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<!-- 彼自身が創作キャラクターとして大人気なので、経歴や考察に関する事は様々なメディアで発表されている。ここでは'''必要最小限'''の記述に止める。 -->
 
<!-- 彼自身が創作キャラクターとして大人気なので、経歴や考察に関する事は様々なメディアで発表されている。ここでは'''必要最小限'''の記述に止める。 -->
 
==概要==
 
==概要==
「'''[[赤い彗星]]'''」の異名を持つ、[[一年戦争]]時より[[ジオン公国軍]]で活躍し続け、生きた伝説と化したエースパイロット。
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「'''[[赤い彗星]]'''」の異名を持つ、[[一年戦争]]時より[[ジオン公国軍]]で活躍し続け、生きた伝説と化したエースパイロット。本名は'''キャスバル・レム・ダイクン'''。
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一年戦争から7年後に'''クワトロ・バジーナ'''を名乗って[[エゥーゴ]]の指導者として[[グリプス戦役]]でティターンズに致命的なダメージを与えて行方を眩ませ、6年後に[[ネオ・ジオン]]の総帥となってシャアの反乱([[第2次ネオ・ジオン抗争|第2次ネオ・ジオン抗争)]]を引き起こし、自らの最大の宿敵・[[アムロ・レイ]]との壮絶な戦いを繰り広げた。
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スペースノイド独立運動の指導者であるジオン・ズム・ダイクンの長男として生まれた。妹は[[セイラ・マス|アルテイシア・ソム・ダイクン]]
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その正体は、かつて[[スペースノイド]]の解放を説いたジオン・ズム・ダイクンの長男で、本名は'''キャスバル・レム・ダイクン'''
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一年戦争から7年後に'''クワトロ・バジーナ'''を名乗って[[エゥーゴ]]の指導者として[[グリプス戦役]]でティターンズに致命的な損害を与えて行方を眩ませ、6年後に[[ネオ・ジオン]]の総帥となってシャアの反乱([[第2次ネオ・ジオン抗争|第2次ネオ・ジオン抗争)]]を引き起こし、最大の宿敵・[[アムロ・レイ]]との壮絶な戦いを繰り広げた。
    
