脱走イベント
脱走イベントとは、軍人軍属が正規の除隊手続きを踏まずに所属を離れる展開のイベント、またはそのようなイベントが発生するシナリオを指す用語。
概要
脱走をした者は規律を乱すため軍法で処罰される。戦闘中の脱走は特に敵前逃亡と呼ばれ、平時における脱走よりも重罪で死刑など重刑に処されたり、過酷な懲罰部隊に堕とされることが多い。
人間、誰しも死にたくはないので死地から逃げ出したくなる気持ちはあろうが、一度脱走が起こると軍内の規律や秩序に乱れが生じて味方の士気に悪影響を及ぼすばかりか、脱走兵の捜索(あるいは処刑)で余計な人員を割かねばならず、また一人が脱走すると「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の心理で周囲もつられて脱走しはじめ、最悪の場合戦線の崩壊を招く(=負ける)ことにもつながりかねず、また仕えるべき主君や守るべき民を見捨てる行為でもある上、脱走した兵士が敵に寝返ったり情報を売ったりするなどで副次的な被害も発生しかねないため、一般的にほとんどの軍隊で重罪とされている。
当然ながら本人の意思に反して徴兵される場合や所属している組織の正当性に問題がある場合に起こりやすい。 また、兵卒が専門職化されていて規律が厳しい近現代の軍隊ではまだしも、半農的で規律を浸透させ難い時代・地域の軍では半ば自然発生的な行動でもあり、いわゆる籠城戦などでは敵兵の脱走を誘発する策戦も常套手段であった。
スパロボでは版権・オリジナル共々に「ただの民間人だったのに巻き込まれて戦い続けなければならなくなった」というキャラクターも多い上、その世界の中でも並以上の機動兵器を運用する事を強いられるわけだが、オリジナルキャラ勢が戦いの連鎖を逃れようと自発的に脱走を図るケースは非常に少なく、裏切り(所属を変えての再登場)になる形の方が多い傾向がある。脱走の大半は版権作品の原作再現要素の内で、特にプレイヤー部隊のプレイアブルキャラは悪くても一時離脱を経て再び復する展開が圧倒的に多い。
主要な人物
版権作品
ガンダムシリーズ
- アムロ・レイ
- 度重なる戦闘のストレスに加え、自分がガンダムのパイロットの任から外されるという話を聞いたため、脱走のついでにガンダムも持ち逃げした。
- GC(XO)でもこの顛末が再現されている他、『リアルロボット戦線』でもルート次第ではハヤトの戦死に耐え切れず脱走する。
- シャア・アズナブル(クワトロ・バジーナ)
- ハマーンとの戦いで大破した百式を棄て脱出、表舞台からも姿を消す。
- カイ・シデン、ハヤト・コバヤシ
- ガンダムを持ち出して脱走したにも関わらず、戻ってきたアムロに対するブライトの処置に不満を抱き、半ば当てつけのような形でホワイトベースを脱走した。
- 結局リュウによって連れ戻され未遂に終わるも、独房入りのアムロと違ってその後特に大きな処罰を下された様子は無い。
- ルー・ルカ
- 自分を利用してグレミーを撃退したビーチャのやり方に憤慨し、アーガマを出て行ってしまった。
- ビーチャ・オーレグ、モンド・アガケ
- ブライトへの反感からアーガマをネオ・ジオンに売り飛ばす事を企むもその目論見は見事失敗、なし崩し的にアーガマを飛び出す羽目となりエンドラに保護されるが、またもトラブルを起こしアクシズの捕虜となる。その後救出され、結局アーガマへと出戻った。
- シロー・アマダ
- 敵であったアイナとの触れ合いによりジオンとの共存の道を模索するようになるが、それにより軍上層部からスパイ容疑をかけられる事に。
- その後も数々の問題を引き起こし、上層部から捨て駒にされると同時に軍を抜ける事を決意。ラサの基地攻略作戦にて、アプサラスIIIとの戦いの最中アイナと共に消息不明となった。後に、人知れず山奥の小屋でアイナと共に暮らしている事が判明している。
