ヒュッケバイン問題
ヒュッケバイン問題(Huckebein Trouble)
ヒュッケバイン問題とは、2006年秋頃よりスパロボオリジナルロボットであるヒュッケバインと、その後継機であるヒュッケバインMk-II及びヒュッケバインMk-IIIのメディア露出が、ゲーム画面での登場を除いて途絶えている事例を指す。
ゲーム中でヒュッケバインシリーズは「バニシングトルーパー」の異名を持ち、現実世界(リアル)でも消滅(バニシング)したことから、ヒュッケバインは「リアルバニシングトルーパー」、事例そのものは「リアルバニシング」と呼ばれることになった。
問題発生の流れ
ヒュッケバインはガンダムシリーズでもお馴染みのデザイナーであるカトキハジメ氏にデザインされ、1995年に発売された『第4次スーパーロボット大戦』に初登場したパーソナルトルーパー(PT)に分類されるオリジナルロボットである。
当時からガレージキットやプライズ商品が展開されるなどして人気を博した機体であり、スパロボオリジナル機体の玩具やプラモデルが展開される際には、まずヒュッケバイン関連機から発売されるなど、オリジナル機体の代名詞ともいえる扱いを受けていた。その後『スーパーロボットスピリッツ』の設定中や『スーパーロボット大戦α』以降の作品でPTの各種関連機が設定されていくと、カトキ氏の提案により後継機から逆算される形でリデザインが行われた。
2006年には『スーパーロボット大戦 ORIGINAL GENERATION』が『スーパーロボット大戦OG ディバイン・ウォーズ』としてアニメ化されることが発表された。このアニメにはゲームに登場していたヒュッケバインも登場すると思われていたのだが、放送3ヶ月前の2006年6月末から7月冒頭にかけて、掲示板サイト「2ちゃんねる」のアニメ化決定を取り上げたスレッドにて以下の内容が書き込まれる。
『スーパーロボット大戦OG ORIGINAL GENERATIONS』の店舗に配布されたプロモーションビデオにて、公式サイト配信版では存在していたヒュッケバインシリーズの登場シーンのみが全て差し替えられていたり、コトブキヤが展開しているプラモデルシリーズにて12月発売が告知されていたMk-IIとボクサーが発売1ヶ月前の11月中旬に初回生産限定品であることが発覚。更には、既に発売されているヒュッケバインシリーズのプラモデルについても市場に出回っているものを最後に絶版となることが分かった。
通常このような事態が発生した場合、制作サイドから何らかの事情説明がなされるべきなのだが、今回の事態では公式な説明がないばかりか触れることすら一切しなかったため、ユーザーからはよほどデリケートな問題が発生したものと推測されることになる。
その後、2007年4月27日発売の「ゲーマガ」6月号にて、『SECRET HANGAR』にMk-IIトロンベのイラストが掲載された。『OGs』発売直前には、スーパーロボット大戦公式BLOG「熱血!必中!スパログ!」の6月11日更新分において、縦読みで「ひゅつけハ出ます」とヒュッケバインの登場について暗に触れた(ただし、その前に同じ広報W氏が書いた記事には
(最後に、最近特に多くお問い合わせを頂いております件ですが、
なんとか公式なコメントを出せるようにと鋭意調整中ですので、
今しばらくお待ち頂ければと思います。m(_ _)m
できる範囲でのコメントになってしまうかもしれませんが・・・。
(・・・できないかもしれませんが・・・)がんばります!)
