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サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑であり、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、[[スペースノイド]]後に言う[[ニュータイプ]]への権利を明文化した七番目の章立てが存在していた。これは、リカルド・マーセナス首相の[[暗殺]]が連邦政府内の極右派による自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)が、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備えてビスト財団を作り上げていた。
サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑であり、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、[[スペースノイド]]後に言う[[ニュータイプ]]への権利を明文化した七番目の章立てが存在していた。これは、リカルド・マーセナス首相の[[暗殺]]が連邦政府内の極右派による自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)が、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備えてビスト財団を作り上げていた。
なお、その第七章第十五条は将来現れる新人類に対して、(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではなく)「優先的に政府運営に参画させる」といういかようにもとれる条文であり、後述の箱の意味の変遷と合わせると、'''立案された当初から問題のある条文'''であるとも言える<ref>そもそも「新人類」の定義が明確ではないので恣意的に適用出来るとか、「新人類」が悪意を持つ存在だった場合の事を何も考えていないとか、細かな点においても問題が多い、と言うより'''問題外'''としか言いようがない。</ref>。しかし、この削除された条文は宇宙世紀という暦が始まる前の歴史の時点で逼塞しつつあった世界の中で、自分たちの子の、孫の、その後の子孫に何か遺してあげたい、という「善意」から端を発しているものであり、「人の行動は全て善意から発しているもの」という機動戦士ガンダムUCのテーマに沿ったものであり、お話の核心部分の秘密として相応しいものといえる。逆に言えば「善意から発した行動が、必ずしも正しいとは限らない」とも言え、実際にその善意は長年の腐敗や動乱を招き、それでいていざ公開されれば時代遅れとして切り捨てられ何の利益ももたらさないと言う、最悪の結果を招いている<ref>もっともこの辺りは、UC0096と言う時代を扱うに辺り、「F91やVなどの未来がすでに描かれているので、劇的に地球圏の体制を変革させるような、革新的な真相をもたせられない」と言うメタ的な事情もあったと言えるが。</ref>。
なお、その第七章第十五条は将来現れる新人類に対して、(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではなく)「優先的に政府運営に参画させる」といういかようにもとれる条文であり、後述の箱の意味の変遷と合わせると、'''立案された当初から問題のある条文'''であるとも言える<ref>そもそも「新人類」の定義が明確ではないので恣意的に適用出来る(政治家の都合の良い人間を「新人類」認定して政府運営に参画させられるなど)とか、「新人類」が悪意を持つ存在だった場合の事を何も考えていないとか、細かな点においても問題が多い、と言うより'''問題外'''としか言いようがない。</ref>。しかし、この削除された条文は宇宙世紀という暦が始まる前の歴史の時点で逼塞しつつあった世界の中で、自分たちの子の、孫の、その後の子孫に何か遺してあげたい、という「善意」から端を発しているものであり、「人の行動は全て善意から発しているもの」という機動戦士ガンダムUCのテーマに沿ったものであり、お話の核心部分の秘密として相応しいものといえる。逆に言えば「善意から発した行動が、必ずしも正しいとは限らない」とも言え、実際にその善意は長年の腐敗や動乱を招き、それでいていざ公開されれば時代遅れとして切り捨てられ何の利益ももたらさないと言う、害しかもたらさない結果を招いている<ref>もっともこの辺りは、UC0096と言う時代を扱うに辺り、「F91やVなどの未来がすでに描かれているので、劇的に地球圏の体制を変革させるような、革新的な真相をもたせられない」と言うメタ的な事情もあったと言えるが。</ref><ref>なお、結果としてはむしろ'''これでもまだマシ'''であり、下手な者の手に渡っていれば、一年戦争を遥かに上回る最悪の戦乱を招いていてもおかしくなかった。それこそシャア存命中の新生ネオ・ジオンなどはその筆頭であり、それが'''たった3年の差で'''時代遅れになってしまったと言うのも、ラプラスの箱を巡る皮肉であろう。</ref>。
