クトゥルフ神話

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パルプマガジン連載小説を元にした神話大系のひとつ。

20世紀前半にアメリカ合衆国の作家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトと彼の友人たちによって作り上げられた所謂創作神話で、一般的に神話と呼ばれているものとは根本的に性質が異なる。一般的な「神話」は(クトゥルフ神話のそれ以上に様々な概念・解釈が存在するため、一概には言い切れないが)往々にして歴史は古く神聖なものとされているが、クトゥルフ神話は大元を辿れば大衆小説家たちが1900年台初頭に発表したシェアワールド的なホラー小説に過ぎない。

太古の地球は旧支配者と呼ばれる異形の神々によって支配されており、その姿は常人には名状し難い物に見え不安や孤独、絶望などを煽らせる……と、されるなど全体的にスケールは宇宙規模でホラー色が非常に強い。

旧支配者の名前である「Cthulhu」は人間には発音できない音を英語っぽく表記したものという設定であり、音節文字であるカナ文字でどのように表記するかは翻訳者のセンス次第である。「クトゥルフ」以外でも「クトゥルー」「ク・リトル・リトル」「クルウルウ」などと訳されることがある。クトゥルフ神話を体系化したオーガスト・ダーレスは、口にするときは「クトゥルー」に近い発音をしていた模様。他に「発音不可能」と明言されているのはルルイエ(R'lyeh)。

クトゥルフ神話は作家毎に解釈が異なり、また後の作家によって付け加えられた概念や神格なども多いため「これが正しい」という定説は存在しないと言える。元々がラヴクラフトとその仲間たちが骨子を作り、そこに数えきれないほどの(それこそ有名作家によって書かれた世界的名作から、そこらの多感な年頃の学生がノートに書いた落書きまで)設定やエピソードが骨組みに粘土を貼り付けるが如く次々と付け加えられているため、その世界観は現在進行形で変化し続けていると言って良い。ゆえに、以下の解説も「比較的良く聞かれる解釈」にすぎない事に留意されたし。

クトゥルフ神話が取り入れられている作品

機神咆吼デモンベイン
作品そのものがクトゥルフ神話のオマージュと呼べる。数多くの舞台や用語がクトゥルフ神話発祥となっている。
戦え!! イクサー1
敵組織の名前に「クトゥルフ」と名前を借りている程度。但し前日譚である漫画作品『黄金の戦士』には下記クトゥルフと酷似した生物が登場する。
THE ビッグオー
Act:07「The Call from The Past」がクトゥルフ作品『THE SHADOW OVER INNSMOUTH(インスマウスを覆う影)』のオマージュ。
バンプレストオリジナル
ルイーナの面々がクトゥルフ神話をモチーフにしてデザインされている。

神々

外なる神々(Outer Gods)

主に外宇宙に存在する超越的存在。その認識と思考は通常の生物で理解できる物ではない。彼らほどのレベルになるともはや人類や地球には何の興味もなく、人類からの崇拝の対象となることも稀である。ただし、ナイアルラトホテップのみは例外で人類に対し時折干渉を行うことがある。

