ラプラスの箱

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ラプラスの箱とは、『機動戦士ガンダムUC』に登場するキーワード。

概要

『機動戦士ガンダムUC』の鍵となる謎の物体。『箱』という名称からも箱型であるのは確かである。宇宙世紀0001年に起きた地球連邦政府の首相リカルド・マーセナスを始めとする多大な犠牲者を出したスペースコロニー「ラプラス」の爆破テロである「ラプラス事件」で所在不明となった事が名称の由来となっている。現在はサイアムの元に秘匿されており、真実か否かは定かでは無いが「ラプラスの箱が開かれる時、連邦政府は滅びる」という噂がある。

事件当時、テロの実行犯でもある青年…後のサイアム・ビストは、仲間達と共に作業艇で撤退する中、証拠隠滅の為に仕掛けられた爆弾により仲間達全員が死亡。ただ一人、船外作業中であったサイアムだけは吹き飛ばされるだけで運良く生き延び、更にはコロニーの爆発で吹き飛んだ「箱」を偶然にも発見し、回収する。その後、裏社会で頭角を現していったサイアムは、ラプラス事件のテロを画策したリカルドの息子ジョルジュ・マーセナスを中心とした保守派勢力への交渉(正確には脅迫)に使う。

「箱」はリカルド・マーセナス首相の暗殺が連邦政府内の極右派による自作自演である事を裏付ける決定的な証拠となりえた(逆に言えば当時はその程度の意味しかなかった)為、当初は「箱」の奪回とサイアムの暗殺計画が何度も持ち上がったが、「箱」を手にしたサイアムの要求は連邦政府に些細な便宜を図らせる等、政府の存続自体に影響のない程度であった。その為、政府は「リスクを負ってでもサイアムを消す」よりも、「主導権を握られた共生関係を続けて様子を見る事」を選択。これによりサイアムは巧みに共生関係を築いていく事で、当時は田舎の新進企業に過ぎなかったアナハイム・エレクトロニクス社を急成長させていく。その功績によって、役員待遇でアナハイムに迎えられた後は専務の娘婿となってその地位を強固な物とし、やがてはアナハイムを苗床にして自らを首魁とする「ビスト財団」を立ち上げ、巨大化させていくまでに至った。

一方、サイアムは「箱」を利用して上手く立ち回る事で、それを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し続け、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備える為にビスト財団を作り上げていた。そして、第2次ネオ・ジオン抗争が集結して3年後、機が熟したと判断したサイアムは「箱」を解放させる為の計画を実行に移し、これが後に「ラプラス戦争」と呼ばれる戦いの引き金となった。

『箱』の正体と顛末

その正体は、宇宙世紀元年を祝してセレモニーで公開されるはずだった、宇宙世紀憲章を認めた石碑。サイアムの眠る氷室を収めた航宙艦メガラニカに封印されている。

サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑で、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、「七番目の章立て」が存在していた。その内容とは…

第七章 未来 第十五条
地球連邦は大きな期待と希望を込めて、人類の未来のため、以下の項目を準備するものとする。
1.地球圏外の生物学的な緊急事態に備え、地球連邦は研究と準備を拡充するものとする。
2.将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政治運営に参画させることとする。

「宇宙に適応した新人類」…つまりは「スペースノイドの中から生まれたニュータイプ」への権利を明文化したと解釈出来るこれは、「将来現れる新人類に対して優先的に政府運営に参画させる(「権利を保障する」「平等に扱う」等ではない)」というどうとでも都合良くとれる条文で、後述の箱の意味の変遷と合わせると、立案された当初から問題のある条文であったとも言える[1]。しかし、この削除された条文は宇宙世紀という暦が始まる前の歴史の時点で逼塞しつつあった世界の中で、「自分達の子の、孫の、その後の子孫に何か遺してあげたい」という「善意」から端を発しているものであり、「人の行動は全て善意から発しているもの」という機動戦士ガンダムUCのテーマに沿ったものであり、お話の核心部分の秘密として相応しいものといえる。

