ガサラキ

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概要

高橋良輔氏が『蒼き流星SPTレイズナー』以来、13年ぶりにTVシリーズ監督を務めたロボットアニメ作品。高橋氏が得意とするリアルロボット路線と重厚な政治ドラマに「和」の要素を大胆に盛り込んだ異色の作風となっている。また作品後半は経済要素にまで踏み込んだポリティカル・フィクションの様相を呈してくる。

ストーリーの所々に後の現実における世界の動向(中東情勢や世界金融危機等)を予見したような描写が散見しており、高橋氏の先見の明が伺える内容となっている。 また、非実在的な存在たるロボットが、実在する兵器と共存しているのも特徴の一つであり、それら実在兵器の中には、試作のみに終わったものも含まれている。[1]

声優・高田裕司のアニメデビュー作としても知られる(同作では豪和一清及び渡辺綱役を担当)。

登場人物

スパロボ毎の登場人物一覧については以下を参照して下さい。

メインキャラクター

豪和ユウシロウ
本作の主人公で、豪和家の四男。
ミハル
本作のヒロイン。

豪和一族とその関係者

豪和一清
豪和家の長兄。
豪和清継
豪和清春
豪和美鈴
ユウシロウの妹で、もう一人のヒロインと言える存在。
豪和乃三郎
豪和雪乃
空知

特務自衛隊

速川保
徳大寺琢磨
安宅燐
鏑木かほる
村井沙生
高山臨巳
北沢淳
陶見卓郎

シンボル

ファントム・F・フィーゼラー
ドクター・メス
シンボルの評議員。インヴィテーターであるミハルの監督官でもあり、航空事故で親を亡くした彼女の保護者的存在でもある。
それ故に、あくまでもモルモットという扱いを受ける彼女を気にかける一面もあった。最終的に彼女のシンボルからの離脱を黙認し、また美鈴救出作戦時の際、ミハルがユウシロウの援護のためにイシュタルMk-IIを借用することに関しても許可している。
ギュンター
シンボルの科学者であり、ナダ・プロジェクトの研究主任である。ドクター・メスとは対照的に、ミハルの実験に対して積極的な一面を見せている。
イシュタルのパイロット(本名不明)
第8話から第10話にかけて登場する、おおよそ女性とは思えない大柄な体躯と風貌[2]を持つ、ミハルと共に行動する人物。
ミハルと共に、黙々と任務をこなしていくが、最終的に骨嵬・朱天の襲撃によって機体が大破、自爆装置が作動するも、脱出不能になりそのまま機体の爆発に巻き込まれ命を落としている。

