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− しかし、そのあまりにも行き過ぎた選民思想に基づいたやり方は、同じ志を共にしていたはずの親友[[ラング・プラート]]博士から強い反感を買う事態となっており、自らの行いを後悔した彼は最新鋭の[[メタルアーマー]]であるD兵器を持ち出した上で[[地球連合軍]]に亡命。その娘である[[リンダ・プラート]]もまた、身勝手な都合で戦争を起こした自身や兄・マイヨの行いを許せず、逃亡の末にやはり亡命されてしまう事になり、これらは[[ドラグーン|ギガノスと地球連合の戦局を大きく覆す事態に繋がってしまっている]]。劇中で具体的に明かされてはいないものの、独立を唱えていたギガノス国民の中にも、戦争まで起こした自らの独裁政治を危険視した良識ある者達の多くが、ギガノスを見限り決別する道を選んでおり、物語の冒頭においては、既にギガノスは自らの命令に忠実に従うだけのイエスマン的な思考を持った者や[[ドルチェノフ]]の様に戦争に勝つ事を何よりも至上とする者達だけで固められた状態となり、暴走の危険度が加速する事に繋がっている。また、高潔な理想を掲げている反面、時勢を読み取る能力は乏しく、特にプラート博士がD兵器を持ち逃げして亡命した件に関しては、いずれ国力に勝っている地球連合軍もメタルアーマーを大量配備する事になるのを解かっていながら、D兵器を追撃するマイヨを信頼するあまり他に対処らしい対処は殆どしておらず、マイヨの左遷後も[[グン・ジェム隊]]に任せるだけであった。自分から地球に宣戦布告して戦争を起こした以上、理想と現実に折り合いを付けなければならない責任があったのだが、ただ自らに都合の良い理想のみに執着する事しか出来なかった事で、ギガノスが次第に劣勢に陥っていく現実にも目を向けられていなかった。+
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− また、決別した親友の息子であるマイヨの事は、自らの理想を理解してくれる者として強い信頼を置いており、ゆくゆくは彼を自らの後継者にしようと考えていた節も見られる。しかし、かつての親友の息子である事や親衛隊所属、「ギガノスに貢献する優秀な人物ならば出自等は問わない」という考え等を差し引いても、あくまでも部下に過ぎないマイヨに対しやや贔屓目に扱ってしまっていた部分があり、D兵器の追撃に執念を燃やす彼の独断を許可するばかりか他の軍に協力するよう命令したり、度重なる失態を部下達が問題視しても庇おうとしたりする等、単なる一兵士に対する扱いとは思えない破格な厚遇を行ってしまっている。この結果、その事実に感付いていたと思われるマイヨ個人に心酔していた[[プラクティーズ]]の面々やその他多くの若手兵士達の増長にも繋がっており、マイヨを庇いきれず最前線へ左遷させてしまった後は反乱にまで発展させてしまう事態へと発展させ、ドルチェノフを始めとする部下達の更なる反発を招く事にもなり、最終的には自らの死へと至った。+
− ギルトールが腐敗を憂いて理想を掲げた者だったのは確かであるが、結局は自ら傲慢で独善的な理想によって無自覚のまま腐敗を生みだし続ける事になり、最後はそれによって殺されるという、何とも皮肉な結果になってしまった。+
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=== 人物 ===
=== 人物 ===
ギガノスのカリスマとも言える人物で、軍事独裁政権でギガノスを支配する独裁者であるが、同時に故郷である[[地球]]への愛情は強く、気高い精神と高潔な信念の持ち主。元は某国の将校であったが、地球連合の腐敗を憂いて民族意識が高まり独立機運の高まった月面都市の人々の人心を掌握していった結果、月面各地に駐屯していた地球各国の駐留軍を取り込んで大規模な反乱を起こし、「統一帝国ギガノス」を建国。実質的にその最高指導者となった。一方、同時に典型的とも言える傲慢で狂信的な選民思想の持ち主でもあり、最も優れた人種である自分達ギガノスこそが絶対の正義であり、宇宙の意志を継ぐ者に他ならないと信じて憚らず、ギガノスに属さない者は隷属させるか武力で徹底的に排除するのが当然としている。また、戦争を人類の発展に繋げる美徳として捉えている節があり、マイヨを始めとする自らの思想に心酔するギガノスの軍人達もまた、地球側に対し破壊、虐殺、略奪といった容赦の無い軍事侵略行為に出ており、地球の余多の者達が自らの理想の礎として犠牲となっている。
