「ラプラスの箱」を編集中

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== 概要 ==
 
== 概要 ==
『機動戦士ガンダムUC』の鍵となる謎の物体。『箱』という名称からも箱型であるのは確かである。[[宇宙世紀]]0001年に起きた地球連邦政府の首相リカルド・マーセナスを始めとする多大な犠牲者を出したスペースコロニー「ラプラス」の爆破[[テロリスト|テロ]]である「[[ラプラス事件]]」で所在不明となった事が名称の由来となっている。現在はサイアムの元に秘匿されており、真実か否かは定かでは無いが「'''ラプラスの箱が開かれる時、[[地球連邦政府|連邦政府]]は滅びる'''」という噂がある。
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『機動戦士ガンダムUC』の鍵となる、箱型であると思われる謎の物体。
  
事件当時、テロの実行犯でもある青年…後の[[サイアム・ビスト]]は、仲間達と共に作業艇で撤退する中、証拠隠滅の為に仕掛けられた爆弾により仲間達全員が死亡。ただ一人、船外作業中であったサイアムだけは吹き飛ばされるだけで運良く生き延び、更にはコロニーの爆発で吹き飛んだ「箱」を偶然にも発見し、回収する。その後、裏社会で頭角を現していったサイアムは、ラプラス事件のテロを画策したリカルドの息子ジョルジュ・マーセナスを中心とした保守派勢力への交渉(正確には脅迫)に使う。
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[[宇宙世紀]]0001年に起きた爆破[[テロリスト|テロ]]「[[ラプラス事件]]」で所在不明となったが、生還者である[[サイアム・ビスト]]がこれを拾って交渉に使い[[ビスト財団]]を創立した。
  
「箱」はリカルド・マーセナス首相の[[暗殺]]が連邦政府内の極右派による自作自演である事を裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)為、当初は「箱」の奪回とサイアムの暗殺計画が何度も持ち上がったが、「箱」を手にしたサイアムの要求は連邦政府に些細な便宜を図らせる等、政府の存続自体に影響のない程度であった。その為、政府は「リスクを負ってでもサイアムを消す」よりも、「主導権を握られた共生関係を続けて様子を見る事」を選択。これによりサイアムは巧みに共生関係を築いていく事で、当時は田舎の新進企業に過ぎなかった[[アナハイム・エレクトロニクス]]社を急成長させていく。その功績によって、役員待遇でアナハイムに迎えられた後は専務の娘婿となってその地位を強固な物とし、やがてはアナハイムを苗床にして自らを首魁とする「[[ビスト財団]]」を立ち上げ、巨大化させていくまでに至った。
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いずこかに秘匿されており、「ラプラスの箱が開かれる時、[[地球連邦政府|連邦政府]]は滅びる」という噂がある。
 
 
一方、サイアムは「箱」を利用して上手く立ち回る事で、それを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し続け、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備える為にビスト財団を作り上げていた。そして、[[第2次ネオ・ジオン抗争]]が集結して3年後、機が熟したと判断したサイアムは「箱」を解放させる為の計画を実行に移し、これが後に「ラプラス戦争」と呼ばれる戦いの引き金となった。
 
  
 
=== 『箱』の正体と顛末 ===
 
=== 『箱』の正体と顛末 ===
 
その正体は、宇宙世紀元年を祝してセレモニーで公開されるはずだった、宇宙世紀憲章を認めた石碑。サイアムの眠る氷室を収めた航宙艦メガラニカに封印されている。
 
その正体は、宇宙世紀元年を祝してセレモニーで公開されるはずだった、宇宙世紀憲章を認めた石碑。サイアムの眠る氷室を収めた航宙艦メガラニカに封印されている。
  
サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑で、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、「七番目の章立て」が存在していた。その内容とは…
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サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑であり、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、[[スペースノイド]]後に言う[[ニュータイプ]]への権利を明文化した七番目の章立てが存在していた。これは、マーセナス首相の[[暗殺]]が連邦政府内の極右派による自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)が、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備えてビスト財団を作り上げていた。
  
