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| 児童が読む、または親などの大人が幼年期の子どもに読み聞かせる文学である。「おとぎ話」や「昔話」、「メルヘン」などもこれに含まれる。そのジャンルは世界中から伝わる民話、伝説、[[神話]]、寓話、創作された物語と多岐にわたる。 | | 児童が読む、または親などの大人が幼年期の子どもに読み聞かせる文学である。「おとぎ話」や「昔話」、「メルヘン」などもこれに含まれる。そのジャンルは世界中から伝わる民話、伝説、[[神話]]、寓話、創作された物語と多岐にわたる。 |
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− | その目的は幼児期の子どもが童話を読むことで言葉や文字を学習したり、美的感覚、善悪の判断等の情操教育や想像力や価値観を育てることである。そして、親(大人)が子どもにコミュニケーションをとる手段の一つとして童話を絵本、紙芝居と言った形で読み聞かせたりする。
| + | その目的は幼児期の子どもが童話を読むことで[[言語|言葉]]や文字を学習したり、美的感覚、善悪の判断等の情操教育や想像力や価値観を育てることである。そして、親(大人)が子どもにコミュニケーションをとる手段の一つとして童話を絵本、紙芝居と言った形で読み聞かせたりする。 |
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| 童話は大抵子ども向けとして創られているためか、基本的に主人公は子どもが容易に想像でき、好感が持てる人物像となっている。また、その行動に明確な結果が待っていて子どもに対する教訓となっている(所謂『善行を行った者には褒美を与え、悪行を行った者には罰を受ける』という展開や結末がある)。それらが動物など擬人化された存在である場合も多く、[[ヨーロッパ|西洋]]の童話では継母は悪人として書かれることがある。 | | 童話は大抵子ども向けとして創られているためか、基本的に主人公は子どもが容易に想像でき、好感が持てる人物像となっている。また、その行動に明確な結果が待っていて子どもに対する教訓となっている(所謂『善行を行った者には褒美を与え、悪行を行った者には罰を受ける』という展開や結末がある)。それらが動物など擬人化された存在である場合も多く、[[ヨーロッパ|西洋]]の童話では継母は悪人として書かれることがある。 |
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− | 大抵は幸せな結末で終わるのが基本だが、アンデルセン童話では「人魚姫」のように悲劇的な結末を迎える作品も少なからず存在する。また、'''グリム童話では悪行を犯した者対しては残酷ともいえるレベルの報いや制裁を受ける事が多い(因果応報と言われたらそれまでだが)'''。ただし、想定する読者対象が子どもであることも配慮して、そのシーンを削除、もしくは修正・改変をされた作品もある。
| + | 大抵は幸せな結末で終わるのが基本だが、アンデルセン童話では『人魚姫』のように悲劇的な結末を迎える作品も少なからず存在する。また、'''グリム童話では悪行を犯した者に対しては残酷ともいえるレベルの報いや制裁を受ける事が多い(因果応報と言われたらそれまでだが)'''。しかし、想定する読者対象が子どもであることも配慮して、そのシーンを削除、もしくは修正・改変をされた作品も少なからず存在する。 |
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| ==童話が取り入れられている作品== | | ==童話が取り入れられている作品== |
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| グリム版とペロー版がよく知られているが、実は世界中にこの物語と似た作品が世に出たりする。なお、グリム版は相当えげつなく描かれている。 | | グリム版とペロー版がよく知られているが、実は世界中にこの物語と似た作品が世に出たりする。なお、グリム版は相当えげつなく描かれている。 |
| ;シンデレラ(Cinderella) | | ;シンデレラ(Cinderella) |
− | :主人公。継母とその連れ子である姉たちに苛められる辛い日々を送り、自分だけドレスもない為に城の舞踏会にも行けないなど不幸の連続だった。魔女によって舞踏会に行ける準備を整ったが、夜12時には魔法が解けるので帰ってくるようにと警告される。 | + | :主人公。継母とその連れ子である姉たちに苛められる辛い日々を送り、自分だけドレスも無い為に城の舞踏会にも行けないなど不幸の連続だった。魔女によって舞踏会に行ける準備を整ったが、夜12時には魔法が解けるので帰ってくるようにと警告される。 |
− | :城の舞踏会では美しいドレスと容姿から王子に見初められるも夜12時の鐘の音に焦ったシンデレラは急いで帰ってしまう。しかし、王子がシンデレラが帰る際に落とした靴を手がかりに探し、その靴にピッタリ入れることができたために妃として迎い入れられた。 | + | :城の舞踏会では美しいドレスと容姿から王子に見初められるも夜12時の鐘の音に焦ったシンデレラは急いで帰ってしまう。しかし、王子がシンデレラが帰る際に落とした靴を手がかりに探し、その靴にピッタリ入れることができたために妃として迎え入れられた。 |