クーデター関係者

西田啓
広川顕郎

平安編

憂四郎
ユウシロウの前世。
見晴
ミハルの前世。
渡辺綱
渡辺競
叡如

登場メカ

スパロボ毎の登場メカ一覧については以下を参照して下さい。

タクティカルアーマー

壱七式戦術甲冑 雷電
本作における主役機。
壱七式戦術甲冑改 震電

メタルフェイク

イシュタルMk-II

骨嵬

骨嵬・朱天
骨嵬・克天

用語

タクティカルアーマー(TA) / メタルフェイク(MF)[3]
豪和インスツルメンツの開発した次世代ロボット兵器。駆動系に人工筋肉「マイル1」を使用し、従来の電動モーター駆動等ではありえなかった柔軟な可動性が売り。内蔵機構であるアルムブラストやリフティングウィンチ、オプション兵装のブラストロッド等を駆使すれば、遮蔽物の多い市街戦や入り組んだ山岳地形、建築物内部での戦闘で(通常装備の敵よりも)圧倒的優位に立てる。
反面、全身に装甲が分散しているので遠距離線だと戦車が有利、ブースターなどの推進機もなく空中には慣性制御も出来ないので戦闘機と圧倒的なアドバンテージの差がある等、既存兵器に正面から正攻法で攻めても勝てない設定になっている
特務自衛隊(Japan Special Self-Defense Force(JSSDF))
通称「特自」。PKOに基づく海外派兵を主任務とする、第4の自衛隊である。階級は海外派兵に特化した組織であるためか、米軍と同様のものとなっている。
豪和家の人物が関わっているほか、西田派の人物も関係しているがために、幾度と無く過酷な戦いを強いられることになるが、最終的に西田啓の意向を汲んだ広川参謀によって解散が決定されるものの、その直後に起きた、嵬として覚醒した美鈴を巡る騒動を経て最終的に国連軍のTA部隊という形で吸収消滅する形となった。
骨嵬(くがい)
豪和本家の蔵に繋がる洞窟に秘匿されている巨大な甲冑で、顔面は般若のような鬼の面が被されている。
その正体は(恐らくは)地球外の知性体が作り上げた生体ロボットである。生体故か「口を開いて怪しい吐息を吐く」など、生きているかのような素振りも見せる。
類まれなる戦闘能力を有し、ユウシロウが起動させた際は数百年ぶりの稼働であったにも関わらず、最新技術の粋であるメタルフェイクを圧倒した。
有史以来、それも複数存在することが劇中示唆されており、合戦絵巻に当時の戦況が描写されている。歩兵はもとより騎馬や弓兵すら太刀打ち出来ないため、骨嵬同士での一騎打ちで全軍の勝敗を定めていたとされる。
嵬 / インヴィテーター
骨嵬の操者。本来は単に骨嵬の操縦システムとリンクすることのできる適合者の事を指す言葉であったが、その該当者が生まれる確率は低く、長い歴史の中で幾重にも濁らせて使われてきた結果、劇中ではやや象徴的な意味合いに受け止められる。
嵬は戦闘時に凄まじい集中力と判断能力を発揮する。この時心拍数が急激に向上し、「メンタルバースト」と呼ばれる一種のトランス状態(所謂「憑依」や「物寄せ(口寄せ)」、「狐憑き」のような現象)に陥り、脈拍がある一程度を越えると閾(しきみ)と呼ばれる特殊重力フィールドを展開する特徴を持つ。この脈拍のリズムは骨嵬の脈とリンクしており、これが同期した時のみ閾が発生して骨嵬が起動するらしい。なお、この閾はシンボル側からはGSポイントと呼ばれる。
前述のとおり骨嵬は古来、純粋な戦闘用の兵器から決闘用の武神に置き換えられ、一騎打ちは次第に儀式的なものにすり替わってきた(本来は奉納の為の決闘である「相撲」を想像してもらえばわかりやすいか)。これは軍の全面衝突による大量死を回避することにも繋がるが、同時に搭乗者である嵬のどちらかが死ぬことも意味し、ともすれば嵬は「戦争のための生け贄」とも考えられる。
過ぎた力を持つことで社会から必要とされ、また警戒された嵬の一族にとって、骨嵬と嵬が為政者との関係を繋ぐ唯一の命綱であり、また存在意義でもあった。そのため嵬の素質をもって生まれてきた者はそれら凄まじい期待とプレッシャーを背負って生きてゆかねばならず、少なくない者がその重さに負けて不幸な人生を歩むことになる。
嵬は遺伝で生まれてくるが、必ずどの世代にも居る物でも無く外見上は人間と変わらないため見分けることが出来ない(劇中描写からクローニングはある程度有効らしい)。そのため舞踊の稽古などで特殊な心的環境を人工的に生み出して心理的に追い込み、閾が出来るかどうかで判断する。(ちなみに舞踊の内容は過去の嵬の人生を戯曲にしたものであり、無関係ではなかったりする)
豪和家
旧華族の系統を受け継いだ日本有数の名家で、古来より骨嵬の一体「朱天」を祀る。日本史のかなり初期のころから活動しており、ドラマCDなどで当時の情勢が伺える。骨嵬を駆使し、その圧倒的な力を以て武勲を上げ歴史の節目節目にその名を残し、時の為政者との強い繋がりを持つことで永きに渡る繁栄を手中にしてきたが、それは同時に為政者たちから恐れられ世俗から切り離される原因ともなったため、いつしか骨嵬の存在自体を豪和一族が忌み嫌うようになり近代に入った辺りからは自らの手によって骨嵬を封印していた。
現代では巨大コングロマリットを有する豪和ファミリーだが、豪和にとって骨嵬は存在意義であると同時に悲劇を繰り返さないための戒めでもあり、自己矛盾の象徴とも呼べる。ユウシロウの嵬としての覚醒を軸に、頑なに骨嵬の復活を忌避する親世代と、骨嵬を別の形で復活させようとする子世代の確執が全編にわたって描かれている。
シンボル
豪和と対になる組織で海外に拠点を置くコングロマリット。豪和の手からマイル1に関する技術を盗み出し、独自でメタルフェイクを作成、各国に売り出している。豪和同様にGSポイントやナダの民を追う等、ほぼ全編に置いて敵として登場するが、直接の対峙は少ないため、(ユウシロウに対する豪和の黒い面の描写が目立つ事もあって)傍から見るとロボット物の敵役とは思えない。
ナダの民
マイル1
タクティカルアーマーに内蔵された駆動ユニット。動作を記憶して単独で複雑な運動を復元する機能を持つ(=反射運動を可能とする)。これによってロボット操縦に必要な複雑な入力を極端にショートカットし、かつ搭乗者に合わせたカスタマイズを自動で行ってくれるため、コンピュータ制御による操縦よりも圧倒的にスムーズな上、開いた分の容量を情報処理に回せるという一石二鳥の代物。
その正体は骨嵬の鎧の中に敷き詰められた人工筋肉を培養して精製されたモノで、科学的な機序はほとんど解明されていない未知の存在。開発者ですら「オーパーツをただ増やして動くようにしてみせただけで自分達では殆ど何も生み出してない」と自虐的な発言をする程。
また、分泌液から生成された「インジェクション」と呼ばれる一種の精神安定剤は、パイロットへの投与によって半日以上TAによる活動が可能なほど集中できるようになるが、過剰に適合した場合は精神に異常をきたし暴走を招く。
骨嵬は、こうしたマイル1を始めとしたTA開発と応用技術の起点であり、また発展形の集合体と言ってもいい。最終的にTAの目指すものは「現行技術による骨嵬の再現」に他ならない。
ガサラキ