:'''第七章 未来 第十五条'''
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なお、その第七章は将来現れる新人類に対して、(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではなく)「最優先的に政府運営に参加させる」というとんでもない条文で、見方を変えれば「'''旧人類を社会の中心から優先的に排除し、新人類を中心とした秩序とする事を『合法』として認める'''」という解釈になってしまう負の可能性を秘めていた。特に[[ギレン・ザビ]]の様に選民思想へ傾倒した独裁者の手に渡れば、スペースノイドによるアースノイドの殲滅を正当にし、[[南極条約]]でさえも完全に形骸化させた泥沼の殲滅戦争へと発展させてしまうこれ以上無いカードになり得る物だった為、「結果的には封印されて良かったのでは?」と言う印象は否めない。サイアムはその印象を利用して「封印されてよかった→これからも封印されなくてはならない→封印しているサイアムに便宜を図らなくてはならない」と言う形で利用していったのである。
:'''地球連邦は大きな期待と希望を込めて、人類の未来のため、以下の項目を準備するものとする。'''
 
:1.地球圏外の生物学的な緊急事態に備え、地球連邦は研究と準備を拡充するものとする。
 
:2.将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政治運営に参画させることとする。
 
  
「宇宙に適応した新人類」…つまりは「[[スペースノイド]]の中から生まれた[[ニュータイプ]]」への権利を明文化したと解釈出来るこれは、「'''将来現れる新人類に対して優先的に政府運営に参画させる(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではない)'''」というどうとでも都合良くとれる条文で、後述の箱の意味の変遷と合わせると、'''立案された当初から問題のある条文であった'''とも言える<ref>そもそもリカルドが勝手に決めた「新人類」の定義自体が曖昧なので、「幾らでも恣意的に適用出来る(宇宙進出を果たしたスペースノイド全体や政治家の都合の良い人間を「新人類」認定して政府運営に参画させられる等)」、「『新人類』が悪意を持つ存在だった場合の事を何も考えていない」等、細かな点においても問題が多い。それ以前に「客観的に見れば、内容自体が'''特定の存在を優遇するという極右思想の現れ'''であり'''問題外'''」としか言いようがない。</ref>。しかし、この削除された条文は宇宙世紀という暦が始まる前の歴史の時点で逼塞しつつあった世界の中で、「自分達の子の、孫の、その後の子孫に何か遺してあげたい」という「善意」から端を発しているものであり、「人の行動は全て善意から発しているもの」という機動戦士ガンダムUCのテーマに沿ったものであり、お話の核心部分の秘密として相応しいものといえる。
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=== ジオンの台頭 ===
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しかし、のちにジオン・ズム・ダイクンによって「宇宙に出た人間は、進化しうる」というジオニズム思想が世に出たことにより、スペースノイドの権利と政治への優先的介入を明記した「箱」の第七章碑文が、連邦政府にとって噂の域を超えた本物のタブーとなってしまったことで全てが狂い始める。もし「箱」の存在がジオニズム信奉者達に知れれば、彼らはその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然であり、それを拒む連邦との間で激しい衝突が起こることもまた火を見るよりも明らかであった。そのため連邦政府は、真実を隠匿し続けた(このため、「箱を封じた」という事実自体が重みを帯びるようになった)。さらにサイアムはそれを利用し、自らが「箱」を保持しているという事実を以て政府を脅迫した。
  
