デスティニープラン
デスティニープラン(Destiny Plan)
『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』にて登場した社会構想。
劇中終盤、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルにより提唱され、人間の遺伝子を解析し、その人が持つ適性を調査し、その解析結果を基にその人を適した職業に就けるシステムとされ、またそれにより国家間の争いを解消とする目的を持つ。だが、この発表は世界中に混乱を与え、オーブ連合首長国とスカンジナビア王国、一部の地球連合軍は反対を表明。これらの勢力に対しデュランダルが実力行使に出たため、メサイア攻防戦が勃発。その最中にデュランダルが死亡したことで施行は阻止された。
その名の通り『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』という作品の中核ともいえる存在だが、劇中において多く語られなかった故にその解釈はファンや制作側、各SEED関連のメディアにて様々である。
実行と弊害
実際のところ「個人から選択する権利を国家が取り上げ、遺伝子的に優れた者達によって国家を管理する」という、一種の選民思想にも似たシステムであり、「管理社会」の概念が名前を変えて出現したに過ぎない。スパロボにおいても、主にこの視点からデスティニープランは否定されている。
その他にも問題点は多い。たとえば人間の成長には遺伝子だけでなく家庭環境、社会環境、本人の性格、その他予測不可能な不特定多数の因子(わかりやすいところで言えば『運』など)が無数に関わってくるため、誕生時の遺伝子だけで人間の将来を予測するには無理がある。更に、この計画を考案したのはプラント側で、ナチュラルよりもコーディネイターの方が能力的には優れている者が多い為、計画が実行に移されると、事実上世界はプラントやコーディネイターが主導となるのはほぼ必然で、つまりこのデスティニープランは、「ナチュラルよりもコーディネイターの方に都合の良い計画」であったともとれる。故に、プラント側で計画に反対するものが少なかったのも、当然と言えば当然なのである。
また、運用する人間が恣意的に制度を行使し悪用する可能性が考慮されておらず、対策も講じられていない。デスティニープランを実行する人間すべてが清廉にして潔白な聖人君子であれば理想的なのだが、実際にはそのような現実は考えにくく、「遺伝子解析の結果」という大義名分の下に、制度を実行する寡頭層に軽微な労働と高額な報酬が集中し、世襲の支配階級と化す恐れがある。
一方、政敵を血族ごと政界から追放したり、優生学的思考の下に特定人種に対するジェノサイドでさえも肯定する可能性も秘めており、極端な階級社会を生み出す可能性が大きい(それは即ち、ギレン・ザビやパトリック・ザラの再来も生み出しかねない)。
実際、『スーパーロボット大戦Z』においては「ニュータイプ(X)に覚醒する可能性を持った人物を探し当てる」という目的でこのプランが流用され、遺伝子的に不適応というだけでフロスト兄弟は否定され、結果的にプランの犠牲者となっている。
こうした事から実際の効果には非常に疑問が残る上、それを差し引いても他国にこのような体制を強要する事は内政干渉にあたるため、拒否されたのは当然である。劇中では、拒否したのが作風上目立つ国だけで、他はかなり少数だったように見えているが、これはデスティニープランの複雑なシステムの全容を把握しきれず、混乱していたのが原因であったとも言われ、実際は賛成・否かではなく、どうすれば良いか分からなかったというのが、妥当であるともいえる。
これだけでも一つの作品の主題になり得るテーマであり、描写不足が度々指摘される『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』において、物語終盤で登場させるにはあまりにボリュームがありすぎた主題だったとも指摘されている。
制作側の見解
SEEDシリーズの監督である福田氏は、「わざと間違っていると解るように描写した」「世界中の人に知られてしまったので、デュランダルが死亡しても引き継ぐものが現れるかもしれない点が厄介である」といった趣旨の発言をしている。
登場作品
Zシリーズ
- スーパーロボット大戦Z
- 『機動新世紀ガンダムX』のフロスト兄弟はこのプランの副産物、弊害であり、犠牲者というクロスオーバー設定になっている。
携帯機シリーズ
- スーパーロボット大戦K
- 原作同様ギルバート・デュランダルがプランの実行を推進しようとするが、主人公勢に阻止される。プランへの参加を拒否したオーブ連合首長国に対し、武装解除を要求する形で即座に軍を差し向けたり、対話を望むカガリ・ユラ・アスハに殆ど取り合わなかったりと、原作以上に性急にことを進めようとしていた感が強い。
- スーパーロボット大戦L
- 対異星人戦略の延長線上として提唱される。原作では多く語られなかった「プランの中身」について本作独自の解釈が盛り込まれており、軍事面では「地球人のゼントラ化」や「『SEEDを持つ人間』の発見」のためにプランを用いて、そうした者たちを集めた部隊を結成して地球を守るための戦力増強に充てる、という「目的」が描写されている(つまりLOTUSと同じような部隊を幾つも作り出す、という意味)。
そのため、「遺伝子だけで人の適性が決まるのか」と言う矛盾点にある程度の答えが出ている(ゼントラ化可能かどうかは完全に遺伝子の問題である)ほか、最終的な目的はあくまで自軍と同じ「地球の防衛」であり、原作同様些か極端なやり方ではあるものの、それほどネガティブなイメージはない。
Scramble Commanderシリーズ
- スーパーロボット大戦Scramble Commander the 2nd
- 『機動戦士Ζガンダム』のパプテマス・シロッコもプランの賛同者となっており、プランの一環には彼のクローン軍団による地球圏の防衛も含まれていた。
メモ
『デスティニープラン』とは遺伝子社会(ヒトゲノム)を意味し、その弊害として語られるのは個の自由が許されないということである。そして、遺伝子により人間の優越が決まる点こそが、最大の論点である。例えば持病を抱える病気持ちの人間ならば阻害される存在にもなる。実際数多くのSFでも取り上げられている。
詳しくはもの書きWikiを参照。
|