と書かれており、公には発表できなかった可能性も示唆されている)。実際に6月28日発売の『OGs』や2007年12月27日発売の『スーパーロボット大戦OG外伝』ではヒュッケバインシリーズが出演した。更に10月26日に発売された『ディバイン・ウォーズ』のDVDに新たに収録された第26話にて、「ヒュッケバイン」という名称こそ使われないものの、ディスプレイに表示されたMk-IIとMk-IIIらしき図面を用いて新型機の開発を行っている旨が明かされた。以上の2007年の動向から、一旦は問題が解消されたとの推測がなされた。
ところが、以後各媒体ではヒュッケバインの名前こそ挙がるもののイラストが掲載なされることはなく、2年後の2009年6月15日に発売された『SECRET HANGAR』の単行本では、Mk-IIトロンベのイラストが差し替えられる事態が発生。以来、インタビュー記事や関連機体の説明文において、「ヒュッケバイン」という名称や設定については触れられているものの、その際に設定画が公開されることはなく、映像・漫画作品にも一切登場させない措置が取られている。
2010年に放映されたTVアニメ第二期『スーパーロボット大戦OG ジ・インスペクター』では、シリーズ構成段階からヒュッケバインを登場させないようにストーリーの変更が行われ、『ディバイン・ウォーズ』の時のような違和感は幾分か解消されている。なお、この設定変更によって『ジ・インスペクター』ではアニメオリジナルの機体が誕生し、一部はアニメ以外の媒体にも逆輸入されている。
2011年にはゲームアーカイブスにおいて、『第4次S』・『F完結編』・『α』といったヒュッケバインシリーズの機体が登場する作品の配信が開始された。
2012年に発売された『第2次スーパーロボット大戦OG』では、ヒュッケバインは従来の外見で登場するにも関わらず、自軍に配備される前にイベントによって全機が破壊されてしまい、量産型を除いてプレイヤーがユニットとして扱うことができなかった。これについてもヒュッケバイン問題の影響と推測されている。
問題の理由
現在のところ有力となっている説は、『ディバイン・ウォーズ』放送前になされたリークらしき書き込みの内容に沿った、頭部センサー・V字アンテナ・ツインアイ・顎とガンダムに似た頭部のデザインが、ガンダムシリーズの版権元である「創通・サンライズ」からクレームを受けたことで、所謂「版権問題」が発生したというもの。ビルトシュバインやART-1といったヒュッケバインに近い頭部デザインのロボットが問題となっていないことについては様々な憶測が挙がるが、クレームの詳細が明らかになっていないため、このあたりの事情については不明である。
ちなみにプラモデルが絶版となった時期には、ガンダムシリーズの玩具販売権を有しているバンダイが、ヒュッケバインのプラモデルを発売するためクレームを出したという説も挙がったが、現在に至るまでプラモデルは発売されておらず、何よりバンダイはガンダムシリーズの版権元ではないため、現在ではこちらの説は否定的な見方をされることが多い。
問題の影響
『OGs』関連
『スーパーロボット大戦OG ORIGINAL GENERATIONS』では、ゲーム本編には登場しているものの、広報活動において以下の事例が発生している。
- プロモーションビデオで、公式サイト配信版で先行配信されたものには存在していたヒュッケバインシリーズの登場シーンが、店舗に配布される際には差し替えられている。
- 公式サイトにはMk-IIIとボクサーの設定画が掲載されていたが、発売前にはページごと削除されている。さらにページ削除後しばらくはページ内で使われていた画像のアドレスは生きていたが、それも後に削除されたことから、徹底っぷりが窺える。
- 予約特典冊子『Super Robot Wars OG Original Generations Official Perfect File』では登場機体の設定や設定画が掲載されているのだが、ヒュッケバインシリーズの機体は、量産型ヒュッケバインMk-IIも含めて一切掲載されていない。ヒュッケバインに関わる記述についてもヒュッケバインの名称は使われず、アーマリオンの項目を除き形式番号を使って説明する方式をとっている。
これは発売日に配布する冊子の性質上、早い段階に完成させて刷っておかなければならないことから、制作当時はヒュッケバインの登場が確定していなかったものと推測される。 - 攻略本には登場機体の設定画や立体物の写真が多数掲載されているが、ヒュッケバインシリーズの機体については、ゲーム中のドット絵だけが掲載されている。
