多元世界補完計画

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下記はMXの「シト新生」及び「魂のルフラン」~「約束の地」での発言内容、及び原作の「調律」「人類補完計画」の内用を踏まえて類推した記述であり、確定事項ではありません。より良い解釈をお持ちの方は随時修正いただけると助かります。

スーパーロボット大戦MX』において、裏死海文書に記されているとされる多元世界を同時に補完する計画。人類補完計画に加え、『ラーゼフォン』における「調律」を取り入れた設定となっており、劇中ではおもにネルフとMUがそれぞれ別々の思惑で遂行していた。

加持と弐神の会話

作品終盤「魂のルフラン」前のインターミッションにて、加持弐神がこの計画の全容について語っている。内容は以下の通り。

加持
「この芝居のシナリオ……それは元々一つのものだった」
弐神
「そう、太古の神話が題材となってる。今となっちゃ、誰が書いたものかはわからんがね」
加持
「火星の遺跡の創造者だという説もありますが…今やそれを証明する手段も時間もない」
弐神
「まァ、俺達にとっちゃ神様みたいなものなんだろうが。問題なのは、そいつらが残したとんでもないシナリオを演出しようと考えた奴がいたことだ」
加持
「ええ。劇場を劇場として成り立たせるために。しかし、芝居というものは観客がいなければ意味がない」
弐神
「そして、その観客を呼び寄せるための大芝居が始まった。ただ、不幸だったのは……複数の劇団がそれぞれ違う演出で幕を開けちまったことだった。しかも、同じ時間、同じ劇場でな。当然、芝居は滅茶苦茶。慌ててそこへ投入されたのが、二人のデウス・エクス・マキナってわけだ」
加持
「ギリシャ神話に登場する機械仕掛けの神。収拾のつかなくなった芝居に終幕を齎す存在」
弐神
「だが、解決を焦った代償は大きかった。その機械仕掛けの神の片割れは芝居を終わらせるどころか、一つの劇団の座長を引き連れ、劇場そのものから姿を消してしまった。そして、残された役者連中はどうしようもなくなり、ガフの部屋という楽屋に引きこもっちまったのさ」
加持
「其処で困ったのが劇場の経営者。彼らはその役者たちを外へ出そうとした」
弐神
「だが、ヤケになっちまったそいつらは大暴れ。あまつさえ、劇場の所有権まで主張しやがった」
加持
「そして、打つ手をなくした経営者は劇場そのものを封鎖せざるを得なかった。神の知恵を借りて作り出した新たなデウス・エクス・マキナによって」
弐神
「で、その顛末を書き記したのが『裏死海文書』ってわけだ」
加持
「ただ、それは複数存在しています」
弐神
「少なくとも、こっちの世界とMUに一つずつ。だから、バーベムとムーリアン、そしてゼーレは互いの演出方法を知っている。つまり前回の芝居は、奇しくも二つの世界で同時に上演されたものだったのさ」
加持
「それゆえ、大昔、完全に消えたはずのデウス・エクス・マキナがこの世界へ現れた」
弐神
「そうだ。バーベムの黒い卵はMU世界から飛ばされて来たもの。だから、自分達の劇場を失いつつあるムーリアンは俺達の世界に目を付けた。そして再び、劇場の所有権を廻っての大芝居が3つの劇団によって始められた。その3つとはゼーレ、MU、バーベム財団」
加持
「いえ、4つですよ」
弐神
「そうか、碇ゲンドウのネルフを忘れていたな」
加持
「だが、今度の芝居はシナリオが不完全だった」
弐神
「古典も古典、しかも外典だからな。この世界の裏死海文書に欠けが多いのは仕方ない。その上、勝手な解釈やアドリブを入れる奴がいる。おかげで芝居は前回以上の大混乱。飛ばされたシーンや、出番のない役者まで出てきた」
加持
「それが欠番の使徒……」
弐神
「そして、今回もまた芝居を収拾するためにデウス・エクス・マキナが投入された。そいつがEVA初号機やライディーン、そしてマグネイト・テンさ」
加持
「そして、ゼーレやバーベム、MUの本命は」
弐神
「終幕を迎えつつある劇場を再建し、次のステージへ進むこと。即ち『多元世界補完計画』。それが大本のシナリオってわけだ」
加持
「ただし、その遂行手段は二つ。補完と調律」
弐神
「どちらが選ばれるかは、デウス・エクス・マキナ次第。もっとも、ラ・ムーの星というスポットライトはまだ当てられちゃいないがね」