だが、逆に言えばリカルドの行いは、「『善意』から発した行動が必ずしも『正しい』とは限らない」とも言え、実際にその善意は長年の腐敗や動乱を招き、公開されようとした時には「箱」を利用しようとした『袖付き』を中心とするジオン残党軍や「箱」の開放を恐れた連邦政府、アナハイムの首脳陣達が総じて暴走し、バナージ・リンクスを始めとした戦争とは無縁であったはずの若者達までもが巻き込まれ、理不尽に殺される者達までもが出てしまった。それでいざ公開されれば、「時代遅れ」として切り捨てられ何の利益ももたらさないと言う顛末が待っていただけで、結局は害しかもたらさなかったという事実だけを残す事となっている[2][3]。それどころか、ラプラス戦争の終結後は、何の価値も無くなっていったラプラスの箱よりも、箱に関する秘密を守る為の「鍵」に過ぎなかったユニコーンガンダム自体の方が「シンギュラリティ・ワン」と呼称されて危険視される事になるというとことん皮肉な末路を迎える事になっている。

ともあれ、この第七条碑文はその内容の問題外っぷりを抜きにしても、将来的に自分たちの権利を「棄民」に譲り渡す可能性を秘めているという意味で、将来的にそれらを受け継ぐ世代の権益を脅かす物であるのは間違いなかった。この為、ジョルジュを始めとする保守派によって自作自演のラプラス事件が発生した訳だが、サイアムが生き残り「箱」を確保してしまったという全くの想定外の事態が発生した事で、リカルドの後を引き継いだジョルジュ政権にとって彼と「箱」の存在が最悪の脅迫状と化すことになった。

『箱』の意味の変遷 

サイアムが回収し脅迫に利用した「箱」の持つ力は、「リカルドの暗殺が息子のジョルジュを中心とする政権による陰謀だった」というかつての連邦首脳陣に関する一大スキャンダルが暴露される程度の物でしかなかった。レプリカにはない第七条碑文の存在は、時が経って当事者がこの世を去ってしまえば「だいぶ前の政権が起こした事件の遺物」でしかなくなり、だからこそ時と共に風化し、徐々に「箱」の価値を失われていくはずだった。

だが、ジオン・ズム・ダイクンによって「宇宙に出た人間は、進化しうるといい、棄民たるスペースノイドこそがその魁である」というニュータイプ論、すなわち「宇宙に適応した新人類」の仮説が世に出た事、そしてそれによりスペースノイドの独立運動と合流し「ジオニズム」という新たな主義を生み出された事で全てが変わってしまう事態となった。「新人類」の権利と政治への優先的介入を明記した「箱」の第七章碑文だが、この「宇宙に適応した新人類」というセンテンスが、よりによって反連邦のリーダーであるジオンその人によって唱えられた「ニュータイプ」と「最悪な偶然」という形で一致してしまった事で、「地球連邦はジオニズムと同じ思想を持ち、新人類の発生を予見した上で、それを秘匿・否定していた」という事実が後付けで発生してしまったのである(わかりやすく言うと「連邦政府はスペースノイドの権利を認めるつもりが最初から無かったんじゃないか」という疑惑に強固な裏付けを与えてしまうのである)。

もし「箱」の存在がジオニズム信奉者達に知れれば、彼等はその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然で、それを拒む連邦との間で激しい衝突が起こることも予想された。[4]何よりも「存在を知りながら隠し続けた」という事実が、「連邦の政治的・思想的な不正義を証明する口実」として使われる(「箱」の内容の文章が、連邦政府の首脳が法的な手続きや議会・世論の了承を完全に無視して記したという「事実上の越権行為」である事を無視される形で)のは明白であった為、連邦政府は沈黙し、秘匿し続けるしか道がなかった。当のニュータイプ論を唱えていたジオン・ズム・ダイクン自身も「新人類」としてのニュータイプなど信じてはいなかった[5]が、それ故の「『中身のないテーゼ』が『中身のない疑惑』を強める」という意味の分からない状況を作ってしまったのである。

リカルドらの残した「祈り」は、この時点で平穏を破壊する「呪い」にでしか無くなり、もはや「箱」そのものではなく「箱」を封じたという事実の方が重くなってしまっていた。更にサイアムが政治工作により「箱」その物の意味を自らから遠ざけた結果、「サイアムの立ち上げたビスト財団を潰しても『箱』の秘密も所在も全く分からないまま」という状態が成立。この結果、「『箱』=宇宙世紀憲章の石碑」という単純な真相が世に出る事のないまま、サイアムの存在からその(政府にとっての)危険性だけが一人歩きしていき、ある種の都市伝説として広まっていくことになった。