- エレドア・マシス、ミケル・ニノリッチ
- 原作ではエレドアがメジャーデビューが決まったことを祝おうとして待機命令を破って抜け出した。GC(XO)ではアムロの脱走に便乗する。
- ガロード・ラン
- フリーデンでの集団生活に馴染めず様々なトラブルを起こした結果、ジャミルに重傷を負わせる事故(エニルが乱入した結果だが)を引き起こしクルーから責め立てられる事に。事情があったとはいえティファからも拒絶されてしまい、そのショックで半ば衝動的にフリーデンを出奔してしまう。
- キラ・ヤマト
- オーブにおけるアスランとの戦いの末、イージスガンダムの自爆に巻き込まれ意識不明の重傷を負う。
- その後クライン派によって保護され、ラクスにフリーダムガンダムを託される。MIA扱いだったこともあり、その際に地球軍も脱退している。
- アスラン・ザラ
- 無印とその続編とで2度も脱走している。いずれも上官への不信や失望が大きな理由であるが…。
- ちなみに、2度目はよりにもよってサブタイトルにされた(『SEED DESTINY』PHASE-36のサブタイトルは『アスラン脱走』である)。
- ラクス・クライン
- フリーダム強奪事件の手引きをした結果反逆者として指名手配を受け、父共々ザフトを追われる身となる。
- アークエンジェル隊
- ユーラシア連邦の部隊と共にアラスカ基地の守備隊として編入された際、自分達を快く思わない上層部から捨て駒にされた事がフラガから聞かされ、フリーダムで帰還したキラの助けもあって間一髪で戦場を離脱。その後は艦ごと地球軍を脱退、オーブへと身を寄せた。
- 命令や規律に従順なナタルとプロパガンダに利用できるフレイはザフトのアラスカ攻撃前に転属命令が出され、アークエンジェルから離れていた。
- フレイ・アルスター
- 最終決戦にて、暴走するアズラエルに反逆、ナタルの助けも受けて脱出艇でドミニオンを降りる。
- しかしアークエンジェルへと向かう途中、プロヴィデンスガンダムの攻撃を受け死亡した。
- メイリン・ホーク
- ジブラルタル基地にて、デュランダルの刺客に追われていたアスランを身を呈して庇い、更に脱走のための手引きも行った。
- しかし、その場をレイに目撃されてしまい、そのまま巻き込まれる形で2人で脱走する羽目となった。
リアル系
- エルチ・カーゴ
- 最終決戦後、洗脳されていたとはいえかつての仲間達を裏切った自責の念から、贖罪のため一人アイアン・ギアーを出て行った。
- ラグ・ウラロ
- 想い人であるエル・コンドルを失い、悲しみに暮れていたエルチをジロンが抱きしめ慰めていたのを見てショックを受け、衝動的にアイアン・ギアーを出て行ってしまった。
- キリコ・キュービィー
- メルキア軍の最高機密を見たことを理由にロッチナより尋問(という名の拷問)を受けるが隙を付いて脱走、そのまま軍も抜ける。
- グレゴルー・ガロッシュ、バイマン・ハガード、ムーザ・メリメ
- 非道の部隊レッドショルダーを脱走し、その長であるヨラン・ペールゼンへの復讐に動く。原作では最終的にはバイマンの手で成し遂げたが、『第2次Z 破界篇』ではグレゴルー達も生き延びて本懐を果たしている。
- 『OE』では展開が異なり、コネクト・フォースへの出向後は特に身分が変わらないので、一応穏便な形でレッドショルダーを離れられた模様だが、替わりにペールゼンの始末は別の男に割り込まれている。
- レントン・サーストン
- ヤッサバ・ジン
- シベリア鉄道警備隊で一隊を預かる隊長格だったが、キングゲイナー達に敗れ続けた事で帰る場所を失う。結局シベ鉄を離れ、エイファと共にエクソダスした。
- 真壁一騎
- ゼロ
