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サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑であり、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、[[スペースノイド]]後に言う[[ニュータイプ]]への権利を明文化した七番目の章立てが存在していた。これは、マーセナス首相の[[暗殺]]が連邦政府内の極右派による自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)が、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備えてビスト財団を作り上げていた。
 
サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑であり、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、[[スペースノイド]]後に言う[[ニュータイプ]]への権利を明文化した七番目の章立てが存在していた。これは、マーセナス首相の[[暗殺]]が連邦政府内の極右派による自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)が、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備えてビスト財団を作り上げていた。
  
なお、その第七章は将来現れる新人類に対して、(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではなく)「最優先的に政府運営に参加させる」というとんでもない条文で、見方を変えれば「'''旧人類を社会の中心から優先的に排除し、新人類を中心とした秩序とする事を『合法』として認める'''」という解釈になってしまう負の可能性を秘めていた。特に[[ギレン・ザビ]]の様に選民思想へ傾倒した独裁者の手に渡れば、スペースノイドによるアースノイドの殲滅を正当にし、[[南極条約]]でさえも完全に形骸化させた泥沼の殲滅戦争へと発展させてしまうこれ以上無いカードになり得る物だった為、「結果的には封印されて良かったのでは?」と言う印象は否めない。サイアムはその印象を利用して「封印されてよかった→これからも封印されなくてはならない→封印しているサイアムに便宜を図らなくてはならない」と言う形で利用していったのである。
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なお、その第七章は将来現れる新人類に対して、(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではなく)「最優先的に政府運営に参加させる」というとんでもない条文であり、結果的には封印されて良かったのでは、と言う印象は否めない。サイアムはその印象を利用して「封印されてよかった→これからも封印されなくてはならない→封印しているサイアムに便宜を図らなくてはならない」と言う形で利用していったのである。
  
 
=== ジオンの台頭 ===
 
=== ジオンの台頭 ===
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ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、'''当時まだ存在していない[[ザク]]の群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景'''である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。
 
ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、'''当時まだ存在していない[[ザク]]の群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景'''である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。
  
=== 箱の開放による影響 ===
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箱の開放が後の世にどのような影響を与えたかは語られていないが、少なくとも[[機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ|それに]][[機動戦士ガンダムF90|よって]][[機動戦士ガンダムF91|戦火が]][[機動戦士クロスボーン・ガンダム|収まる]][[機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人|ことが]][[機動戦士Vガンダム|なかった]]のは確かである。しかし「それでも」、人々の心に「希望という光」が僅かながらも灯ったことをバナージが感じ取ったところで、「ガンダムUC」の物語は終わる。
ラプラス戦争の終結直後、ラプラスの箱の内容について公表された結果、世界に大きな影響を与えると思われていたが、実際はサイアムの思惑とは裏腹に、'''各コロニーのワイドショーの題材として取り上げられる程度'''の影響しかなく、箱の開放から二ヶ月もしない内に事態は終息を迎える事になってしまった。
 
 
 
宇宙世紀にてジオニズムが台頭し始めた時代としては、戦争の引き金になりかねない危険な代物と言えるラプラスの箱ではあったものの、それから数十年間もの間、スペースノイドの独立を求めた戦争や紛争が度重なる形で起こるのと同時に多大な犠牲や深刻な不況が発生し、第二次ネオ・ジオン抗争が終結した頃には、世代がほぼ代わった事もあってか、アースノイドだけでなくスペースノイドの大半の中にもすっかり厭戦意識が高まっていた。更に言ってしまえば、スペースノイドの中にはジオニズムそのものに対し懐疑的に見る者や興味すら持たない者も増えており、「スペースノイドの独立や戦争云々よりも自分達の生活の方が大事」という考えが中心になっていた結果、サイアムが隠し通し、連邦が恐れ、そして[[フル・フロンタル]]やモナハン・バハロが手に入れようとしたラプラスの箱の内容は、もはや'''「今更」な代物'''でしかなくなっていたのである。
 