| :ちなみに、苦労の末に[[幸運]]を手にしたことを意味する「シンデレラ・ストーリー」はこれが由来。 | | :ちなみに、苦労の末に[[幸運]]を手にしたことを意味する「シンデレラ・ストーリー」はこれが由来。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、「[[アシェン・ブレイデル]]」のモチーフとして取り入れられている。シンデレラは[[ドイツ語]]でアッシェンブレーデル(日本語訳すれば、原題である『灰かぶり』)を意味している | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、「[[アシェン・ブレイデル]]」のモチーフとして取り入れられている。シンデレラは[[ドイツ語]]でアッシェンブレーデル(日本語訳すれば、原題である『灰かぶり』)を意味している |
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| ===白雪姫=== | | ===白雪姫=== |
| ドイツのヘッセン州の民話で、後にグリム童話の一つとして収録された。<br/> | | ドイツのヘッセン州の民話で、後にグリム童話の一つとして収録された。<br/> |
− | グリム童話のものは、例によって子供にはそのまま聞かせられない内容になっている(因果応報とはいえ、王妃が最終的に拷問のような目に遭っている辺り)。
| + | グリム童話のものは、例によって子どもにはそのまま聞かせられない内容になっている(自業自得とはいえ、王妃が最終的に拷問のような目に遭っている辺り)。 |
| ;白雪姫 | | ;白雪姫 |
− | :主人公。一般的に童話では毒りんごを売りつけられるだけだが、原典では'''王妃に3回殺されかけており、少なくとも1回死んでいる'''。というのも、傲慢な王妃の嫉妬により命を狙われたのが理由である。 | + | :主人公。一般的に童話では毒リンゴを売りつけられるだけだが、原典では'''王妃に3回殺されかけており、少なくとも1回死んでいる'''。というのも、傲慢な王妃の嫉妬により命を狙われたのが理由である。 |
− | :また、毒りんごを吐き出して助かった理由も異なるが(後述)、最終的には自分を助けてくれた王子と結ばれ、妃となったようだ。 | + | :また、毒リンゴを吐き出して助かった理由も異なるが(後述)、最終的には自分を助けてくれた王子と結ばれ、妃となったようだ。 |
| :*[[スーパーロボット大戦D]]の「[[ブランシュネージュ]]」の名称元として取り入れられている。[[フランス語]]でブランシュネージュは白雪姫を意味する。 | | :*[[スーパーロボット大戦D]]の「[[ブランシュネージュ]]」の名称元として取り入れられている。[[フランス語]]でブランシュネージュは白雪姫を意味する。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、「[[ネージュ・ハウゼン]]」のモチーフとして取り入れられている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、「[[ネージュ・ハウゼン]]」のモチーフとして取り入れられている。 |
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| :継母であり、死んだ白雪姫の母にかわって妃になった。だが、その[[性格]]は傲慢かつ嫉妬深く、彼女の人物像を一言で表すなら「自分が一番美しくなければ気が済まない」であろう。 | | :継母であり、死んだ白雪姫の母にかわって妃になった。だが、その[[性格]]は傲慢かつ嫉妬深く、彼女の人物像を一言で表すなら「自分が一番美しくなければ気が済まない」であろう。 |
| :魔法の鏡から自分より美しい白雪姫の存在を知って、彼女の殺害を企てようとしている。 | | :魔法の鏡から自分より美しい白雪姫の存在を知って、彼女の殺害を企てようとしている。 |
| + | :余談だが、グリム童話初版本において王妃は白雪姫の'''実母'''という設定であった。第2版以降は、現行の設定に変更されている。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の特殊技「ジェラス・クイーン」の由来となっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の特殊技「ジェラス・クイーン」の由来となっている。 |
| ;魔法の鏡 | | ;魔法の鏡 |
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| ;王子 | | ;王子 |
| :登場人物の一人。通りかかろうとした途中に白雪姫の美しさに惹かれたのか、'''死体でもいいから引き取ろう'''とした事も。 | | :登場人物の一人。通りかかろうとした途中に白雪姫の美しさに惹かれたのか、'''死体でもいいから引き取ろう'''とした事も。 |
