「量産型」の版間の差分
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2015年2月11日 (水) 18:33時点における版
同じ規格・仕様で大量に生産される工業製品の事。生産型・普及型とも呼ばれる。ただし、食料品などのすぐに消費されてしまう製品にはこの言葉は使われない。
現実の軍事に関しては勿論、ロボットアニメを語る上でも欠かせない要素である。但し両者の間にはその意味するところに若干の差異があるため、注意が必要である。
量産型についての一般論
どのような製品でも、それを現実に世に送り出すにあたっては、相当程度の試作を重ねるのが普通である(この試作段階の製品を、本頁では便宜的に『試作型』と呼称する)。この試作過程で既存の欠点を洗い出し、それらをクリアした上で完成品として出荷に足ると判断されたものが量産型である。従って、『量産型の性能が試作型に著しく劣る』という、アニメでよく見られるような現象は原則的には有り得ないはずであり、特にあらゆる規格品において最重要視されるべき「信頼性」においては、試作型が量産型に敵う道理が無い。
但しここで言う「性能」とは所謂総合的な性能のことである。完成品である量産型にはコストパフォーマンスや原材料・部品の供給体制などを含めたトータルでの安定性が求められるため、それらとトレードオフの関係にある一部の性能(例えば、乗用車で言う所の最高速度や燃費など)については実現可能な限界よりダウングレードされるのが普通である。その一方試作型は、性能の限界や全体のバランスを探るため敢えて部分的に突出した性能を持たせられることもあり、一概に試作型の性能が低いとも言い切れない。また試作型は、予期せぬ不具合等への対処や、当初の構想にはなかった機能のテスト等のため、拡張性に優れていることが多い。
とはいうものの、試作型は前述の通り欠点洗い出しのために、その欠点の内在可能性を承知の上で作るものなので、現実的に言えば安定性に欠けるのが普通である。その一方最終消費者が実際に使用する量産型においては入念な安全対策が取られるため、試作型とは比較にならない安定性を有する。最終的に、どんなに優秀な製品・機体であろうと、使用中にすぐ故障したり不具合や欠点が多いなど安定性が低く、使用にあたって十分に信頼出来ないのでは意味が無いのである。
また、その他の性能についても、制約の範囲内においてではあるもののそれぞれ実現可能な限界近くまで引き上げられるので、基本的に量産型の性能は試作型に比べて優れたものであると考えて間違いはないはずである。
ロボットアニメにおける量産型
現実的には上述の通り、量産型の性能は基本的に優れたもののはずだが、ロボットアニメにおける量産型の地位はこれとは少々異なる実体になっている(尚、以後の議論については全て兵器を対象として行う)。
まず、ロボットアニメの先駆的作品である初期のスーパーロボット系作品について言えば、作品中の一般的な科学の水準を遥かに凌駕した技術、或いは全く未知の技術で製造されたスーパーロボットによって単機で全世界の戦局を支えるという用兵術が肯定されていることが多い。この辺りの議論の詳細は「スーパーロボットとリアルロボット」の記事に譲るが、それゆえそもそも兵器の頭数を揃える必要がなかったり、或いは技術的に量産不可能という設定になっている場合が多く、量産型の必要性や可能性自体が否定されている場合が多い。
そのような中、『合身戦隊メカンダーロボ』において敵メカが量産型として設定され、ロボットアニメにおける量産型登場の先駆けとなった。そして『機動戦士ガンダム』以降のリアルロボット系作品において、本格的に量産型が活躍する時代を迎える。しかしながらその扱われ方は現実とは異なり、量産型は作品中であまり活躍できず、主役メカに蹴散らされるための凡庸な性能のやられメカとして描かれる場合が多い。この原因として(作品により差はあるものの)よく見られるのが、開発プロセスの違いと搭乗者の問題である。
- 開発プロセス
まず開発プロセスについてであるが、一部作品では「画期的な新技術等をふんだんに取り入れたコスト度外視の完成機(=主役メカ)を最初に作成し、そこから機能を削ぎ落して量産可能な水準にまでコストの引き下げを図る」というプロセスが取られる場合がある。要約すれば「試作型→完成機(=主役メカ)→(廉価版試作型)→廉価版完成機(=量産型)」という構図になるが、これは量産型が単なる廉価版とほぼ同義語的に用いられているようなケースであり、この場合は性能的に主役メカに敵う道理がない。所謂スーパー系の作品における量産型の扱いはこの傾向が更に顕著で、「技術的に再現不可能」という理由により、一部デチューンを余儀なくされる形で量産化にもちこまれる場合が多い。当然ながらその場合、本家に比べて性能が落ちることになる。