発売が当初の発売予定日から大幅に延期された作品であり、寺田Pはその理由として、「諸々の事情で2006年の夏から冬にかけて企画サイドの開発進行を一時的に中断せざるを得なくなったことが延期の原因」と釈明している。この「2006年の夏から冬」という期間が、前述のリーク書き込みから『ディバイン・ウォーズ』放送開始までの期間と重なるため、諸々の事情をこの問題の調整によるものと推測するユーザーも多い。
『ディバイン・ウォーズ』関連
『スーパーロボット大戦OG ディバイン・ウォーズ』では以下の事例が発生している。
- ライディース・F・ブランシュタインが左腕を失うことになった起動実験失敗が回想シーンで描かれた際には、008Rらしき機体が画面に登場する。アニメ版では画面が暗く詳細なデザインを確認できないが、漫画版では頭部のアップまで描かれており、ヒュッケバインであることがしっかり確認できる。
- 第8話ではハガネにイルムガルト・カザハラの搭乗機が配備されるが、009ではなくグルンガスト1号機が配備される。
- ブルックリン・ラックフィールドは量産型ゲシュペンストMk-II・タイプTTからMk-IIに乗り換えないままで、第14話から描かれるディバイン・クルセイダーズ及びコロニー統合軍との最終決戦に参加し、L5戦役にはグルンガスト2号機に乗り換えて参加する。
- エルザム・V・ブランシュタインはMk-IIトロンベではなく、ガーリオントロンベでL5戦役に参加する。
- DVDのみに収録されている第26話では、カーク・ハミル博士がリョウト・ヒカワにパネルに表示されたMk-IIやMk-IIIらしき図面を用いて、「ヒュッケバイン」という単語は使用せずに、Mk-IIの後継機としてMk-IIIの開発が行われていることを説明するシーンがある。
『ディバイン・ウォーズ Record of ATX』では、マリオン・ラドム博士の回想で目の部分に黒線が引かれたMk-IIが描かれ、その後も作中で「ヒュッケバイン」という単語が使われることが数回ある。
『ジ・インスペクター』関連
『スーパーロボット大戦OG ジ・インスペクター』では以下の事例が発生している。
- 『ディバイン・ウォーズ』第26話にて、Mk-IIの存在が示唆されていたものの、その後正式に量産機として採用されたのはビルトシュバインと設定され、作中には量産型ヒュッケバインMk-IIではなく量産型ビルトシュバインが登場する。第1話から登場するブリットは、Mk-IIではなく先行量産された量産型ビルトシュバインに搭乗している。
- 第7話ではリョウトから「ヒュッケバイン」という名称は使わずに「Mk-IIIが開発中止になった」ということが語られる。翌週の第8話ではインスペクターがマオ社を襲撃し、「ヒュッケバイン」の引き渡しを要求するものの、008タイプLとMk-III・タイプLはマオ社に存在しておらず、リョウト達は009の改造機であるエクスバインを持ち出し脱出、その後戦闘を行っている。
このエクスバインは『OG外伝』で存在が明かされたヒュッケバインEXに該当する機体。V字アンテナが廃されたほか、SRXと同様のバイザーが取り付けられ、その奥のツインアイが発光する。 - 第9話では、テスラ研の救援に現れたレーツェル・ファインシュメッカーが、Mk-III・タイプRに偽装を施したガーバインMk-IIIトロンベに搭乗している。レーツェルがアウセンザイターに乗り換えた16話以降は、Mk-IIIと同様の塗装が施されたガーバインMk-IIIをヴィレッタ・バディムが乗機にしている。
これは、レーツェルは素性を隠した人物であるため、搭乗機にも偽装を施しているという設定。頭部はV字アンテナを廃し、ガーリオンのとさかパーツを取り付けたデザインで、肩にもガーリオンと同様のパーツを取り付けられている。なおツインアイには偽装は施されていない。 - 第12話では、ゲームでは量産型Mk-IIを素体にしているベルゲルミルが登場するが、素体となった機体については触れられていない。
その他の作品
- 問題発生後に発表された漫画作品には、量産型ヒュッケバインMk-IIやベルゲルミルなど、頭部のデザインがヒュッケバインとは異なる関連機は登場しているものの、Mk-I、Mk-II、Mk-IIIは一部の例外を除いて登場していない。
2008年9月12日発売の『電撃スパロボ! Vol.9』に掲載された読み切り(スーパーロボット大戦OGクロニクル)「ハ・ガ・ネ」にはリョウト機としてMk-IIIが登場している。ただしデザインからMk-IIIであることが推測できる程度の登場で、詳細なデザインは確認できない。
- 2007年4月27日発売の「ゲーマガ」6月号に掲載された『SECRET HANGAR』にMk-IIトロンベのイラストが掲載されたが、2年後の2009年6月15日に発売された単行本では、ヴァルシオンのイラストに差し替えられている。
