ミール

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ミール(Mir)とは、『蒼穹のファフナー』の敵勢力・フェストゥムを統括している存在。その正体は、膨大な情報が詰め込まれた光子結晶体である。

フェストゥムは個の自我を持たず、全員が意識と記憶を共有している珪素生物であるが、その集合意識を管理する「脳」もしくは「サーバ」にあたるのがミールである。類似点の多いバジュラで例えるとクィーンに近い。

個々のフェストゥムはミールが外界に干渉するための端末と見ることができる。ただし、これはミールという「個の意志」がフェストゥム群を支配しているという訳でもない。ミールの意思とは接続されているフェストゥムの集合意識そのものであり、その視点ではフェストゥム群がミールを支配しているともとれる。フェストゥム群の集合意識の中ではミールと個々のフェストゥムは区別されるものではなく、そのことはミョルニアイドゥンがたびたび使う言い回し「我々は私によって理解した」が象徴している(「我々」がミールで「私」が発言した個体)。

個々のフェストゥムは「コア」を心臓部として、肉体を自由に構築することができるが、この「コア」はミールから生み出されている。個を理解したフェストゥムである来主操によれば、ミールを人間の概念で呼ぶならば「神様」になるだろうと語っている。

ミールは破壊されても、時が経てば新しいミールが生まれて集合意思ネットワークが再構築される。ミール不在時のフェストゥムは意思の共有ができなくなるが、それだけでは彼らに「個」が芽生えることはない。

ミールは複数存在することが確認されており、異なるミールの統制化にあるフェストゥム同士の意識は別のものとなるが、ミール同士が情報を共有すれば更に大きな一つの集合意思に属することが可能になる。

ミール一覧

超古代ミール
作中設定のみに現れるミール。人類誕生以前の地球に存在し、類人猿の生体構造に干渉を行いホモサピエンスへの進化を促した。このミールは現在は実体を失い、人類の遺伝子そのものに因子として宿っている。フェストゥムが人類の思考を読めるのは、この遺伝子上の類似部分のせい。
北極海ミール
地球人類が戦っているフェストゥム群を統括しているミール。宇宙から「あなたはそこにいますか?」というメッセージを発して旅していたが、西暦2113年にそれをキャッチした地球人が応答してしまったことで、地球の北極海に飛来。フェストゥム群を大量に生み出して「同化」という名の侵略を開始した。
ちなみに、人類にも解るメッセージを発していたのはかつて人類が宇宙の彼方へと放った人工衛星に記録されていた物を学習したからという設定があったりもする。
もうひとつのミールである瀬戸内海ミールとの接触を図るため、フェストゥムたちを使って竜宮島を探してもいる。
北極の氷山の地下にはフェストゥムたちが作り出した巨大なピラミッド状の要塞があり、その中央部に厳重な警戒のもとに北極海ミールが安置されている。
瀬戸内海ミール
遥か昔に超古代ミールに引きよせられる形で地球に飛来してきたミール。日本の瀬戸内海の海底に着地し、フェストゥムを生み出すこともなく半ば休眠状態にあった。フェストゥム侵攻が始まるよりも前の西暦2085年に人類によって発見され、日本政府直轄で研究が進められていた。
北極海ミールの襲来に呼応して突如活性化し、増殖。毒素を日本中に撒き散らし日本人から受胎能力を奪う。このカタストロフが世界規模に拡大することを恐れた新国連は、増殖しつつある瀬戸内海ミールを破壊するために日本の国土ごと核攻撃で焼き払った。しかし瀬戸内海ミールの欠片が生き残りの日本人たちにより確保され、彼らは竜宮島でミールの研究を続けることになる。
なお、瀬戸内海ミールが日本人から受胎能力を奪ったのは「死の恐怖に怯える人類を救ってあげるために、まず誕生という現象をなくした」という理由であり、人間の生死の概念を正しく理解していなかったがゆえの不幸な事故である。しかしこれでも北極海ミールよりは人類を理解しており、共感していたことが分かる。
島のミール
竜宮島に持ち込まれた瀬戸内海ミールの欠片が変質して生まれたミール。結晶体ではなく「酸素」として自らを構成しており、島の大気に溶け込んでいる。島の住人はミールの混合した空気を呼吸して生活しており、島のミールは生物たちの体内に入り込みながらも、「同化」を行わずに観察している。
島のミールが生まれた切っ掛けは、ミールの研究中に起こった暴走事故で、これによって研究者の「皆城鞘」とミールの欠片が不完全な同化をしてしまう。鞘は亡くなるが、彼女が身ごもっていた子供だけは救出された(鞘はミール活性化の時点では海外赴任していたので受胎能力は失っていなかった)。この同化によってミールは母の胎内から人が生まれるという「誕生」という概念を理解。有機生命体についての理解をさらに深めるために、島の大気と同化した。これを人類とフェストゥムの共生の僅かな可能性と信じた竜宮島の住人たちは、北極海ミールと新国連の人類の双方から隠れ続けることになる。
作中では「人類側ミール」とも呼ばれており、鞘の胎内から救出された娘・皆城乙姫が人類側のメッセンジャーとして島のミールとの接触を図っている。
劇場版では日野美羽がこのミールと常時クロッシングした状態にあり、島のミールは命をさらに理解すべく、彼女とフェストゥムの言語による意思疎通を行っている。彼女から見ると、生と死を学んでいるこのミールは「赤ちゃんを抱っこしたお姉ちゃん」というイメージで見えるらしい。
小ミール
劇場版に登場。TVアニメ版の最終決戦である「蒼穹作戦」によって北極海ミールは破壊されたが、この後継のミールが一つではなく無数に生まれ出した。これらを小ミールと呼ぶ。
小ミールが生まれたのは蒼穹作戦の際に北極海ミールのフェストゥム群に「個」の概念が理解されたためで、自分と同じ価値観を持つ個体同士とのみ意識をつなげることを選んだということである。
小ミールは人類に友好的な物も居るが、敵対的な物も存在し、かつてのように人類を祝福するつもりで同化を試みるのではなく、明確な「憎悪」「嫌悪」をもって人類を滅ぼそうとするものもいる。さらには立場が違う小ミール同士での戦争も行われている。このうちの一つが送り込んだ使者と呼ぶべき存在が来主操であり、彼が竜宮島を訪ったことからHAEの物語が幕を開ける。