元々主人公メカについては、機体の唯一無二性を引き立てるため、総じて上述のような描写の挿入によって量産型との差別化が図られる場合が多く、スーパー系作品は勿論のこと、リアル系の作品においても同様の傾向がある(その典型的な例として最も有名なのがファーストガンダムである。詳細は「スーパーロボットとリアルロボット」参照)。
- 兵員の能力限界
もう一点重要な要因となっているのが、搭乗者の資質に関わる問題である。これは現実の戦闘機開発などでも重視されている面であるが、その操作の複雑さが搭乗者の処理能力を超えたり、また技術的に最高速度を向上させることが可能でもGへの耐性限界を超えるようなことになれば兵器として成立しないため、搭乗者の平均的な処理能力は必然的に量産型の性能上限とならざるを得ない。逆に言えば、人並み外れた技量を誇る圧倒的なエースパイロットを前提とすれば、性能のリミットを容易に引き上げることが可能になる。試作機には、この「優秀なテストパイロットの存在」を前提とし、技術的には実現可能であるものの多くの人間が扱う量産型には搭載不適格なハイスペックを持たせたものがある。
これは戦闘機を題材としているマクロスシリーズにおいてよく用いられる設定であり、その点が最もよく描写されている作品が、試作型同士のトライアルを描いた作品『マクロスプラス』である。同作において量産型の先行試作型としてトライアルに提出されたYF-19及びYF-21は、共に圧倒的な性能を有しながらも操縦者の限界を試すようなピーキーな機体であった。両機はイサム・ダイソン、ガルド・ゴア・ボーマンという優秀なテストパイロットを得てその性能を存分に発揮することになるが、基本的に一般兵の手に負えるものではなかった。それゆえ、同機を基に開発された後発のVF-19やVF-22といったモデルは少数が量産化されたものの制式採用は見送られ、一般兵向けの量産型としては、両機に比べて性能が低位ながらも安定しているVF-11が長くその地位を維持することになる。この例は試作型から直接開発された量産型の事例ではないものの、性能面では試作型>量産型という構図が維持されやすいことの一つの証左である。
この兵員の資質に関する点は、量産型の性能が試作型に比べて劣り得る最も根源的な要因とも言え、それ故に量産型の性能を向上させるアプローチとして兵員の排除という方針が打ち出される場合も少なくない。その最も代表的な例が、同じくマクロスプラスにおいて登場する、兵員を排除した結果として圧倒的な機動性を獲得した怪物量産型「ゴーストX-9」である。同機以外でも、兵員排除という基本的な発想が共通している新機動戦記ガンダムWの「モビルドール」や、バンプレストオリジナルで言えばバルトール(ODEシステム)等についても、軒並み既存の量産型の性能を大きく上回る機体として描かれている。
- エース効果
前段では「量産型兵器は、一般兵員の搭乗を前提としている限りにおいて、兵員の大半が問題なく扱える程度にまで性能が引き下げられざるを得ない」という点について主に述べたが、逆に前述のイサムやガルドの例のように「試作型にはエースパイロットが乗ることが多いので、本来のポテンシャル以上の活躍を見せることがある」という側面も見逃せない。
試作型のパイロットの決定過程は、前段の例のようにテストパイロットとして図抜けたエースが選抜されるという場合、或いは類稀な資質を備えた人物が偶然に試作機に乗り込んでしまうという展開の場合が多い。そして彼らは実戦にもそのまま赴くことが非常に多いので、搭乗者の優秀さが試作機の圧倒的な強さに拍車をかけている場合は多いと思われる(カチーナの発言にはこの点を意識したものが多く、自身の腕前の証明として試作機を与えられることに拘りを見せる)。試作機の戦闘能力の描写を考える上では、搭乗者要因を多少割り引いて考えるべきであろう。
逆説的な例としては、ニュータイプ専用試作機「アレックス」のケースがあげられる。同機はほぼガンダムと同等の性能であり、パイロットであるクリスもベテランシューフィッターとして相応の実力を持っているはずであるものの、ザク改相手に相討ちに持ち込まれている。これは、ガンダムが見せた圧倒的な実力が、アムロの類稀な操縦技術によって相当程度底上げされていたことを示唆している(もちろんザク改側のバーニィがアレックスとの性能差を見越してゲリラ戦を選んだ事も関係している)。
- 上記の扱いの例外
