インド神話

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インド神話(India Mythology)

インド発祥の神話。成立時期や伝承者の層などによって様々な神話があるが、以下、ヴェーダ神話とブラーフマナ・ウパニシャッド神話、叙事詩・プラーナ神話の三つが有名。概ねヴェーダ神話がバラモン教に、叙事詩・プラーナ神話がヒンドゥー教に属し、ブラーフマナ・ウパニシャット神話がその両者を繋ぐものと考えてよい。ちなみに、何故か陰部に関するネタが多い。

仏教として日本に入り、様々な仏神へと変化した。

インド神話が取り入れられている作品

ベターマン
ブラフマンなど作中用語の多くがインド神話含む多くの神話や天文学からの引用である。
機動戦士ガンダム00
ソレスタルビーイングの量子型演算処理システム・ヴェーダに名前が使われている。
バンプレストオリジナル
ノーヴル一派が用いる機動兵器と武装の名前を冠している。

神々

インドラ(Indra)
仏教では「帝釈天」。雷を操る雷霆神・武神であり、ヴァジュラを用いてヴリドラ等の悪魔を退治している。その一方で、羅刹族の王・メーガナーダをはじめとして武神なのに敗北した話も多い[1]
また、インドラにはアスラ王(阿修羅王)の娘・シャチー(舎脂)を強奪して自分の妻にしたり、ガウタマ聖仙の妻・アハリヤーと密通する等、ギリシア神話の主神・ゼウスを彷彿とさせる好色ぶりを伝える挿話も存在している
アグニ(Agni)
火の神。仏教では「火天」。赤い体に炎の衣をまとった姿で描かれている。
ちなみに、名前は英単語の「ignite」の語源にもなっている。
シヴァ(Siva)
仏教では「大自在天」。最高神の一柱にして、破壊を司る神。トリシューラを以て3つの悪魔の都市を滅ぼしている。額にある第3の目からは、敵を焼き尽くす炎「パスパタ」を放つ。
マハーカーラ(Mahakala)
シヴァの化身の一つ。マハーは「大」、カーラは「黒」を意味し、合わせて「大いなる暗黒」を意味する。
日本神話の豊穣を司る神「大国主」と習合した結果、破壊神の化身ながら七福神の一人「大黒天」となった。
ヴィシュヌ(Vishnu)
仏教では「毘紐天」。最高神の一柱にして、調停を司る神。ヒンドゥーの神でも特に歴史の古い神であるが、当初は名前があるだけで決まった役割を持っていなかった。
しかし、後に様々な英雄や土着神をアヴァターラ(化身)として習合したことで民衆の支持を集めて最高神にまでなった。
アヴァターラ(Avatara)
主にマツヤ(魚)、クールマ(亀)、ヴァラーハ(猪)、ナラシンハ(人獅子)、ヴァーマナ(矮人)、パラシュラーマ(斧を持つラーマ)、ラーマ、クリシュナ、ブッダ(仏陀)、カルキから成る、ヴィシュヌの10の化身(10でない場合もある)。平時良く聞く「アバター」の語源である。
クリシュナ(Krishna)
ヴィシュヌの第8の化身である英雄。その名は「黒い肌をした者」を意味する。
ヒンドゥー教の聖典にして叙事詩『マハーバーラタ』では主人公であるアルジュナ[2]と友情を結び、何度も彼を助ける。
実はクリシュナは足の裏が弱点であり、そこを猟師ジャラに誤射されて死ぬという呆気無い最期を迎えた。[3]
また、クリシュナは美形としても知られており、恋人ラーダーとの恋愛物語が存在する等、インド神話において高い人気を誇っている。
ブラフマー(Brahma)
仏教では「梵天」。最高神の一柱にして、創造を司る神。宇宙の根源原理「ブラフマン」を神格化した存在だが、立場的にはシヴァ・ヴィシュヌと同格である。
なお、近年ではシヴァにその立場を奪われつつあるらしい。
四天王(Caturmahārāja)
仏教の世界観を示す際に記述される四方を守る神々。彼等は帝釈天(インドラ)の配下であり、東を持国天、南を増長天、西を広目天、北を多聞天が守護している。
なお、四天王とは転じて「ある分野において優れた四名の人物」等を指す言葉としても使用されている。
ヴァイシュラヴァナ(Vaizravana)
仏教では四天王の一尊「多聞天」。音訳して「毘沙門天」とも言う。インド神話の財宝神クベーラを前身とし、仏教に守護神として取り入れられた。また、夜叉や羅刹(共に鬼神の一種)といった眷属を配下とする。
また、中央アジアを経て中国に伝わる過程で武神としての信仰が生まれ、日本では戦国大名・上杉謙信(1530~1578)が武神・毘沙門天を篤く信仰した事で有名である。さらに、日本では七福神の一人「毘沙門天」としても知られる。
上記のとおり、ヴァイシュラヴァナは四天王の中では最も知名度および人気が高い。
ヴィルーダカ(Viruudhaka)
仏教では四天王の一尊「増長天」。本来はインド神話に登場する雷神インドラの配下で、後に仏教に守護神として取り入れられた。また、鳩槃荼(睡りを妨げる鬼神)や薜茘多(餓鬼)といった眷属を配下とする。
ヴィルーパークシャ(Viruupaaksa)
仏教では四天王の一尊「広目天」。本来はインド神話に登場する雷神インドラの配下で、後に仏教に守護神として取り入れられた。また、龍王や富単那(悪霊)といった眷属を配下とする。
ドゥリタラーシュトラ(Dhrtaraastra)
仏教では四天王の一尊「持国天」。本来はインド神話に登場する雷神インドラの配下で、後に仏教に守護神として取り入れられた。また、乾闥婆(音楽の神)や畢舎遮(食人鬼)といった眷属を配下とする。
アスラ(Asura)
仏教では「阿修羅」または「修羅」。三面六臂の姿および激しい闘争心を持つ。
アスラ王(阿修羅王)の娘・シャチー(舎脂)を強奪して自分の妻にしたインドラ(帝釈天)と激しく戦ったという仏教説話が有名である。[4]
時代が下って、アスラはインドラが所属するデーヴァ(サンスクリット語で「」の意。仏教では「天(部)」)信仰の隆盛にともない、魔族と見做されるようになっている。しかし、その一方でアスラはゾロアスター教における最高神「アフラ・マズダー」として崇拝されており、逆にデーヴァは悪神「ダエーワ」という扱いになっている。
ラークシャサ(Rākṣasa)
仏教では「羅刹(天)」。
バラモン教およびヒンドゥー教では人間を食らう恐ろしい鬼神である。しかし、その一方で仏教では他の鬼神等と共に「仏法の守護者」という扱いになっている。
ドゥルガー
アスラ族の軍勢に敗北した神々が、反撃のために光を発して集めたことで誕生した女神であり、10本または18本の腕を持つ強力な闘神。仏教では十二神将の「毘羯羅」だが、准胝観音や黒闇天であるともされる。
アプサラス(Apsalus)
インド神話における水の精で、その名は「水の中で動くもの、雲の海に生きるもの」を意味する。天女とも称され、一説では乳海攪拌(ヒンドゥー教における天地創造神話)の時に生まれた存在であるという。
神々の接待役として踊りを見せることを仕事とし、一般には美しい女性の姿で現されることが多い。なお、天界の指示により、その妖艶な美貌を使って修行中の人間を誘惑して堕落させることもある。