=== 人物 ===
 
=== 人物 ===
スペースノイド独立運動の指導者であるジオン・ズム・ダイクンの長男として生まれた。妹は[[セイラ・マス|アルテイシア・ソム・ダイクン]]
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基本的に冷静沈着で、何事においても紳士的に対応出来る大人びた人物。ジオン公国軍軍人として活躍していた時期より、パイロットとしての高度な操縦技能だけでなく、指揮官としても高い状況判断能力を持ち合わせ、彼の元で戦う者の多くが忠実に従おうとする程の絶大な人望も備える等、非の打ち所の無い程のカリスマ的存在で、軍人としての階級も20代前半という若さで大佐の地位にまで上り詰めている<ref>同じく20代前半の身で「大佐」の階級にまで上り詰めたのは、同軍ではザビ家の血を引くガルマだけであった。</ref>。
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一年戦争の終盤では、戦闘者としての[[ニュータイプ]]に目覚め、戦場で優れた把握能力を発揮するようになり、赤い彗星という異名の影響力も合わせて、ジオンだけでなく敵対していた連邦側にとっても、無視出来ない物となっている。
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それから七年が経ったグリプス戦役では、地球連邦政府の[[ダカール]]にある議会を武力で占拠するなど過激なテロリズムを成功させ、その際の演説で正規軍である[[ティターンズ]]を支持していた世論を、反乱軍である[[エゥーゴ]]へと傾けるなど歴史を大きく動かす程であった。[[ハマーン・カーン]]と[[グレミー・トト]]を失い、ネオ・ジオンを再編したのもシャアというカリスマ的存在がいたからであった。
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一方で、ジオン公国軍に所属していた当時は、自らの悲願であった「父を奪った[[ザビ家]]への復讐」の為ならば手段を選ばず、親友として気を許していた[[ガルマ・ザビ]]であっても「復讐」の対象の一人として謀殺する等、狡猾さや冷徹さを見せる事もあった<ref>復讐の最初の対象としてガルマに矛先を向けたのは、本当に友情を感じていた彼を殺せない事で、復讐心を失う事を恐れたのも理由の一つとなっている。</ref>。しかし、決して人の心を失っていた訳では無く、実際にザビ家の血を引いていながらも、まだ幼かった[[ドズル・ザビ]]の遺児である[[ミネバ・ラオ・ザビ]]に対しては、手に掛けようとしないどころか、むしろ彼女が一人の少女として幸せになる事を願っており、それ故に[[ハマーン・カーン]]の傀儡として利用されている姿を目の当たりにした際は、普段とは打って変わって激昂し、冷静さを失っていた程。
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あらゆる面で優れた能力を持っている反面、その内側には精神的な脆さも秘めており、自分をニュータイプとして導いてくれる母性的愛情や安らぎを女性に求めている部分があり、[[ララァ・スン]]や[[ナナイ・ミゲル]]を除いて、プライベートでその事を打ち明けることはなかった。自分を導くはずだった母性ララァ・スンを失ったことは、アムロ・レイとの決戦においても未だに忘れがたい悔恨となるのであった。
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指導者ジオン・ズム・ダイクンの息子であるのを理由に、[[カイ・シデン]]などからは一方的に政治家になるよう期待を押し付けられるのは、「一人の戦士」として戦場を疾駆したいと願うシャアにとって、精神的に大きな重圧となっていた。エゥーゴ時代の『[[機動戦士Ζガンダム|Ζガンダム]]』では、コロニー内でMS戦をしでかして警察に連行されたり、自販機でコーラを買って飲んだり、「嫁さんも貰えない」と自嘲していたり、戦艦の艦長をしていた1stや組織の首魁となった[[CCA]]での姿とかけ離れた自由な行動をしており、劇場版では更に自分の分のケーキがないかと気にしたり、[[エマ・シーン]]を口説こうとするヘンケンを羨ましがったりもしている。
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ジオン・ズム・ダイクンの遺児ではあるが、人類が変わるべきタイプと言われる新人類ニュータイプに関して、当初はララァ・スンに言ったように「戦争が生み出した人類の悲しき変種」とネガティブなイメージを持っていた。やがて自分の命を脅かす最強のパイロットであるアムロ・レイと戦う内に思想が変化し、ア・バオア・クーでは「ジオンなき後はニュータイプの時代だ」とこれからの時代の変革を予感するに至る。以降、「'''人類の革新ニュータイプ'''」という概念を模索していくようになった。
