次元力
次元力(Dimension Power)
『スーパーロボット大戦Z』においてジ・エーデルが解析を試み、アサキムが追い続けている未知なるエネルギー。「オリジン・ロー」、「源理の力」、「大いなる力」などとも呼称される、Zのストーリーにおいて重要な位置を占めるキーワードである。
作中で断片的に明らかにされた内容や語感から推察すると、「複数の次元において共通に発揮される力」「全ての力の源となる原初的な力」のような性質を持つ力であろうと思われるが、Zの作中ではその詳細が明かされないまま終わった。
再世篇でユーサーが語った内容によれば、次元力とは、
- 正式名称はオリジン・ロー
- 恒星に由来する破壊と再生の力
- これを制御するということは、全ての事象を制御するに等しい
- Z世界の地球は、特に強いオリジン・ローを発する恒星の力を集めている
- 太陽の通り道である黄道はオリジン・ローの流れそのもの
- そこに在る十二星座の軌跡はそれぞれにオリジン・ローを発しており、それらは対応するスフィアによって引き出される(しし座なら「傷だらけの獅子」、てんびん座なら「揺れる天秤」、みずがめ座なら「尽きぬ水瓶」)
- それを引き出すのに、地球は星図的な観点から最適な位置に存在している
というものらしい。
次元力の本質は「霊子を介した意志による事象の制御・法則の変換」であり、これはすなわち因果律の操作に等しい。ただの操作と違うのは、既に成立している概念をも無視して改変できる、ということである。ある物体がその物体として存在している、という事実を解明・制御することで、それを全く別の物体に変換することが出来、元素の組成をも操ることが出来る。
既存の概念を用いると、クロスゲート・パラダイム・システムと同じようなことが出来るのだが、次元力の場合「因」と「果」の関連性そのものを、平行世界を創造することなく操作することが出来る(ある人物が存在するには当然その親が存在しているという「因」が必要であるが、次元力を使うとその人物の現在の存在に至る「因」を別のものに移し変え、存在を維持したままその親の存在を消し去ることが出来る)。一言で言ってしまうと、本物の神の力と呼べる力である。
これを「使用」するに当たっては、強い意志が絶対の条件となるほか、いくつかの段階がある。
- 第一段階:無限エネルギーの抽出
- 第二段階:周囲の事象の限定的な制御
- 第三段階:広範囲の事象の強力な制御
- 最終段階:あらゆる事象の完全制御
となるが、現時点の超時空物理学では第一段階止まりであり、最終段階に至った例は存在しない。 これはスフィアによる行使でも同様であるが、こちらの場合リアクターの状態に移行した段階が反映される。
第一段階(=ファースト・ステージ。動力としての使用)ではただの無限動力であり何の影響もないが、第二段階(セカンド・ステージ。スフィアが覚醒を始める)に至ると、次元力がより多く抽出される代わりに、それぞれの属性に応じた反作用を受けることになる。そしてそれを乗り越えて第三段階(=サード・ステージ。スフィアが覚醒し、属性に応じた事象の制御が可能となる)に至ると、反作用すらも制御して無効化し、リアクターとして完全になる。 アイムを例に挙げると、彼の場合は第二段階から第三段階への移行途中であり、反作用の克服こそできていなかったものの、事象制御を行えるまでに達していた。
再世篇において登場したアイム以外のリアクターは第二段階(セツコのみ第三段階へ移行しつつあった)であり事象制御は不可能であったが、クロウとユーサーは互いのスフィアを共鳴させることで一時的にオリジン・ローを引き出し、事象の制御を実現している。
スフィアを用いる場合は第三段階が限界であり、最終段階に至るのは人では絶対に不可能。それを成しうるのは「神」であり、スフィアの真の姿にして次元力の根源というべき太極のみである。
そして、この事象制御の究極の形の一つと言えるのが、他でもない時空震動である。
太極・スフィアとの関係
現時点で次元力の本質に最も近い位置にいると思われるのがアサキム・ドーウィンである。彼は作中で「太極」への道を開くためには十二の「スフィア」を全て揃えることが必要であり、そのためにスフィアの所持者であるメール、またはセツコに接触したことを告白している。
