木原マサキ
木原マサキ(Masaki Kihara)
- 登場作品:冥王計画ゼオライマー
- 声優:関俊彦
- 種族:地球人(日本人)
- 性別:男
- 所属:ラスト・ガーディアン
- キャラクターデザイン:菊池通隆
かつて鉄甲龍に所属していた科学者。八卦ロボや次元連結システムを開発しただけでなく、秋津マサトや氷室美久、八卦衆の造物主でもあるなど、機械工学のみならず生物工学にも才能を発揮した天才的技術者。
15年前、鉄甲龍を裏切りゼオライマーを持って逃亡し、日本政府に保護と見返りを要求するも、その直後に亡命を恐れた日本政府によって殺害されている。
だがマサキは自分が日本政府にとっても危険人物であることを理解しており、身の危険も承知していた。ゼオライマーの機体のパイロット登録システムに自身の遺伝子を登録していたのもそのためだった。更にゼオライマーと共に持参した自身のクローン受精卵により成長した存在(秋津マサト)がゼオライマーに搭乗すると、マサキの人格と記憶が目覚めるように予めセットすることで、15年の時を越えて復活を果たす。
卑劣で残忍、かつ狡猾な性格で、自分の目的のために他人を犠牲にする事を一切躊躇わない。彼の目的は自らが冥府の王となる事であり、日本政府か鉄甲龍のどちらかが世界を制すと計算した上で、その両陣営に自分のクローンを残している。マサトの人格の中で覚醒したマサキの意志はマサトの人格を書き換えようとしていたが、自分のプログラミングの結果である塞臥たちの愛情関係がもたらした三角関係を見て苦しみ出し、マサトの人格に敗れてしまう。最期はマサトの意思でもう一人のクローン幽羅帝もろとも、ゼオライマーのメイオウ攻撃で果てた。最後まで愛を否定していたが、本当は彼自身も心を捨て切れず、否定しきれなかったのかもしれない。
考察
冥王計画を企てた理由については最後まで一切不明のままだったが、推察の材料はある。
マサキの目的は前述したとおり、冥府と化した世界の王=冥王となることであり、これは疑いのない事実である。そのために、日本と鉄甲龍のどちらかが勝利すると読み、双方に自身のクローンを配置して戦わせたのも、また揺るがない事実であり、真意である。
しかし、もし、彼が本気で世界を何もなくなった冥府と化そうとしていたのなら、本編で行ったような「ゲーム」を実行する理由がない。マサキにしてみれば幽羅帝もまた自身のクローン=本人言う所の「俺自身」である上、ゼオライマーがなければ鉄甲龍の八卦ロボに対抗する手段はどこにもないため、自分が生きていれば自分で実行すればいいし、殺されても鉄甲龍が計画を成し遂げればその瞬間に野望が達成されるからである。そしてそれを効率的に実行するならば、自ら作り上げた八卦衆達に自滅プログラムを仕込む必要もなく、ただ破壊するための、それこそ自分の様な存在として完成させればいいだけの話である。
さらに、幽羅帝含む八卦衆達は全員マサキの手によるクローンそして人造人間であり、それぞれに自滅に向かうように精神をプログラムされている。のだが、その「自滅志向」が全員「愛情」絡みのコンプレックスに関連しているのが注目点である(葎の場合は「女の顔」だが、根底には「父を求める心」がある)。彼らは幽羅帝のもと、冥王計画遂行のために動いてはいたが、幽羅帝を含め描写される彼ら自身の姿は、愛ゆえに迷い、苦しむ「人間」の姿である。マサキが実際に塞臥、祇槍、ロクフェルと相対した際には、彼らの三角関係を見て異様なまでに取り乱していたことからも、心を捨てきれていなかったと思わせる要素はある。終盤で人格の統合されたマサトは、マサキの主観を以って八卦衆や幽羅帝、美久を「綺麗」な存在と評しており、ここからもそれが伺える。穿った見方をすれば、マサキとて人間である以上初めからこんなエゴイストであったはずはないため、こうなったきっかけのようなものは確実にある。
その上で、彼がゼオライマーを奪って逃げ出し、マサトというもう一人のクローンを造り出し、その上で全てを思いのままに操る「ゲーム」を始めたのはなぜか、という理由であるが、無意識のうちに冥王計画に対する抑止力を、それも他者ではなくゼオライマーを操る自分自身に求めたのではないか、という仮説が立てられる。マサキの真意とは即ち、冥王計画を遂行して世界を冥府と化すことと、それを何らかの手段で己が止めること、二つあったと推察できる。故に、マサキにとっては冥王計画が成功しようが失敗しようが、どちらにせよ「予定通り」だったことになる。