ギガノスのカリスマとも言える人物で、軍事独裁政権でギガノスを支配する独裁者であるが、同時に故郷である[[地球]]への愛情は強く、気高い精神と高潔な信念の持ち主。元は某国の将校であったが、地球連合の腐敗を憂いて民族意識が高まり独立機運の高まった月面都市の人々の人心を掌握していった結果、月面各地に駐屯していた地球各国の駐留軍を取り込んで大規模な反乱を起こし、「統一帝国ギガノス」を建国。実質的にその最高指導者となった。一方、同時に典型的とも言える傲慢で狂信的な選民思想の持ち主でもあり、最も優れた人種である自分達ギガノスこそが絶対の正義であり、宇宙の意志を継ぐ者に他ならないと信じて憚らず、ギガノスに属さない者は隷属させるか武力で徹底的に排除するのが当然としている。また、戦争を人類の発展に繋げる美徳として捉えている節があり、マイヨを始めとする自らの思想に心酔するギガノスの軍人達もまた、地球側に対し破壊、虐殺、略奪といった容赦の無い軍事侵略行為に出ており、地球の余多の者達が自らの理想の礎として犠牲となっている。また、親友であり[[メタルアーマー]]開発の第一人者でもあった[[ラング・プラート]]博士の息子であるマイヨの事は、自らの理想を理解してくれる者として強い信頼を置いており、ゆくゆくは彼を自らの後継者にしようと考えていた節も見られ、重要な作戦等に常に彼を出撃させていたのも、マイヨが自らの後継者に相応しい存在である事を軍全体に証明する意図があったと思われる。
しかし、そのあまりにも行き過ぎた選民思想に基づいたやり方は、同じ志を共にしていたはずの親友ラングからは強い反感を買う事態となっており、自らの行いを後悔した彼は最新鋭のメタルアーマー「D兵器」を持ち出した上で[[地球連合軍]]に亡命。その娘である[[リンダ・プラート]]もまた、身勝手な都合で戦争を起こした自身や兄・マイヨの行いを許せず、逃亡の末にやはり亡命されてしまう事になり、これらは[[ドラグーン|ギガノスと地球連合の戦局を大きく覆す事態に繋がってしまっている]]。劇中で具体的に明かされてはいないものの、独立を唱えていたギガノス国民の中にも、戦争まで起こした自らの独裁政治を危険視した良識ある者達の多くが、ギガノスを見限り決別する道を選んでおり、物語の冒頭においては、既にギガノスは自らの命令に忠実に従うだけのイエスマン的な思考を持った者や[[ドルチェノフ]]の様に戦争に勝つ事を何よりも至上とする者達だけで固められた状態となり、暴走の危険度が加速する事に繋がっている。また、高潔な理想を掲げている反面、時勢を読み取る能力は乏しく、特にプラート博士がD兵器を持ち逃げして亡命した件に関しては、いずれ国力に勝っている地球連合軍もメタルアーマーを大量配備する事になるのを解かっていながら、D兵器を追撃するマイヨを信頼するあまり他に対処らしい対処は殆どしておらず、マイヨの左遷後も[[グン・ジェム隊]]に任せるだけであった。自分から地球に宣戦布告して戦争を起こした以上、理想と現実に折り合いを付けなければならない責任があったのだが、ただ自らに都合の良い理想のみに執着する事しか出来なかった事で、ギガノスが次第に劣勢に陥っていく現実にも目を向けられていなかった。
地球が傷付く事を良しとしない過度なまでの慎重姿勢故に[[マスドライバー]]の全面攻撃には消極的であったが、そうしている間に地球連合軍は量産型メタルアーマーである[[ドラグーン]]の大量生産を成功させ戦局が大きく変わる状態となってしまい、更には度重なる失態の責任からマイヨが左遷されていた事に不満を抱いた若手の兵士達による内乱までもが発生してしまう。急遽呼び戻したマイヨによる若手の兵士達への説得もままならず、その事実が連合軍側にも知れ渡ってもはやギガノスが内側から滅ぼされかけようとする中、強硬派の代表格であるドルチェノフからは反乱分子の殲滅とマスドライバーによる全面攻撃を必死に訴えられるも、なおも自らの理想や美学ばかりに拘ってそれを許可しなかった結果、遂に業を煮やしたドルチェノフにより銃を突きつけられてしまう事になる。