 
 
ジオン・ズム・ダイクンの遺児であるシャア(キャスバル・レム・ダイクン)がネオ・ジオンの指導者となっていた時期こそが、スペースノイドの独立を求める気運のピークであった言え、事実その後のネオ・ジオンは烏合の衆と化し、フロンタルというシャアの代用品を用意しなければならない程求心力を失っており、フロンタルでさえ失われた後は、殆ど打開策の無いまま宇宙世紀0100年を迎え、ジオン共和国の自治権放棄へと繋がっている。また、既に風化しきっていた内容の記されたラプラスの箱よりも、箱を解放する為の『鍵』に過ぎなかった[[ユニコーンガンダム|ユニコーンガンダムタイプ]]のモビルスーツの方が『'''シンギュラリティ・ワン(技術的特異点)'''』と認定され、大きな注目を浴びる事になったのも皮肉過ぎる話だった。
 
 
 
しかし一方で、[[機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ|それに]][[機動戦士ガンダムF90|よって]][[機動戦士ガンダムF91|戦火が]][[機動戦士クロスボーン・ガンダム|収まる]][[機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人|ことが]][[機動戦士Vガンダム|なかった]]のも確かで、また「それでも」人々の心に「希望という光」が僅かながらも灯ったことをバナージが感じ取ったところで、「ガンダムUC」の物語は終わっている。
 
  
 
== 登場作品と扱われ方 ==
 
== 登場作品と扱われ方 ==

2019年9月6日 (金) 18:17時点における版

ラプラスの箱とは、『機動戦士ガンダムUC』に登場するキーワード。

概要

『機動戦士ガンダムUC』の鍵となる、箱型であると思われる謎の物体。

宇宙世紀0001年に起きた爆破テロラプラス事件」で所在不明となったが、生還者であるサイアム・ビストがこれを拾って交渉に使いビスト財団を創立した。

いずこかに秘匿されており、「ラプラスの箱が開かれる時、連邦政府は滅びる」という噂がある。

『箱』の正体と顛末

その正体は、宇宙世紀元年を祝してセレモニーで公開されるはずだった、宇宙世紀憲章を認めた石碑。サイアムの眠る氷室を収めた航宙艦メガラニカに封印されている。

サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑であり、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、スペースノイド後に言うニュータイプへの権利を明文化した七番目の章立てが存在していた。これは、マーセナス首相の暗殺が連邦政府内の極右派による自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)が、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備えてビスト財団を作り上げていた。

なお、その第七章は将来現れる新人類に対して、(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではなく)「最優先的に政府運営に参加させる」というとんでもない条文であり、結果的には封印されて良かったのでは、と言う印象は否めない。サイアムはその印象を利用して「封印されてよかった→これからも封印されなくてはならない→封印しているサイアムに便宜を図らなくてはならない」と言う形で利用していったのである。

ジオンの台頭

しかし、のちにジオン・ズム・ダイクンによって「宇宙に出た人間は、進化しうる」というジオニズム思想が世に出たことにより、スペースノイドの権利と政治への優先的介入を明記した「箱」の第七章碑文が、連邦政府にとって噂の域を超えた本物のタブーとなってしまったことで全てが狂い始める。もし「箱」の存在がジオニズム信奉者達に知れれば、彼らはその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然であり、それを拒む連邦との間で激しい衝突が起こることもまた火を見るよりも明らかであった。そのため連邦政府は、真実を隠匿し続けた(このため、「箱を封じた」という事実自体が重みを帯びるようになった)。さらにサイアムはそれを利用し、自らが「箱」を保持しているという事実を以て政府を脅迫した。

だが、彼の要求は資金などの政府の存続に影響のないレベルに終始しており、さらに政治工作により「箱」そのものの意味を自らから遠ざけた結果、サイアムの立ち上げたビスト財団を潰しても「箱」の秘密も所在もわからないまま、という状態が成立。この結果、「箱」=宇宙世紀憲章の石碑という単純な真相が世に出ることのないまま、サイアムの存在からその(政府にとっての)危険性だけが一人歩きし、ある種の都市伝説として広まっていくことになった。