マサキが冥王計画を企てたのは、つまる所、彼自身が恐らく一番信じることの出来ない「愛」から逃げたかったからであり、ゆえにこそ自分以外誰もいない世界に行こうとしていたのではないか、と思われる。
いずれにしても確かめる手段はないが、それが真実であるならば、マサトではなくマサキこそが「冥王計画ゼオライマー」の、本当の意味での主人公であったと言える。
登場作品と役柄
- スーパーロボット大戦MX
- 初参戦作品。本作ではゼーレと深い因縁があり、人類補完計画やセカンドインパクトにも関係していた。基本的にイベントにおけるNPC。初期のマサトより能力値が高く、マサトが弱気なのに対して超強気である(原作シナリオが終了すると、マサトの能力はマサキと同値になり、性格が強気になる)。なお、ローズセラヴィー戦にて一時的ではあるが、マサキを操作できる。
- なお本作においては冥王計画遂行の理由として「自分以外存在しない、全てが失われた世界に安らぎを求めた」と人格合一後のマサトが語っている。少なくとも、この作品においてはそれが真実なのだろう。
- スーパーロボット大戦J
- 同じ声で対極的な存在であるラウ・ル・クルーゼとの対決が期待されたが、実現せず。今回、ある発言(後述)のためにツンデレと評された。なお、今回はマサトと性格以外は同一ステータス。また、今作ではオリジナル敵勢力のフューリーとも深い因縁を持っていた。
ルラーンや『フルメタル・パニック!』のカリーニンの台詞によって、彼がウィスパードである可能性も示されていたが、原作小説においてのウィスパードの定義に明らかに当てはまらないので、この世界に置いても次元連結システムはやはり彼の天才的な才覚によって開発されたということなのだろう。そちらの方がよほど驚異的だが。 - スパロボ学園
- 天のゼオライマーのグー属性版のメインパイロットとして参戦。戦闘アニメ元であるJと同様に、ステータスはマサトと同じ。しかし精神コマンドが異なり、必中を持たない代わりに覚醒を使える。必中なしでメイオウが当たるスーパー系相手なら、マサトよりも強力。
パイロットステータスの傾向
能力値
マサトより能力値が上昇(人格融合後のマサトの能力値)。劇中の自信に満ち溢れた振る舞いから、性格が超強気になる場合もある。
精神コマンド
特殊技能(特殊スキル)
パイロットBGM
- 「覚醒、ゼオライマー」
人間関係
- 秋津マサト
- 日本政府に残したクローン。しかし彼自身の思惑とは違う方向へ成長するに至り、自身の野望を打ち破る。
- 八卦衆
- 全員が同一遺伝子から作られたクローン。彼らの愛を嘲笑い、原型を残さぬほどに踏みにじる。それぞれが彼の思惑通りに果てていくが…。
- 幽羅帝
- 鉄甲龍に残したクローン。自らの野望を代わって遂行させた。
- 氷室美久
- ゼオライマーの次元連結システムとして創造。いわく「成長するガラクタ」。パーツとしてしか見ていなかったが……。
- 沖功
- かつて自分を射殺した人物。
- ルラーン
- 鉄甲龍時代の同僚。実は本編中の鉄甲龍構成員で、マサキに造られた存在でないのは彼だけだったりする。
他作品との人間関係
- キール・ローレンツ
- MXではかつて彼らゼーレと結託していたが、利用されていたことに気付き、裏切る。本作ではゼーレは次元連結システムを用いてガフの扉を開こうとしていたので、彼に裏切られたためセカンドインパクトを起こさざるを得なくなったという事情があり、結果的に本作ではマサキはセカンドインパクトを引き起こした原因の一人である。現代に甦った後は、彼らゼーレへの復讐を目論む。
- 葛城博士
- MXでは彼と共にNERVの前身組織であるゲヒルンに関わっていた。
- ナタル・バジルール
- Jでは彼女になにかと絡む場面もあり、彼がツンデレと評される一因に。
- ラウ・ル・クルーゼ