そもそも、ニュータイプと呼ばれる事になった者達の本質は、身も蓋もない事を言えば「直感力や洞察力が他の人間に比べて高度に備わっていて、その脳波を利用したシステムを使える特殊能力を持った人間」でしかなく、ジオン・ズム・ダイクンが提唱した「宇宙に適応した新人類」とされるニュータイプと同一である根拠など全く無かった。ただ単に、ダイクンの唱えたニュータイプの概念が、特殊能力に目覚めた人間達と「何となく一致している様に見えた」という単純な理由から、ダイクン本人の死後に世論が勝手に彼等を「ニュータイプ」であると定義しただけでしか無いのだが、「ニュータイプ」と呼ばれる様になった彼等の起こした「奇跡」とも解釈出来る光景から、世論…特にスペースノイドの多くは彼等を「ニュータイプ」であると断じて疑わない主張をし続け、遂には地球連邦側も「ニュータイプ」と呼ばれる者達を「宇宙に適応した新人類」の存在を認めざるを得なくなる。

しかし、今「箱」の真実が知れ渡れば、ジオンを信奉するスペースノイドだけでなく、ジオンに反感を抱き連邦側についているスペースノイド達でさえも掌を返して連邦を倒す為に団結し、最悪の場合は「アースノイドとスペースノイドの二分化による真の意味での殲滅戦争」となってしまう可能性も否定出来なかった。戦争のダメージが色濃い今そんなことになれば、人類種そのものが確実に滅んでしまう。その危険があるからこそ、政府は何としても「箱」を隠し続けなければならなくなり、一年戦争の惨劇を繰り返さない為、「宇宙に適応した新人類」を旗頭とするスペースノイドの希望を砕く為、ニュータイプを否定しなければならなくなった。もはやそこには連邦側にとっての利益や保身など関係は無いも同然で、ビスト財団や真実を知る者たちの既得権益を守るためだった癒着構造は「『戦争』という最悪な事態を回避し、どんな形であれ『平和』を維持していく為の必要悪である」と意味付けがなされ、ますます「呪い」が重くなっていったのである。

そして皮肉にも、連邦の象徴と言うべきガンダムタイプの乗り手達の多くは、政府が否定するしか無かったニュータイプとしての力を開花させていってしまう。「『ニュータイプ』と称されるジオンの思想と第七条碑文の正しさを証明し得る存在」に政府は振り回され続け、「ニュータイプが進化の可能性である」という事実を否定する為に「強化人間の研究」という更なる非道にも手を染めなければならなくなる等、「呪い」は重くなる一方であった。

だが、政府は最終的にこの「呪い」にケリをつけるべく、人工ニュータイプとガンダムを用いてジオニズムとニュータイプを根絶する計画を始動。これにサイアムが相乗りし、「箱」の開放を決断したことで、ラプラスの箱を巡る最後の戦いが始まったのである。

ラプラス戦争

そもそもビスト財団とは、「いつか来るべき『箱』の開放の時までそれを守る」ために作られた組織である。

宇宙世紀0096年、「シャアの反乱」の終結と、それに伴うネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルの戦死により、ジオンは反連邦勢力としての力を失う。

生きながらえていたサイアムはこれを期に、財団本来の目的である「箱」の開放を決断。孫のカーディアスにこの任務を通達する。

サイアム個人としてはここまで「箱」を秘匿し続けたことへの贖罪という個人的な理由が大きかったが、カーディアスは祖父の意向とは別に、ニュータイプという言葉自体が形骸化し、ジオンも衰退し、連邦政府によって統一支配が完成しようとしていたこの時期、人類が逼塞する危機を憂えていたことでこれに賛同。「箱」をネオ・ジオンの残党に譲渡しようとしたが、この時彼は連邦軍再編計画と銘打たれたニュータイプ殲滅計画「UC計画」のフラグシップ機であるユニコーンガンダムを利用することを考案。

ユニコーンの真の力である「ニュータイプ・デストロイヤー・システム」の中枢に細工を施し、特定の場所でシステムが起動するたび「箱」のありかへと少しずつ搭乗者を導いていく仕掛け「ラプラス・プログラム」をインストールした。「箱」を巡る歴史を学ばせ、その重みを知る者に、「箱」を開くか隠すかを委ねる「宝の地図と鍵」を用意したのである。だがこの時期のネオ・ジオン残党は既にフル・フロンタルという「赤い彗星の幻影」にすがって何とか組織として成立しているボロボロの状態であり、フロンタル自身も端的に言えばビスト財団に代わって「箱」を保有し、政府から便宜を引き出す道具にするつもりでいた(カーディアスもむろんその可能性は承知しており、ジンネマンに対して「『箱』に相応しい乗り手でなければユニコーンは場所を開示しない」と警告している)。