=== 『箱』の意味の変遷 ===
=== 『箱』の意味の変遷 ===
ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、'''当時まだ存在していない[[ザク]]の群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景'''である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。
ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、'''当時まだ存在していない[[ザク]]の群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景'''である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。
物語のクライマックス、箱は遂に開かれ、地球圏の人々は真実を知ることとなる。だが、ローナン・マーセナスの「大衆は忘れやすいものだ。四、五年も経てば、『ラプラスの箱』のことなど誰も気にしなくなる」の発言にもあるように、[[機動戦士ガンダムNT]]の冒頭でも語られている通り世界は大きく変わらずであった。しかし、ラプラスの箱を巡る旅において、数多の人の意思に触れ、悪意を以って行く手を阻む[[フル・フロンタル]]を跳ね除け、刻を垣間見てこの後も地球圏は戦火に包まれるという暗澹たる事実を呑み込んだバナージは人の可能性を信じ続ける道を選んだ。
物語のクライマックス、箱は遂に開かれ、地球圏の人々は真実を知ることとなる。だが、ローナン・マーセナスの「大衆は忘れやすいものだ。四、五年も経てば、『ラプラスの箱』のことなど誰も気にしなくなる」の発言にもあるように、[[機動戦士ガンダムNT]]の冒頭でも語られている通り世界は大きく変わらずであった。しかし、ラプラスの箱を巡る旅において、数多の人の意思に触れ、悪意を以って行く手を阻む[[フル・フロンタル]]を跳ね除け、刻を垣間見てこの後も地球圏は戦火に包まれるという暗澹たる事実を呑み込んだバナージは、それでも人の可能性を信じ続ける道を選んだ。
== 登場作と扱われ方 ==
== 登場作と扱われ方 ==
多種多様な[[異星人]]や[[異世界]]からの来訪者が存在するスパロボの世界においては、スペースノイドの権利保障というだけでは価値が弱くなってしまう。そのため、『第3次Z』『BX』ではいずれも、原作同様の意味に加え「何かの重要な秘密」が付与されている。
多種多様な[[異星人]]や[[異世界]]からの来訪者が存在するスパロボの世界においては、スペースノイドの権利保障というだけでは価値が弱くなってしまう。そのため、『第3次Z』『BX』ではいずれも、原作同様の意味に加え「何かの重要な秘密」が付与されている。
ただ、原作ではむしろ「結局意味が無かった」と言う所が物語の核となっているので、その点では、[[スパロボ補正|大きく役割が変わっている]]と言えるだろう。
=== [[Zシリーズ]] ===
=== [[Zシリーズ]] ===
:実は、本作では碑文のほかに、「もう一つの箱」として、[[EXA-DB]](厳密にはその一部のコピー)にアクセスできる端末が入っていた。しかし、[[オードリー・バーン|ミネバ]]らがメガラニカでラプラスの箱を開示した事により、端末の機能は失われた。
:実は、本作では碑文のほかに、「もう一つの箱」として、[[EXA-DB]](厳密にはその一部のコピー)にアクセスできる端末が入っていた。しかし、[[オードリー・バーン|ミネバ]]らがメガラニカでラプラスの箱を開示した事により、端末の機能は失われた。
:その背景故、『ガンダムUC』決戦シナリオでは、[[ブライティクス|BX]]、[[袖付き]]、ヴェイガンによる三つ巴の箱争奪戦が勃発する事になる。
:その背景故、『ガンダムUC』決戦シナリオでは、[[ブライティクス|BX]]、[[袖付き]]、ヴェイガンによる三つ巴の箱争奪戦が勃発する事になる。
:また、[[ムネタケ・サダアキ]]が病んでしまった原因も、ラプラスの箱の正体発覚に絡んだ物となっている。
=== VXT三部作 ===
=== VXT三部作 ===