それに抵抗し揉み合いになった末、偶発的にドルチェノフは銃を暴発させてしまい、それによって致命傷を負ってしまい意識が薄れる中、最後はマイヨにマスドライバーの破壊を託し、息を引き取る事になった。連合軍攻撃に焦るドルチェノフを一喝するシーンは自身の信念をぶつけたものだが、自身が撃たれ死ぬことは初めから覚悟の上だったと思われる。そう思うと根っからの軍人で勝つ事を何よりも重視とする考えの[[ドルチェノフ]]とウマが合わないのは当然であり、ギルトールもまたそのことを感じ取っていたのかもしれない。自らが落命した直後、周囲の兵士によりこの一件は「総統がマイヨ・プラートに[[暗殺]]された」と捏造させられてしまった。
地球が傷付く事を良しとしない過度なまでの慎重姿勢故に[[マスドライバー]]の全面攻撃には消極的であったが、そうしている間に地球連合軍は量産型メタルアーマーである[[ドラグーン]]の大量生産を成功させ戦局が大きく変わる状態となってしまい、更には度重なる失態の責任からマイヨが左遷されていた事に不満を抱いた若手の兵士達による内乱までもが発生してしまう。急遽呼び戻したマイヨによる若手の兵士達への説得もままならず、その事実が連合軍側にも知れ渡ってもはやギガノスが内側から滅ぼされかけようとする中、強硬派の代表格であるドルチェノフからは反乱分子の殲滅とマスドライバーによる全面攻撃を必死に訴えられるも、なおも自らの理想や美学ばかりに拘ってそれを許可しなかった結果、遂に業を煮やしたドルチェノフにより銃を突きつけられてしまう事になる。それに抵抗し揉み合いになった末、偶発的にドルチェノフは銃を暴発させてしまい、それによって致命傷を負ってしまい意識が薄れる中、最後はマイヨにマスドライバーの破壊を託し、息を引き取る事になった。連合軍攻撃に焦るドルチェノフを一喝するシーンは自身の信念をぶつけたものだが、自身が撃たれ死ぬことは初めから覚悟の上だったと思われる。そう思うと根っからの軍人で勝つ事を何よりも重視とする考えの[[ドルチェノフ]]とウマが合わないのは当然であり、ギルトールもまたそのことを感じ取っていたのかもしれない。自らが落命した直後、周囲の兵士によりこの一件は「総統がマイヨ・プラートに[[暗殺]]された」と捏造させられてしまった。
=== 評価 ===
=== 評価 ===
ギルトールの立ち位置は[[ガンダムシリーズ]]で例えるなら[[宇宙世紀|宇宙世紀シリーズ]]に登場する[[ギレン・ザビ]]に近い。しかし、デジタル思考のギレンとは対照的に、ギルトールはアナログ志向によって物事を決定・判断しがちであったと言え、「地球を美しい姿のまま手に収めたい」という自らの理念に過度なまでに忠実で、現実と折り合いを付けられない面も目立っていた。その為、徐々に地球連合軍との戦争がギガノス側の劣勢であった現実的問題や、前線で命の危険に晒され続ける兵士達の心情を顧みれない独善的と言える部分も目立っていき、その結果、戦況の芳しくない事実に焦っていたドルチェノフを始めとする部下達の反発や、中央軍部の腐敗、ひいては[[グン・ジェム隊]]のような末端のならず者集団の専横を招く事にも繋がっている。
ギルトールの立ち位置は[[ガンダムシリーズ]]で例えるなら[[宇宙世紀|宇宙世紀シリーズ]]に登場する[[ギレン・ザビ]]に近い。しかし、デジタル思考のギレンとは対照的に、ギルトールはアナログ志向によって物事を決定・判断しがちであったと言え、「地球を美しい姿のまま手に収めたい」という自らの理念に過度なまでに忠実で、現実と折り合いを付けられない面も目立っていた。その為、徐々に地球連合軍との戦争がギガノス側の劣勢であった現実的問題や、前線で命の危険に晒され続ける兵士達の心情を顧みれない独善的と言える部分も目立っていき、その結果、戦況の芳しくない事実に焦っていたドルチェノフを始めとする部下達の反発や、中央軍部の腐敗、ひいてはグン・ジェム隊のような末端のならず者集団の専横を招く事にも繋がっている。