- Jではマサキと対極な存在であり、同じ声である彼との対決が期待されたが、残念ながら実現せず。クルーゼ自身はマサキの冥王計画を継ぎ、世界を滅ぼそうとする。尤も、マサキが「作り出す側」でクルーゼが「作り出された側」という事を考えると、実際に出会った場合、間違いなく敵対すると思われる。
- グ=ランドン・ゴーツ
アル=ヴァン・ランクス
フー=ルー・ムールー
ジュア=ム・ダルービ - Jでは彼らフューリーとは深い因縁を持ち、彼らはマサトを「マサキ」と認識している。
名台詞
- 「…勝てる」
- 初登場時の台詞。この後、メイオウ攻撃を発動して風のランスターを消滅させる。
- 「くっくっく……勝ったぞ……勝った……!」
- ランスターを消滅させたのち、愉快気に呟く。この後唐突に引っ込み、マサトの人格に戻ってしまう。
- 「くっくっくっくっ……その必要はないっ!」
「むしろ、奴らが市民のことを考え、動きを鈍らせれば好都合」 - 美久の被害拡大を防ぐために樹海に誘導するべきという進言をこの台詞で却下する。マサトと好対照のダークヒーローの面目躍如たる台詞である。
- 「茶番は……終わりだ」
- シ姉妹の和解を見て吐き捨てた台詞。この後、メイオウ攻撃によって二人とも消滅させる。
- 「ゼオライマーよ、パーツを呼び戻せ! お前の次元連結システムをな!!」
- 葎との戦闘時。美久の不在によって窮地に追い込まれていたが、この台詞の後、一気に逆転する。MXでは台詞回しの都合からか「パーツ」が「奴」に変わっている。
- 「チャージなどさせるものか…」
- Jカイザーをチャージする月のローズセラヴィーに対して。気象を操る衛星兵器「月の子」を全て破壊してチャージを阻止した。そして……。
- 「俺は木原マサキ! 父などではない!」
- ローズセラヴィーをメイオウ攻撃で消し飛ばしたのち、葎が最後に呟いた「…お父さん…」をこう言って否定した。
- 「俺がそんな善人に見えるか?」
- 最終話において美久から、天のゼオライマーを奪ったのはハウドラゴンの計画を阻止するためではないのかと言われて。そりゃ見えないだろう。更に直後……。
- 「だが、鉄甲龍にいようとそこから逃げようと、志半ばで殺されることも予想していた」
「だから俺は、自分の死後目覚める、あるいくつもの布石を打った」
「成長するガラクタ! お前もその一つだ…」 - ラスト・ガーディアンにて自身の計画の一部を語る。清々しいほどの外道っぷりである。
- 「また俺を殺すのか、沖?」
- 八卦衆の迎撃にいかないマサキに業を煮やして、洗脳という手段を使ってまで戦わせようとする沖への皮肉。流石に良心がとがめていたのか、沖は動揺する。
- 「これも次元連結システムのちょっとした応用だ」
- 生身のマサキがポケットにある装置から力場を発生させ、沖や美久らを吹き飛ばした際の台詞。何でもありの便利機能「次元連結システム」およびゼオライマーを象徴するような台詞である。
原作未見のプレイヤーはなぜマサキが常に自信たっぷりなのか疑問に思う人もいるだろうが、それはこのような自衛手段を用意してあるがゆえである。 - 「黙れぇっ!! やめろ、やめろぉっ!!」
「愛だと…!? ふざけるな、八卦ども! 貴様らは、遺伝子操作で俺が造り上げた一組のクローンだ!」
「同じ受精卵に手を加えた…いわば、貴様らは兄弟どころか同一人物! 俺は貴様らの造物主にして…冥王なのだっ!!」 - 終盤、祗鎗・塞臥・ロクフェルが痴話喧嘩を始めたのを見て激怒した際の台詞。
シ姉妹や葎との戦いで愛情を見せられることに激怒しているような素振りを見せているが、それを踏まえてもこの場面の取り乱しっぷりは異様であり、何かしらのトラウマがあるように見える。祗鎗と塞臥はこの言葉に動揺するが……。 - 「それも全てプログラムに過ぎない…!」
- たとえ造られた存在であったとしても塞臥への愛は本物だと突撃するロクフェルを否定する。
- 「はぁっ、はぁ… 造物主に…逆らうとは……!!」
「ぐ、ううっ……ぐあぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!?」 - 祗鎗、塞臥を相手にメイオウ攻撃を発動しようとした時の台詞。頭痛は収まるどころか激しさを増し、それが限界を超えたその時「木原マサキ」という人格は消滅した……。