直接的な表現ではなく演劇に準えた比喩により語られているため断定はできないが、その後のミサトや冬月の発言を総合すると、概ね以下のような計画であったと思われる。

前史時代の顛末

  • 遥か昔、全宇宙に生命の種を撒いた存在がいた。いわゆる「第一始祖民族」である(本作では、恐らく火星極冠遺跡の創始者と共通であろうと推測されている)。
  • その際、一つの惑星に一つの生命の種を撒かれるのが通常であったが、地球には二つの種が撒かれた。
  • しかもこの現象は、互いに並行世界である二つの世界…この世界、そしてMUの世界で同時に発生した。こちらの世界では「使徒の祖先(白き月の民)」と「人類の祖先(黒き月の民)」、MUの世界では「人類(の祖先?)」と「ムーリアン」という形の生命体が生まれる。
  • MU世界ではラーゼフォンシステムによる「調律」が遂行されたが、二体のラーゼフォンのうち一体が、システムの創造者であるバーベムと共に何処かへと姿を消した。
  • また、恐らくこの過程で「時の観測者」と呼ばれる時空間安定の役割を持つ存在が消失する。結果、ムーリアンは拠代がなければ現実に存在できない非常に不安定な存在となる(ムーリアン世界の人類はこの際に消滅?)。
  • 一方こちらの世界では、観測者の消失により並行世界の増殖を調整する術が失われたため、多元世界の臨界点突破による宇宙崩壊の危機が訪れる。
  • この影響のため(冬月は原因不明の機能不全と述べているが、恐らくは観測者消失の余波であろうと思われる)、白き月の民は自身のガフの部屋で単一存在となっていた。人類の祖先は白き月の力を手に入れようとするも果たせず、寧ろ彼らの活動を活性化させてしまう。彼らは宇宙崩壊を回避するため、白き月の始祖たるアダムからエヴァンゲリオンに近しいものを創り出し、「補完」を発動。全人類を黒き月へと還元し、その存在をリセットすることで世界の崩壊を回避した。
  • この世界再生の試みの顛末は「裏の死海文書」と呼ばれる文献に「多元世界補完計画」として記述された。この世界とMU世界の双方に影響を与える内容であったためか、この文献は両方の世界に存在することになった。尚、誰が記したのかは不明だが、「裏の死海文書」には消失したゼフォンが「どの世界」に「いつ」現れるかについても記述されている(冬月曰く、裏の死海文書は多元世界の数だけ存在するとのこと)。
  • バーベムは世界と時を越え、この世界の古代ムー帝国の時代に漂着。裏の死海文書によりゼフォンがこの世界に流れ着く日時を確認した彼は、身体の乗り継ぎにより生命を長らえながら、1万年以上にわたりその時を待ち続け、またその過程で奏者の用意など様々な準備を施した。
  • また、彼は余技として、ゼフォンの代替物としてムー帝国の守護神・ライディーンに干渉しようとするが、レムリア姫により阻止。しかしこの過程で、ライディーンには2体のラーゼフォンに連なる第3の「機械仕掛けの神」としての位置づけが与えられる。

今回の顛末

  • 観測者の消失により同じく世界の危機に瀕したMU世界の住人「ムーリアン」は、15年前にこの世界へと接触、TOKYO JUPITERを形成。本来ゼフォンの奏者となるはずであった神名麻耶の統率の下、「裏の死海文書」の記述に基づき、ムーリアンの世界を生き残らせるための「調律」を実行すべく、奏者とゼフォンの準備を開始する。
  • 一方バーベムも、MU世界にいる間に自身の創りだしたラーゼフォンシステムがこちらの世界に現れる「宇宙暦74年12月28日」(裏死海文書に記された時)を1万2千年かけて待ち、行動を開始。MUと歩調を合わせて「調律」の遂行をもくろむ。
  • 時を同じくして、ゼーレ、更にゲンドウも「裏の死海文書」の「多元世界補完計画」に関する記述に基づいて、それぞれの「人類補完計画」を遂行すべく行動を開始。
  • これらは基本的に前史時代に実行された「調律」「補完」の流れをそのままなぞる形で進められた(「補完」の流れに基づいて立案された計画が、今日の「人類補完計画」である)が、原典に情報の欠落があったこと、互いに情報を把握していた中で並行して行動を起こしたために互いに牽制しあう形になったこと、更に前史時代の「調律」「補完」いずれとも異なる独自の結末を目指すゲンドウの存在などにより、辿ったシナリオは前史時代のそれとは大きく異なるものとなり、「欠番の使徒」が発生するなどの影響が出た。

その後の各組織の行動・目的を纏めると、以下の通り。

組織 目的 詳細
バーベム 調律

自身が創造したラーゼフォンシステムによる世界の調律の行く末を見届けたい。そのため、調律の儀式に必要な二体のラーゼフォンをTERRAMUの双方に送り込んだ。ただし彼はムーリアンであるため、彼が望んでいるのはMU世界の再構築という結末(こちら側の世界の消滅)と思われる。

なお、自身の計画の保険としてデビルガンダムおよびウルベを復活させ、手駒として使役していた。

MU 調律 自身の世界の再構築。ただしこちら側での指導者となった神名麻弥の意志により、本来の目的とは必ずしも一致しない行動(綾人の重視)を取っているように思われる。
ゼーレ 補完