アザトース(Azathoth)
クトゥルフ神話の主神にして創造神。「沸騰する混沌の核」の異名を持つ盲目白痴の神。下劣な太鼓とかぼそく単調なフルートの音色が響く宇宙の中心に位置する玉座にて、冒涜的な言葉を吐き散らしながら、狂ったように身もだえしている。また、宇宙の全てはアザトースの見る泡沫の夢であるらしい。
ナイアルラトホテップ(Nyarlathotep)
「ニャルラトホテプ」とも。
アザトースの息子にして神々の従者。「這い寄る混沌」の異名を持つ、千の顔を持つ無貌の神。無数の化身を持ち、世界に狂気と混乱をもたらすために暗躍する。邪神の中では珍しく人間的な知性を持ち、人間はもちろん主である神々さえも嘲笑うトリックスター。
火の邪神クトゥグアのことだけは一貫して苦手としており、ある作品に至っては追い詰めた人間に反撃として召喚されたクトゥグアにホームグラウンドたる「ンガイの森」をなす術もなく完膚無きまでに焼き尽くされるという、大黒星がついてしまった。また、人間を嘲笑うために自ら人間と同じ舞台に上がることがあり、それを逆手に取られる場合もある。
その設定や立ち位置、化身の多さ、動かしやすさ、フットワークの軽さからクトゥルフ神話に登場するキャラクターの中でも特に創作作品に登場させやすいキャラクターとしても有名で、クトゥルフ神話の原作シリーズ以外でも、ライトノベル作品『這いよれ! ニャル子さん』や、ライアーソフトのスチームパンクシリーズの『漆黒のシャルノス』や『紫影のソナーニル』、アトラスのゲーム作品『女神転生シリーズ』とその派生作品の『ペルソナシリーズ』など、日本のオリジナル作品にも多数登場しており、クトゥルフ神話は知らなくてもナイアルラトホテップの事は知っている人も多い。その役どころも様々で、『デモンベイン』や『ペルソナ2』などのように物語の全ての黒幕で元凶であり、究極の悪意の化身そのものといえる邪悪極まりないキャラクターとして登場することもあれば、『這いよれ!ニャル子さん』のように憎めない性格をした愛らしい(?)メインヒロインとして登場することもあるなど、その活躍は多岐にわたる。当然ながらクトゥルフ神話内で千の顔全てが登場したわけではなく、複数の作者による「架空の神話体系」であるがゆえに、上記の面々が本家のニャルラトホテプの顔の一つではないとは言い切れない
ヨグ=ソトース(Yog-Sothoth)
アザトースの孫にして時間と空間の神。「全にして一、一にして全なる者」「門にして鍵」の異名を持つ。分裂と融合を繰り返す不定形の玉虫色の球体の集積物であるとされる。全ての時と共存し、あらゆる空間に接している神であり、魔術師達はこの神の力を借りる事でタイムトラベルやワープを行うことが出来る。また、人間の女性との間に異形の子を成すこともできる。

旧支配者(Great Old Ones)

太古の地球(一部に例外も存在する)に存在していた極めて強力な生物。生物とはいえ人類を遥かに凌ぐ(そして人類には決して理解できない)知性と超自然的能力を持ち、事実上「神」と言っても差し支えない存在である。現在そのほとんどは世界の各地で眠りに就いており、彼らが(一時的にせよ)目覚める時には様々な災害が起こる。

クトゥルフ(Cthulhu)
「クトゥルー」「ク・リトル・リトル」とも呼ばれ、「九頭龍」と同一視されることも。
海底都市「ルルイエ」に眠る旧支配者。タコのような触手を持ち、コウモリのような翼を持つ。強力なテレパシー能力を持ち、ルルイエが一時的に浮上した際には世界中に精神的ショックを及ぼすという。
後に『クトゥルフ神話』と纏められる事になる創作神話大系の要素が初めて用いられた小説のタイトルが『Call of Cthulhu(クトゥルフの呼び声)』であったことが、この創作神話体系が『クトゥルフ神話』と呼ばれるようになった由来である。その名前から『クトゥルフ神話』の主神格のように思えるかもしれないが、上述の通り神話体系の由来となったのは「登場作品」の方であり、クトゥルフ自体は他の神格に比べてそこまで力があるというわけでもなく、唯一実際に登場したラヴクラフト作品である『クトゥルフの呼び声』では普通の人間がクトゥルフの頭部に全速力の船をぶつけることで撃退することができた(ただしその直後にあっさり復活しており、倒したというよりは「殺しても死なない」という描写に近い)。
ハスター(Hastur)
「ハストゥール」とも。
ヒアデス星団の古代都市カルコサの「ハリ湖」に住む旧支配者。「名状しがたきもの」の異名を持つ。どの様な姿かは諸説あるが不明であり、異名の通りに名状しがたい神。風の神性の首領にして、クトゥルフとは兄弟であるが対立しているという。
クトゥグア(Cthugha)
恒星「フォーマルハウト」に住む旧支配者。生ける炎の姿を持つ。ナイアルラトホテップにとって唯一の天敵とされており、かつてクトゥグァが地球上に召喚された際には地球上の拠点である「ンガイの森」を焼き尽くした。
イタクァ(Ithaqua)
北極圏に住むハスターの眷属である旧支配者。「風に乗りて歩むもの」の異名を持つ。人間を思わせる巨体に人間を落書きにしたような顔と2つの赤い目を持つ。「眼のある紫の煙と緑の雲」とも。運悪くイタクァに遭遇した人間は空に連れ去られ、生贄として数ヶ月に渡って地球外の遠方の地を引き回されてしまう。
ダゴン(Dagon)
クトゥルーの眷属である旧支配者、もしくは小神。インスマウスなどで「深きものども」に信仰されている。何万年も生きており、巨大な魚人のような姿をしている。一説によると「深きものども」が長い年月をかけて成長した姿がダゴンであるらしい。妻に「ヒュドラ」(「ハイドラ」とも)がいる。クトゥルフ神話での知名度がもっとも高い邪神であるが、元は古代パレスチナにおいてペリシテ人が信奉していた神。
アトラック=ナチャ(Atlach-Nacha)
「アトラク=ナクア」とも。
古の大陸ハイパーボリアの大洞窟に住む蜘蛛の神。人間の言葉を使用して意志疎通をすることも可能。底無しの深遠に糸で橋をかける仕事を永遠にし続けている。