- 「チャージなどさせるかっ!!」
- バラエティドラマCD『大冥界』でチャージしようとする葎に対して。瞬間的にマサキの性格が表れ、それを阻止した。
上記のチャージを阻止する際の台詞のセルフパロディで原作アニメではぼそっと呟く程度だったのだが、ドラマCDではかなり高いテンションで叫んでおり、今ではこっちが有名になってしまった。
スパロボシリーズでの名台詞
- 「チリ一つ残さず、消滅させてやる…!」
「冥王の力の前に、消え去るがいい!!」
「消え失せろ! 天の力の前になぁ!!」 - メイオウ攻撃使用時の戦闘台詞の数々。オリジナル要素なのだが、違和感のなさからファンの間でメイオウ攻撃を象徴する台詞として一般に浸透してしまった。
- 美久「お疲れ様でした、またプレイしてくださいね」
マサト「そうだね、じゃあ次回もまた、このスーパーロボット…う!う、ううう…」
美久「マサト君!?ちょっと、どうしたの!?大丈夫!?」
マサキ「フフフ…ハハハ…マサトぉ?誰に言っている?美久」
美久「マ、マサト君…?あ、あら~…こんな時に…タイミング悪い…」
マサキ「任せておけ。…こんなゲームを何度も何度も、愚かな連中だ。貴重な時間を無駄に消費している事にも気付かぬ、うざい奴らが…」
美久「ちょ、ちょっと!いくらなんでも失礼でしょ!」
マサト「え!?あ、あれ…ど、どうしたんだい、美久?」
美久「あ…ずるい…」
マサト「え、え~と、次回もこのスーパーロボット大戦を…あ、うぅ…!」
マサキ「せいぜい楽しむがいい…」 - MXの中断メッセージの一幕。言いたい放題言って美久に怒られるのはマサトに押し付けた上、最後にワルい笑顔でキメてくれるマサキがなんともニクい一幕である。
- 「俺に指図するな! ナタル・バジルール! だが、奴らを倒すというのなら聞いてやらんこともない」
「ふん、まあいい。奴らまで敵に回しては少々面倒だからな。とりあえずあわせてやってもいい」
「フン、ついでだ。Dr.ヘルを倒すまでは付き合ってやる」
「俺が手に入れる前にやられてしまっては、困るものがあるのでな。別に貴様らを助けに来たわけではない。邪魔をするなら貴様らも消す」 - Jでの迷言の数々。この台詞を契機に、彼はファンからツンデレ冥王と呼ばれるようになった。
- 「邪魔だ! 俺がやる!」
「無駄、無駄、無駄ァ!!」 - それぞれ援護攻撃時、攻撃無効化時の台詞。
- 「風か…弱い者ほどうるさく飛び回りたがる……!」
「二体揃わねば役に立つまいが!」
「月の光は天までは届かん!」
「得意の地震でなんとかして見せろ……クックック…」
「山の響き? 天までは聞こえんな!」
「雷の力が天と互角だと? 愚かな…」
「八卦の愚か者共がぁ…! 消え失せろ!」 - Jにおける八卦衆への特殊戦闘台詞。八卦衆は其々強力な八卦ロボを持っているが、どれもこれもゼオライマーには敵わない為全て一蹴している。
- ちなみにランスターとはマサトで戦うため、これだけ没台詞。MXではこの台詞はDVEとして再現されている。
余談
- どうしようもない極悪人で、その悪行はあまりにも卑劣で痛烈なものだが、その傍若無人で唯我独尊という強烈なキャラクターや彼を演じた関俊彦氏の熱演もあり、ファンからの人気の高いキャラクターである。味方陣営に於いてここまで清々しい悪役(アンチヒーロー)がいる事も珍しく、貴重な人物と言える。また、近年は『スーパーロボット大戦J』での迷言の数々から、ツンデレとして幅広く認知されるようになり、ツンデレ冥王の渾名で親しまれるようにもなった。
- なお、彼の名前を逆から読むと「貴様ら破棄」になる。
- 原作漫画では名前が「若槻 魔沙樹(わかつき まさき)」となっており、性格がOVA版の木原マサキ以上に残忍で狡猾なエゴイストであった。そのためか「最終的に部下に裏切られ射殺される」というより惨い末路を辿っている。
また、スパロボユーザー間では「マサト・マサキ」呼称・表記で区別をしている場合が多いがこれもゼオライマーの表記と同じくOVA版でしか通用しない形であり(原作漫画版では”秋津マサキ”と同じ音である為)原作漫画について言及する場合はそれぞれ「秋津(マサト・マサキ)」、「木原・若槻(マサキ)」と苗字で表記する方がよい。