「オールレンジ攻撃」の版間の差分

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2015年2月19日 (木) 14:46時点における版

オールレンジ攻撃(All Range Attack)

一般的に『機動戦士ガンダム』から用いられた攻撃方法。

各種遠隔誘導操作システムを用いて機体から武装端末を飛ばし、相手パイロットの死角部分から攻撃を仕掛けるというもの。

大抵モニターの範囲内を一瞬掠める程度しか見えない端末を捕らえるのは難しく、回避はおろか防御すら困難な事から有効な攻撃方法として認知された。

弱点を挙げれば、端末の操作と機体の操縦を同時に行う行為はパイロットに大きな負担を強いる事である。当然ながら操作が忙しくなり、サイコミュ操作の負担も受けるため、本体の操縦が疎かになる。現にエルメスのパイロットを務めたララァ・スンは、敵の攻撃でビットを正確にコントロールができなくなっている。

技術が発展していき、端末の操作もある程度はコンピュータにより補佐されるようになったため、操縦の負担は軽減されていった。それでも扱えるパイロットは極端に少ないことやコストの増大、さらに小型化以降は特にMS自体の機動力の上昇も著しくなったことから、主力兵器の座を獲得することはなかった。

ガンダムシリーズでは作品によって名称が異なる。宇宙世紀では「ビット」、「ファンネル」、「インコム」などが登場しており、それぞれ性能や駆動方式が異なる。また、SEEDシリーズでは「ドラグーン・システム」、00ではCB側のガンダムタイプはGN○○ビット、それ以外の敵方機体は「ファング」、と呼ばれている。

スーパーロボット大戦におけるオールレンジ攻撃

後述する「ビット」、「ファンネル」、「インコム」、「ドラグーン・システム」が代表的。ガンダム作品以外にも類似のものが稀に登場する。

当初はIフィールドなどを無力化してダメージを与えるため、実弾兵器に設定されていたが、実弾を防ぐフェイズシフト装甲でダメージが軽減されるなど矛盾が出てきたため、『スーパーロボット大戦Z』からは「バリア貫通」のビーム兵器に設定を改定した。

また、初期シリーズから伝統的に切り払いで(R以降の任天堂携帯機では撃ち落としでも)防ぐことができる。

有線式

武器端末を有線方式で操作する。

主なユニット

ブラウ・ブロ
有線式ビーム砲で攻撃。
ジオング
両前腕が有線式ビーム砲となっている。
ノイエ・ジール
ジオング同様両腕が有線式だが、こちらは操作システム上はインコムに近い。
Sガンダム
頭部にインコムと呼ばれる武器を装備。コンピュータで擬似的に操作する。
Ex-Sガンダム
インコムの他にリフレクターインコムを装備。発射したビームを射出した端末で反射して攻撃する。
ドーベン・ウルフ
インコムを装備。上記ユニットと同様の兵装。
α・アジール
有線サイコミュ式メガアーム砲を装備。ジオングやノイエ・ジールの有線アームの発展型である。
ラフレシア
上記と同様だが、カッターとレーザーを搭載。
コンティオ
有線式ショット・クローを2個装備。
パトゥーリア
多数の有線ビーム砲端末を搭載。
メビウス・ゼロ
有線式ガンバレルを搭載。有効な兵器だが、特殊な空間認識能力を持つ者でないと扱えない。
ガンバレルダガー
ストライクダガーにガンバレルストライカーパックを装備させた機体。メビウス・ゼロ同様に特殊な空間認識能力を持つ者でないと扱えない。
エグザス
上記と同様だが、こちらのガンバレルは実弾砲ではなくビーム砲になっている。また、ビームエッジも搭載している。