量産型に対する上記のような扱いの例外としてよく取り上げられるのが、『機甲戦記ドラグナー』における、試作型・ドラグナー各機と量産型・ドラグーンの関係である。本作では、それぞれの性能に特化した試作型に対し、それらのデータを収集・統合して仕上げた量産型であるドラグーンの方が性能が高いという例外的な設定が為されている。とはいうものの、後にドラグナーはカスタム化されて性能が上昇し、ドラグーンも(初登場時はともかく)演出の都合でバタバタと蹴散らされる存在、所謂「やられメカ」になり下がることは避けられなかった。 また、アニメ版と一部設定が異なる小説版『機動戦士ガンダム』では量産型であるジムの方がガンダムより性能の高い機体と言う設定になっている。
代わって近年よく話題になるのが、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』において、名有り敵であるカオスガンダムを撃墜するという金星を挙げたオーブの量産型・ムラサメである。
スパロボにおける量産型
量産型全般を指す場合は「量産機」、何かを説明・修飾する場合は「量産型」と表現することが多い。
リアルロボット系の敵はもともと量産型であることが多いが、原作では1体しか登場していなくてもゲームでは複数出てくる事がよくある。更にはスーパー系の敵機についても複数体登場することは多く、しばしば量産されていると称される。
これらの機体の性能はそれなりに抑えられており、例えば「ある時点の主人公機よりそこから50年後の量産型の方がよほど性能は高い」はずなのだが、スパロボでは同時期中に登場することもあって、特に強く設定されることは無い。また、特にスーパー系敵機の複製量産型については、上記の「完成型から作られる量産型は廉価版」という傾向を意識してか、総じて性能が控えめになっている場合が多い(所謂「再生怪人は弱体化している」のお約束の方を意識している可能性もある。無論、最大の要因はゲームバランス面の調整のためであろうが)。その逆に、上記のエース効果の再現のためか、搭乗するパイロットにあわせて性能が底上げされる場合もある。
味方機として使用できる量産型は、旧シリーズでは正直使いようが無かったが、近年はテコ入れにより「初期性能はそこそこで、改造すればある程度使える」ようになっていることが多い。V-UPユニット採用作品やα外伝などではそのやりすぎで、ときに主役以上に強くなってしまう現象も起こっていた(α外伝のガンブラスター、トーラスなど)。
版権作品の量産型メカ
ワンオフ機からの量産化モデル
元になったワンオフ機体が存在する量産型メカ。
- 量産型グレートマジンガー
- グレートマジンガーの量産型。桜多吾作の漫画版に登場。
- 量産型ゲッタードラゴン
- ゲッターロボGの量産型。他の形態も登場。
- ジム
- ガンダムの量産型。数を確保するために徹底的なコストダウンが図られているが、ガンダム並みの推力やガンダムの運用データのフィードバック等ガンダムと同水準かそれ以上のスペックを達成している部分も見受けられる。その後、ジムシリーズとして独自の進化を遂げていく。劇中では徹底してやられ役。
- 量産型νガンダム
- νガンダムの量産型。
- 量産型ガンダムF91
- ガンダムF91の量産型。ただし、質量を持った残像は発生しない。
- リーオー
- トールギス(プロトリーオー)をベースとした量産型。
- オーバーフラッグ
- グラハム専用ユニオンフラッグカスタムの量産型。耐Gリミッターが付いている分原型機より性能は落ちているが、それでも十分な性能を持つ上に安全性は向上している。
- GN-X
- パッと見ではとてもそうは見えないが、ガンダムスローネシリーズの量産型。「試作機より強い量産機」の一つで汎用性に優れ、戦術やパイロットの技量次第で高い性能を発揮する。
- なお、後々もこの機体の技術をベースに更に様々な量産機が開発される等、大きな影響を及ぼした機体である。
- 量産型バクシンガー
- バクシンガーの量産型。
- ディザード
- エルガイムの量産型。ガイラムの量産向けカスタマイズ機であるエルガイムのさらに量産型。
- GR-IIガーランド
- ガーランドの量産型。
- オーガスII
- オーガスの量産型。スパロボではオルソン専用機(オルソン・スペシャル)のみ登場。
- ラビドリードッグ
- ストライクドッグの制式量産モデル。TVシリーズではキリコの乗る1機のみの登場であったが、『ビッグバトル』では量産されたものが登場する。
- ヴィンセント・ウォード
- ヴィンセントの制式量産モデル。
- シズラー黒
- ガンバスターの量産型。他にも白・銀のタイプの機体が存在する。ただし、ゲーム中で入手できるのは1機のみ。