- ヒュッケバイン以前に『スーパーロボット大戦EX』で発表されたオリジナル機体デュラクシールは、頭部がガンダムに似たデザインとなっており、作中ではその理由について「ちょっと影響を受けた」と説明されている機体であった。『魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL』のSFC版においてもデザイン変更は行われずに登場したのだが、ヒュッケバイン問題発生後に発売されたニンテンドーDS移植版『スーパーロボット大戦OGサーガ 魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL』では、V字アンテナとは異なる頭部のデザインに変更されて登場している。
ちなみに続編ではひそかに自虐ネタが存在する。
『第2次OG』関連
『第2次スーパーロボット大戦OG』ではヒュッケバインシリーズは登場こそするものの、実際にプレイヤーが使用できるのは量産型ヒュッケバインMk-IIと新機体のアッシュ、エグゼクスバインのみで、従来のヒュッケバインシリーズは第21話でオーバーホール中のところをガリルナガンによって全機破壊されてしまう。 これらの機体にも戦闘アニメーションが没データとして用意されていた事から、一連の問題の影響である可能性が濃厚とされており、それを受けてガリルナガンはパイロットのアーマラ共々「創通の使者」と揶揄されるようになった。
このイベントはわざわざ専用の戦闘台詞つきのアニメーションが用意されるという凝り様となっており、ストーリー上でも重要な要素として描写される。ある意味では「ヒュッケバインはもうゲームにも出せない」ということに物語上で筋が通った理由をつけたと見ることもできる。「今後はゲームでもNG」になったとすると、『第4次S』『α』等のゲームアーカイブスで配信されているヒュッケバインシリーズ登場作品が配信停止になる可能性もあり、予断を許さない状況となっている。
なお、ゲーム出演については版権問題は発生していなかったのだが、スパロボ開発側が自らヒュッケバインをゲームから消滅(バニシング)させたという推測もある。近年のOGシリーズはメディアミックス展開が重要視されているが、「アニメやコミック、フィギュアにはヒュッケバインはもう出せないのに、ゲームだけには出続ける」という状況がメディアミックスの連携や今後の設定・物語の拡大をやりにくくしている。これを解消するため、かつヒュッケバインという存在を"なかったこと"にせず確かな物として残すために派手な最後を飾らせた上で将来へ続く後継機を誕生させたという見方である。その場合はゲームアーカイブスの旧作に対する影響はないと思われる。
また、上記のデュラクシールについてもEX編が再現されるに辺りリメイク版が引き続いて登場し、ヒュッケバインなどのPTからの影響が語られている。DPにおいては量産型の改造機が登場したほか、ある場面でエクスバイン・タイプR、およびタイプLの開発が計画されていることが語られており、シリーズ消滅の危機はひとまず脱したと考えてよさそうである。
立体物
- コトブキヤが発売していたプラモデルのうちヒュッケバインシリーズ全てが、2006年12月発売のMk-IIとボクサーを最後に絶版となっている。その後該当商品の情報は公式サイトから削除されており、ヒュッケバインシリーズの新作は発売されていない。書籍でプラモデルの歴代ラインナップが紹介される際にも、「絶版・限定品を除く」という理由によりヒュッケバインシリーズについては掲載されない。
「電撃ホビーマガジン」2014年6月号(2014年4月25日発売)には、コトブキヤのプラモデル展開がスタートから10周年を迎えたという記事が掲載されたが、第1弾キットとして紹介されたのはビルトビルガー重装型(2004年10月発売)で、それ以前に発売されたヒュッケバイン(2003年12月発売)とヒュッケバイン009(2004年5月発売)が無かったことにされてしまっている。
- 「電撃ホビーマガジン」で誌上通販されていたフルアクションフィギュアは、再販アンケートが行われることがあるが、アンケート欄にヒュッケバインシリーズの名前は掲載されない。
- ボークスが発売しているガレージキットは、問題発生以前に製造販売されたアイテムが公式サイトで通信販売されているが、発生以後に新作は発表されていない。
- 頭部デザインが従来のヒュッケバインシリーズとは異なるエクスバインについては、『ジ・インスペクター』放送終了直後の2011年4月にバンダイからフルアクションフィギュアが発売されており、2014年にはコトブキヤからエグゼクスバインやガリルナガンのプラモデル発売が予定されている。