だが、逆に言えばリカルドの行いは、「『善意』から発した行動が必ずしも『正しい』とは限らない」とも言え、実際にその善意は長年の腐敗や動乱を招き、公開されようとした時には「箱」を利用しようとした『[[袖付き]]』を中心とする[[ジオン残党軍]]や「箱」の開放を恐れた連邦政府、アナハイムの首脳陣達が総じて暴走し、[[バナージ・リンクス]]を始めとした戦争とは無縁であったはずの若者達までもが巻き込まれ、理不尽に殺される者達までもが出てしまった。それでいざ公開されれば、「時代遅れ」として切り捨てられ何の利益ももたらさないと言う顛末が待っていただけで、結局は害しかもたらさなかったという事実だけを残す事となっている<ref>もっともこの辺りは、U.C.0096と言う時代を扱うに辺り、「F91やVなどの未来がすでに描かれているので、劇的に地球圏の体制を変革させるような、革新的な真相をもたせられない」と言うメタ的な事情もあったと言えるが。</ref><ref>なお、結果としてはむしろ'''これでもまだマシ'''であり、下手な者の手に渡っていれば、一年戦争を遥かに上回る最悪の戦乱を招いていてもおかしくなかった。それこそシャア存命中の新生ネオ・ジオンなどはその筆頭であり、それが'''たった3年の差で'''時代遅れになってしまったと言うのも、ラプラスの箱を巡る皮肉であろう。</ref>。それどころか、ラプラス戦争の終結後は、'''何の価値も無くなっていったラプラスの箱よりも、箱に関する秘密を守る為の「鍵」に過ぎなかったユニコーンガンダム自体の方が「シンギュラリティ・ワン」と呼称されて危険視される事になる'''というとことん皮肉な末路を迎える事になっている。
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だが、彼の要求は資金などの政府の存続に影響のないレベルに終始しており、さらに政治工作により「箱」そのものの意味を自らから遠ざけた結果、サイアムの立ち上げたビスト財団を潰しても「箱」の秘密も所在もわからないまま、という状態が成立。この結果、「箱」=宇宙世紀憲章の石碑という単純な真相が世に出ることのないまま、サイアムの存在からその(政府にとっての)危険性だけが一人歩きし、ある種の都市伝説として広まっていくことになった。
 
 
ともあれ、この第七条碑文はその内容の問題外っぷりを抜きにしても、将来的に自分たちの権利を「棄民」に譲り渡す可能性を秘めているという意味で、将来的にそれらを受け継ぐ世代の権益を脅かす物であるのは間違いなかった。この為、ジョルジュを始めとする保守派によって自作自演のラプラス事件が発生した訳だが、サイアムが生き残り「箱」を確保してしまったという全くの想定外の事態が発生した事で、リカルドの後を引き継いだジョルジュ政権にとって彼と「箱」の存在が最悪の脅迫状と化すことになった。
 
 
 
=== 『箱』の意味の変遷 ===
 
サイアムが回収し脅迫に利用した「箱」の持つ力は、「リカルドの暗殺が息子のジョルジュを中心とする政権による陰謀だった」というかつての連邦首脳陣に関する一大スキャンダルが暴露される程度の物でしかなかった。レプリカにはない第七条碑文の存在は、時が経って当事者がこの世を去ってしまえば「だいぶ前の政権が起こした事件の遺物」でしかなくなり、だからこそ時と共に風化し、徐々に「箱」の価値を失われていくはずだった。
 
 
 
だが、ジオン・ズム・ダイクンによって「宇宙に出た人間は、進化しうるといい、棄民たるスペースノイドこそがその魁である」というニュータイプ論、すなわち「宇宙に適応した新人類」の仮説が世に出た事、そしてそれによりスペースノイドの独立運動と合流し「ジオニズム」という新たな主義を生み出された事で全てが変わってしまう事態となった。「新人類」の権利と政治への優先的介入を明記した「箱」の第七章碑文だが、この「宇宙に適応した新人類」というセンテンスが、よりによって反連邦のリーダーであるジオンその人によって唱えられた「ニュータイプ」と「最悪な偶然」という形で一致してしまった事で、'''「地球連邦はジオニズムと同じ思想を持ち、新人類の発生を予見した上で、それを秘匿・否定していた」という事実が後付けで発生してしまったのである'''(わかりやすく言うと「'''連邦政府はスペースノイドの権利を認めるつもりが最初から無かったんじゃないか'''」という疑惑に強固な裏付けを与えてしまうのである)。
 
 
 
もし「箱」の存在がジオニズム信奉者達に知れれば、彼等はその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然で、それを拒む連邦との間で激しい衝突が起こることも予想された。<ref>もっとも仮に秘匿されず正式に発表されていたとしても、ジオニズムが唱えられ広まった時点で同じ問題が発生するのは明らかである。</ref>何よりも「存在を知りながら隠し続けた」という事実が、「連邦の政治的・思想的な不正義を証明する口実」として使われる(「箱」の内容の文章が、連邦政府の首脳が法的な手続きや議会・世論の了承を完全に無視して記したという「事実上の越権行為」である事を無視される形で)のは明白であった為、連邦政府は沈黙し、秘匿し続けるしか道がなかった。当のニュータイプ論を唱えていたジオン・ズム・ダイクン自身も「新人類」としてのニュータイプなど信じてはいなかった<ref>デギン、ギレンの親子双方からは「ジオンはあくまでもアジテーターでしかなく、政治的に理想を実現させる人物ではなかった」と見做され、息子であるキャスバル(シャア)でさえも、父・ジオンの語ったニュータイプ論はあくまでもサイド3という僻地に移民させられたスペースノイドの拠り所を持たせる為の方便で、「本質的にはダイクンの自己欺瞞に過ぎない」という真実を看破されてしまっている。</ref>が、それ故の「『中身のないテーゼ』が『中身のない疑惑』を強める」という意味の分からない状況を作ってしまったのである。
 