人類を一度黒き月に還元し、滅びを免れたい。本作では前述の通りリセットによる破滅のやり過ごしが人類補完計画であり、人工進化を目的としたものではない。

なお、作中での彼らの発言から、補完の際の拠代としてイシュトリ・イン・ヨリョトルを用いることも可能のようである(実際、ヒトの心と神の力(ヨロテオトル)を所持した存在であるため、拠代としての条件は満たしているように思われる)。

ネルフ碇ゲンドウ 補完 碇ユイに再会したい。また、彼女の望むような形(全人類の肉体的な死を伴わない形)で補完を行いたい。そのためには最終プロセスにおいて、アダムとリリスの融合による補完を行う必要がある。
ライディーンレムリア 調律、補完共に否定 古代においてバーベムの目論見を見抜いていたレムリアは、その意思によりライディーンに「補完」「調律」のいずれの結末も迎えさせないための行動を取らせる。最終的にはラ・ムーの星を発動させ、その力により「調律」による世界の消滅を阻止した。
鉄甲龍ゼオライマー木原マサキ 冥王計画

当初はネルフ(ゼーレ)と協力関係にあり、南極でのアダムのサルベージはゼオライマーによって行われるはずであった。しかし木原マサキがゼオライマーを持ち出したために計画は修正を余儀なくされ、結果、セカンドインパクトが発生した。

次元連結システムには単体でガフの扉を開く力が備わっているとのことで、木原マサキ自身が冥王計画を実現していたとすれば、補完に近い形での人類抹殺(黒き月のLCL排除)が行われた可能性が高い。

ツェントル・プロジェクトAI1計画) (補完) ゼーレが計画の保険として用意していた存在で、世界の表象的な破滅をもたらすための手段として用意された。しかし、エルデライディーンからラ・ムーの星を強奪したことにより、メディウス・ロクスの中に仕込まれた「AI1」はその力を得てゼーレの期待以上の機体へと進化し、世界の終末を導くに相応しい存在となる。

結論として、多元世界補完計画は「多元世界の膨張による世界の崩壊を防ぐための計画」である。その手段はいずれか一方の世界を消滅させる「調律」か、全人類の肉体的な死により世界崩壊に耐え得る生命体に変化する「補完」のいずれかを取ることになるが、いずれにせよこの世界の人類が死滅する点では一致しており、レムリア、またユイの意を汲んだゲンドウは(ゲンドウについては多分に独自の目的があるものの)それを阻止するために様々な独自行動を行っている。

そして今回の事態終結の鍵となる存在が、EVA、ラーゼフォン、ライディーン、ゼオライマー、その他諸々の特機を集結させたマグネイト・テンである。元々は各組織が互いの牽制(及びガルファ等、互いに取って邪魔な存在の排除)のために、それぞれのデウス・エクス・マキナを一部隊に集結させていたのだが、彼らが互いに交流を持つことにより、裏の死海文書に記載された多元世界補完計画のいずれのファクターとも異なる流れが発生。最終的には綾人が新たなる「時の観測者」となって彼自身の意志で世界崩壊を防ぐという、いずれの組織も想定していなかった結末を迎えることになった。

他作品への影響

この計画は複数の次元に影響を及ぼす内容であることから、他作品の世界に対しても少なからず影響を与えている(あるいは関連設定を後付けし易く設定されている)ものと思われる。

特に下記の点から、αシリーズとは深い関連があるとする説が有力である。

  • MX世界において、ガデス渚カヲル等が「無限力による死と新生の輪廻の存在」について発言しており、「調律」或いは「補完」による全生命体の死滅もこの「死」に該当すると思われる。
  • 第3次スーパーロボット大戦α』において、渚カヲルがMXの世界における記憶を引き継いでいることを臭わせる(かつて彼が存在した世界は、機械仕掛けの神の歌声によって一度死に、生まれ変わった。しかしその世界も死と新生の輪廻からは逃れられず、その結果としてαの世界が生まれた)発言をしている。

無限力との関連

前述の通り、第3次αでの冬月の解釈によれば、無限力と呼ばれる存在の間では補完計画に対して賛否が分かれているようである。ただ、どちらかといえば補完には否定的なスタンスを取っている意志の方が多い。また、マジンカイザーに宿る魂も補完には否定的。また負の無限力(ディス・レヴ)も、賛成か反対かは不明だが反応を示している。

ゲッター線
補完をヒトとしての進化の放棄であるとみなしており、進化を促す力として計画に反対の立場を取っている。同じく進化を促す力であるビムラーも概ねこちらの側。
イデ
イデ自身も器を捨て一つになった第6文明人の意志であり、故に同じ結論にたどりついた補完計画を支持している(そもそも補完という方法自体元々は第6文明人(スパロボでは第一始祖民族と同一の存在になっている)が考え出したものである)。また補完によって一つになった人類の心とイデがさらに融合し、人類が無限力と一体化する可能性が示唆されている。