− | :しかし、連れて帰る道中で柩が揺れた衝撃で口に含んだ毒りんごを吐き出すことができたので、結果的には命の恩人と言えるだろう。 | + | :しかし、連れて帰る道中で柩が揺れた衝撃で口に含んだ毒リンゴを吐き出すことができたので、結果的には命の恩人と言えるだろう。 |
− | :…これはグリム童話のものであり、ディズニー版ではそのシーンは「白雪姫に[[キスシーン|キス]]をして生き返らせる」というシーンに改変された。ちなみに、このディズニー版の改変は後世に大きな影響を与えており、子ども向けの白雪姫の童話においても、王子のキスで白雪姫が蘇生する結末が採用されている。 | + | :…これはグリム童話のものであり、ディズニー版ではそのシーンは「白雪姫に[[キスシーン|キス]]をして生き返らせる」というロマンチックなものに改変された。ちなみに、このディズニー版の改変は後世に大きな影響を与えており、子ども向けの白雪姫の童話においても、王子のキスで白雪姫が蘇生する結末が採用されている。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「ロイヤル・キッス」の由来となっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「ロイヤル・キッス」の由来となっている。 |
| ;小人 | | ;小人 |
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| :しかし、これも7人の小人によって助け出されてしまう。 | | :しかし、これも7人の小人によって助け出されてしまう。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「ベノム・コーム」の由来となっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「ベノム・コーム」の由来となっている。 |
− | ;毒りんご | + | ;毒リンゴ |
− | :白雪姫の殺害計画の一つして使われた道具であり、子ども向けの童話で最も見かけている。その内容は王妃がりんごに毒を仕込み、物売りに扮して白雪姫を食わせる。 | + | :白雪姫の殺害計画の一つして使われた道具であり、子ども向けの童話で最も見かけている。その内容は王妃がリンゴに毒を仕込み、物売りに扮して白雪姫を食わせる。 |
| :こちらは白雪姫を殺害させることはできたが、王子のある行為によって水泡に帰してしまう。 | | :こちらは白雪姫を殺害させることはできたが、王子のある行為によって水泡に帰してしまう。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「ベノム・カーマイン」の由来となっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「ベノム・カーマイン」の由来となっている。 |
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| ;赤く焼けた靴 | | ;赤く焼けた靴 |
| :王妃の報いとして使われた道具。'''白雪姫と王子の結婚式の際に王妃は赤く焼けた靴を履かされ、死ぬまで踊らされてしまう'''。 | | :王妃の報いとして使われた道具。'''白雪姫と王子の結婚式の際に王妃は赤く焼けた靴を履かされ、死ぬまで踊らされてしまう'''。 |
− | :これはグリム童話での顛末であり、(自業自得とは言え)子供に聞かせるにはあまりにも残酷だったのか、子ども向けの白雪姫の童話ではそのシーンが削除されている。 | + | :これはグリム童話での顛末であり、(自業自得とは言え)子どもに聞かせるにはあまりにも残酷だったのか、子ども向けの白雪姫の童話ではそのシーンが削除されている。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「レッドホット・パンプス」の由来となっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では、[[ネージュ・ハウゼン]]の通常技「レッドホット・パンプス」の由来となっている。 |
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| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では[[楠舞神夜]]の通常技「蓬莱の枝」の由来となっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では[[楠舞神夜]]の通常技「蓬莱の枝」の由来となっている。 |
| ;火鼠の皮衣 | | ;火鼠の皮衣 |
− | :火の中に入れても燃えない衣。3人目の求婚者・右大臣、阿部御主人('''あべのみうし''')に出された難題。 | + | :火の中に入れても燃えない衣。3人目の求婚者・右大臣、阿倍御主人('''あべのみうし''')に出された難題。 |