 
 
リカルドらの残した「祈り」は、この時点で平穏を破壊する「呪い」にでしか無くなり、もはや「箱」そのものではなく「箱」を封じたという事実の方が重くなってしまっていた。更にサイアムが政治工作により「箱」その物の意味を自らから遠ざけた結果、「サイアムの立ち上げたビスト財団を潰しても『箱』の秘密も所在も全く分からないまま」という状態が成立。この結果、「『箱』=宇宙世紀憲章の石碑」という単純な真相が世に出る事のないまま、サイアムの存在からその(政府にとっての)危険性だけが一人歩きしていき、ある種の都市伝説として広まっていくことになった。
 
 
 
そもそも、ニュータイプと呼ばれる事になった者達の本質は、身も蓋もない事を言えば「直感力や洞察力が他の人間に比べて高度に備わっていて、[[サイコミュ|その脳波を利用したシステム]]を使える特殊能力を持った人間」でしかなく、ジオン・ズム・ダイクンが提唱した「宇宙に適応した新人類」とされるニュータイプと同一である根拠など全く無かった。ただ単に、ダイクンの唱えたニュータイプの概念が、特殊能力に目覚めた人間達と「何となく一致している様に見えた」という単純な理由から、ダイクン本人の死後に世論が勝手に彼等を「ニュータイプ」であると定義しただけでしか無いのだが、「ニュータイプ」と呼ばれる様になった彼等の起こした「奇跡」とも解釈出来る光景から、世論…特にスペースノイドの多くは彼等を「ニュータイプ」であると断じて疑わない主張をし続け、遂には地球連邦側も「ニュータイプ」と呼ばれる者達を「宇宙に適応した新人類」の存在を認めざるを得なくなる。
 
 
 
しかし、今「箱」の真実が知れ渡れば、ジオンを信奉するスペースノイドだけでなく、ジオンに反感を抱き連邦側についているスペースノイド達でさえも掌を返して連邦を倒す為に団結し、'''最悪の場合は「アースノイドとスペースノイドの二分化による真の意味での殲滅戦争」となってしまう可能性'''も否定出来なかった。戦争のダメージが色濃い今そんなことになれば、人類種そのものが確実に滅んでしまう。その危険があるからこそ、政府は何としても「箱」を隠し続けなければならなくなり、一年戦争の惨劇を繰り返さない為、「宇宙に適応した新人類」を旗頭とするスペースノイドの希望を砕く為、ニュータイプを否定しなければならなくなった。もはやそこには連邦側にとっての利益や保身など関係は無いも同然で、ビスト財団や真実を知る者たちの既得権益を守るためだった癒着構造は「『戦争』という最悪な事態を回避し、どんな形であれ『平和』を維持していく為の必要悪である」と意味付けがなされ、ますます「呪い」が重くなっていったのである。
 
 
 
そして皮肉にも、連邦の象徴と言うべき[[ガンダムタイプ]]の乗り手達の多くは、政府が否定するしか無かったニュータイプとしての力を開花させていってしまう。「『ニュータイプ』と称されるジオンの思想と第七条碑文の正しさを証明し得る存在」に政府は振り回され続け、「ニュータイプが進化の可能性である」という事実を否定する為に「[[強化人間]]の研究」という更なる非道にも手を染めなければならなくなる等、「呪い」は重くなる一方であった。
 
 
 
だが、政府は最終的にこの「呪い」にケリをつけるべく、人工ニュータイプとガンダムを用いてジオニズムとニュータイプを根絶する計画を始動。これにサイアムが相乗りし、「箱」の開放を決断したことで、ラプラスの箱を巡る最後の戦いが始まったのである。
 