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多才な人間であり、モビルスーツの操縦技術、作戦指揮能力、潜伏力(アクシズにいたハマーンですら彼を見つけられなかった)、政治手腕、カリスマ性、演説による民衆の扇動能力の高さは優れたものであり、これらは『逆襲のシャア』を視聴すれば大よそ分かる。しかし、それもシャアにとって能力の一端でしかなく、『アニメック』1986年5月号のインタビューで、シャアの生みの親の一人である富野由悠季は「けれども色々な事があった末にシャアが”悩む”と言う事から脱っしてしまったとしたら、彼は途方も無く強いでしょう。どれだけ強いか、と言うとそれこそ物語があっという間、『ZZ』なんかは5本もいらずに終わってしまうでしょうね。もう狡猾な手段なんかは使わないでやれてしまう位、強いでしょうね。まず、アムロなんかは、何も知る前に殺されてしまうでしょうね。それ程、強いです。」と狡猾な手段を取らない本気を出したシャアの強さと恐ろしさを解説している。
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結局、シャア・アズナブルはその潔癖さゆえに、悩むことを脱することはなく生涯を終えた。
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基本的に冷静沈着で、何事においても紳士的に対応出来る大人びた人物。ジオン公国軍軍人として活躍していた時期より、パイロットとしての高度な操縦技能だけでなく、指揮官としても高い状況判断能力を持ち合わせ、彼の元で戦う者の多くが忠実に従おうとする程の絶大な人望も備える等、非の打ち所の無い程のカリスマ的存在で、軍人としての階級も20代前半という若さで大佐の地位にまで上り詰めている<ref>同じく20代前半の身で「大佐」の階級にまで上り詰めたのは、ザビ家の血を引くガルマだけであった。</ref>。そして一年戦争の終盤では、[[ニュータイプ]]としても優れた潜在能力を発揮するようになり、ジオン・ズム・ダイクンの遺児という点を除いても、その影響力はジオンだけでなく敵対していた連邦側にとっても、無視出来ない物となっている<ref>事実、[[ダカール]]の演説では、[[エゥーゴ]][[ティターンズ]]の対立構造を大きく覆す事態へと歴史を動かし、シャアが消息不明になった3年後となる『[[機動戦士ガンダムUC|ラプラス事変]]』時はに至っては、ネオ・ジオンという組織を維持させる為に、ジオン共和国の首相であるモナハン・バハロがシャアを模した強化人間である[[フル・フロンタル]]を用意した程である。</ref>。
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パイロット(ニュータイプ)、政治家、指導者、それぞれの面で非常に高い能力と才能を発揮しているシャアであるが、彼を象徴する最大の特徴として挙げられるのが、[[アムロ・レイ]]をして「貴様もニュータイプだろうに」と言われるほどに優れた他者と交信可能なニュータイプ能力を所持していながらも、[[ベルトーチカ・イルマ]]に指摘された通り「'''平和なインテリジェンスを持たなかった'''」という「本質」である。それを示すかのように、戦場においても分かり合おうという姿勢を見せたことはあまりなく、同じ最終目的を持っていた[[ジャミトフ・ハイマン]]に対しては暗殺を決行し、ララァを殺害した一件から[[アムロ・レイ]]とは最後まで和解することがが出来なかった。[グリプス戦役]]が始まったばかりの頃に、シャアの右腕的存在であった[[カミーユ・ビダン]]は、優れたニュータイプ故に無意識のうちに知ってか知らずかシャアに対して「'''じゃあクワトロ大尉も、他人を信じないから戦うのですか?'''」という、シャアが他人を信用していないという核心を突かれている。他人を信用しない性格は、幼少期にて唐突に両親を失った事で、家庭の愛情を殆ど知らずに育ち、残された唯一の肉親である[[セイラ・マス|アルテイシア]]の「兄」を務めねばならず、簡単に弱みを見せたり他者に頼る事が許されなかったある種の「孤独」な環境で育ったで形成されたと思われる。
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一方で、ジオン公国軍に所属していた当時は、自らの悲願であった「父を奪った[[ザビ家]]への復讐」の為ならば手段を選ばず、例え親友として本心から気の許せる存在であった[[ガルマ・ザビ]]であっても「復讐」の対象の一人として謀殺する等、狡猾さや冷徹さを見せる事もあった<ref>復讐の最初の対象としてガルマに矛先を向けたのは、本当に友情を感じていた彼を殺せない事で、復讐心を失う事を恐れたのも理由の一つとなっている。</ref>。しかし、決して人の心を失っていた訳では無く、実際にザビ家の血を引いていながらも、まだ幼かった[[ドズル・ザビ]]の遺児である[[ミネバ・ラオ・ザビ]]に対しては、手に掛けようとしないどころか、むしろ彼女が一人の少女として幸せになる事を願っており、それ故に[[ハマーン・カーン]]の傀儡として利用されている姿を目の当たりにした際は、普段とは打って変わって激昂し、冷静さを失っていた程。