SRWでの扱い

携帯機シリーズ

スーパーロボット大戦K
敵側のミールが北極にあり、竜宮島には人類に協力的なミールがいる、という設定は共通しているが、日本を舞台とする参戦作品が存在する都合上、日本人の受胎能力喪失と核攻撃による日本消滅というカタストロフが削除されている。このため、「ミールははじめから竜宮島で研究されていて、島の住人の受胎能力のみが失われた」という形に設定変更が行われた。
竜宮島の住人の受胎能力喪失の原因として「フェストゥムの侵攻の結果、この島の人は受胎能力を失ってしまった」と語られはするが、これに島のミールが関わっているのかどうかについては曖昧。核攻撃を行う動機が国際社会に生まれてないために、このあたりはわざと詳細をぼかしているのだと思われる。
また、原作では最終回に北極海ミールが溜め込んだ情報を竜宮島が入手したことで、同化現象への対抗策が見出せたという希望が示され、劇場版でもそれが活かされているが、『K』ではファフナー関係の隠しフラグを立てない限り、この情報があまりに膨大すぎて解析に時間がかかってしまい、逆に同化対策への研究が遅延する原因となってしまっているという原作以上の悲劇が語られる。
スーパーロボット大戦UX
劇場版も含めほぼ原作通り。日本消滅のカタストロフはやはり改変されているが、本作では日本人の受胎能力喪失に関しては過去に起きていたと言及されている。ミールに関する描写や考察も深く掘り下げられており、一場面のみだが内部もカットインが用意された。奇械島からも発見されている(こちらの場合、奇械島ミールということになる)。
蒼穹作戦前後に齎された膨大な情報群に関しては、『K』とは異なりヴェーダという強力この上ない演算装置のサポートがあったため、第3部における劇場版の再現では問題なく(むしろ原作よりも2年近く早く)治療が進んでいる。
なお、フェストゥムの読心能力の理由は「超古代ミール」で述べた通りだが、本作においては三璃紗の人間……即ち魂を持った機人であるSDガンダムに対しても問題なく機能する。これには『UX』の世界観の根幹を成す一つのループが関わっている。