! だから、世界に人の心の光を見せなきゃならないんだろ!」 - 「BEYOND THE TIME」クリア時のやり取り。ある意味、時獄篇におけるフロンタルの立ち位置を明確にした場面である。
- ここからわかるとおり、本作のフロンタルは原作におけるシャアの負の部分を担当している形になっている。
- 「それは、まさに神の存在と言えるでしょう」
- 天獄篇予告にて、ラプラスの箱を評して曰く。会話している相手はシャア、場所はネオ・ジオンの彼の部屋であるため、決戦後に舞い戻ってきているようだ。
- なお「神の存在」と言うフレーズは、ルルーシュがかつて接触したアーカーシャの剣の「集合無意識」に対しても使われている。「火の文明」から「太陽の輝き」への道標たるラプラスの箱、「太陽の輝き」の象徴たる集合無意識。この意味は……。
スパロボシリーズの迷台詞
- 「仮面の私と着ぐるみの君…。まさか、こんな形で巡り会うとはな」
「なるほど…。いわゆる中の人…つまり、意思がある自分は私と違うと言いたいか…」
「だが君は、誰かに望まれたから、そんなもので出撃している…。つまり、スペースノイドの願いを集めた私と同じだよ」
「いいだろう! 私を否定するのなら、君の意志というものを見せてもらおう!」 - ボン太くんとの戦闘時。言っていることを大体把握した上で大真面目に対話している。しかもある意味メタ発言に走っている。可愛さに全力で揺らいでいる片割れとは大違いである。
搭乗機体
- リバウ
- ギラ・ドーガ
- シナンジュに乗る前の搭乗機。ちなみに、機体の色は赤である。
- シナンジュ
- 専用機。アナハイム・エレクトロニクス社製で、サイコフレームの搭載機でもある。
- ネオ・ジオング
- OVA7巻に登場した専用機。最終決戦時に搭乗。シナンジュをコアユニットとした拠点攻略用の超大型MAであり、サイコフレーム技術を起点とした兵装が備えられている。SRW未登場。
余談
- フル・フロンタルという名前の日本語訳にちなんで、視聴者からは「全裸」というあだ名で呼称される事がある。
- 「シャアの後継者として赤い彗星となることを望まれ造られた存在」という立ち位置は、富野由悠季氏の小説作品『ガイア・ギア』の主人公である「アフランシ・シャア」によく似ている。
彼もジオン残党の末裔にあたる組織に象徴として迎えられるが、フロンタルとは反対に「(組織が望む)シャア」でも「赤い彗星」でもなく「アフランシ」として生きる道を選んでいる。 - 雑誌「Febri」のインタビューで池田秀一が語ったことによると、フロンタル役に決まった時点で役作りのためにあえて原作を読まないようにしており、途中までは自身もフロンタルの正体をよく知らないまま演じていたという。ただEP5の頃には小説を最後まで読んでしまっており、描写について酒の席で原作者の福井晴敏に不満を言ってしまい、それがEP7の描写変更の遠因となったのではないかとしている。EP7は自らの希望でアフレコも一人だけで行っており、フロンタル役への思い入れは相当に強いことが伺える。
資料リンク
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