旧神(Elder Gods)

外なる神々や旧支配者と敵対する存在で、人類に対しては比較的友好的とされる事もあれば、人類を顧みずに邪神と戦うだけの存在とされる事もある。ラブクラフトは名称だけを設定し、それは後にオーガスト・ダーレスによって「外なる神々(邪神)と対をなす善なる神々」と再定義され、デモンベイン大十字九郎の元ネタであるブライアン・ラムレイの『タイタス・クロウ』シリーズでその再定義された概念が一気に広まった。作家によって細かい解釈に差異があり、海神ノーデンスや炎神ヴォルヴァドスといった地球古来の神々を旧神のカテゴリーに分類する作家もいる。
旧神の眷属「星の戦士」が、「M78という星雲のあるオリオン座からやって来た光線を放って巨大な化け物と戦う光の巨人」であるためか、某光の巨人も旧神とする作家も……

ちなみに某光の巨人の制作元にクトゥルフ神話ファンがいて「星の戦士」を元ネタにした…なんて話は一切なく、そもそもあの光の巨人の故郷は元々はM87星雲という設定だったのが誤記でM78星雲になったという経緯があるため、M78星雲が被ったのは奇跡的な偶然の一致である。ちなみに、その光の巨人のシリーズ作品の中にも、クトゥルフ神話の要素が非常に強い作品が存在していたりする。

生物

ビヤーキー(Byakhee)
「バイアクヘー」とも。
ハスターの眷属。コウモリの翼を持ち、トカゲの頭のハチのような姿をした大きさ2-3mの怪物。宇宙空間を超光速飛行する能力を持ち、ハスターと契約した魔術師の便利な移動手段として使役されることが多い。
シャンタク(Shantak)
ナイアルラトホテップに仕える怪物。鳥と類似した姿をしているが、その体躯は象をも凌駕する大きさとそれを覆う爬虫類じみた鱗が特徴。生息地である幻夢郷(ドリームランド)のみならず宇宙空間までも飛行できるという極めて高い飛行能力を誇るが、乗り心地は最悪である。
星の精(Star Vampire)
その名前が示すとおり、星間宇宙に住む地球外生命体。普段は透明で不可視となっているが、犠牲者の血液をすするときに、多数ある触手のような吸入口と大きな鳥の如き鉤爪を持った球体の姿を表している。『妖蛆の秘密』に記された呪文によって召喚することができるが、その人間は例外なくこの生物に吸血されることとなる。
深きものども(Deep Ones)
宇宙から飛来した旧支配者の眷属。所謂「インスマス面」といわれるカエルのような顔が特徴で、外見も人間離れしたものとなっている。人間と交配して同族を増やしているが、その醜い容姿のせいで人間から忌避されている。
  • 機神咆吼デモンベイン』では「深きものども」が登場。ブラックロッジと共謀するも、彼らに利用された末に切り捨てられる。UXでは第26話IMで存在のみ言及。
ナイトゴーント(Night-Gaunts)
多くの旧支配者に使役される夜鬼。幻夢郷にあるングラネク山にコロニーを作って生息している。外見は顔は無く黒い皮膚に蝙蝠の羽と長い尻尾が特徴。
忌まわしき狩人(Hunting holler)
ニャルラトホテプに使える奉仕種族。蝙蝠のような羽を持つ、巨大な蛇とも芋虫とも言われる姿を持つ。全長12m。日光に弱い。
  • 機神咆吼デモンベイン』に登場する、サンダルフォンのバイク「ハンティングホラー」の由来となっている。

人物、組織

タイタス・クロウ(Titus Crow)
壮年の私立探偵。数秘術やクトゥルフ神話の知識等を駆使して旧支配者と戦っている。
ハーバート・ウェスト(Herbert West)
小柄で金髪蒼眼の医者。死んだ人間を生き返らせるという人道から逸れた実験を行っているため、周囲の人間は彼を忌避している。