だが、この計画を嗅ぎ付けたマーサ・ビスト・カーバインは甥のアルベルト・ビストを通じ、「箱」を受け取るべくインダストリアル7を訪れたガランシェール隊を、ロンド・ベル隊を動かして強襲させる。政府にとってもこの一件は、サイアムと「箱」を同時に消し去る千載一遇の機会であったのだ。 ユニコーンの譲渡は失敗に終わり、混乱の中でカーディアスは死亡したが、ユニコーンガンダムは数奇な偶然を経て彼の息子、バナージ・リンクスが受領。「箱」を消し去りたい政府、「箱」を手に入れたい袖付き、両者を阻止し癒着を続けようとするマーサ、三者の思惑が絡み合う中、短い戦火に身を投じる。その後、紆余曲折を経て氷室へとたどり着いたバナージとミネバに対し、サイアムは「箱」の真実と己が元年に見た幻の意味、そして進化を続けてきた人間の可能性を語りつくして落命。「箱」の真実はミネバ・ラオ・ザビにより、世界に公表された。

ちなみにサイアムが宇宙世紀元年、ラプラスを爆破した際に見た幻とは、当時まだ存在していないザクの群れと、一年戦争におけるコロニー落としの光景である(無論、事件当時はモビルスーツという言葉すら存在していない)。サイアムはこれを、ラプラスの亡霊たちが「止めてくれ」と示した最悪の未来だったのではないか、と推察している。

物語のクライマックス、箱は遂に開かれ、地球圏の人々は真実を知ることとなる。だが、ローナン・マーセナスの「大衆は忘れやすいものだ。四、五年も経てば、『ラプラスの箱』のことなど誰も気にしなくなる」の発言にもあるように、機動戦士ガンダムNTの冒頭でも語られている通り世界は大きく変わらずであった。

第七条碑文が示す「新人類への参政権の約束」、そして「リカルド首相暗殺の真相」は、この時代にはもはや過去のスキャンダル以上のものではなかった。そもそも前者に至っては、「箱」が秘匿され続けた100年の間に、スペースノイド達が自らの力で政治に参加し、企業を立ち上げ、それを連邦が受け入れ、社会の中でゆるぎない地位を勝ち取ったことで自然と達成されていた。「新人類」という希望に頼らずとも、今を変えたいと思う者はその志を以て前に進める、そんな社会が既にあった。棄民であるスペースノイドには希望が必要と言う思想自体が、とっくに過去のものだったのである。時間の経過に伴う社会の変化は「祈り」を呪いに変えて政府を縛り続けたが、それを横目に「祈り」があっさりと叶えられるという皮肉な構図が出来上がっていたのだ。

とは言ってもスキャンダルには違いなく、公表者が過激な思想に走っていればまたしても新たな動乱が起きていた可能性はある。その意味ではもっとも平穏に、穏便に、無意味になるよう発表したミネバの狙い通りだったと言える。その一方、「箱」とは全く関係なく変革した社会だからこそ、その「祈り」が与える影響もまた小さなものであり、バナージが見た「刻の涙」のごとく、地球圏を襲う戦火はこの後も途絶えることはなかった。

しかし、ラプラスの箱を巡る旅において、数多の人の意思に触れ、悪意を以って行く手を阻むフル・フロンタルを跳ね除け、終わらぬ戦火という暗澹たる事実を呑み込んだバナージは、「それでも」人の可能性を信じ続ける道を選んだ。

登場作と扱われ方

多種多様な異星人異世界からの来訪者が存在するスパロボの世界においては、スペースノイドの権利保障というだけでは価値が弱くなってしまう。そのため、スパロボではいずれの作品においても、原作同様の意味に加え「何かの重要な秘密」が付与されている。 ただ、原作ではむしろ「結局意味が無かった」と言う所が物語の核となっているので、その点では、大きく役割が変わっていると言えるだろう。