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[[ララァ・スン]]の残留思念からは「彼は純粋よ」[[ミライ・ヤシマ]]からは「シャアは純粋すぎる人よ」と、アクシズ落としという凶行であっても止まらずにやり遂げてしまう極端さを暗示されている。
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しかし、あらゆる面で優れた能力を持っていた反面、その内側には精神的な脆さも秘めており、幼い頃より政治闘争に翻弄され続け、両親からの満足な愛情を得られなかった結果、母性的愛情や安らぎに飢えている孤独な苦悩も抱え込んでおり、[[ララァ・スン]]を除いてその哀しい本質に気付き理解する事が出来た者は、遂に誰もいなかった。そしてララァを失い、次第にニュータイプとしての片鱗を見せ始めたシャアは、自らの心の穴を埋めるかの様に、「'''ニュータイプによる人類の革新'''」という独自の理想を求める様になる。
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=== 行動原理 ===
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一年戦争の頃の目的は、父親を謀殺したザビ家に対する復讐である。その為に彼らの支配するジオン公国軍に潜り込み[[ガルマ・ザビ]]謀殺に成功するのだが、終盤には「ザビ家打倒なぞついでのことだ」と実妹の[[セイラ・マス]]の前で言い放っていた。それだけ戦争で能力を開花させたニュータイプ、[[アムロ・レイ]]を危険視していたのである。
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また、ジオン・ズム・ダイクンの息子であるのを理由に周囲から一方的に期待を押し付けられる重圧には、内心「一人の人間」として扱って欲しいと願っていたシャアにとって、精神的に大きな苦痛となっていた。エゥーゴ時代の『[[機動戦士Ζガンダム|Ζガンダム]]』では、コロニー内でMS戦をしでかして警察に連行されたり、自販機でコーラを買って飲んだり、「嫁さんも貰えない」と自嘲していたり(引く手数多だが)と、1stや[[CCA]]での姿からは想像できない行動もしており、劇場版では更に自分の分のケーキがないかと気にしたり、[[エマ・シーン]]を口説こうとするヘンケンを羨ましがったりもしている。ヘタレ呼ばわりされがちなΖ時代の彼だが、これこそが「シャア・アズナブル」の仮面を脱いで「パイロットだけをやっている」、素のキャスバルの姿だったのかも知れない。
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シャアの反乱においての目的は、アクシズ落としにより地球に執着しているアースノイドを強制的に宇宙へ上げてニュータイプにし、人類発祥の地である地球をただの星と見做して無関心になっていたスペースノイドを地球の大切さを思い出させる事で、地球の再生と人類の革新を、アースノイドやスペースノイドを問わない宇宙へと上がった全ての人類に賭ける事であった。この部分は『ハイ・ストリーマー』で詳しく解説されており、地球を独占する地球連邦政府に対して強い不満を抱いているスウィート・ウォーターの難民から強い信頼を得ているシャアが、自分達のことしか考えていない地球連邦政府の高官達の傲慢を許せずに粛清する必要を感じていた。しかし、自分の味方であるネオ・ジオン派の人間は「結局は自らのカリスマを利用して、権力に執着するだけの俗物でしかない」という事実も把握していた為、右腕である[[ナナイ・ミゲル]]の前でしか遂に本心を明かすことはなかった。この心情は映画でも'''「私は世直しなど考えてない」'''の一言で出てきており、『純粋にモビルスーツのパイロットとして、アムロと互角に戦って勝ちたい』という思いも燻らせていながらも、アクシズ落としという所業は、自身の「理想」と「実利」を同時に叶える、シャア・アズナブルの人生の総決算でもあったのだった。普段こそ理性一辺等で冷静沈着を装っているが、シャア・アズナブルのもう一つの顔は、長き間戦いに身を投じていたモビルスーツパイロットとしての「戦士」であったのも事実だ。『逆襲のシャア』の、ロンデニオン・コロニー内での邂逅では'''「私はお前と違ってパイロットだけをやっている訳にはいかん!」'''という台詞が噴出するが、これも組織の御旗になってしまったが故の本音である。
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===劇中の様相===
   
