リン・カイフン

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リン・カイフン(鈴海皇 / Lynn Kaifun)

リン・ミンメイの肉親にしてマネージャーであるが、TV版と劇場版では大きく設定や扱いが異なる。

来歴

TV版

TV版ではミンメイと従兄妹同士の関係で、カンフーの達人。

徹底した反戦主義者……と言うよりは、むしろ病的なまでの軍隊・軍人嫌いと言った方が的確で、マクロスの存在する南アタリア島で中華料理店「娘々」を経営している夫妻とは実の親子であるが、口論の末に家出し、一人旅に出ていた。
その後は、ミンメイの両親の元で滞在していたが、帰郷してきたミンメイがマクロスでアイドルをやっている事実を知り、彼女のお目付け役としてマクロスに乗り込む事になった。

地球が異星人であるゼントラーディの襲撃を受けているという危機的な現状について、民間人とはいえ無理解過ぎるきらいがあり、一条輝ロイ・フォッカーをはじめとする軍関係者がミンメイと親しい間柄である事を不愉快に思っている。何かと難癖をつけるだけでは飽き足らず、マスコミを利用してまで何かと軍への批判を公然と口にする等、時には無責任極まりない独り善がりな行動をとる事もある。当然ながら、命懸けでゼントラーディと必死に戦っている軍人達には、カイフンを嫌う者も少なくない。

後にミンメイと婚約するも、戦後の地方巡業を経て次第に関係が冷え切っていき、更には自分の境遇等を全て軍人のせいにして酒に逃避するようになった。その振る舞いは徐々に悪化していき、市民を先導する形でマイクローン化装置回収の妨害をした結果、その街は壊滅的被害を受ける事になったが、カイフンはあくまでも他人事のような態度しかとらずにいた。
その身勝手さは、ミンメイの歌に対する情熱にも悪影響を及ぼしていってしまう事にもなり、ストレスの溜まっていた彼女はついに歌う事を拒否。最終的にミンメイの元を去り、消息を絶つ。その後、メガロードにも乗船する事は無かったようである。

劇場版

劇場版ではミンメイの実兄であり恋愛関係は無く、カンフー等の身体能力に関する設定も排除されている。特徴的だったTV版のロングヘアーから短髪へと変更され、ビジネスマン然とした風貌を具えた事でTV版以上に「辣腕マネージャー」としての印象度が強くなった。また、TV版で見られた独善的な振る舞いは一切せず、むしろ勝手にミンメイを宇宙に連れ出した輝を批判する等、常識人として描かれている。物語中盤でミンメイや輝らと共にゼントラーディ軍の捕虜となる。その際、ゼントラーディに命を奪われそうになったミンメイを救うために彼女とキスをするという、機転を利かせた行動を取っている。

その後

マクロス7』の時代にも芸能界に関わっており、FIRE BOMBERのコピーバンドのプロデュースを行っていた模様である。

総評

強大なゼントラーディ軍から純粋に市民を守るために戦っている主人公の一条輝ら地球統合軍の軍人達を「軍人だから」という理由だけで批判し、冷淡な態度で接してくるTV版のリン・カイフンは、視聴者からはあまり良い印象を持たれていないことが多い。

というのも、TV版のカイフンは戦争をしている地球統合軍およびその軍人に対して反感を抱いているのであるが、そもそも戦争を仕掛けてきたのは地球統合軍ではなくゼントラーディ軍である。それにも関わらず、TV版のリン・カイフンは、自身の住む地球を侵略し、市民の生活を脅かすゼントラーディ軍を批判していない。戦争をする軍隊や軍人が嫌いなのであれば、地球統合軍はともかく侵略者のゼントラーディ軍に対してもそれと同様に嫌悪していないのは、やや不自然ではある。

また反戦主義者ならば、通常は「他国への侵略戦争を仕掛ける事や、その当事者」を批判するものであるが、TV版のカイフンの批判の矛先は侵略戦争を仕掛けて来たゼントラーディ軍ではなく、彼等から市民を守るために戦っている地球統合軍の軍人達であった。本来批判すべき侵略戦争を仕掛ける者を批判せず、彼等から市民を守るために戦っている主人公達を批判した点は、反戦主義者としては齟齬が生じてしまう。

さらにいえば、これらの一連の行動は市民を守る為に命懸けで戦う軍人達の心境や事情をまるで理解しない勝手な振る舞いであり、そうした行為が市民は軍への反抗を助長させていた。そしてこれが最悪の事態を発生させた事もあったが、本人はその責任を全く感じていなかった。