Zシリーズ

第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇
作品全体のキーワードの一つとして扱われている。作中原作での謎の答えにほぼ近い推測が自部隊からあげられたが、無数の世界が混ざり合った多元世界では箱の中身はあまり意味を成さないだろうとされていた。しかし「人類の進化を監視する」と称するクロノ保守派の「教義」がこれを守ることであるとされており、そこからするとZシリーズの「箱」には原作とは異なる、もしくは世界観に関する何らかの根本的な手がかりが追加で記されているとも考えられていた。
カーディアスによれば「本来あるべきだった未来を取り戻す力」があり、「使い方を間違えば世界を滅ぼす=箱の開放によって変革した人々の意識が滅びを望めばそうなる」ものであるという。
第3次スーパーロボット大戦Z天獄篇
箱の内容自体は原作同様であったが、サイアムがラプラス事件の際に御使い(恐らく哀しみのサクリファイ)を目撃し、さらにエルガンの来訪によって並行世界と人類に進化を禁じる「管理者」の存在を知ったことが明かされている。
即ち、進化した人類が優先的に政治に関われるという第七章の条文は、本作においては「管理者による支配に抗う」という宣言でもあった。これらの事実はサイアム、エルガン、イオリアにより、箱の開放が決定された時点で「コード:ラプラス」がメガラニカから発信され、ヴェーダがそれを受信することで最奥部のプロテクトを守るリボンズ・アルマークが、エルガンがあらかじめ録画しておいた「サイデリアルとクロノによる人類の管理と飼育に関する公表映像」を全世界のネットワークに公開するよう仕掛けられていた。
カーディアスの言っていた箱の真の力とは「真実を知った上で、それでも絶望の未来に立ち向かうための意思を持つ力を手にすること」であった。

携帯機シリーズ

スーパーロボット大戦BX
箱の中身(憲章の碑文)については原作同様。本作では、碑文の最後の一節『未来』とそれをめぐる歴史は、宇宙に人々を棄民した事への贖罪すなわち「宇宙への祈り」であり、同時に連邦初代首相リカルド・マーセナスの「祈り」であったが、暗殺事件により「呪い」に変えられ、箱を巡って積み重ねられた歴史と犠牲がさらに「呪縛」を大きくしたという解釈がされている。また、憲章の碑文が発表されるはずだった日にヴェイガン木連の存在を認知し、謝罪・和解が行われる予定だったというクロスオーバーがある。
実は、本作では碑文のほかに、「もう一つの箱」として、EXA-DB(厳密にはその一部のコピー)にアクセスできる端末が入っていた。しかし、ミネバらがメガラニカでラプラスの箱を開示した事により、端末の機能は失われた。
その背景故、『ガンダムUC』決戦シナリオでは、BX袖付き、ヴェイガンによる三つ巴の箱争奪戦が勃発する事になる。
また、ムネタケ・サダアキが病んでしまった原因も、ラプラスの箱の正体発覚に絡んだ物となっている。

VXT三部作

スーパーロボット大戦V
箱の存在はジオンの高官達の間で「アースノイドとスペースノイドの戦いを終わらせるもの」として半ば伝説のような形で伝わっており、それを知ったミネバやナナイは自分達の組織に「ラプラス」の名を与えた。
やはり箱の正体については原作と変わらないものの、今回はフロンタルとは和解した上で箱の解放に臨む。その際、フロンタルは「地球連邦がその誕生から宇宙移民からの搾取を考えていた証拠であり、スペースノイドの憎悪を燃え上がらせるもの」と、バナージは「宇宙世紀の始まりは本当は希望に満ち溢れたものであった」と、同じものでありながら全く正反対の解釈がされることになる。それ故に「禁忌であり希望」と評されることとなった。
また、サイアムは生前のシャアに一度は箱を託したものの、過去に囚われることを拒否し、自らの力で未来を拓こうとしたシャアは箱を解放しないままであった。そして、バナージとミネバ、そしてフロンタルの3人もまた、アースノイドとスペースノイドの戦いを自分達の手で終わらせることを誓い、箱の真実は世界に伝えられることなくそのままサイアムと共に歴史の影に消えていった。
なお、宇宙世紀世界と同様の起源を持つ新正暦世界にもラプラスの箱は存在したものの、その公開を恐れた連邦政府の情報操作により、「空白の10年」と呼ばれる動乱の時代を生み出すこととなった。