ラプラス戦争

宇宙世紀0096年、「シャアの反乱」の終結と、それに伴うネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルの戦死により、ジオンは反連邦勢力としての力を失う。生きながらえていたサイアムはこれを期に、連邦政府の絶対的統治のもとに人類が逼塞する危機を憂えて財団本来の目的である「箱」の開放を決断。孫のカーディアスにこの任務を通達する。カーディアスは「箱」をネオ・ジオンの残党に譲渡しようとしたが、この時彼は連邦軍再編計画と銘打たれたニュータイプ殲滅計画「UC計画」のフラグシップ機であるユニコーンガンダムを利用することを考案。ユニコーンの真の力である「ニュータイプ・デストロイヤー・システム」の中枢に細工を施し、特定の場所でシステムが起動するたび「箱」のありかへと少しずつ搭乗者を導いていく仕掛け「ラプラス・プログラム」をインストールした。

だが、この計画を嗅ぎ付けたマーサ・ビスト・カーバインは甥のアルベルト・ビストを通じ、「箱」を受け取るべくインダストリアル7を訪れたガランシェール隊を、連邦軍を動かして強襲させる。混乱の中でカーディアスは死亡したが、ユニコーンガンダムは数奇な偶然を経て彼の妾腹の息子、バナージ・リンクスが受領し、戦火に身を投じる。その後、紆余曲折を経て氷室へとたどり着いたバナージとミネバに対し、サイアムは「箱」の真実と己が元年に見た幻の意味、そして進化を続けてきた人間の可能性を語りつくして落命。「箱」の真実はミネバ・ラオ・ザビにより、世界に公表された。

ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、当時まだ存在していないザクの群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。

箱の開放が後の世にどのような影響を与えたかは語られていないが、少なくともそれによって戦火が収まることがなかったのは確かである。しかし「それでも」、人々の心に「希望という光」が僅かながらも灯ったことをバナージが感じ取ったところで、「ガンダムUC」の物語は終わる。

登場作品と扱われ方

多種多様な異星人異世界からの来訪者が存在するスパロボの世界においては、スペースノイドの権利保障というだけでは価値が弱くなってしまう。そのため、『第3次Z』『BX』ではいずれも、原作同様の意味に加え「何かの重要な秘密」が付与されている。

Zシリーズ

第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇
作品全体のキーワードの一つとして扱われている。作中原作での謎の答えにほぼ近い推測が自部隊からあげられたが、無数の世界が混ざり合った多元世界では箱の中身はあまり意味を成さないだろうとされていた。しかし「人類の進化を監視する」と称するクロノ保守派の「教義」がこれを守ることであるとされており、そこからするとZシリーズの「箱」には原作とは異なる、もしくは世界観に関する何らかの根本的な手がかりが追加で記されているとも考えられていた。
カーディアスによれば「本来あるべきだった未来を取り戻す力」があり、「使い方を間違えば世界を滅ぼす=箱の開放によって変革した人々の意識が滅びを望めばそうなる」ものであるという。
第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇
箱の内容自体は原作同様であったが、サイアムがラプラス事件の際に御使い(恐らく哀しみのサクリファイ)を目撃し、さらにエルガンの来訪によって並行世界と人類に進化を禁じる「管理者」の存在を知ったことが明かされている。
即ち、進化した人類が優先的に政治に関われるという第七章の条文は、本作においては「管理者による支配に抗う」という宣言でもあった。これらの事実はサイアム、エルガン、イオリアにより、箱の開放が決定された時点で「コード:ラプラス」がメガラニカから発信され、ヴェーダがそれを受信することで最奥部のプロテクトを守るリボンズ・アルマークが、エルガンがあらかじめ録画しておいた「サイデリアルとクロノによる人類の管理と飼育に関する公表映像」を全世界のネットワークに公開するよう仕掛けられていた。
カーディアスの言っていた箱の真の力とは「真実を知った上で、それでも絶望の未来に立ち向かうための意思を持つ力を手にすること」であった。