  
 
=== ラプラス戦争 ===
 
=== ラプラス戦争 ===
そもそもビスト財団とは、「いつか来るべき『箱』の開放の時までそれを守る」ために作られた組織である。
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宇宙世紀0096年、「シャアの反乱」の終結と、それに伴う[[ネオ・ジオン]]総帥[[シャア・アズナブル]]の戦死により、ジオンは反連邦勢力としての力を失う。生きながらえていたサイアムはこれを期に、連邦政府の絶対的統治のもとに人類が逼塞する危機を憂えて財団本来の目的である「箱」の開放を決断。孫のカーディアスにこの任務を通達する。カーディアスは「箱」をネオ・ジオンの残党に譲渡しようとしたが、この時彼は連邦軍再編計画と銘打たれたニュータイプ殲滅計画「UC計画」のフラグシップ機である[[ユニコーンガンダム]]を利用することを考案。ユニコーンの真の力である「ニュータイプ・デストロイヤー・システム」の中枢に細工を施し、特定の場所でシステムが起動するたび「箱」のありかへと少しずつ搭乗者を導いていく仕掛け「ラプラス・プログラム」をインストールした。
 
 
宇宙世紀0096年、「シャアの反乱」の終結と、それに伴う[[ネオ・ジオン]]総帥[[シャア・アズナブル]]の戦死により、ジオンは反連邦勢力としての力を失う。
 
 
 
生きながらえていたサイアムはこれを期に、財団本来の目的である「箱」の開放を決断。孫のカーディアスにこの任務を通達する。
 
 
 
サイアム個人としてはここまで「箱」を秘匿し続けたことへの贖罪という個人的な理由が大きかったが、カーディアスは祖父の意向とは別に、ニュータイプという言葉自体が形骸化し、ジオンも衰退し、連邦政府によって統一支配が完成しようとしていたこの時期、人類が逼塞する危機を憂えていたことでこれに賛同。「箱」をネオ・ジオンの残党に譲渡しようとしたが、この時彼は連邦軍再編計画と銘打たれたニュータイプ殲滅計画「UC計画」のフラグシップ機である[[ユニコーンガンダム]]を利用することを考案。
 
 
 
ユニコーンの真の力である「ニュータイプ・デストロイヤー・システム」の中枢に細工を施し、特定の場所でシステムが起動するたび「箱」のありかへと少しずつ搭乗者を導いていく仕掛け「ラプラス・プログラム」をインストールした。「箱」を巡る歴史を学ばせ、その重みを知る者に、「箱」を開くか隠すかを委ねる「宝の地図と鍵」を用意したのである。だがこの時期のネオ・ジオン残党は既にフル・フロンタルという「赤い彗星の幻影」にすがって何とか組織として成立しているボロボロの状態であり、フロンタル自身も端的に言えばビスト財団に代わって「箱」を保有し、政府から便宜を引き出す道具にするつもりでいた(カーディアスもむろんその可能性は承知しており、ジンネマンに対して「『箱』に相応しい乗り手でなければユニコーンは場所を開示しない」と警告している)。
 
  
だが、この計画を嗅ぎ付けた[[マーサ・ビスト・カーバイン]]は甥の[[アルベルト・ビスト]]を通じ、「箱」を受け取るべくインダストリアル7を訪れたガランシェール隊を、[[ロンド・ベル隊]]を動かして強襲させる。政府にとってもこの一件は、サイアムと「箱」を同時に消し去る千載一遇の機会であったのだ。
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だが、この計画を嗅ぎ付けた[[マーサ・ビスト・カーバイン]]は甥の[[アルベルト・ビスト]]を通じ、「箱」を受け取るべくインダストリアル7を訪れたガランシェール隊を、[[地球連邦軍|連邦軍]]を動かして強襲させる。混乱の中でカーディアスは死亡したが、ユニコーンガンダムは数奇な偶然を経て彼の妾腹の息子、[[バナージ・リンクス]]が受領し、戦火に身を投じる。その後、紆余曲折を経て氷室へとたどり着いたバナージとミネバに対し、サイアムは「箱」の真実と己が元年に見た幻の意味、そして進化を続けてきた人間の可能性を語りつくして落命。「箱」の真実は[[ミネバ・ラオ・ザビ]]により、世界に公表された。
ユニコーンの譲渡は失敗に終わり、混乱の中でカーディアスは死亡したが、ユニコーンガンダムは数奇な偶然を経て彼の息子、[[バナージ・リンクス]]が受領。「箱」を消し去りたい政府、「箱」を手に入れたい袖付き、両者を阻止し癒着を続けようとするマーサ、三者の思惑が絡み合う中、短い戦火に身を投じる。その後、紆余曲折を経て氷室へとたどり着いたバナージとミネバに対し、サイアムは「箱」の真実と己が元年に見た幻の意味、そして進化を続けてきた人間の可能性を語りつくして落命。「箱」の真実は[[ミネバ・ラオ・ザビ]]により、世界に公表された。
 