以上のように視聴者からの大きな批判を受けてしまい、後年、制作者側は「TV版で、リン・カイフンを反戦主義者の設定にしたのは失敗だった」と述懐している。TV版の「反戦主義者」から、劇場版の「良識を持ったマネージャー」へとリン・カイフンの設定が変更されたのは、この時の反省もあったからなのだろう。

登場作品と役柄

SRWでは劇場版の設定を採用しているが、TV版の設定も含まれている。

αシリーズ

スーパーロボット大戦α
NPC。なお、民間人であるミンメイを危険な目に巻き込んだ自軍をカイフンが批判する一幕があるが、劇場版設定という事もありTV版のものと比較すると説得力がある内容のものになっている。
スーパーロボット大戦α外伝
『α』に続いて劇場版の設定で登場。ミンメイ達と共にティターンズの人質となり、その傲慢な態度に反発していた。

人間関係

リン・ミンメイ
カイフンの従妹(TV版)または妹(劇場版)。TV版では横浜の地にて再会する。マネージャーになったカイフンと婚約するが、終戦後はミンメイから拒まれて、別れることになる。
なお、劇場版ではミンメイとは恋愛関係にならず、あくまでも彼女のマネージャーとしての姿勢を貫いている。
一条輝
TV版では、輝が軍人であるという理由で嫌悪の対象である。一方、輝はカイフンのことを「軍人嫌いの男」と評している。
なお、劇場版では輝(および軍隊・軍人)を感情的に嫌悪する描写が全く無い。
早瀬未沙
TV版では軍属という事で、彼女からの気遣いも冷たく無碍にする。この時、カイフンが初恋の男性・ライバーと声が似ていた(声優も同じ)こともあって、未沙は衝撃を受ける。
ただし、その後の描写によると、彼はライバーとは別人であると割り切ったようである。
ロイ・フォッカー
TV版では僅かしか会話を交わしていないが、その際にも軍属である彼に辛辣な言葉をぶつけている。
ちなみに、『α』では逆に、軍隊批判をしてきたカイフンに対して反論し、彼を沈黙させている。
ブルーノ・J・グローバル
TV版では、ゼントラーディ軍との和平交渉のためにミンメイと共に統合軍に呼び出された際に「軍隊は身勝手だ。民間人の事など考えてはいない」と彼を非難する。
だが、グローバル艦長からは「ここは交渉の席であり、君の演説を聞くためにあるのではない」と、言葉を遮られてしまった。

他作品との人間関係

ミュン・ファン・ローン
α』終盤では共に作詞選定作業に苦慮する。その際、何気なくミュンの歌手活動時代に関する話題を振っていた。
ジャマイカン・ダニンガン
α外伝』でティターンズの人質になった際、彼の傲慢な態度に不満を持った。

名台詞

TV版と劇場版では、輝ら軍人達に対して取る態度や言動が大きく異なっている。

TV版

「そうですか…軍人が民間人を助けるのは当然ですが。ま、感謝しておきましょう」
TV版第15話でと初対面時に、ミンメイを助けたと聞いて。このように、相手が軍人だという理由だけで、冷淡な対応を取ることが多い。
「戦いは何も生み出しません。戦いが生み出すのは破壊だけです!」
TV版第16話「カンフー・ダンディ」で放ったカイフンの軍隊・軍人嫌いを象徴した台詞。
確かに正論ではあるものの、それ以前にカイフンは、侵略してくるゼントラーディ軍から市民を守るためにやむなく戦っている統合軍の軍人達の心情や事情を理解しようとしていないのが問題である。実際に、輝からは「俺だって、別に好きで軍隊やってるわけじゃない」と返されている。
なお、第19話での芸能インタビューにおいても、カイフンは上記の台詞と同様の発言をしているのだが、それをTVで視聴していたクローディア未沙からは顰蹙を買っている。

劇場版

「一条君。今度の事がマスコミに発覚したら、ミンメイの歌手生命は終わりだ。軍のお偉方には手を打ったが、君に対しては容赦しないからな!」
劇場版にて。ミンメイを連れ出して訓練用バルキリーに乗せ、宇宙飛行する輝を咎めた。
なお、カイフンがミンメイのスキャンダル防止のために統合軍上層部と交渉した事実を考えると、TV版の彼とは異なり、軍隊・軍人嫌いの感情は全く無いようである。
「俺がキスする。降ろせ!」
「早く演技するんだ! 殺されるぞ」
劇場版にて。ゼントラーディ軍に囚われたミンメイの命を救うために、彼等が見守る前で彼女とキスをする。こうして、彼女の命を救うための機転を利かせた行動の結果、カイフン達はゼントラーディ軍の手に掛からずに済んだ。
このように、劇場版におけるカイフンの描写はTV版とは異なり、聡明さと良識性が前面に出ているのが特徴的である。