楽曲

オープニングテーマ
「MESSAGE #9」
「REMIX OF MESSAGE #9:type M」
エンディングテーマ
「LOVE SONG」

登場作と扱われ方

単独作品

スーパーロボット大戦X-Ω
初場作品。2017年5月30日配信の『生スパロボチャンネル』にて第3期参戦作品の第1弾として発表され、2017年6月に追加参戦した。

各話リスト

サブタイトルは次回予告などで詠われる和歌が正式名称であり、太字の部分は主にエピソード紹介や次回予告等における略称の由来となっている。

話数 サブタイトル 和歌 登場メカ 備考 再現スパロボ
第1話 石舞台 ただひとつ 嵬の嵬たる 証にと 舞台に 足打ち付けぬ 壱七式戦術甲冑 雷電 
第2話 序ノ舞 千歳なる 淵の淀みに 風起こる さざ波渡る 水の序の舞 イシュタルMk-II
第3話 天気輪 雨風を 占いけるを 天気輪 明日を音に問う 心細さに
第4話 蜃気楼 うつつなる 時の流れの 間隙に 我身操る 蜃気楼みる
第5話 接触 鎧われて 確とは見えぬ 君なれど たがいの傷に 接触た感あり
第6話 操り人形 誘われて 地下迷宮に再会す 想いは踊る 操り人形に似て
第7話 帰還 そはミハル 想い残して帰還する 心の闇に 棲まう君の名
第8話 火宅 それぞれに 想いあふるる 三界の… 何処も彼処も 火宅なりけり
第9話 御蔵 仕舞われて 息を潜めし 古の おもいは澱む の暗闇
第10話 骨嵬 骨嵬なる 胎内廻り闇廻り 数珠と連なる連綿の嵬 壱七式戦術甲冑改 震電
骨嵬・朱天
第11話 行き行きて また塞がるる 嵬の道 繋ぐは 如何に在りすや
第12話 綻び 地を穿つ 火線極めて 綻びぬ 積み重ねたる 千年の禁
第13話 旅立ち 旅立ちに 後振り向いて 今一度 捨てる人をば 父さんと呼ぶ
第14話 同行 綾かなる 過去へ向いし 嵬の道 同行二人 病葉を踏み
第15話 嵬と嵬 に入りて 今ぞ見る 我が源の 蒼き哀しみ 骨嵬・克天 OP変更
第16話 宿業 我を灼く 宿業の火や 古都の空 修羅と染め抜き 夜叉と照り映え
第17話 混沌 混沌の アジア極まる 十字路で 過去と今とを 負いて佇む OP変更
第18話 裏窓 滾りたつ 世に背を向けて 裏窓の ガラスのくもり 頼みて潜む
第19話 慟哭 義にて逝く 人の最期を 目に刻む 暗き海原 慟哭を吸い
第20話 動乱 動乱の 時のうねりの ただなかで たったひとり おもかげを追う
第21話 疾走 追って追う 全ての法を 踏み込えて 疾走る心の 赴くままに
第22話 権化 向き合いて 想い投げ合い それと見る 捕らわれし心 権化とぞなる
第23話 無間 我叫び 無間の闇に 立ち竦くむ 凍てる心 響きあれかし
第24話 句読点 激しくも 哀れ空しい 句読点 撃ちてし止まむ それぞれの秋
第25話 餓沙羅 餓沙羅なる 遙けき便り 打ち捨てむ そは呪われし 回文にして OP無し