書物

通常のクトゥルー神話においては重要なのは「記載されている内容」の方で(水神クアタトやルルイエ異本みたいな異様な特性を持つものもあるが)書物自体は「ただの本」に過ぎない。もっとも、常人なら正気を失いかねない「知らないほうが良い知識」について記されているため、並の人間の手に余る危険な品であることに変わりは無いが。

ネクロノミコン(Necronomicon)
架空の魔導書。複雑多岐にわたる魔導の奥義が記され、それ故にこの魔導書自体に邪悪な生命が宿ることもある。狂える詩人アブドル・アルハズラット(「アブドゥル・アルハザード」とも)により、730年にダマスカスにおいて書かれた「アル・アジフ(Al Azif)」が原典であり、テオドラス・フィレタスによってギリシャ語に翻訳されて表題も「ネクロノミコン」となった。
ナコト写本(Pnakotic Manuscript)
クトゥルフ神話で言及される書物の中でも最も古い書物。人類の誕生するおよそ5000年前に当時の地球を支配していた種族が残したもので、氷河期以前に北極圏に存在したロマールの民が人間の言語に翻訳した。「写本」とついてはいるがれっきとした原典。
エルトダウン・シャーズ(Eltdown Shards)
「エルトダウン陶片」とも。
三億年前に書かれたとされる二十三枚の粘土板。ナコト写本の原典と言われている。
妖蛆の秘密(Mysteries of the Worm)
ラテン語の魔導書。表紙は鉄製で、黒く分厚い。内容は中東地域の異端的信仰に詳しいものである。錬金術師、降霊術師、魔術師であるルートウィヒ・プリンにより1542年にケルンで出版され、その原題は『デ・ウェルミス・ミステリイス』(De Vermis Mysteriis)。しかしこの本が出版された直後に教会から出版禁止処分を受けた。
水神クタアト(Cthat Aquadingen)
四百年以上前にこの魔導書が書かれていたが、誰が著者なのかは不明である。人間の皮膚で装丁されているためか、雨が降る前に湿り気をおびることも。
セラエノ断章(The Celaeno Fragments)
ラバン・シュリュズベリィ博士がセラエノでまとめた魔導書。後に復活したクトゥルフの封印に使われた。
エイボンの書(The Book of Eibon)
真理を探究した魔術師エイボンの知恵を、彼が土星に逃れたのちに弟子たちが編纂した書。
屍食教典儀(Les Cultes del Ghoules)
フランス人貴族・ダレット伯爵によって著された、食人行為、死姦をはじめとする背徳的行為を記した魔導書。ミスカトニックに保管されている数冊を除き、すべて発行禁止処分を受けている。
無銘祭祀書(Unaussprechlichen Kulten)
ドイツ人神秘学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・フォン・ユンツトによって著された、狂人の夢とされるうわごとのような記述で埋め尽くされた魔導書。その真意は、魔術の秘儀に通ずる者でなければ読み取ることができない。実は続編が存在するが、この筆者は考えられない状況で無残な死を遂げたうえ、復元した友人は内容を一読したのち原稿を焼却して自殺したという経緯がある。
ルルイエ異本(R’lyeh Text/螺湮城本傳、螺湮城教本)
アーカムの研究家エイモス・タトルがアジア内陸部で10万ドルで購入した写本。漢文で書かれ、人皮で装丁されている。内容は大いなる九頭龍(クトゥルフ)を主に、その眷属と海の関わり、異界のものを召喚する呪文、崑崙大陸(ムー)と螺湮城(ルルイエ)の沈没について記述されている。