  
 
ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、'''当時まだ存在していない[[ザク]]の群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景'''である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。
 
ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、'''当時まだ存在していない[[ザク]]の群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景'''である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。
  
物語のクライマックス、箱は遂に開かれ、地球圏の人々は真実を知ることとなる。だが、ローナン・マーセナスの「大衆は忘れやすいものだ。四、五年も経てば、『ラプラスの箱』のことなど誰も気にしなくなる」の発言にもあるように、[[機動戦士ガンダムNT]]の冒頭でも語られている通り世界は大きく変わらずであった。
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=== 箱の開放による影響 ===
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ラプラス戦争の終結直後、ラプラスの箱の内容について公表された結果、世界に大きな影響を与えると思われていたが、実際はサイアムの思惑とは裏腹に、'''各コロニーのワイドショーの題材として取り上げられる程度'''の影響しかなく、箱の開放から二ヶ月もしない内に事態は終息を迎える事になってしまった。
  
第七条碑文が示す「新人類への参政権の約束」、そして「リカルド首相暗殺の真相」は、この時代にはもはや過去のスキャンダル以上のものではなかった。そもそも前者に至っては、「箱」が秘匿され続けた100年の間に、スペースノイド達が自らの力で政治に参加し、企業を立ち上げ、それを連邦が受け入れ、社会の中でゆるぎない地位を勝ち取ったことで自然と達成されていた。「新人類」という希望に頼らずとも、今を変えたいと思う者はその志を以て前に進める、そんな社会が既にあった。'''棄民であるスペースノイドには希望が必要と言う思想自体が、とっくに過去のものだったのである。'''時間の経過に伴う社会の変化は「祈り」を呪いに変えて政府を縛り続けたが、それを横目に「祈り」があっさりと叶えられるという皮肉な構図が出来上がっていたのだ。
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宇宙世紀にてジオニズムが台頭し始めた時代としては、戦争の引き金になりかねない危険な代物と言えるラプラスの箱ではあったものの、それから数十年間もの間、スペースノイドの独立を求めた戦争や紛争が度重なる形で起こるのと同時に多大な犠牲や深刻な不況が発生し、第二次ネオ・ジオン抗争が終結した頃には、世代がほぼ代わった事もあってか、アースノイドだけでなくスペースノイドの大半の中にもすっかり厭戦意識が高まっていた。更に言ってしまえば、スペースノイドの中にはジオニズムそのものに対し懐疑的に見る者や興味すら持たない者も増えており、「スペースノイドの独立や戦争云々よりも自分達の生活の方が大事」という考えが中心になっていた結果、サイアムが隠し通し、連邦が恐れ、そして[[フル・フロンタル]]やモナハン・バハロが手に入れようとしたラプラスの箱の内容は、もはや'''「今更」な代物'''でしかなくなっていたのである。
  