また、マイヨに関しても、決別した親友の息子である事や親衛隊所属、「ギガノスに貢献する優秀な人物ならば出自等は問わない」という考え等を差し引いても、自らの後継者にしたいと願うあまりか、彼を贔屓目に扱ってしまっていた部分があった。D兵器の追撃に執念を燃やす彼の独断を許可するばかりか、他の軍にはその全面的な協力をするよう命令したり、度重なる失態を部下達が問題視しても庇おうとしたりする等、単なる一兵士に対する扱いとは思えない破格な厚遇を行ってしまっている。この結果、その事実に感付いていたと思われるマイヨ個人に心酔していた[[プラクティーズ]]の面々やその他多くの若手兵士達の増長にも繋がっており、マイヨを庇いきれず最前線へ左遷させた後は、不満を抱いた彼等による反乱にまで発展させてしまっている。ただでさえ戦局が不利な方向へ傾き内側の敵まで出してしまう失態を演じていながら、反乱分子である彼等の殲滅を一行に許可しない優柔不断に等しい姿勢は、ドルチェノフを始めとする部下達の更なる反発も招く事にもなり、最終的には不満を爆発させたドルチェノフとの諍いの末、自らが死亡する結末へと至った。これらからも、ギルトールの死はある意味で起こるべくして起こった事とも言えるだろう。
ギルトールが腐敗を憂いて時代の変革を求め続けた理想家だったのは確かであるが、多くの国民や兵士達の期待や未来を背負う指導者としては不適格であったと言え、結局は自ら傲慢で独善的な理想によって無自覚のまま腐敗を生みだし続け、最後はそれによって殺されるという、何とも皮肉な結果になってしまった。
== 登場作品と役柄 ==
== 登場作品と役柄 ==
:原作では偶発的に射殺される形となっているが、SRWではドルチェノフ自らの意思で射殺するケースが多い。
:原作では偶発的に射殺される形となっているが、SRWではドルチェノフ自らの意思で射殺するケースが多い。
;[[ラング・プラート]]
;[[ラング・プラート]]
:友人。理念の違い故に袂を分かつ。
:友人。同じ志を共にしていたのだが、次第に互いの理念に違いが生じていき、彼の開発したメタルアーマーで戦争を引き起こしたのが決定的となり、袂を分かつ。
;[[マイヨ・プラート]]
;[[マイヨ・プラート]]
:後継者として目をかけていたが、幹部達からの不満を募らせる存在にもなっていた。自身を殺害した濡れ衣をドルチェノフに着せられることに。
:後継者として目をかけ期待していたが、彼を贔屓目に扱いし過ぎてしまう事にもなっており、それが彼個人を崇拝する若手兵士達の増長を招き、幹部達からも不満を募らせる存在にもなっていた。また、彼もギルトールと同様、理想に固執するあまり現実の見えていない部分があり、家族からも愛想を尽かされてしまう事になっている。
:ドルチェノフとのいざこざの末に起こった自身の死後、殺害した罪をドルチェノフに着せられることに。
;クレスタ・ラナ・ギルトール
;クレスタ・ラナ・ギルトール
:[[小説|小説版]]にのみ登場する人物<ref>すなわち、小説版には登場しない[[ドルチェノフ]]の役割を担うキャラクターである。</ref>。
:[[小説|小説版]]にのみ登場する人物<ref>すなわち、小説版には登場しない[[ドルチェノフ]]の役割を担うキャラクターである。</ref>。
:第14話より。自らが飼っているランブルフィッシュの持つ[[闘争心|闘争本能]]の話を持ち出し、D兵器追撃で失態を続けるマイヨに発破をかけた台詞。
:第14話より。自らが飼っているランブルフィッシュの持つ[[闘争心|闘争本能]]の話を持ち出し、D兵器追撃で失態を続けるマイヨに発破をかけた台詞。
:戦争を悲劇ではなく美徳であるかの様に捉えているギルトールの危険な一面をさりげなく覗かせている。
:戦争を悲劇ではなく美徳であるかの様に捉えているギルトールの危険な一面をさりげなく覗かせている。
;「美しい…なんと美しい星なのだ地球は…。マイヨ、ワシ等は何か重大な過ちをしてはいないだろうか?」
;「あの惑星(ほし)の輝きは、戦争に対する…いや、ワシの全ての確信を揺るがせるのだ…」
:第33話より。ギガノスが戦局だけでなく内政でも追い詰められていく中、ギルトールは自らのやって来た事が過ちだったのかとマイヨに呟く。自らに崇拝するマイヨは同情するかの様子を見せているが、ドルチェノフを始めとする他の軍人達が聞けば、戦争を起こした者として勝手過ぎる言い分にしか聞こえないだろう。
;「マスドライバー攻撃は…ならぬぞ…」
;「マスドライバー攻撃は…ならぬぞ…」
:ギルトールの最期の台詞。
:ギルトールの最期の台詞。