単独作品

スーパーロボット大戦DD
箱の正体については原作と同じ。複数の並行世界がゲートで繋がった本作ではサイアムとアムロが「もう事はこの世界だけでは済まない」という発言をしており、原作以上に意味の無い代物になっているような印象を受ける。
スーパーロボット大戦30
『NT』が参戦している関係で、本編開始以前に既に開示されている。その影響で地球連邦の信頼がガタ落ちし、ザンスカール帝国の台頭を許した。
一般社会では箱を巡る一件は「ラプラスの箱騒動」とも呼ばれ、ネット上ではその裏に存在した「白いモビルスーツ」の噂がまことしやかに囁かれている。
本作では箱の開示はクエスターズによる干渉があったとされる。ゼロレクイエム人の心の光によって人類は平和を手に入れたが、それが永遠に続くかどうかを実験するためにクエスターズはラプラスの箱の開示を促した。箱の管理者は過去に目を背けては真の平和を掴むことは出来ないと考え、あえてそれに乗ることにした。
箱の開示によって再び人類同士が起こったものの、エンジェル・ハイロゥが新たな人の心の光となったことで地球人類は再び平和な未来に向けて進み始めた。

関連用語

地球連邦政府
箱が開放されると自分達の地位を失う為、箱を保護する。
ビスト財団
箱が開放されると自分達の利権を失う為、箱を保護しようとするマーサ・ビストを中心とした一派と、地球圏の閉塞を憂い箱を開放しようとするサイアム、カーディアスの一派に別れ争う事になる。
袖付き
箱を開放することにより自分達の権利を得る為、箱を奪取せんとする。
ユニコーンガンダム
1号機にのみ搭載されている「La+(ラプラス)システム」は、箱の所在地を探索するのに最も重要なものである。数奇な運命から、カーディアスの実子であるバナージ・リンクスがパイロットとなった。
メガラニカ
インダストリアル7のコロニービルダー。内部にラプラスの箱とサイアムの眠る氷室がある。正体は巨大航宙艦であり、ちゃんと武装も稼動するほか、中継衛星をジャックする事で地球上のあらゆる通信・放送システムに介入する設備を備えている
名前の由来はギリシャ人が世界球体説を唱えた際に、南半球にあると考えていた架空の大陸「メガラニカ」。
ラプラス (組織)
V』に登場する組織。スペースノイドとアースノイドの戦いを平和的に終わらせる方法を模索しており、そのための鍵となるラプラスの箱の名を冠している。

余談

  • カードゲーム『バトルスピリッツ』では、ガンダムシリーズとのコラボレーションによりラプラスの箱の正体である「宇宙世紀憲章」がカード化された。ところが2024年3月30日に「宇宙世紀憲章」のカードはコラボレーション商品にもかかわらず使用禁止カードとなってしまう[6]。しかし原作での経緯が経緯のため、禁止されたことで寧ろ原作に近くなるという珍事が発生した。

資料リンク

脚注

  1. そもそもリカルドが勝手に決めた「新人類」の定義自体が曖昧なので、「幾らでも恣意的に適用出来る(宇宙進出を果たしたスペースノイド全体や政治家の都合の良い人間を「新人類」認定して政府運営に参画させられる等)」、「『新人類』が悪意を持つ存在だった場合の事を何も考えていない」等、細かな点においても問題が多い。それ以前に「客観的に見れば、内容自体が特定の存在を優遇するという極右思想の現れであり問題外」としか言いようがない。
  2. もっともこの辺りは、U.C.0096と言う時代を扱うに辺り、「F91やVなどの未来がすでに描かれているので、劇的に地球圏の体制を変革させるような、革新的な真相をもたせられない」と言うメタ的な事情もあったと言えるが。
  3. なお、結果としてはむしろこれでもまだマシであり、下手な者の手に渡っていれば、一年戦争を遥かに上回る最悪の戦乱を招いていてもおかしくなかった。それこそシャア存命中の新生ネオ・ジオンなどはその筆頭であり、それがたった3年の差で時代遅れになってしまったと言うのも、ラプラスの箱を巡る皮肉であろう。
  4. もっとも仮に秘匿されず正式に発表されていたとしても、ジオニズムが唱えられ広まった時点で同じ問題が発生するのは明らかである。
  5. デギン、ギレンの親子双方からは「ジオンはあくまでもアジテーターでしかなく、政治的に理想を実現させる人物ではなかった」と見做され、息子であるキャスバル(シャア)でさえも、父・ジオンの語ったニュータイプ論はあくまでもサイド3という僻地に移民させられたスペースノイドの拠り所を持たせる為の方便で、「本質的にはダイクンの自己欺瞞に過ぎない」という真実を看破されてしまっている。
  6. バトルスピリッツ公式の2024年3月8日のポストより。