==== 生い立ち ====
 
==== 生い立ち ====
 
ジオン・ズム・ダイクンの長男として生まれたキャスバルは、妹・アルテイシアや母・トアと共に穏やかに暮らしていたが、ある日突然、父・ジオンが急死。ザビ家によって命が危険に晒された結果、父の理解者であったジンバ・ラル([[ランバ・ラル]]の父)に庇護され、彼の手引きで[[地球]]に逃れた後は、マス家の養子「'''エドワウ・マス'''」として育つ。
 
ジオン・ズム・ダイクンの長男として生まれたキャスバルは、妹・アルテイシアや母・トアと共に穏やかに暮らしていたが、ある日突然、父・ジオンが急死。ザビ家によって命が危険に晒された結果、父の理解者であったジンバ・ラル([[ランバ・ラル]]の父)に庇護され、彼の手引きで[[地球]]に逃れた後は、マス家の養子「'''エドワウ・マス'''」として育つ。
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アクシズ落としが敢行される中、サザビーに搭乗してアムロの駆るνガンダムとの死闘を演じ、途中アクシズの坑道内で生身での銃撃戦も行いながら、再びモビルスーツでの戦いとなるが、最終的には敗北してサザビーからコックピット・カプセルが排出される。その際にアムロのニューガンダムにコックピット・カプセルを掴まれ、アクシズの地表に埋没させられる。そして最後は、νガンダムとカプセルから発したサイコフレームの光に巻き込まれる形でアムロと共に行方不明となる。その際、[[ナナイ・ミゲル]]が「大佐の命が…吸われていきます」と発していることから、サイコ・フレームにより意思を吸われ死亡したことが暗示されている。小説『ハイ・ストリーマー』においても、シャアが「サイコミュが、我々の意思を……」とサイコ・フレームにより自分とアムロの思惟が吸われていくことを説明している。
 
アクシズ落としが敢行される中、サザビーに搭乗してアムロの駆るνガンダムとの死闘を演じ、途中アクシズの坑道内で生身での銃撃戦も行いながら、再びモビルスーツでの戦いとなるが、最終的には敗北してサザビーからコックピット・カプセルが排出される。その際にアムロのニューガンダムにコックピット・カプセルを掴まれ、アクシズの地表に埋没させられる。そして最後は、νガンダムとカプセルから発したサイコフレームの光に巻き込まれる形でアムロと共に行方不明となる。その際、[[ナナイ・ミゲル]]が「大佐の命が…吸われていきます」と発していることから、サイコ・フレームにより意思を吸われ死亡したことが暗示されている。小説『ハイ・ストリーマー』においても、シャアが「サイコミュが、我々の意思を……」とサイコ・フレームにより自分とアムロの思惟が吸われていくことを説明している。
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[[機動戦士ガンダムUC]]
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==== [[機動戦士ガンダムUC]] ====
 
   
逆襲のシャアから3年後を舞台にした小説で、1989年に発刊された小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』同様に、設定面ではシャアもアムロも既に死亡したことになっているが、劇中では、シャアもアムロも行方不明ということになっている。生前の本人でもあって本人でもないという量子的存在である残留思念の特性上、シャア・アズナブルの残留思念も本人ではなく本人であるという重ね合わせの状態で、強化人間[[フル・フロンタル]]の肉体に宿り、彼を動かしている。
 
逆襲のシャアから3年後を舞台にした小説で、1989年に発刊された小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』同様に、設定面ではシャアもアムロも既に死亡したことになっているが、劇中では、シャアもアムロも行方不明ということになっている。生前の本人でもあって本人でもないという量子的存在である残留思念の特性上、シャア・アズナブルの残留思念も本人ではなく本人であるという重ね合わせの状態で、強化人間[[フル・フロンタル]]の肉体に宿り、彼を動かしている。
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アニメ版では、ハウンゼン内で、ギギ・アンダルシアが見ているタブレットコンピューターのニュース映像で生前のシャアの姿が新しく描き起こされている。また、こちらではマフティー・ナビーユ・エリンはシャアの幽霊と噂されているという設定に変更となった。
 
アニメ版では、ハウンゼン内で、ギギ・アンダルシアが見ているタブレットコンピューターのニュース映像で生前のシャアの姿が新しく描き起こされている。また、こちらではマフティー・ナビーユ・エリンはシャアの幽霊と噂されているという設定に変更となった。
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==== [[ガイア・ギア]] ===
[[ガイア・ギア]]
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アムロやシャアが活躍した時代からおおよそ100年後を舞台にしており、どちらも既に死亡しているが、シャアは、自身の体細胞から作られたクローン人間アフランシ・シャアの深奥の意思として未だに存在し続けている。時折、アフランシへ語りかけるなど、意思の状態になっても、現世へ介入しているが、表層意思であるアフランシに彼の声が届くことはなかった。
 
