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− しかし、「箱」の真実が知れ渡れば、ジオンを信奉するスペースノイドだけでなく、ジオンに反感を抱き連邦側についているスペースノイド達でさえも掌を返して連邦を倒す為に団結し、最悪の場合は「アースノイドとスペースノイドの二分化による真の意味での殲滅戦争」となってしまう可能性も否定出来なかった。戦争のダメージが色濃い今そんなことになれば、人類種そのものが確実に滅んでしまう。その危険があるからこそ、政府は何としても「箱」を隠し続けなければならなくなり、一年戦争の惨劇を繰り返さない為、「宇宙に適応した新人類」を旗頭とするスペースノイドの希望を砕く為、ニュータイプを否定しなければならなくなった。もはやそこには連邦側にとっての利益や保身など関係は無いも同然で、ビスト財団や真実を知る者たちの既得権益を守るためだった癒着構造は「『戦争』という最悪な事態を回避し、どんな形であれ『平和』を維持していく為の必要悪である」と意味付けがなされ、ますます「呪い」が重くなっていったのである。+
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→『箱』の意味の変遷
サイアムが回収し脅迫に利用した「箱」の持つ力は、「リカルドの暗殺が息子のジョルジュを中心とする政権による陰謀だった」というかつての連邦首脳陣に関する一大スキャンダルが暴露される程度の物でしかなかった。レプリカにはない第七条碑文の存在は、時が経って当事者がこの世を去ってしまえば「だいぶ前の政権が起こした事件の遺物」でしかなくなり、だからこそ時と共に風化し、徐々に「箱」の価値を失われていくはずだった。
サイアムが回収し脅迫に利用した「箱」の持つ力は、「リカルドの暗殺が息子のジョルジュを中心とする政権による陰謀だった」というかつての連邦首脳陣に関する一大スキャンダルが暴露される程度の物でしかなかった。レプリカにはない第七条碑文の存在は、時が経って当事者がこの世を去ってしまえば「だいぶ前の政権が起こした事件の遺物」でしかなくなり、だからこそ時と共に風化し、徐々に「箱」の価値を失われていくはずだった。
だが、[[スペースノイド]]の独立を主張したジオン・ズム・ダイクンによって提唱された[[ニュータイプ]]論が「宇宙に適応した新人類」という箱の碑文と重なった結果、「地球連邦はジオニズムと同じ思想を持ち、新人類の発生を予見した上で、それを秘匿・否定していた」という事実が後付けで発生してしまい、本来は未来への「祈り」であったその碑文は「呪い」へと転じてしまう<ref>わかりやすく言うと「連邦政府はスペースノイドの権利を認めるつもりが最初から無かったんじゃないか」という疑惑に強固な裏付けが成立することになる。</ref>。
だが、[[スペースノイド]]の独立を主張したジオン・ズム・ダイクンによって提唱された[[ニュータイプ]]論が「宇宙に適応した新人類」という箱の碑文と重なった結果、'''「地球連邦はジオニズムと同じ思想を持ち、新人類の発生を予見した上で、それを秘匿・否定していた」という事実が''後付けで''発生してしまい'''、本来は未来への「祈り」であったその碑文は「呪い」へと転じてしまう<ref>わかりやすく言うと「連邦政府はスペースノイドの権利を認めるつもりが最初から無かったんじゃないか」という疑惑に強固な裏付けが成立することになる。</ref>。
もし「箱」の存在がジオニズム信奉者達に知れれば、彼等はその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然で、それを拒む連邦との間で激しい衝突が起こることも予想された。何よりも「存在を知りながら隠し続けた」という事実が、「連邦の政治的・思想的な不正義を証明する口実」として使われるのは明白であった為、連邦政府は沈黙し、秘匿し続けるしか道がなかった。
もし「箱」の存在がジオニズム信奉者達に知れれば、彼等はその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然で、それを拒む連邦との間で激しい衝突が起こることも予想された。何よりも「存在を知りながら隠し続けた」という事実が、「連邦の政治的・思想的な不正義を証明する口実」として使われるのは明白であった為、連邦政府は沈黙し、秘匿し続けるしか道がなかった。
この偶然の一致の結果、「箱」そのものではなく「箱」を封じたという事実の方が重くなり、更にサイアムが政治工作により「箱」その物の意味を自らから遠ざけた結果、「サイアムの立ち上げたビスト財団を潰しても『箱』の秘密も所在も全く分からないまま」という状態が成立。この結果、「『箱』=宇宙世紀憲章の石碑」という単純な真相が世に出る事のないまま、サイアムの存在からその(政府にとっての)危険性だけが一人歩きしていき、ある種の都市伝説として広まっていくことになる。
この偶然の一致の結果、「箱」そのものではなく「箱」を封じたという事実の方が重くなり、更にサイアムが政治工作により「箱」その物の意味を自らから遠ざけた結果、「サイアムの立ち上げたビスト財団を潰しても『箱』の秘密も所在も全く分からないまま」という状態が成立。この結果、「『箱』=宇宙世紀憲章の石碑」という単純な真相が世に出る事のないまま、サイアムの存在からその(政府にとっての)危険性だけが一人歩きしていき、ある種の都市伝説として広まっていくことになる。
そして、'''それでも'''起きてしまった一年戦争という惨劇、その中で姿を見せたニュータイプという存在が、「呪い」にさらなる重みを与えてしまった。人類の半数が死滅、地球環境も壊滅という大惨事に加え、「'''宇宙に適応した新人類''と思われる存在'''''」により、連邦政府にとっての「箱」は完全なパンドラの箱と化してしまったのである。
しかし、「箱」の真実が知れ渡れば、ジオンを信奉するスペースノイドだけでなく、ジオンに反感を抱き連邦側についているスペースノイド達でさえも掌を返して連邦を倒す為に団結し、最悪の場合は「アースノイドとスペースノイドの二分化による真の意味での殲滅戦争」となってしまう可能性も否定出来なかった。戦争のダメージが色濃い今そんなことになれば、人類種そのものが確実に滅んでしまう。その危険があるからこそ、政府は何としても「箱」を隠し続けなければならなくなり、一年戦争の惨劇を繰り返さない為、「宇宙に適応した新人類」を旗頭とするスペースノイドの希望を砕く為、ニュータイプを否定しなければならなくなった。
もはやそこには連邦側にとっての利益や保身など関係は無いも同然で、ビスト財団や真実を知る者たちの既得権益を守るためだった癒着構造は「『戦争』という最悪な事態を回避し、どんな形であれ『平和』を維持していく為の必要悪である」と意味付けがなされ、ますます「呪い」が重くなっていったのである。
そして皮肉にも、連邦の象徴と言うべき[[ガンダムタイプ]]の乗り手達の多くは、政府が否定するしか無かったニュータイプとしての力を開花させていってしまう。「『ニュータイプ』と称されるジオンの思想と第七条碑文の正しさを証明し得る存在」に政府は振り回され続け、「ニュータイプが進化の可能性である」という事実を否定する為に「[[強化人間]]の研究」という更なる非道にも手を染めなければならなくなる等、「呪い」は重くなる一方であった。
そして皮肉にも、連邦の象徴と言うべき[[ガンダムタイプ]]の乗り手達の多くは、政府が否定するしか無かったニュータイプとしての力を開花させていってしまう。「『ニュータイプ』と称されるジオンの思想と第七条碑文の正しさを証明し得る存在」に政府は振り回され続け、「ニュータイプが進化の可能性である」という事実を否定する為に「[[強化人間]]の研究」という更なる非道にも手を染めなければならなくなる等、「呪い」は重くなる一方であった。