地名

アーカム
クトゥルフ神話関連作品に度々登場するマサチューセッツ州の都市。
インスマウス
ニューベリーポートから車でアーカムへ向かう途中にある港町。ダゴン秘密教団を信仰する深きものどもとその混血「インスマウス面」たちの街。かつては普通の人間の街であったが、ある時、街の有力者により深きものどもが招かれ、ほぼ全ての住人が半強制的に混血種となった。表面上はゴーストタウンだが、陸上に住んでいるのは肉体が変異の過程にある一部の住人に過ぎず、海中にはおびただしい数の深きものどもや「インスマウス面」が生息している。
ミスカトニック大学(Miskatonic University)
アメリカ合衆国マサチューセッツ州アーカムにある総合大学で、1797年に創立された。専攻科目として考古学部、人類学部、歴史学部、副専攻科目として医学部があり、大学院も設置している。大学にある図書館には、世界に数冊しかないネクロノミコンのラテン語版や、稀覯書、魔道書が多く収蔵されているが、何者かによって悪用されないように本は厳重に管理されており、それらを簡単に閲覧することはできない(…はずだが、作品によっては簡単に貸し出されている事がある)。
ルルイエ
クトゥルフとその眷属たちが眠る孤島の都。南緯47度9分 西経126度43分の海底に沈んでいるが、星と地球が正しき位置につくと浮上し、クトゥルフが目覚めるとされている。地表は緑の泥土で覆われ、人間の知覚では認識が困難な異形の建造物が立ち並ぶ。
サイクラノーシュ(Cykranosh)
ハイパーボリア時代における土星の呼称。ツァトゥグァとアトラック=ナチャはこの星から来訪している。
ハイパーボリア(Hyperborea)
北極海と北大西洋の間のグリーンランド近辺にあったとされる大陸。
文明が栄えた都市であるが、ツァトゥグァ等の旧支配者や恐るべき生物がこの地に生息している。

道具

輝くトラペゾヘドロン(Shining Trapezohedron)
本体であるところどころ赤い線が入っている輝く黒い多面体と、それを収める金属製の小箱からなる道具。金属の箱は不均整な形状をしており、地球では存在しえない生命体を象った奇怪な装飾が施されている。多面体は直径約10cm(4インチ)程の球形の結晶体で、不揃いな大きさの切子面を数多く備えている。内面に触れることなく金属製の帯と奇妙な形をした七つの支柱によって箱の中に吊り下げられている。輝くトラペゾヘドロンを見続けた者の心に異界の光景を浮かび上がらせ、混沌の彼方より「闇をさまようもの」と呼ばれる存在(ナイアルラトホテップの化身の一つ)を召喚できる。
バルザイの偃月刀(Scimitar Of Barzai)
青銅製の偃月刀。原典では専ら旧支配者ヨグ=ソトースの召喚などに用いる儀式的な道具として使われることが多い。
ニトクリスの鏡(The Mirror of Nitocris)
悪鬼や食屍鬼の姿が鋳込まれた青銅製の枠にはめ込まれている鏡。この鏡を通じて地獄めいた暗黒の世界を覗けるが、逆に鏡から出現するショゴスを始めとする魔物に襲われる危険がある。名の由来は古代エジプト第6王朝の女王ニトクリスがこの道具を用いたとされることから。
銀の鍵(The Silver Key)
銀製の鍵。表面が奇妙な幾何学模様に覆われているのが特徴で、長さが5インチ近くと鍵としては大きなものである。古代地球に存在したハイパーボリアで作成されている。

余談

  • 神話に登場する邪神達は基本的に人間に太刀打ち出来る存在ではないのだが、日本では、いわゆるホラー物として邪神の恐怖に脅えるタイプの作品以外に邪神に匹敵するパワーを手に入れて、正面から粉砕するというタイプの作品も数多く生まれた(『デモンベイン』もその1つ)。その中にはアザトースですら滅ぼされた例もある。
    • 中には『這いよれ!ニャル子さん』のようなトンデモ異色作まで存在するほどである。
    • こういった作品は原典作品群の好事家からは難色を示されることも多いが、実のところ海外でも邪神を正面からぶちのめすタイプの作品は書かれており、中には、アザトースを越える超邪神とでもいうべき存在をただの人間が食べてしまうという荒唐無稽な作品すらある。
  • 誤解される事も多いが、H・P・ラヴクラフト、オーガスト・ダーレス、C・A・スミスを始めとする神話作品を執筆した作者の、著作全てが神話作品のシェアワールドという訳では無い。ただし、後年執筆された別作家の作品による後付けで、神話作品とは無関係だったホラーやファンタジー作品がクトゥルフ神話の世界観に組み込まれる事となった事例は比較的多い。
    • ドクター・ウェストの元ネタであるハーバード・ウェストが登場する一篇も、神話体系の地名などが出てくるものの、作風自体はコズミックホラーの類ではなくむしろ純粋なホラー小説の系統である。
    • 特にクトゥルフ神話を題材としたTRPG界隈ではその傾向が顕著で、ラヴクラフトの作家活動以前に発表された著名作家のホラー小説までもが、シナリオで取り扱う手本としてルールブックで紹介されている。