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アムロやシャアが活躍した時代からおおよそ100年後を舞台にしており、どちらも既に死亡しているが、シャアは、自身の体細胞から作られたクローン人間アフランシ・シャアの深奥の意思として未だに存在し続けている。時折、アフランシへ語りかけるが、それは表層意思であるアフランシへと届くことはなかった。
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===総評===
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多才な人間であることは間違いなく、モビルスーツの操縦技術、作戦指揮能力、潜伏力(ハマーンですら見つけられなかった)、政治手腕、カリスマ性とそれに対する演説は優れたものであり、これらは『逆襲のシャア』を視聴すれば大よそ分かる。実際、私情抜きで本気を出せば『逆襲のシャア』でアムロになにもさせずにアクシズ落としを容易に成功させられただろう(本気になったシャアに関しては『スパロボD』で拝める)。
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しかし、そんなシャア・アズナブルの[[性格]]は、「理性」と「感情」が入り混じった「理想」と「実利」主義者であったため、私情抜きの本気を出す事は作中ではなかった。
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『逆襲のシャア』において、シャアはアースノイドに対して強い不満を抱いているスウィート・ウォーター市民からの信頼を得ており、シャア自身も自分達のことしか考えていない地球連邦政府の高官達の傲慢を許せずに粛清する必要を感じていたが、同時に自分の味方であるネオ・ジオン派の人間達すら「結局は自らのカリスマを利用して、覇権奪取に奔走し権力に執着するだけの俗物でしかない」事実も把握していた。その為、ネオ・ジオンを指揮したシャアの軍事行動は、ただ『アースノイドを否定すればいい』としか考えていない傲慢なスペースノイド達とは異なり、「スペースノイド側だけに都合の良い『世直し』や『革命』」を考えていた訳ではなかった。シャアがアクシズ落としを行おうとしたのは、「それによって荒廃した地球で生き残ったアースノイド達が宇宙へ上がらざるを得ないようにし、また自分達の不満の捌け口に近い形で地球を否定する事しか考えないスペースノイド達にも地球の大切さを思い出させる事で、地球の再生と人類の革新を、アースノイドやスペースノイドを問わない宇宙へと上がった全ての人類に賭けようとする為」であった。
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一方、普段こそ理性一辺等で冷静沈着を装っているが、シャア・アズナブルの実情は、長き間戦いに身を投じていたモビルスーツパイロットとしての「戦士」であるのも事実である。宿命のライバルであるアムロとの最後の対決で、以前の対面で'''「私はお前と違ってパイロットだけをやっている訳にはいかん!」'''と言っていながら'''「私は世直しなど考えてない」'''と矛盾した台詞を言い放っている事からも分かる通り、政治家を務めていながらも『純粋にモビルスーツのパイロットとして、アムロと互角に戦って勝ちたい』という思いも燻らせており、「戦士」である事に最も生き甲斐を覚えていた彼にとって譲れない部分であった。つまり、アクシズ落としという所業は、自身の「理想」と「実利」を同時に叶える、シャア・アズナブルの人生の総決算でもあったのだった。
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とはいえ、シャアの行動が周りと世界を大きく振り回したのも事実で、
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・シャアが『ガルマを殺してなければ』ザビ家が崩壊せず、ジオンが負けてもスペースノイド達はまだマシな未来があったかもしれないし、ガルマがドズルの言う通りに覚醒していた可能性もあった。
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・アクシズにおいても『ハマーンに全責任を押し付けて逃げなければ』ハマーンが大きく歪まず、スペースノイドを正しく導いていた可能性があった。
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・グリプス戦役終結後に『エゥーゴを見限ったりもしなければ』、以降のエゥーゴ上層部の腐敗を抑え、後に連邦での地位を約束された後もスペースノイドの権利を認める方針へと軌道修正し、アースノイドとスペースノイドの間の隔たりを少しでも緩和出来た可能性もあった。ジオンの残党達が過去の栄光を求めて無意味なテロ活動に走る事も抑えられたかもしれない。