主要スタッフ

制作
サンライズ(第9スタジオ)
監督
高橋良輔
助監督
谷口悟朗
シリーズ構成
野崎透
キャラクターデザイン
村瀬修功
メカニックデザイン
出渕裕
荒牧伸志
音楽
蓜島邦明

余談

  • 本格派ミリタリーの色合いが強いロボット描写、政治劇要素とオカルト要素の強い作風からはにわかに想像し難いが、当時放送された時間帯はまさかの日曜9:30である。
    • このことは本作のファンからもネタにされており、機動戦士ガンダムUCが「機動戦士ガンダムUC RE:0096」として放送されることが決まった際にも引き合いに出されるほどである。
    • しかも、前番組はまさかの魔法少女アニメなのだから、これでは流石に商業面で失敗するのも時間の問題であっただろう。
  • タクティカルアーマーはTAと略されるが、これは高橋作品の代表作装甲騎兵ボトムズのAT、すなわちアーマード・トルーパーのアナグラムである。また、劇中多用されるウィンチやアンカーによる三次元的戦闘演出、また敵味方とで異なる搭乗姿勢[4]など、当時助監督だった谷口五郎氏が手掛けたコードギアスシリーズに置いて、ナイトメアフレームが装備するスラッシュハーケンに受け継がれる
  • 後半から搭乗する西田啓(通称西田先生)の登場によって、物語の主題が戦争とロボットから政治と経済にすり替わり、本格的にロボットが目立たない展開になって行き、その点を指摘するファンも多い(戦闘シーンはちょくちょく入るので、脱線しているわけではないが)。しかしながら、ここで語られた主題は至極真剣に考え抜かれた物であり、終盤の政治劇は一見の価値がある。話が長くなるので割愛するが、最終版西田先生の口にした「胸を張って坂を下る所存」は、前述の通りコードギアスでも受け継がれることとなった。
  • 意識したかどうかは不明だが、骨嵬とタクティカルアーマーの関係における「オーパーツ同然の太古の機体から回収された人工筋肉で開発された現行のロボット兵器」という設定はボトムズシリーズの「青の騎士ベルゼルガ物語」の最終盤に登場する「レグジオネータ」と「アーマードトルーパー」の設定と被る。最も、安いボロイ弱いが売りのアーマード・トルーパーからスーパーロボット並みにパワーアップされたベルゼルガテスタロッサが搭乗する最終盤は、流石の最低野郎たちから反感を買って非公式にされた設定なので、勘ぐりすぎと言われればそこまでなのだが…

脚注

  1. 代表例として、イシュタルMk-IIの兵装であるLOSAT(Line-of-Sight Anti-Tank)、ベギルスタン軍の戦闘機として登場するSu-37、特務自衛隊のヘリとして登場するRAH-66など。ただし、何れも実際のものとは異なったデザインが与えられている。
  2. それゆえか、第24話では彼女のアップ場面が米軍のイシュタルパイロットの一人として流用されている。
  3. 勢力ごとに呼び名が違い、特務自衛隊に機体を預けている豪和サイドはタクティカルアーマー、シンボルサイドがメタルフェイクと呼ばれるも、専門用語は組織ごとに違うため、会話上でに両者が区分けされることはない(双方会敵時には発言者のサイドに寄った名称で呼ばれる)。
  4. ガサラキにおいては、タクティカルアーマーがバイク型であり、メタルフェイクが後傾型となっている。