人物

アルジュナ(Arjuna)
ヒンドゥー教の聖典にして叙事詩『マハーバーラタ』に登場するパーンダヴァ五兄弟のうちの三男で、主人公の一人。インドラの息子にして、英雄である。その名は「純粋な行為の実行者」を意味する。
弓の名人であり、火の神アグニから強弓ガーンデーヴァを受け取ったこともある。
ヴィジャーヤ(Vijaya)
アルジュナの別名の一つ。その名は「勝者」を意味する。
ドラウパディー(Draupadi)
ヒンドゥー教の聖典にして叙事詩『マハーバーラタ』のヒロインの一人。アルジュナをはじめとするパーンダヴァ五兄弟の共通の妻になっている(もっとも、これには彼女の前世の因縁が関係しているのだが)。

生物・怪物

ガルダ(Garuda)
仏教では音訳して「迦楼羅天」と言う。さらに、漢訳して「金翅鳥」とも言う。ヴィナターから生まれた神鳥。人間の胴体と鷲の頭部・嘴・赤い翼・爪を持ち、炎の様に光り輝き熱を発するのが特徴。ヴィシュヌの乗り物でもある。
ナーガ族をはじめとする龍・蛇の類と争い、退治する象徴として崇拝されていた。
強さはとりわけ凄まじく、たった一体で多くの神々を打ち倒すだけでなく、ヴァジュラをもってしても滅ぼすことができなかったほど(しかし、それがインドラと永遠の友情の誓いを申し込んだ切欠となったりする)。
宗教的対立により、スリランカではラークシャサ(羅刹)、怪物グルルと呼ばれ、災厄をもたらす存在とされる。

武器

ヴァジュラ(Vajra)
漢訳して「金剛杵」とも言う。インドラが用いる武器。漢名の名の通り金剛で出来ており、雷を操る。
蛇の形をした邪神ヴリトラをこれで滅ぼすことができたが、ガルダだけは打ち倒せなかった。
ガーンデーヴァ(Gandiva)
インドラの息子にして英雄アルジュナが用いる強弓。
トリシューラ(Trysula)
シヴァが片手に持つ三叉の槍。悪魔が住む金・銀・鉄で出来た都市をこの槍で滅ぼした。

食物

ソーマ(Soma)
インド神話に登場する神々の飲み物。インドラも愛飲している。同名の植物によって作られ、栄養豊富にして不老不死をもたらす効果があるという。
また、ヒンドゥー教ではの神の名前の由来にもなっている。

脚注

  1. ちなみに、このメーガナーダに至っては「インドラジット(インドラに勝つ者)」などと名乗られている。
  2. ちなみに、アルジュナの別名の一つに「クリシュナ」がある。
  3. このクリシュナの最期は、踵を射られて死んだギリシア神話の英雄アキレウスの最期を彷彿とさせるものである。
  4. ちなみに、帝釈天と阿修羅王が戦った場所を「修羅場」と言う。転じて、戦場あるいは男女関係のもつれを比喩する言葉になっている。