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これらはあくまでも結果論に過ぎず、またその時のシャアの心情<ref>ガルマを殺したのはそもそも両親をザビ家に殺される形になった事が原因であるし、エゥーゴを見限ったのは希望を見出したカミーユの精神崩壊に絶望してしまったのも理由の一つであり、ハマーンに責任を押し付けてアクシズを出奔してしまったのも作品によってはハマーンにも責任がある形で当時自分の子供を妊娠していた恋人を喪ってしまった事が大きい。また、そもそも地球圏ではシャアの正体がキャスバル・レム・ダイクンである事や敵討ちのためにジオン軍に身を投じていた事が広く知れ渡っていた事から遅かれ早かれアクシズでもシャアの正体とガルマやキシリアの死の真相が知られる可能性が高く、そうなるとザビ派閥が牛耳っているアクシズでは粛清対象になる可能性が極めて高いので結局アクシズを出奔する可能性は高い。</ref>を考えれば彼だけにその責任を押し付けるのも酷な話であるのも確かであるが、それでもジオンの遺児というネームバリューを利用していたにも拘らずやった事に責任をもたなかった無責任な所が、かえって世界事情を泥沼の惨劇に発展させた事は否定できないだろう。
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パイロット、政治家、そしてニュータイプ、それぞれの面で非常に高い能力と才能を発揮しているシャアであるが、彼を象徴する最大の特徴として挙げられるのが、「優れたニュータイプでありながら、'''感性そのものは[[オールドタイプ]]でしかなかった'''」という「本質」である。それを示すかのように、分かり合おうという姿勢を見せたことはあまりなく、本人なりに足掻いている様子を見せる事もあったが、個人的な確執やララァの一件から最期の最期まで抜け出すことが出来なかった<ref>[[グリプス戦役]]が始まったばかりの頃に、シャアの右腕的存在であった[[カミーユ・ビダン]]は、優れたニュータイプ故に無意識のうちに知ってか知らずかシャアに対して「'''じゃあクワトロ大尉も、他人を信じないから戦うのですか?'''」という、シャアの核心を突く一言を言い当てている。</ref>。
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幼少期にて唐突に両親を失った事で、家庭の愛情を殆ど知らずに育ち、残された唯一の肉親である[[セイラ・マス|アルテイシア]]の「兄」を務めねばならず、簡単に弱みを見せたり他者に頼る事が許されなかったある種の「孤独」な環境もあってか、シャアの心の内側には'''「他人に頼られるよりも、自分が他人に頼りたい」'''という、人ならば誰もが持ってもおかしくない心の弱さを抱えていた。しかし、あまりに高すぎる能力と才能を持っている事から、周囲にはその本質を理解されなかったばかりか、[[カミーユ・ビダン|よき相棒と言える人物]]や、[[ハマーン・カーン|好意を]][[レコア・ロンド|寄せてくる]][[クェス・パラヤ|女性]]からもただ「父性」ばかりを求められていた結果、「自分は期待に応えなければならない」と言うある種の強迫観念に囚われ続ける事になってしまった感もあり、その結果、女性に対して中途半端な態度しか取る事が出来ず、破局すると言う悪循環を招く要因となってもいる。<ref>実際には弱音を吐けた[[ガルマ・ザビ|親友]]や[[ララァ・スン|恋人]]もいたのだが、ガルマはザビ家への憎しみを捨てきれなかった結果自ら謀殺してしまい、ニュータイプの希望として見出したララァを戦場に出してしまったが為にアムロに殺害されるという、シャアの方にも原因がある形で早期に失ってしまった。</ref>そんなシャアの事をライバルのアムロにまで「器量の小さい」と詰られているが、[[ミライ・ヤシマ]]からは「純粋過ぎる人」と何処か哀れみもこめた評価がされており、「あらゆる優れた『能力』を持ちながらも、その『心』は一人の弱い人間でしかなかった」と言うのが、シャア・アズナブルという人物なのかもしれない。
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外伝も含めて女性との関係は非常に多いが、子孫は一切残していない。『ガイア・ギア』(SRW未参戦)では、遺伝子から造りだした[[クローン]]にメモリーチップを移植した「メモリー・クローン」という存在の主人公、'''アフランシ・シャア'''がいる。
      
==登場作品と役柄==
 
==登場作品と役柄==
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