「太極」は世界の破壊と再生をも自在に行使し得る存在であり、その破壊は「次元力」の行使によって行われるようである。一方「スフィア」の所持者、そしてアサキム自身も太極同様(勿論程度に相違はあろうが)に次元力を行使できること、また更にジ・エーデルがカオス・レムレースにより限定的に次元力の行使に成功した点から考えて、次元力・太極・その行使者の関係はαシリーズにおける
- 世界の創造・破滅を司る力である「アカシックレコード(無限力)」
- 無限力に選ばれ、自在にその力を行使し得る「ナシム及びケイサル・エフェス」
- アカシックレコードにアクセスすることが出来、部分的にその行使が可能な「サイコドライバー」
のような関係に近いのではないかと推察される。
一方で、アサキムは過去に犯した大罪により「永遠に死なない」「無限に平行世界を彷徨い続ける」存在となってしまい、その輪廻から脱するべく太極への到達を望み、スフィア争奪のための「聖戦」に参加したのだ、とも述べている。αシリーズにおいても無限力による「死と再生(新生)」の輪廻の設定が描かれているが、そちらがアポカリュプシスという「終末の到来」をより強調しているのに対し、無限に繰り返される「永遠」の側面がより強い設定と言える。
再世篇において、次元力を吸収する装置であるZONEが登場。この際、力を吸われた周辺区域は生物・無生物を問わず砂と化して消滅している。
他作品における類似設定
この用語が正式に採用されたのは『スーパーロボット大戦Z』ではあるが、スパロボではZ以前の作品においても次元転移及び並行世界的な設定の比重が(複数の原作が一つの世界に混在するという作品の性質上、そうなりやすい点はあるのだが)非常に大きく、似たような設定・能力を持つメカ・人物が多数存在する。
Zで次元力の全容が未解明に終わったこともあり、次元力がこれらの設定・能力とリンクした形で用いられる可能性は高い。実際、上記のようにαシリーズにおける設定との類似点が見られる他、OGシリーズにおいて次元力と関連していると思われる発言をした人物も存在する。
この力を使うには、セツコのようにスフィアと完全に同調する、アサキムのような「放浪者」となる、機械的に引き出す、太極に至るといった4つの方法が存在する。強い意志を介さず機械的に引き出す方法では単なる無限のエネルギーとしてしか使えないが、アサキムや同調の進んだスフィア・リアクターはこの力の「本質」と思われる部分を使用することが出来る。また異世界インサラウムにおいてはこの力の研究が進んでいたらしく、主な機動兵器はこの力を動力として駆動している。
次元力と関連のある機体・人物・事項(Z)
- ガンレオン / メール・ビーター
- 次元力に干渉を可能とする「スフィア」の力を行使できる機体。メールはスフィア「傷だらけの獅子」の所持者。ただし、メールが出来るのはガンレオンに対するスフィア起動の指示であり、力を行使できる「スフィア・リアクター」はランドの方。
- バルゴラ→バルゴラ・グローリー / セツコ・オハラ
- 次元力に干渉する「スフィア」の力を「ガナリー・ガーバー」と呼ばれる武器システムにおいて行使可能としている機体。セツコはスフィア「悲しみの乙女」の所持者。
- ジ・インサリアス・アークライナス / ユーサー・インサラウム
- 次元力に干渉を可能とする「スフィア」の力を行使できる機体。ユーサーはスフィア「尽きぬ水瓶」の所持者。
- ジェミニア / ガドライト・メオンサム
- 次元力に干渉を可能とする「スフィア」の力を行使できる機体。ガドライトはスフィア「いがみ合う双子」の所持者。
- シュロウガ / アサキム・ドーウィン
- 平行世界を彷徨う青年。彼自身が次元力を任意に操作できる。なお彼の台詞から、ゲッター線もまた次元力と関連を持つ存在であると思われる。機体の開発経緯は現段階では不明。時獄篇時点では「知りたがる山羊」「偽りの黒羊」「尽きぬ水瓶」を含む4つのスフィアを所持している。このうち最初に手に入れた一つと「知りたがる山羊」はサード・ステージに移行している。
- カオス・レムレース / ジ・エーデル・ベルナル
- 次元力を制御・行使する目的でジ・エーデルが自身専用機として開発。現段階では唯一、限定的にではあるが次元力制御を目的とした機体として設計されたことが明らかになっている。
- 劇中の描写を見る限りでは、ガドライトやアイムを超えるレベルでの事象制御(同位体召喚、存在置換、機体再生など)を可能としており、属性という方向性・縛りがない分オリジナルのスフィアを超えていると言える。
- カオス・カペル