携帯機シリーズ

スーパーロボット大戦BX
箱の中身(憲章の碑文)については原作同様。本作では、碑文の最後の一節『未来』とそれをめぐる歴史は、宇宙に人々を棄民した事への贖罪すなわち「宇宙への祈り」であり、同時に連邦初代首相リカルド・マーセナスの「祈り」であったが、暗殺事件により「呪い」に変えられ、箱を巡って積み重ねられた歴史と犠牲がさらに「呪縛」を大きくしたという解釈がされている。また、憲章の碑文が発表されるはずだった日にヴェイガン木連の存在を認知し、謝罪・和解が行われる予定だったというクロスオーバーがある。
実は、本作では碑文のほかに、「もう一つの箱」として、EXA-DB(厳密にはその一部のコピー)にアクセスできる端末が入っていた。しかし、ミネバらがメガラニカでラプラスの箱を開示した事により、端末の機能は失われた。
その背景故、『ガンダムUC』決戦シナリオでは、BX袖付き、ヴェイガンによる三つ巴の箱争奪戦が勃発する事になる。

VXT三部作

スーパーロボット大戦V
箱の存在はジオンの高官達の間で「アースノイドとスペースノイドの戦いを終わらせるもの」として半ば伝説のような形で伝わっており、それを知ったミネバやナナイは自分達の組織に「ラプラス」の名を与えた。
やはり箱の正体については原作と変わらないものの、今回はフロンタルとは和解した上で箱の解放に臨む。その際、フロンタルは「地球連邦がその誕生から宇宙移民からの搾取を考えていた証拠であり、スペースノイドの憎悪を燃え上がらせるもの」と、バナージは「宇宙世紀の始まりは本当は希望に満ち溢れたものであった」と、同じものでありながら全く正反対の解釈がされることになる。それ故に「禁忌であり希望」と評されることとなった。
また、サイアムは生前のシャアに一度は箱を託したものの、過去に囚われることを拒否し、自らの力で未来を拓こうとしたシャアは箱を解放しないままであった。そして、バナージとミネバ、そしてフロンタルの3人もまた、アースノイドとスペースノイドの戦いを自分達の手で終わらせることを誓い、箱の真実は世界に伝えられることなくそのままサイアムと共に歴史の影に消えていった。
なお、宇宙世紀世界と同様の起源を持つ新正暦世界にもラプラスの箱は存在したものの、その公開を恐れた連邦政府の情報操作により、「空白の10年」と呼ばれる動乱の時代を生み出すこととなった。

関連用語

地球連邦政府
箱が開放されると自分達の地位を失う為、箱を保護する。
ビスト財団
箱が開放されると自分達の利権を失う為、箱を保護しようとするマーサ・ビストを中心とした一派と、地球圏の閉塞を憂い箱を開放しようとするサイアム、カーディアスの一派に別れ争う事になる。
袖付き
箱を開放することにより自分達の権利を得る為、箱を奪取せんとする。
ユニコーンガンダム
1号機にのみ搭載されている「La+(ラプラス)システム」は、箱の所在地を探索するのに最も重要なものである。数奇な運命から、カーディアスの実子であるバナージ・リンクスがパイロットとなった。
メガラニカ
インダストリアル7のコロニービルダー。内部にラプラスの箱とサイアムの眠る氷室がある。正体は巨大航宙艦であり、ちゃんと武装も稼動するほか、中継衛星をジャックする事で地球上のあらゆる通信・放送システムに介入する設備を備えている
名前の由来はギリシャ人が世界球体説を唱えた際に、南半球にあると考えていた架空の大陸「メガラニカ」。
ラプラス (組織)
V』に登場する組織。スペースノイドとアースノイドの戦いを平和的に終わらせる方法を模索しており、そのための鍵となるラプラスの箱の名を冠している。

資料リンク