とは言ってもスキャンダルには違いなく、公表者が過激な思想に走っていればまたしても新たな動乱が起きていた可能性はある。その意味ではもっとも平穏に、穏便に、無意味になるよう発表したミネバの狙い通りだったと言える。その一方、「箱」とは全く関係なく変革した社会だからこそ、その「祈り」が与える影響もまた小さなものであり、バナージが見た「刻の涙」のごとく、地球圏を襲う戦火はこの後も途絶えることはなかった。
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ジオン・ズム・ダイクンの遺児であるシャア(キャスバル・レム・ダイクン)がネオ・ジオンの指導者となっていた時期こそが、スペースノイドの独立を求める気運のピークであった言え、事実その後のネオ・ジオンは烏合の衆と化し、フロンタルというシャアの代用品を用意しなければならない程求心力を失っており、フロンタルでさえ失われた後は、殆ど打開策の無いまま宇宙世紀0100年を迎え、ジオン共和国の自治権放棄へと繋がっている。また、既に風化しきっていた内容の記されたラプラスの箱よりも、箱を解放する為の『鍵』に過ぎなかった[[ユニコーンガンダム|ユニコーンガンダムタイプ]]のモビルスーツの方が『'''シンギュラリティ・ワン(技術的特異点)'''』と認定され、大きな注目を浴びる事になったのも皮肉過ぎる話だった。
  
しかし、ラプラスの箱を巡る旅において、数多の人の意思に触れ、悪意を以って行く手を阻む[[フル・フロンタル]]を跳ね除け、終わらぬ戦火という暗澹たる事実を呑み込んだバナージは、「それでも」人の可能性を信じ続ける道を選んだ。
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しかし一方で、[[機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ|それに]][[機動戦士ガンダムF90|よって]][[機動戦士ガンダムF91|戦火が]][[機動戦士クロスボーン・ガンダム|収まる]][[機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人|ことが]][[機動戦士Vガンダム|なかった]]のも確かで、また「それでも」人々の心に「希望という光」が僅かながらも灯ったことをバナージが感じ取ったところで、「ガンダムUC」の物語は終わっている。
  
== 登場作と扱われ方 ==
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== 登場作品と扱われ方 ==
多種多様な[[異星人]]や[[異世界]]からの来訪者が存在するスパロボの世界においては、スペースノイドの権利保障というだけでは価値が弱くなってしまう。そのため、スパロボではいずれの作品においても、原作同様の意味に加え「何かの重要な秘密」が付与されている。
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多種多様な[[異星人]]や[[異世界]]からの来訪者が存在するスパロボの世界においては、スペースノイドの権利保障というだけでは価値が弱くなってしまう。そのため、『第3次Z』『BX』ではいずれも、原作同様の意味に加え「何かの重要な秘密」が付与されている。
ただ、原作ではむしろ「結局意味が無かった」と言う所が物語の核となっているので、その点では、[[スパロボ補正|大きく役割が変わっている]]と言えるだろう。
 
  
 
=== [[Zシリーズ]] ===
 
=== [[Zシリーズ]] ===
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:実は、本作では碑文のほかに、「もう一つの箱」として、[[EXA-DB]](厳密にはその一部のコピー)にアクセスできる端末が入っていた。しかし、[[オードリー・バーン|ミネバ]]らがメガラニカでラプラスの箱を開示した事により、端末の機能は失われた。
 
:実は、本作では碑文のほかに、「もう一つの箱」として、[[EXA-DB]](厳密にはその一部のコピー)にアクセスできる端末が入っていた。しかし、[[オードリー・バーン|ミネバ]]らがメガラニカでラプラスの箱を開示した事により、端末の機能は失われた。
 
:その背景故、『ガンダムUC』決戦シナリオでは、[[ブライティクス|BX]]、[[袖付き]]、ヴェイガンによる三つ巴の箱争奪戦が勃発する事になる。
 
:その背景故、『ガンダムUC』決戦シナリオでは、[[ブライティクス|BX]]、[[袖付き]]、ヴェイガンによる三つ巴の箱争奪戦が勃発する事になる。
:また、[[ムネタケ・サダアキ]]が病んでしまった原因も、ラプラスの箱の正体発覚に絡んだ物となっている。
 
  
 
=== VXT三部作 ===
 
=== VXT三部作 ===
93行目: 60行目:
 
:また、サイアムは生前の[[シャア・アズナブル|シャア]]に一度は箱を託したものの、過去に囚われることを拒否し、自らの力で未来を拓こうとしたシャアは箱を解放しないままであった。そして、バナージとミネバ、そしてフロンタルの3人もまた、アースノイドとスペースノイドの戦いを自分達の手で終わらせることを誓い、'''箱の真実は世界に伝えられることなく'''そのままサイアムと共に歴史の影に消えていった。
 