- EVA量産機
- エヴァンゲリオンの量産型。形式番号としては5号機~13号機に該当する。
- 量産型ソルテッカマン
- ソルテッカマンの量産型。
- 量産型ボン太くん
- ボン太くんの量産型。
- 量産型ヴァーダント
- 厳密には森次の機体も、大量に作られたヴァーダントたちの中の「ヒトマキナになれなかったうちの一機」に過ぎず、更に言えばヴァーダント自体がラインバレルやロストバレルの量産型である。
- 新型アルマ
- ラインバレルの量産型として作られた機体。
- 量産型破壊ロボ
- 破壊ロボの量産型。
量産機
当初より量産を前提としたプラン・開発がなされたもの。
バンプレストオリジナルの量産型メカ
予め実戦運用及びトライアル提出用に先行試作機が3機ほど生産され、地球連邦軍がそれぞれのデータを総合的に判断して、量産化の可否を決定する流れが一般的。無論全ての機体がその流れを汲むわけではなく、リオンのように当初から量産を目的とした機体もある。
平行世界の設定が定着しているスパロボでは『こちら側』の世界ではなく、別の平行世界で量産されている機体もある。
OGシリーズ
- 量産型ゲシュペンストMk-II
- ゲシュペンストMk-IIの量産型。Aでは平行世界でのみ、OGシリーズでは両方の世界で量産されている。スペックは平行世界側の方が上。
- 量産型ゲシュペンストMk-II改
- 量産型ゲシュペンストMk-IIの改良機。大量生産性よりも、機体性能を重視している。その為、少数量産に留まっており、それぞれがワンオフ機のような性能を持ち、1号機と2,3号機では武装も異なる。
- 量産型ヒュッケバインMk-II
- ヒュッケバインMk-IIの量産型。αシリーズとOGシリーズで大きく姿が異なる。
- 量産型グルンガスト弐式
- グルンガスト弐式の量産型。原型機と同等の性能を持つが、『計都瞬獄剣』や念動フィールドがオミットされている。
- 量産型ビルトシュバイン
- ビルトシュバインの量産型。
- 量産型ベルゲルミル
- ベルゲルミルの量産型。但しオリジナル機自体が量産型ヒュッケバインMk-IIをベースにしている。
- キャニス
- レストジェミラをベースに開発・量産された機体。カスタム機にキャニス・アルタルフが存在するが、試作機は未確認。
- 量産型ジンライ
- ジンライの量産型であり、また同機の作戦行動を補佐する随伴機。機能のいくつかを削除・簡略化する事で量産化されている。そもそもジンライ自体、量産化を視野に入れて開発されてはいるものの先行試作機ではない単一の完成機であるため、完全な劣化量産型。
- リオン
- イスルギ重工が開発したアーマードモジュール。多数のバリエーションを持つ。詳しくはリオンシリーズの項を参照されたし。
平行世界のみ
- 量産型アシュセイヴァー
- アシュセイヴァーの量産型。
- エルアインス
- 平行世界のR-1の量産型。
- 量産型ジガンスパーダ
- ジガンスパーダの量産型。正確言うと、量産機はこちらの世界で作られた物なのだが、原型機が並行世界から持ち込まれたのでこちらに記載。
OGシリーズ外
- ノウルーズ / シグルーン
- 明確な量産化の描写はないが、試作機であるソルデファー、スヴァンヒルドの制式採用版であるため、おそらく量産されていると思われる。両者ともに試作機より性能・ポテンシャルともに高いという珍しい機体。一方でソルデファーに搭載されていたテスト用の動作補助システムはノウルーズではオミットされていたりもする。
- アクシオ
- 『第2次Z』世界において最も普及している量産機。アクシオン財団製で、WLFなどテロリストが主に使用する。
- ライオットC
- ライオットAおよびBの制式量産型。Aの射撃武器とBの格闘武器を併せ持つ…が、ゲーム的にはAとBの悪いところを併せ持つ。
スパロボ未登場の量産型メカ
- 量産型マジンガーZ
- 『SUPAROBO COMIC X』に収録された桜多吾作の読切作品に登場した、光子力研究所製のマジンガーZの量産型。
- A/FMSZ-007II 量産型Ζガンダム 大気圏内仕様
- 漫画『機動戦士ガンダム ジオンの再興』に登場したΖガンダムの量産型。
- SSMS-010ZZ ガンダムΖΖ 大気圏内仕様
- 漫画『機動戦士ガンダム ジオンの再興』に登場したΖΖガンダムの量産型。別名「ジークフリート」。
- 量産型ザンボット3
- ザンボット3の量産型(名前のみ登場)。
- 量産型アクロバンチ
- アクロバンチの量産型。合体/分離機構はオミットされている。
- ゼルバイン
- ゲーム『聖戦士ダンバイン 聖戦士伝説』に登場したビルバインの量産型。