- シュナイゼルの策略に嵌まり、黒の騎士団を追われる形でロロとともに脱走。
- その際ロロはギアスを限界まで酷使した末、命を落とすことに……
- アンジュ、ヒルダ
- それぞれ妹および母に会うため、結託してアルゼナルを脱走。最終的に失敗し強制送還させられてしまうが、この件をきっかけにアンジュとヒルダの信頼関係が深まることとなった。
スーパー系
- フォルモッサ・シェリル、ナブール・ハタリ
- 宇宙を逃げ回る生活に耐えられず脱走を図るが、「受け入れる植民星がある」とのバッフ・クランの偽情報に踊らされてのものであった。
人質としたカララ・アジバが罪を被ることでシェリルらは咎められずに済んだが、そのことが彼女のプライドを傷つけた。 - 碇シンジ
- 第4使徒シャムシェル戦後、様々な経緯から自分の帰るべき居場所を見出すことが出来ず家出し、一週間も街を彷徨っていた。
- 惣流・アスカ・ラングレー
- 劇中においては、3回も脱走している。
- 神名綾人
- 紅エイジ
- 人質に取られたセシルごとゼラバイアを攻撃しようとした斗牙の対応に激怒し、脱走。
- 天空侍斗牙
- 自分がリィルを傷つけてしまったことや、エィナの死(正確には死亡していないが)、琉菜の行方不明等、数多くのショックに押し潰され、脱走。
- イクサー3
- 第3話で自分を独房に閉じ込めた野人に反発して、脱走。
- 真宮寺さくら
- TV版では何と第1話でいきなり帝国華撃団を脱走している。理由は様々なトラブルや不運が重なった結果なのだが、TV版があらゆる意味で原作ゲームと異なる作品である事を強烈に印象付けた。
- 桐島カンナ
- 父の仇を取る為に一時的に帝撃を脱走、その後復帰。小説版では明確に「脱走」と書かれているが、媒体によって扱いに差がある。処罰を下された描写が無いのは全ての媒体で共通。
バンプレストオリジナル
- イルムガルト・カザハラ
- 『α』ではイングラムに対する不信感から副主人公を連れて連邦軍を脱走、SRX計画の機体を破壊するために行動する。
- セレーナ・レシタール
- 『第3次α』では目的のために、ベガリオンを撃墜してまで敢行している。その結果、部隊の信頼を失う結果になる。
- プレシア・ゼノサキス
- 『LOE』第2部序盤、マサキと仲違いして「家出」する展開がある。シナリオ以上に、複雑なルート分岐の端緒として有名。マサキ達は軍隊ではないので特に処罰などはなされなかった。
- アニエス・ベルジュ
- 様々な出来事が重なり正規の手続きを取らずに連邦軍を離れることになる…が、後に所属している部隊自体が連邦軍の新たな独立遊撃部隊となるため結果的に連邦軍に戻ることになる。
- サキト・アサギ
- 事情があったとはいえ、2回も脱走している。
- イオリ・アイオライト、アマリ・アクアマリン
- 冒頭(スペシャルプロローグ)で魔従教団を脱走し、その後も一度救世主一行から脱走しようとする。が、これは一行にはバレバレであった。
余談
現実世界でよく知られた例として、ベトナム戦争では米軍だけで3万人を超える脱走兵が出た。これはあまりにも過酷な戦場生活や多発する虐待・虐殺といった自軍の非人道的行為への反発、戦争の長期化に伴う反戦・厭戦ムードの高まりなどが大きな要因であるとされる。
このほか、旧ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンは敵前逃亡防止のために突撃する徴用兵の後ろに機関銃を据えた監視部隊(督戦隊)を設け、逃げ出そうとしたり降伏しようとした味方を後ろから蜂の巣にするという非道な行為をたびたび行っていたとされる。
関連項目
- 裏切りイベント
- 上述の通り、脱走が裏切りのきっかけになることがある。
- 一部作品では主人公の脱走・裏切りがメインシナリオの発端にもなっている。