:また、サイアムは生前の[[シャア・アズナブル|シャア]]に一度は箱を託したものの、過去に囚われることを拒否し、自らの力で未来を拓こうとしたシャアは箱を解放しないままであった。そして、バナージとミネバ、そしてフロンタルの3人もまた、アースノイドとスペースノイドの戦いを自分達の手で終わらせることを誓い、'''箱の真実は世界に伝えられることなく'''そのままサイアムと共に歴史の影に消えていった。
 
:なお、[[世界観/V#宇宙世紀世界|宇宙世紀世界]]と同様の起源を持つ[[世界観/V#新正暦世界|新正暦世界]]にもラプラスの箱は存在したものの、その公開を恐れた連邦政府の情報操作により、「'''空白の10年'''」と呼ばれる動乱の時代を生み出すこととなった。
 
:なお、[[世界観/V#宇宙世紀世界|宇宙世紀世界]]と同様の起源を持つ[[世界観/V#新正暦世界|新正暦世界]]にもラプラスの箱は存在したものの、その公開を恐れた連邦政府の情報操作により、「'''空白の10年'''」と呼ばれる動乱の時代を生み出すこととなった。
 
=== 単独作品 ===
 
;[[スーパーロボット大戦DD]]
 
:箱の正体については原作と同じ。複数の並行世界がゲートで繋がった本作ではサイアムとアムロが「もう事はこの世界だけでは済まない」という発言をしており、原作以上に意味の無い代物になっているような印象を受ける。
 
;[[スーパーロボット大戦30]]
 
:『NT』が参戦している関係で、本編開始以前に既に開示されている。その影響で地球連邦の信頼がガタ落ちし、[[ザンスカール帝国]]の台頭を許した。
 
:一般社会では箱を巡る一件は「ラプラスの箱騒動」とも呼ばれ、ネット上ではその裏に存在した「[[ユニコーンガンダム|白いモビルスーツ]]」の噂がまことしやかに囁かれている。
 
:本作では箱の開示は[[クエスターズ]]による干渉があったとされる。[[ゼロレクイエム]]と[[アクシズ|人の心の光]]によって人類は平和を手に入れたが、それが永遠に続くかどうかを実験するためにクエスターズはラプラスの箱の開示を促した。[[カーディアス・ビスト|箱の管理者]]は過去に目を背けては真の平和を掴むことは出来ないと考え、あえてそれに乗ることにした。
 
:箱の開示によって再び人類同士が起こったものの、[[エンジェル・ハイロゥ]]が新たな人の心の光となったことで地球人類は再び平和な未来に向けて進み始めた。
 
  
 
== 関連用語 ==
 
== 関連用語 ==
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;[[ラプラス (組織)]]
 
;[[ラプラス (組織)]]
 
:『[[スーパーロボット大戦V|V]]』に登場する組織。スペースノイドとアースノイドの戦いを平和的に終わらせる方法を模索しており、そのための鍵となるラプラスの箱の名を冠している。
 
:『[[スーパーロボット大戦V|V]]』に登場する組織。スペースノイドとアースノイドの戦いを平和的に終わらせる方法を模索しており、そのための鍵となるラプラスの箱の名を冠している。
 
== 余談 ==
 
*カードゲーム『[[バトルスピリッツ ブレイヴ|バトルスピリッツ]]』では、ガンダムシリーズとのコラボレーションによりラプラスの箱の正体である「宇宙世紀憲章」がカード化された。ところが2024年3月30日に「宇宙世紀憲章」のカードはコラボレーション商品にもかかわらず'''使用禁止カード'''となってしまう<ref>[https://x.com/bs_official/status/1766051511388532841 バトルスピリッツ公式の2024年3月8日のポスト]より。</ref>。しかし原作での経緯が経緯のため、'''禁止されたことで寧ろ原作に近くなる'''という珍事が発生した。
 
  
 
== 資料リンク ==
 
== 資料リンク ==
*[[GUNDAM:ラプラスの箱]]
+
*[[GUNDAM:ラプラスの箱‎]]
 
 
== 脚注 ==
 
<references />
 
  
 
{{ガンダムシリーズ}}
 
{{ガンダムシリーズ}}

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