- 武器の一部に次元力を応用した機体。カオス・レムレースの次元力制御機能のテスト機としての側面がある。
- 次元獣
- 次元将(作中で出てきたのはガイオウ一人だが、他に三人存在)がヴァイオリレイションシステムで生み出した兵力。標準でDフォルトを使用可能であり、次元力を行使可能。
- パールネイル・エメラルダン・ジェイドルーン・サフィアーダ・パールファング・ディアムド
- アークセイバーの機動兵器は、次元力を動力としている。これらはあくまでエネルギーとして使用するのみであり、事象制御は行えない。
- ZONE
- インサラウムで開発された大地から次元力を吸い上げる装置。大量の次元力を吸い出し、更に改造次元獣との連携で事象制御と思わしき機能を発揮する。ただし、制御に失敗すると大地が崩壊するまで次元力を吸収するという欠点がある。
- ガイオウ
- 遥か昔、世界の危機に立ち向かうために次元将へと生まれ変わった戦士の一人。次元力や世界の真実について知っている節があり、彼が使う力自体も次元力が関係していると思われる。
- アンブローン・ジウス
- インサラウムの科学者。ガイオウの襲来に対して封印された次元科学を解放し、ZONEの開発やアークセイバーの機体強化を行った。その研究成果はかなりのものであったが、再世編の戦いで死亡、以降インサラウムの次元科学研究は大きく停滞した。
- エラ・クインシュタイン
- 『宇宙戦士バルディオス』の登場人物。Z本編において次元力と平行世界に関する仮説を初めて提示した。作中世界では「次元力」という言葉は彼女の命名によるものとなっている(実際はグラー博士が次元力という言葉を先に使っているのだが、クインシュタイン博士はそのことを知らず、偶然の一致である)。彼女はタイムパラドックスをテーマとした作品に登場する科学者であるため、最適の人選であったと言える。
- ゴッドシグマ / 風見博士
- ジ・エーデルの発言から次元力と何らかの関わりがあると思われる「トリニティエネルギー」の発見者であり、それを応用して製造された機体。
- グラー博士
- 過去の黒歴史に直接関係してない勢力の中では、一番初めに次元力の存在に気づいた人物。過去の黒歴史の勢力の研究(特に堕天翅族)により次元力の一部を解明し、その力で科学要塞島を浮遊させた。ちなみにその解明した力はゼオライマーの次元連結システムに酷似している。
- パラダイムシティ
- Zにおいては次元力の作りだした「箱庭」。時獄のモデルケースであるらしい。
- エンジェル
- その「天使」の名が示す通り、次元力そのものの行使者と関係が深い人物。「太極の使者」として、人類の代表者と重要な対話を果たす役割と、それによって導きだされた世界リセットの意思決定権を託されている。シティの住人から奪われたメモリーそのものであり、シティそのものでもある。
- ビッグ・オー / ロジャー・スミス
- ビッグ・オーはザ・ビッグの一体のため、前述したように神の軍団でありながら、人に託された次元力の表れである。それと共にあるロジャーは全人類の代表として、太極、引いてはその使者と交渉を行う事を託された全人類で唯一の人物。ちなみにこれはメモリーを持っていた頃にゴードンから依頼された仕事であった。そのゴードンは太極の意志によって「メトロポリス」を書いた=太極の意志を知ることを考えると……。
原作同様Zの世界観でも、何故彼がそこまで複雑な立場にあるのかは不明。なお、Zの世界観において「ザ・ビッグの真のドミュナス」とは、太極の意志と交渉を行う権利を持つ者のことを現す。
- 時空振動弾 (超時空世紀オーガス)
- 本作において時空間構造を破壊し、多元世界を生み出した元凶。原作においては時空間構造破壊の原理は不明だが、本作では次元力による世界の破壊・再生と関連した原理で作動する兵器であろうと思われる。尚、時空振動弾発動の現場に居合わせた桂木桂、及びオルソン・D・ヴェルヌの2名は「大特異点」に接触可能な特異点となる。「太極-次元力」と同様の関係にあるのかは不明だが、限りなく類似した設定であると言える。
- 不動GEN(不動ZEN) / アクエリオン
- パラダイムシティでのアサキムとの対話において、彼と同じ「罪人」である事が判明する。どのような罪を犯したかは不明だが、アサキムと同じ大罪を背負っているとのセリフから、やはり太極の理に対して何らかの反意を示したと思われる。時獄篇で提示された情報によると、ある理由からアポロにアポロニアスとしての意識の一部を与え、彼がその転生であるかのように偽装していた、という過去のいきさつが示唆されており、それに関連すると思われるが……。