| :わざわざ中国まで出向いて手に入れた立派な反物を持参するが、火にくべると燃えてしまったため失格。 | | :わざわざ中国まで出向いて手に入れた立派な反物を持参するが、火にくべると燃えてしまったため失格。 |
| :ちなみに「敢え無く~」という慣用句の語源はこの逸話。 | | :ちなみに「敢え無く~」という慣用句の語源はこの逸話。 |
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| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では[[楠舞神夜]]の通常技「火鼠の衣」の由来となっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では[[楠舞神夜]]の通常技「火鼠の衣」の由来となっている。 |
| ;竜の首の玉 | | ;竜の首の玉 |
− | :龍の首元にあると言われる、五色に輝く宝玉。4人目の求婚者・大納言、大友御行('''おおとものみゆき''')に出された難題。 | + | :龍の首元にあると言われる、五色に輝く宝玉。4人目の求婚者・大納言、大伴御行('''おおとものみゆき''')に出された難題。 |
| :船を繰り出し龍探しに勤しんだが、嵐に巻き込まれて船員の多くを失い断念。そして彼も重病にかかってしまう。 | | :船を繰り出し龍探しに勤しんだが、嵐に巻き込まれて船員の多くを失い断念。そして彼も重病にかかってしまう。 |
| :ちなみに「堪え難い」という慣用句の語源はこの逸話。 | | :ちなみに「堪え難い」という慣用句の語源はこの逸話。 |
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| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では「[[ヘンネ・ヴァルキュリア]]」のモチーフとなった。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では「[[ヘンネ・ヴァルキュリア]]」のモチーフとなった。 |
| ===千夜一夜物語=== | | ===千夜一夜物語=== |
− | 中世頃のイスラム世界でアラビア語でまとめられた説話集。アラビアンナイトとも。主軸はある事情で極度までに女性不信となった王を[[説得]]させるために、王妃となったシェヘラザードがこの話を聞かせている。<br/>
| + | 中世頃のイスラム世界でアラビア語でまとめられた説話集。『アラビアンナイト』とも。主軸はある事情で極度までに女性不信となった王を[[説得]]させるために、王妃となったシェヘラザードがこの話を聞かせている。<br/> |
| 最も有名なのは『アラジンと魔法のランプの物語』であるが、実はアラビア語原典の『千夜一夜物語』には収録されておらず、別系統である可能性が高い。 | | 最も有名なのは『アラジンと魔法のランプの物語』であるが、実はアラビア語原典の『千夜一夜物語』には収録されておらず、別系統である可能性が高い。 |
| ;アラジン(Aladdin) | | ;アラジン(Aladdin) |
− | :『アラジンと魔法のランプの物語』(第731夜 - 第774夜)に登場する中国人。 | + | :『アラジンと魔法のランプの物語』(第731夜 - 第774夜)に登場する中国で暮らす少年。 |
| :母と貧乏暮らしをしているが、マグリブ出身の魔法使いにそそのかされ、そこで穴の中にある魔法のランプを手にしてから彼の運命が動き出す。 | | :母と貧乏暮らしをしているが、マグリブ出身の魔法使いにそそのかされ、そこで穴の中にある魔法のランプを手にしてから彼の運命が動き出す。 |
| :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では「[[アレディ・ナアシュ]]」のモチーフとなっている。 | | :*[[無限のフロンティアシリーズ]]では「[[アレディ・ナアシュ]]」のモチーフとなっている。 |
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| ===ヘンゼルとグレーテル=== | | ===ヘンゼルとグレーテル=== |
| グリム童話の一つ。作中では『お菓子の家』が印象に残るが、こちらも子供に聞かせるには残酷な表現が多く含まれている為、改変されたシーンがある。<br/> | | グリム童話の一つ。作中では『お菓子の家』が印象に残るが、こちらも子供に聞かせるには残酷な表現が多く含まれている為、改変されたシーンがある。<br/> |
− | この童話の原型となる話は、長く続いた飢饉を凌ぐために家族が子供捨てを余儀なくされたという内容となっている。
| + | この童話の原型となる話は、長く続いた飢饉を凌ぐために家族が子供捨てを余儀なくされたという事実を反映した内容となっている。 |
| ;ヘンゼル(Haensel) | | ;ヘンゼル(Haensel) |
| :捨てられた兄妹の兄。行く宛もないグレーテルとともに森に迷い込み、そこでお菓子の家を見つけるが…。 | | :捨てられた兄妹の兄。行く宛もないグレーテルとともに森に迷い込み、そこでお菓子の家を見つけるが…。 |