無線式

武器端末を直接飛ばして攻撃する。

主なユニット

エルメス
ビットと呼ばれる無人武装端末で攻撃。
キュベレイ
ビットの発展版であるファンネルを初めて装備したMS。別名はエルメス2。
サイコガンダムMk-II
リフレクタービットと呼ばれるビーム反射端末で、ビームを跳ね返して攻撃。
ゲーマルク
マザーファンネルから更にファンネルを射出する所謂親子式。
νガンダム
フィン・ファンネルはビームバリアの展開もできる。アカツキの元ネタのひとつ。
リグ・コンティオ
無線式ショット・クローを1個装備。
ゲンガオゾ
マルチプル・ビームランチャーを搭載したバックエンジンユニットを、無線で操作できる。
ガンダムローズ
薔薇状のローゼスビットを使用する。普通にビームを発射するだけでなく、ローゼスクリーマーやローゼスハリケーンといった必殺技にも用いる。
ラスヴェート
アフターウォーの世界ではビットはファンネルの様な攻撃端末群と、本体に近いスペックをもった無人モビルスーツ(ビットモビルスーツ)の二種類がある。
その中でも本機のビットMSは、外見上は本体と全く見分けがつかず、撹乱に最適の装備となっている。
ベルティゴ
ビットを装備。エルメスとキュベレイのオマージュ。
ターンX
機体パーツを分離させて、パーツから攻撃。機体全体が攻撃端末になる特殊な例。全身が攻撃端末になるという設定はジオングの初期案。
プロヴィデンスガンダム
ザフト開発の無線ビット兵器「ドラグーン・システム」を搭載。クルーゼが搭乗してストライクを大破させ、バスターを戦闘不能に追い込んでいる。
そして、ミーティアを爆砕させて最終的に撃破されるものの、フリーダムまで大破に追い込むその様は、まさにラストボスに相応しい。
Xアストレイ
プロヴィデンスガンダムと同じく、「ドラグーン・システム」を搭載。一見有線式のように見えるが、このコードはエネルギーをドラグーンに送るためのものなので、コードが切断されても操作は可能である。フィールドを形成する事も可能。
また、改装前のドレッドノートから「XM1 プリスティス ビームリーマー」を引き継いで装備している。こちらもコードが存在するが端末のロストを防ぐためのものなため、無線式である。
カオスガンダム
ドラグーンから発展した機動兵装ポッドを装備。
ストライクフリーダムガンダム
コズミック・イラの世界におけるビット兵器、ドラグーン・システムの改良型であるスーパードラグーンを搭載。本来の主人公機が霞むほどの無敵ぶり。
アカツキ
シラヌイ装備が「誘導機動ビーム砲塔システム」というドラグーンの系列装備を持つ。これはゲームではドラグーンバリアとしても実装され、象徴的なヤタノカガミと相俟って圧倒的な防御性能を示す。
レジェンドガンダム
プロヴィデンスガンダムの後継機。円錐状のドラグーン端末はビームスパイクも形成可能。
ガンダムスローネツヴァイアルケーガンダム
西暦世界における無線兵器、GNファングを装備している。誘導式ビーム砲としてだけでなく、先端にビームサーベルを形成して相手を突き刺す近接武器としても使用可能である。
アルヴァトーレ
大型GNファングを装備。ただし、操作の簡略化のため、ビームサーベル形成機能は省かれている。
ケルディムガンダムGNHW/R
GNシールドビット、GNライフルビットを装備。制御はハロが行うため、パイロットは機体操作に専念できる。
ガッデス
GNビームサーベルファングを装備。アルヴァトーレとは反対にビーム砲として使う事はできない。
レグナント
両腕の爪がGNファングとなっている。分離させずに敵を突き刺すクローとしての使用も無論可能である。
リボーンズガンダム
背部に大型の、腰部とシールドに小型のGNフィンファングを装備。それまでのGNファングとは桁違いの機動性を誇る。
ダブルオークアンタ
GNソードビットを搭載。形状の異なるA、B、Cがあり、GNソードⅤと合体させてバスターソードとしても使用可能。
ガンダムサバーニャ
ケルディムの後継機。GNピストルビット、GNライフルビット、GNホルスタービットとケルディムの比ではない数のビットを装備し、ライルの得意な「乱れ撃ち」の技能を存分に発揮する。
ガンダムハルート
コンテナ部にGNシザービットを内蔵している。先端部をハサミ状に展開させ、目にも止まらぬ速さで目標を切り裂く。
ラファエルガンダム
肩部ユニットの両サイドに遠隔操作が可能なGNビッグキャノンを搭載。また、GNビッグキャノンはGNビッグクローという格闘形態にも変形が可能である。
ガデラーザ
MSサイズの大型GNファング14機および小型GNファング140機を搭載。合計154機のGNファングをデカルトは脳量子波で巧みに操作する。

ガンダムシリーズ以外

ファンネルのイメージが強いためか、ガンダムシリーズ以外のロボットアニメではあまり見られない。反面バンプレストオリジナルでは採用率が高い。

ニルヴァーシュ type ZERO spec-V
槍の先端部を7つのビットに分離可能。
魔装機神
ハイ・ファミリアを装備。ただしグランヴェールの場合、ファミリアは一体のみなので、ここには含まれない。
グランゾン
αシリーズ以降、ワーム・スマッシャーがビームそのものを空間転移させてオールレンジ攻撃を行う武器として描かれている。
デュラクシール
両肩のアーマーを飛ばして攻撃を仕掛けるタオーステイルを搭載(LOEのみ)。νガンダムのフィンファンネルに近い。
R-3
直接攻撃を行うストライクシールドを搭載。
アシュクリーフ
直接攻撃を行うスプラッシュブレイカーを搭載。
アシュセイヴァー
ビーム攻撃と直接攻撃の両方が可能なソードブレイカーを搭載。
アストラナガン
端末による射撃を行うガン・ファミリア(ガン・スレイヴ)を持つ。OGにおける代用機のR-GUNリヴァーレも同様。
エクサランス・コスモドライバー
フェアリーという無人誘導兵器を装備。
ブラスタ / リ・ブラスタ
遠隔操作型の戦闘ユニット・SPIGOTを装備。厳密にはブラスタ(リ・ブラスタ)のスフィアの力を制御するためのシステムであり、これ自体に攻撃力は持たない。

余談

オールレンジ攻撃の概念の事実上の発案者である富野由悠季監督自身が、この概念の最大の批判者であることは結構知られている。なぜならば、ミノフスキー粒子などによって遠隔操作可能な兵器を無力化することで、人型兵器の白兵戦の現実化を考えた監督にしてみれば「オールレンジ攻撃は人型兵器の存在意義を無効にしてしまう本末転倒の戦闘スタイル」に他ならないからである。
ガンダムシリーズに登場するオールレンジ攻撃は、ビットからファンネルへと設定が変化していく中で、長距離兵器から火力を上げるための浮遊砲台のような位置付けへと描かれ方が変わっていった。だが、ファンネルなどの小さな兵器はそれ自体の見栄えが乏しく、さらに攻撃自体も絵的にも単調でつまらないものになりがちであったこともあり、その問題に拍車をかけることとなる。
実際に『ΖΖ』を経た『逆襲のシャア』では、νガンダムサザビーの最後の戦いがファンネルを潰しあった末の挙句の殴り合いで終結している。

近年では、近接攻撃能力の追加などの多機能化やそれに伴う特徴的なデザイン設定など演出のための工夫がされている場合もあるが、それもまたロボットアニメにおける遠隔操作兵器の持つ矛盾を回避するがゆえの苦肉の策であることは、演出的にも論を俟たない。