- ジ・エーデルの言によれば、「太陽の翼」と成りえたアクエリオンは次元力そのものを行使せずとも、ブレイク・ザ・ワールド及び次元間交錯崩壊などにも容易に干渉できるようで、GENが烙印を受けた件も合わせ何らかの関与が窺える。
- 堕天翅族
- 1億2000年前の時空破壊において太極の呪いを受けた。アサキムや不動GEN、ガイオウのような「呪われし放浪者」ではないが、次元の狭間にアトランディアごと閉じ込められ、その記憶を奪われた。その後は黒歴史の戦いの中、少しずつ位相がずれていく世界で戦い、敗れ、閉じ込められてまた目覚め……という周期を繰り返してきている。Zにおけるブレイク・ザ・ワールドで次元が綻んだことでその記憶の一部を取り戻し、因果の呪いを逃れるべく新たな世界を造ろうとした(Zにおける原作再現がこれ)。
- 宇宙魔王
- 時獄編に登場。1万2000年前の宇宙崩壊の時、ブラックホールと一体化することで、オリジン・ローの源である恒星の成れの果てであるブラックホールから発生する『マイナスのオリジン・ロー』を手に入れる。『マイナスのオリジン・ロー』は負の次元力であるという事以外の詳細は明かされていないが、鉄人28号の太陽エネルギー転換装置による太陽の力と相殺し合う関係にある。宇宙魔王やハーデス、ズールと言った暗黒の力を持つ者たちは、元をただせばそのルーツが同じであるという言葉もあり、Zシリーズにおけるハーデスやズールの力も次元力と何らかの関係がある可能性が示されている。「暗黒の力」が「マイナスのオリジン・ロー」の通称である可能性もある。
関連する用語
- スフィア
- システムXN
- XNディメンション
- ディス・レヴ
- オーバーゲートエンジン
- クロスゲート
- クロスゲート・パラダイム・システム
- オリジン・ユニット
- ゲッター線
メモ(推察)
- αシリーズに登場する「クロスゲート・パラダイム・システム」は「時空因果律変動装置」であり、原因に干渉することで結果を自在に操ることが可能。つまりは任意の事象を自在に引き起こすことが可能な代物である(サイバスターに搭載されているラプラスデモンタイプコンピュータにも同様の機能が備わっている)。スパロボの世界観の中では因果律を歪めることは非常に危険であるとされており、また大罪でもあると随所で述べられている。原因は様々に推察可能であるが、その詳細は今のところ不明。普通に考えれば、タイムパラドックスの発生による因果律崩壊が容易く起きてしまう、という理由なのだが。
- 次元力との関連についてあくまでも推察で述べるとすれば、「因果律操作による任意の事象の発生」が「無数の平行世界を発生させその中から該当の事象が生じた世界を選択すること」を意味する(実際、『スーパーヒーロー作戦』においてユーゼスが操作を行った結果、主人公が本来いた世界の流れに分岐が生じ、新たな世界が発生した。)のだとすれば、因果律操作=平行世界の拡大はMXで表現されたような世界の破綻を引き起こしかねない事象である。Zも無数の平行世界が存在している設定であるわけだが、「太極が次元力を行使し世界をリセットする」とは「無数に分裂し破綻の危機に瀕する世界を整理すること。『スーパーロボット大戦MX』の世界観では「補完と調律の複数の手段における『多元世界』」。因果律行使による私的な運命改編は平行世界の増大を防ごうとする太極の意志に反する禁忌である(=大罪)との捉え方も出来る。そして、その視点で行けば、Zにおいて全てを終わらせた「時空修復」はまさに「大罪」であろう。ZEUTHは世界のリセットを決めた太極の意志に反し、「人の数だけ世界を生みだす」時空修復を行ったのだから。
- また一方、『スーパーヒーロー作戦』におけるクロスゲート・パラダイム・システムの発現がタイムスリップという結果であったことから、過去へのタイムスリップによる未来の改編も一種の因果律操作であろうと思われる。この事から、時流エンジンを搭載し、『スーパーロボット大戦R』で過去へのタイムスリップを成功させたエクサランスについて、次元力との関連性を指摘する声もある(OGシリーズでは次元転移にも成功している)。
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